この項目 こうもく では、狭義 きょうぎ (種 たね として)のイノシシについて説明 せつめい しています。広義 こうぎ (科 か として)のイノシシについては「イノシシ科 か 」をご覧 らん ください。
イノシシ (日本語 にほんご :猪 いのしし ・豬、英名 えいめい :Wild boar 、学名 がくめい :Sus scrofa )は、鯨 くじら 偶蹄 ぐうてい 目 め イノシシ科 か の動物 どうぶつ の一種 いっしゅ 。
体長 たいちょう は雄 ゆう 110〜170cm、雌 めす 100〜150cm、肩 かた 高 だか 60〜90cm、尾長 おなが 30〜40cm、体重 たいじゅう 80〜190kg(岐阜 ぎふ 市 し で約 やく 220kgもの雄 お 個体 こたい が捕獲 ほかく されたこともある)で、雌 めす は雄 ゆう よりも小 ちい さく性的 せいてき 二 に 型 がた が見 み られる。全身 ぜんしん 茶褐色 ちゃかっしょく から黒褐色 こっかっしょく の剛毛 ごうもう で覆 おお われる。指 ゆび の数 かず は前後 ぜんご ともに4本 ほん で、2個 こ の蹄 を持 も つ。雌雄 しゆう 共 ども に下 しも 顎 あご の犬歯 けんし が発達 はったつ して牙 きば 状 じょう になっており、雄 ゆう は特 とく に長 なが い。雄 ゆう の牙 きば は生後 せいご 1年 ねん 半 はん ほどで確認 かくにん できるようになり、半月 はんつき 型 がた に曲 ま がった形 かたち で終生 しゅうせい 成長 せいちょう を続 つづ け、最大 さいだい で15cmほどまでになる。上顎 じょうがく の犬歯 けんし も大 おお きく、それが擦 こす り合 あ わさるよう下 した 顎 あご の犬歯 けんし が生 は えているため、常 つね に研磨 けんま された状態 じょうたい の牙 きば は非常 ひじょう に鋭 するど い。ただ、この牙 きば は後方 こうほう に湾曲 わんきょく しているため、攻撃 こうげき 用 よう というよりもむしろ護身 ごしん 用 よう である。湾曲 わんきょく の度合 どあ いもブタ と比 くら べると緩 ゆる い。
日本 にっぽん 産 さん 種 しゅ は大陸 たいりく 種 しゅ に比 くら べて短 たん 足 あし であるといわれる。犬歯 けんし を除 のぞ く歯 は は一度 いちど 生 は え変 か わる。犬歯 けんし だけは歯根 しこん が無 な く一生 いっしょう 伸 の び続 つづ ける。歯 は の大 おお きさ、特 とく に臼歯 きゅうし の大 おお きさには地域 ちいき 性 せい があり、現生 げんなま 個体 こたい や遺跡 いせき の歯 は の分析 ぶんせき から過去 かこ に人為 じんい 的 てき な移動 いどう があったのではないかと推測 すいそく されている[ 1]
幼 よう 獣 じゅう は毛並 けな みの模様 もよう がある種 しゅ のウリの実 み の模様 もよう に似 に ているためウリ坊 ぼう と呼 よ ばれる。熱帯 ねったい 雨林 うりん に住 す む鳥類 ちょうるい のヒクイドリ の幼鳥 ようちょう がそっくりな模様 もよう をしており、森林 しんりん の中 なか で目立 めだ たない収斂 しゅうれん 進化 しんか の一種 いっしゅ だと見 み られている。
イノシシ骨格 こっかく
雄 お 成獣 せいじゅう の牙 きば
脚 あし 。蹄は4本 ほん 。
元々 もともと は昼 ひる 行 ぎょう 性 せい の動物 どうぶつ であるが、季 き 節 ぶし と人間 にんげん の影響 えいきょう により生活 せいかつ リズムを変 か えていることが報告 ほうこく されている。人間 にんげん の活動 かつどう 地域 ちいき では夜行 やこう 性 せい に変 か わる[ 2] [ 3] 、積雪 せきせつ 地 ち では普段 ふだん は薄暗 うすぐら い時間 じかん 帯 たい の活動 かつどう が多 おお いが、冬 ふゆ は昼 ひる 行 ぎょう 性 せい になるという[ 4] 。季 き 節 ぶし によって生活 せいかつ リズムを変 か える例 れい は他 た の動物 どうぶつ でもしばしば報告 ほうこく されている[ 5] [ 6] 。
食 しょく 性 せい は雑食 ざっしょく 性 せい でクマやサルと違 ちが い木 き には登 のぼ れないために、地上 ちじょう や地下 ちか 部 ぶ のものを食 た べている。島根 しまね 県 けん での観察 かんさつ では主食 しゅしょく は植物 しょくぶつ の地下茎 ちかけい で、秋 あき と冬 ふゆ はドングリもよく食 た べているという[ 7] 。ドングリは種 しゅ によっては渋 しぶ みを感 かん じさせ有害 ゆうがい なタンニン を多量 たりょう に含 ふく むが、イノシシの唾液 だえき はタンニンの作用 さよう を中和 ちゅうわ する働 はたら きを持 も つ。山口 やまぐち 県 けん での観察 かんさつ によればこの中和 ちゅうわ 物質 ぶっしつ の量 りょう には季 き 節 ぶし 変化 へんか があり、タンニンを多 おお く含 ふく むコナラ を食 た べる時期 じき だけ増加 ぞうか する[ 8] 。ドングリはタンニンだけでなく豊凶 ほうきょう によってもイノシシに影響 えいきょう を与 あた えている。ツキノワグマとイノシシはドングリが凶作 きょうさく の年 とし は里 さと に下 お りてくるが、ニホンジカは相関 そうかん がみられないという[ 9] 。岩手 いわて 県 けん での観察 かんさつ では、積雪 せきせつ 期 き の餌 えさ としてもドングリが重要 じゅうよう であり餌 えさ 場 じょう は広葉樹 こうようじゅ 林 りん を好 この むが、あまりにも雪 ゆき 深 ふか いと掘 ほ り起 お こせず、常緑樹 じょうりょくじゅ で積雪 せきせつ の少 すく ないスギ 林 はやし などに移動 いどう する[ 10] 。ニホンジカと同 おな じく牧草 ぼくそう も食 た べる[ 11] 。
動物 どうぶつ 質 しつ のものは全体 ぜんたい 的 てき には少 すく ないが、ミミズ や土壌 どじょう 中 ちゅう の各種 かくしゅ 昆虫 こんちゅう の幼虫 ようちゅう などが多 おお い。地上 ちじょう 性 せい や地下 ちか 性 せい の小 しょう 動物 どうぶつ はしばしば捕食 ほしょく していることが報告 ほうこく されており、カエル 、ヘビ 、ネズミ やモグラ などが挙 あ げられている[ 12] [ 13] 。腐肉 ふにく 食 しょく を行 おこな っているという報告 ほうこく が世界 せかい 各地 かくち で幾 いく つかなされている。これまで観察 かんさつ された殆 ほとん どはシカ類 るい の遺体 いたい についてのものである[ 14] [ 15] 。また、子 こ 殺 ころ し (英 えい :infanticide)が観察 かんさつ されている動物 どうぶつ の一 ひと つであり、この際 さい 幼 よう 獣 じゅう は成獣 せいじゅう によってしばしば捕食 ほしょく される(後述 こうじゅつ )。
砂浜 すなはま の地中 ちちゅう に産 う み付 つ けられたウミガメ の卵 たまご を掘 ほ り返 かえ して食 た べることが、熱帯 ねったい 亜熱帯 あねったい の個体 こたい 群 ぐん で報告 ほうこく されており[ 16] 、日本 にっぽん でも南西諸島 なんせいしょとう で知 し られる[ 17] 。オーストラリアではウミガメだけでなく、淡水 たんすい 生 せい のカメの卵 たまご も狙 ねら うことが報告 ほうこく されている[ 18] 。また、地上 ちじょう に巣 す を作 つく る鳥 とり にとってもイノシシは主要 しゅよう な天敵 てんてき の一 ひと つである。イタリアで人工 じんこう 的 てき な巣 す と鶏卵 けいらん を用 もち いて行 おこな われた実験 じっけん ではキツネ 以上 いじょう にイノシシが最 もっと も頻繁 ひんぱん に捕食 ほしょく したという[ 19]
嗅覚 きゅうかく はよく多 おお くの匂 にお いに誘引 ゆういん 性 せい を示 しめ す。脳 のう の反応 はんのう を観察 かんさつ したところ、イノシシが家畜 かちく 化 か されブタになった際 さい に嗅覚 きゅうかく の一部 いちぶ を失 うしな ったといい、野生 やせい 化 か したブタは一部 いちぶ の機能 きのう がイノシシ並 な みに回復 かいふく するが、完全 かんぜん には回復 かいふく しないという[ 20] 。多 おお くの野生 やせい 動物 どうぶつ と同 おな じく山 やま 火事 かじ と関連 かんれん がある焦 こ げた匂 にお いを嫌 きら う[ 21] [ 22] 鼻 はな は匂 にお いを嗅 か ぐだけでなく、鼻 はな で触 さわ ることで物 もの の感覚 かんかく も確 たし かめられる。また、上半身 じょうはんしん の力 ちから は強 つよ く数 すう 十 じゅう kg程度 ていど のものなら鼻 はな で押 お しのけてしまう。聴覚 ちょうかく も良 よ く超 ちょう 音波 おんぱ もき取 きと ることが出来 でき るが忌避 きひ 反応 はんのう は示 しめ さない。麻布大学 あざぶだいがく 獣 しし 医学部 いがくぶ 講師 こうし の実験 じっけん により200〜500Hz の音 おと に逃避 とうひ 反応 はんのう を示 しめ すことが報告 ほうこく されている[ 23] 。
反対 はんたい に視力 しりょく は0.1以下 いか で100m程度 ていど が視認 しにん 範囲 はんい とされる[ 24] 。また眼球 がんきゅう が顔 かお の側面 そくめん にあるため立体 りったい 視 し は不得意 ふとくい とされる[ 24] 。奥行 おくゆき の把握 はあく が苦手 にがて であることから、身体 しんたい 能力 のうりょく 的 てき には飛 と び越 こ えられる1m程度 ていど の障害 しょうがい 物 ぶつ でも設置 せっち 次第 しだい では飛 と び越 こ えられないという[ 24] [ 25] 。障害 しょうがい 物 ぶつ が飛 と び越 こ えられる高 たか さであっても、飛 と び越 こ えるより潜 くぐ ることを好 この む行動 こうどう が観察 かんさつ される[ 26] 。
イノシシはよく泥 どろ 浴 あ びを行 おこな う。泥 どろ 浴 よく ・水浴 すいよく 後 ご には体 からだ を木 き に擦 こす りつける行動 こうどう も度々 たびたび 観察 かんさつ される。特 とく にイノシシが泥 どろ 浴 よく を行 おこな う場所 ばしょ は「沼田 ぬまた 場 じょう (ヌタバ、英 えい :wallow)」と呼 よ ばれ、イノシシが横 よこ になり転 ころ がりながら全身 ぜんしん に泥 どろ を塗 ぬ る様子 ようす から、苦 くる しみあがくという意味 いみ のぬたうちまわる (のたうちまわる)という言葉 ことば が生 う まれた。一般 いっぱん にこれは寄生虫 きせいちゅう を落 お としたり、体温 たいおん 調節 ちょうせつ をしていると考 かんが えられている。ヌタバに来 く る動物 どうぶつ の目的 もくてき は様々 さまざま でタヌキやアナグマのように餌 えさ 探 さが しのものから、ニホンジカのメスなどは恐 おそ らく水分 すいぶん と塩分 えんぶん の補給 ほきゅう に来 き ているという[ 27] 。イノシシの雄 ゆう が泥 どろ 浴 よく をするのは繁殖 はんしょく 前 まえ となる秋 あき が多 おお く、しかも泥 どろ 浴 よく するのは大 おお きな個体 こたい が多 おお いことから寄生虫 きせいちゅう や体温 たいおん 調節 ちょうせつ だけでなく繁殖 はんしょく 的 てき な意味 いみ があるのではという説 せつ が提唱 ていしょう されている[ 28] 。
泳 およ ぎは得意 とくい であり、波 なみ の穏 おだ やかな内海 うちうみ や湖 みずうみ などでは泳 およ ぐ姿 すがた がしばしば目撃 もくげき される。1990年代 ねんだい 以降 いこう でも瀬戸内海 せとないかい や長崎 ながさき 県 けん 五島 ごしま の島 しま では海 うみ を渡 わた ってきたと見 み られる個体 こたい 群 ぐん の新規 しんき 定着 ていちゃく 事例 じれい が報告 ほうこく されている[ 29] [ 30] 。
同属 どうぞく の Sus cebifrons では動物 どうぶつ 園 えん で飼育 しいく 中 ちゅう の個体 こたい が棒 ぼう を使 つか って穴 あな を掘 ほ る例 れい が知 し られている[ 31] が、イノシシ S. scrofa では特 とく に知 し られていない。
低温 ていおん 期 き でも冬眠 とうみん は行 おこな わない。このことが分布 ぶんぷ の北限 ほくげん を決 き めているのではという説 せつ がある。
野生 やせい 下 か での寿命 じゅみょう は長 なが くて10年 ねん であり、一 いち 年 ねん 半 はん で性 せい 成熟 せいじゅく に達 たっ する。繁殖 はんしょく 期 き は12月頃 ごろ から約 やく 2か月 げつ 間 あいだ 続 つづ く。繁殖 はんしょく 期 き の雄 ゆう は食欲 しょくよく を減退 げんたい させ、発情 はつじょう した雌 めす を捜 さが して活発 かっぱつ に徘徊 はいかい する。飼育 しいく 下 か の個体 こたい の観察 かんさつ ではイノシシの雄 ゆう はマスターベーション による性交 せいこう を伴 ともな わない射精 しゃせい をしばしば行 おこな い、また、ブタと比 くら べると雌 めす が発情 はつじょう していることを確認 かくにん するような嗅 か ぐ動作 どうさ (英 えい :sniffing)が多 おお いという[ 32] 。発情 はつじょう 雌 めす に出会 であ うと、その雌 めす に寄 よ り添 そ って他 た の雄 ゆう を近 ちか づけまいとし、最終 さいしゅう 的 てき にはより体 からだ の大 おお きな強 つよ い雄 ゆう が雌 めす を獲得 かくとく する。雌 めす の発情 はつじょう は約 やく 3日 にち で終 お わり、交尾 こうび を終 お えた雄 ゆう は次 つぎ の発情 はつじょう 雌 めす を捜 さが して再 ふたた び移動 いどう していく。強 つよ い雄 ゆう は複数 ふくすう の雌 めす を獲得 かくとく できるため、イノシシの婚姻 こんいん システムは一種 いっしゅ の一夫多妻 いっぷたさい であるとも言 い える。雄 ゆう は長 なが い繁殖 はんしょく 期間 きかん 中 ちゅう ほとんど餌 えさ を摂 と らずに奔走 ほんそう するため、春 はる が来 く る頃 ころ にはかなりやせ細 ほそ る。
巣 す は窪地 くぼち に落 お ち葉 ば などを敷 し いて作 つく り、出産 しゅっさん 前 まえ や冬期 とうき には枯枝 かれえだ などで屋根 やね のある巣 す を作 つく る。西表島 いりおもてじま での観察 かんさつ 事例 じれい では巣 す はリュウキュウマツ が疎 まば らに生 は える、ススキの草原 そうげん に作 つく られていた[ 33] 。通常 つうじょう 4月 がつ から5月 がつ 頃 ごろ に年 とし 1回 かい 、平均 へいきん 4.5頭 とう ほどの子 こ を出産 しゅっさん する。秋 あき にも出産 しゅっさん することがあるが、春 はる の繁殖 はんしょく に失敗 しっぱい した個体 こたい によるものが多 おお い。妊娠 にんしん 期間 きかん は約 やく 4か月 げつ 。雄 ゆう は単独 たんどく で行動 こうどう するが雌 めす はひと腹 はら の子 こ と共 とも に暮 く らし、定住 ていじゅう 性 せい が高 たか い。子 こ を持 も たない数 すう 頭 とう の雌 めす がグループを形成 けいせい することもある。
幼 よう 獣 じゅう の死亡 しぼう 原因 げんいん の主要 しゅよう なものに、下痢 げり などと並 なら んで挙 あ げられるのが子 こ 殺 ころ しである。ヨーロッパで飼育 しいく 下 か の群 む れを観察 かんさつ した結果 けっか では、母親 ははおや よりも体 からだ の大 おお きな雌 めす に殺 ころ される事例 じれい が多 おお かったという[ 34] 。天敵 てんてき は肉食 にくしょく 哺乳類 ほにゅうるい や猛禽 もうきん 類 るい 、大型 おおがた 爬虫類 はちゅうるい など。ただし、日本 にっぽん の環境 かんきょう では幼 よう 獣 じゅう はともかく成獣 せいじゅう の天敵 てんてき はほぼいないと考 かんが えられる。
泥 どろ 浴 あ びするイノシシ
泥 どろ 浴 あ び後 ご の擦 なす り付 つ け(オランダ)
群 む れで行動 こうどう する(ドイツ)
ウリ模様 もよう が消 き えかけた幼 よう 獣 じゅう
トラに襲 おそ われる成獣 せいじゅう (インド)
ユーラシア大陸 たいりく およびインド亜 あ 大陸 たいりく に広 ひろ く分布 ぶんぷ するが、アラビア半島 はんとう 、ロシアの北部 ほくぶ 、中国 ちゅうごく 西部 せいぶ のウイグル 、チベット などは分布 ぶんぷ を欠 か く。大陸 たいりく 周辺 しゅうへん の島 しま にも分布 ぶんぷ し、スリランカ 、スマトラ島 すまとらとう や日本 にっぽん もその一 ひと つである。アフリカ大陸 たいりく ではナイル川 がわ に沿 そ った地域 ちいき と,アトラス山脈 さんみゃく 以北 いほく の地中海 ちちゅうかい 沿岸 えんがん 周辺 しゅうへん に分布 ぶんぷ 域 いき がある。新大陸 しんたいりく のアメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 、アルゼンチン 周辺 しゅうへん 、オーストラリア 東部 とうぶ などの個体 こたい 群 ぐん は移入 いにゅう されたものである。
日本 にっぽん では東北 とうほく 地方 ちほう 以南 いなん の本州 ほんしゅう 、また南西諸島 なんせいしょとう に分布 ぶんぷ する。対馬 つしま では対馬 つしま 藩 はん による駆除 くじょ 活動 かつどう により1709年 ねん (宝永 ほうえい 9年 ねん )に絶滅 ぜつめつ したが、1995年 ねん に再 ふたた び捕獲 ほかく され、2011年 ねん には捕獲 ほかく 頭数 とうすう が1万 まん 頭 とう を超 こ えた[ 35] 。東北 とうほく 地方 ちほう では1900年 ねん 前後 ぜんこう に一 いち 度 ど 絶滅 ぜつめつ したものと見 み られていたが、近年 きんねん 分布 ぶんぷ を拡大 かくだい させている。南西諸島 なんせいしょとう に分布 ぶんぷ するリュウキュウイノシシは本土 ほんど のイノシシの亜種 あしゅ として扱 あつか うのが通例 つうれい だが、別種 べっしゅ として扱 あつか うべきという意見 いけん も存在 そんざい する。北海道 ほっかいどう には分布 ぶんぷ していないとされるが、逃 に げ出 だ した個体 こたい が定着 ていちゃく しているとも言 い われる。
ブタとは亜種 あしゅ の関係 かんけい にあり本 ほん 種 たね の肉 にく も美味 びみ である。野生 やせい 動物 どうぶつ であるため品質 ひんしつ は一定 いってい せず、個体 こたい の状態 じょうたい の他 ほか にとどめを刺 さ すところから血 ち 抜 ぬ き、内蔵 ないぞう の処分 しょぶん と解体 かいたい 、保存 ほぞん までの速 はや さと正確 せいかく さが味 あじ を左右 さゆう する[ 37] 。豚 ぶた では「豚 ぶた の雄 ゆう 臭 しゅう 」といって去勢 きょせい していない雄 ゆう は独特 どくとく の臭 くさ さが肉 にく に出 で るといわれており、イノシシも一般 いっぱん に雄 ゆう より雌 めす の肉 にく の方 ほう が評価 ひょうか が高 たか い。ただし、出産 しゅっさん を繰 く り返 かえ したものや授乳期 じゅにゅうき の雌 めす は不味 まず いという話 はなし もある。豚 ぶた 同様 どうよう に生食 なましょく は寄生虫 きせいちゅう 感染 かんせん のリスクが高 たか いほか[ 38] E型 がた 肝炎 かんえん や腸管 ちょうかん 出血 しゅっけつ 性 せい 大腸菌 だいちょうきん 症 しょう の食中毒 しょくちゅうどく のリスクがあることから[ 39] 、食用 しょくよう の際 さい には内部 ないぶ まで十分 じゅうぶん に加熱 かねつ する必要 ひつよう がある。さらに他 た の動物 どうぶつ に比 くら べて放射 ほうしゃ 性 せい 物質 ぶっしつ が比較的 ひかくてき 残 のこ りやすいといわれる点 てん にも留意 りゅうい すべきである。ヨーロッパでは2010年代 ねんだい でも放射能 ほうしゃのう の値 ね が1kgあたり数 すう 千 せん ベクレルという高 たか い個体 こたい がしばしば見 み つかっており、1986年 ねん のチェルノブイリ原子力 げんしりょく 発電 はつでん 所 しょ 事故 じこ だけでなく、数 すう 十 じゅう 年 ねん 前 まえ の核 かく 実験 じっけん の影響 えいきょう も指摘 してき されている[ 40] 。
日本 にっぽん では縄文 じょうもん 時代 じだい の遺跡 いせき からもしばしば骨 ほね が見 み つかっている[ 41] 。仏教 ぶっきょう が伝 つた わり獣 じゅう 肉食 にくしょく が表向 おもてむ き禁忌 きんき とされた時代 じだい も、山間 さんかん 部 ぶ などでは「山鯨 やまくじら (やまくじら)」(肉 にく の食 しょく 感 かん が鯨 くじら 肉 にく に似 に ているため)と称 しょう して食 しょく されていた。「薬 くすり 喰 く い」の別名 べつめい からもわかるように、滋養 じよう 強壮 きょうそう の食材 しょくざい とされていた。「獅子 しし に牡丹 ぼたん 」という成句 せいく から、獅子 しし をイノシシに置 お き換 か えて牡丹 ぼたん 肉 にく (ぼたんにく)とも呼 よ ばれる[ 42] 。文芸 ぶんげい では上方 かみがた 落語 らくご 『池田 いけだ の猪 いのしし 買 か い 』などに登場 とうじょう する。イノシシ肉 にく の鍋 なべ 料理 りょうり を「ぼたん鍋 なべ 」と称 しょう する。
南西諸島 なんせいしょとう の奄美 あまみ 大島 おおしま 、沖縄 おきなわ 本島 ほんとう 、西表島 いりおもてじま などにおいては、歴史 れきし 的 てき にも肉 にく 食 しょく のタブー がなく中国 ちゅうごく の肉食 にくしょく 文化 ぶんか の影響 えいきょう もあり、リュウキュウイノシシが貴重 きちょう なタンパク 源 みなもと として今 いま でもよく食 た べられている。西表島 いりおもてじま での観察 かんさつ 事例 じれい ではイノシシ猟 りょう は主 おも に単純 たんじゅん なくくり罠 わな によって行 おこな われ、弓矢 ゆみや や猟銃 りょうじゅう のような熟練 じゅくれん の技術 ぎじゅつ を要 よう するものではなく、これは温暖 おんだん な地域 ちいき の森林 しんりん の狩猟 しゅりょう 民族 みんぞく に共通 きょうつう するものだという[ 43] 。西郷 さいごう 隆盛 たかもり も奄美 あまみ 大島 おおしま で好 この んで食 た べたとされる。奄美 あまみ 大島 おおしま では保存 ほぞん 性 せい を目的 もくてき にリュウキュウイノシシ肉 にく の塩漬 しおづ け も作 つく られ、「ましゅちけぃしし」と呼 よ ばれた。また、味噌 みそ 漬 づ け やソーセージ にする例 れい もある。
駆除 くじょ 経費 けいひ の確保 かくほ と地域 ちいき 振興 しんこう を兼 か ねて、他 た のシカやクマやカモなどとも合 あ わせてジビエ (仏 ふつ :gibier)として加工 かこう ・出荷 しゅっか する取 と り組 く みも行 おこな われている[ 44] 。
江戸 えど 時代 じだい の東北 とうほく 地方 ちほう では、天候 てんこう 不順 ふじゅん による不作 ふさく とイノシシの食害 しょくがい による飢饉 ききん が「猪 いの 飢渇 きかつ (けがち)」と呼 よ ばれた[ 45] 。イノシシの田畑 たはた への侵入 しんにゅう を防 ふせ ぐしし垣 かき (シシ垣 かき )を作 つく った地域 ちいき もあった[ 46] 。
農林水産省 のうりんすいさんしょう がまとめた2022年 ねん (令 れい 和 わ 4年 ねん )度 ど の鳥獣 ちょうじゅう による日本 にっぽん の農業 のうぎょう 被害 ひがい 額 がく は165億 おく 円 えん である。動物 どうぶつ 別 べつ ではシカが65億 おく 円 えん で首位 しゅい 、次 つ いでイノシシが36億 おく 円 えん となっていて2位 い になっている。シカの被害 ひがい 割合 わりあい はこの10年 ねん 余 あま りで増加 ぞうか 傾向 けいこう を示 しめ すのに対 たい し、イノシシの被害 ひがい 額 がく は2010年 ねん (平成 へいせい 22年 ねん )度 ど の68億 おく 円 えん (全体 ぜんたい 230億 おく 円 えん )から比 くら べると金額 きんがく も比率 ひりつ も減少 げんしょう 傾向 けいこう にある。イノシシはシカに比 くら べて被害 ひがい 面積 めんせき は小 ちい さいが、単位 たんい 面積 めんせき 当 あ たりの被害 ひがい 金額 きんがく が大 おお きい。都道府県 とどうふけん 別 べつ では西日本 にしにほん に被害 ひがい が多 おお く、福岡 ふくおか 県 けん 、熊本 くまもと 県 けん と広島 ひろしま 県 けん が金額 きんがく の多 おお い上位 じょうい 三 さん 県 けん で各 かく 県 けん 2億 おく 円 えん 台 だい となっている。作物 さくもつ 別 べつ ではイネが18億 おく 5千 せん 万 まん 円 えん で半分 はんぶん を占 し め最 もっと も多 おお く、次 つ いで果樹 かじゅ 8億 おく 5千 せん 万 まん 円 えん 、野菜 やさい 類 るい 4億 おく 5千 せん 万 まん 円 えん 、芋 いも 類 るい 2億 おく 8千 せん 万 まん 円 えん と続 つづ く[ 47] 。イネが被害 ひがい 額 がく の過半数 かはんすう を占 し めるのはスズメ とイノシシのみとなっており、他 た の動物 どうぶつ では見 み られない特徴 とくちょう である。
イノシシによる農作物 のうさくもつ 被害 ひがい は食害 しょくがい の他 ほか に、農作物 のうさくもつ の踏 ふ みつけや体 からだ を擦 す り付 つ けることによる汚損 おそん 、農地 のうち や採草 さいそう 地 ち や農道 のうどう の掘 ほ り起 お こしなどがある。農地 のうち における獣 しし 害 がい 対策 たいさく としては、加害 かがい 個体 こたい および成獣 せいじゅう の駆除 くじょ が重点的 じゅうてんてき な目標 もくひょう とされる。幼 よう 獣 じゅう のみを駆除 くじょ すると雌 めす が再度 さいど 発情 はつじょう するために効果 こうか が薄 うす い。下記 かき の電気 でんき 柵 しがらみ や忌避 きひ 剤 ざい のように非 ひ 殺傷 さっしょう 的 てき な方法 ほうほう もよく行 おこな われる。
電気 でんき 柵 しがらみ は高 たか い効果 こうか を持 も つことがいくつか報告 ほうこく されている[ 48] 。下草 したくさ や積雪 せきせつ が電線 でんせん に触 ふ れると漏電 ろうでん が発生 はっせい し効果 こうか が弱 よわ まる。ブタでは鼻先 はなさき が電気 でんき 柵 しがらみ に当 あ たるの嫌 いや がる行動 こうどう が観察 かんさつ されており、稀 まれ に柵 しがらみ を倒 たお すことがあるが二 に 重 じゅう に囲 かこ むとほぼ効果 こうか が期待 きたい できるとされている[ 49] 。立体 りったい 視 し による奥行 おくゆき の把握 はあく が苦手 にがて だということもあり、二 に 重 じゅう 柵 しがらみ は猪 いのしし 対策 たいさく でもしばしば推奨 すいしょう されている。一方 いっぽう で電気 でんき 柵 しがらみ が効果 こうか を上 あ げられない事例 じれい も報告 ほうこく されている。設置 せっち 上 じょう の不手際 ふてぎわ のほか、行政 ぎょうせい が長大 ちょうだい な整備 せいび した後 のち に柵 しがらみ 内 ない の一部 いちぶ 農家 のうか が離農 りのう すると、残 のこ った営農 えいのう 者 しゃ では下 しも 草刈 くさかり や柵 しがらみ の修繕 しゅうぜん といった管理 かんり が出来 でき ずに通電 つうでん していないこともあるという[ 50] [ 51] 。農家 のうか が自家 じか 消費 しょうひ を主 おも に考 かんが えている場合 ばあい 、獣 しし 害 がい に対 たい する行政 ぎょうせい との温度 おんど 差 さ も指摘 してき されている[ 52]
爆竹 ばくちく 音 おん を鳴 な らしたり、石油 せきゆ 臭 しゅう を利用 りよう したりするなどの方法 ほうほう があるものの、高度 こうど な学習 がくしゅう 能力 のうりょく を持 も つため設置 せっち 箇所 かしょ や時間 じかん 帯 たい が回避 かいひ され継続 けいぞく 的 てき な効果 こうか は期待 きたい できない。本能 ほんのう 的 てき に嫌 きら う焦 こ げた匂 にお いがする忌避 きひ 剤 ざい も開発 かいはつ されている[ 21] [ 22] 。
愛媛 えひめ 県 けん の大三島 おおみしま では2000年代 ねんだい から海 うみ を渡 わた ってきたイノシシが繁殖 はんしょく し特産 とくさん のミカン 畑 はたけ に被害 ひがい が出 で ているが、11月から2月 がつ の狩猟 しゅりょう 期間 きかん では間 ま に合 あ わず特別 とくべつ な許可 きょか を得 え て通年 つうねん で駆除 くじょ を行 おこな い、特産 とくさん 品 ひん として販売 はんばい するなど産業 さんぎょう 化 か する動 うご きもある[ 53] 。有効 ゆうこう 利用 りよう できない場合 ばあい 、死骸 しがい は地面 じめん に穴 あな を掘 ほ って埋 う めたり、発酵 はっこう 槽 ふね に水 みず ・おがくず とともに入 い れて微生物 びせいぶつ による分解 ぶんかい で減 げん 容 よう したりして処理 しょり する必要 ひつよう があり、コストがかかる[ 54] 。産業 さんぎょう 廃棄 はいき 物 ぶつ として処理 しょり されることが多 おお い未 み 利用 りよう 部位 ぶい を炭化 たんか させた肥料 ひりょう も、石川 いしかわ 県 けん 羽咋 はくい 市 し の合同 ごうどう 会社 かいしゃ により生産 せいさん されている[ 55] 。
かつては農林水産省 のうりんすいさんしょう の補助 ほじょ 事業 じぎょう も行 おこな われたが、2009年 ねん の事業 じぎょう 仕分 しわ け (行政 ぎょうせい 刷新 さっしん 会議 かいぎ ) (WG3)に諮 はか られた際 さい に、「重要 じゅうよう な課題 かだい であるということは認識 にんしき しつつも、国 くに (が実施 じっし すべき事業 じぎょう )ではない。」[ 56] との意見 いけん が示 しめ され、2010年度 ねんど からは都道府県 とどうふけん に対 たい する交付 こうふ 金 きん となった。
耕作 こうさく 放棄 ほうき 地 ち の増加 ぞうか 、安易 あんい な除草 じょそう 剤 ざい の使用 しよう 、人工 じんこう 林 りん や竹林 ちくりん の放置 ほうち による手入 てい れ不足 ふそく など、人 ひと が中山 なかやま 間 あいだ 地域 ちいき に入 はい らなくなったことがイノシシ被害 ひがい を増加 ぞうか させるような報告 ほうこく が多数 たすう ある[ 57] [ 58] [ 59] [ 60] 。
人身 じんしん 被害 ひがい については雄 ゆう の鋭 するど い犬歯 けんし 、いわゆる牙 きば によるものが特 とく に危険 きけん である。鼻先 はなさき をしゃくり上 あ げるようにして牙 きば を用 もち いた攻撃 こうげき を行 おこな い、この時 とき に重要 じゅうよう な臓器 ぞうき や血管 けっかん を傷 きず つけられると、時 とき に致命傷 ちめいしょう となることもある[ 61] [ 62] 。嚙む力 りょく も強 つよ く、人 ひと の指 ゆび 程度 ていど なら嚙みちぎった例 れい が報告 ほうこく されている[ 63] 。突進 とっしん も脅威 きょうい である。
北海道 ほっかいどう では「豚 ぶた の放牧 ほうぼく 」が冬場 ふゆば にも行 おこな われ、足寄 あしょろ 町 まち ではイノブタ が野生 やせい 化 か し問題 もんだい となっている[ 64] 。1980年 ねん 頃 ごろ から足寄 あしょろ 町 まち でイノブタが飼育 しいく されるようになった。それらはほぼ放 はな し飼 が い状態 じょうたい で飼育 しいく されていたため脱走 だっそう し野生 やせい 化 か した。駆除 くじょ を試 こころ みたが元 もと の飼 か い主 ぬし が権利 けんり を主張 しゅちょう して駆除 くじょ が出来 でき なかった。1987年 ねん 頃 ごろ に農作物 のうさくもつ 被害 ひがい が深刻 しんこく 化 か して1988年 ねん に所有 しょゆう 者 しゃ が所有 しょゆう 権 けん を放棄 ほうき し、駆除 くじょ が開始 かいし され1991年 ねん 頃 ごろ に個体 こたい 数 すう が減少 げんしょう するも完全 かんぜん 駆除 くじょ にはいたっていない[ 65] 。
昔 むかし から世界 せかい 各地 かくち で狩猟 しゅりょう 対象 たいしょう となってきた。農作物 のうさくもつ を荒 あ らす個体 こたい 群 ぐん や人間 にんげん を加害 かがい した個体 こたい に対 たい しては、いわゆる「有害 ゆうがい 鳥獣 ちょうじゅう 」としての駆除 くじょ も行 おこな われている。
日本 にっぽん における近代 きんだい の伝統 でんとう 的 てき 狩猟 しゅりょう は晩秋 ばんしゅう から早春 そうしゅん にかけての狩猟 しゅりょう 期間 きかん に猟銃 りょうじゅう と犬 いぬ を使 つか って複数 ふくすう 人 じん で行 おこな う(いわゆる巻狩 まきがり )。この時期 じき のイノシシの寝床 ねどこ は山 やま の南側 みなみがわ 斜面 しゃめん で微 ほろ 地形 ちけい が小 しょう 尾根 おね となるような場所 ばしょ にあることが多 おお いといい、斜面 しゃめん の上 うえ に重点的 じゅうてんてき に人 ひと を配置 はいち し横 よこ 方向 ほうこう からの勢子 せこ や犬 いぬ による追 お い出 だ しで誘導 ゆうどう し銃 じゅう で仕留 しと める[ 66] 。ただし、近年 きんねん は猟師 りょうし の高齢 こうれい 化 か や減少 げんしょう により人数 にんずう を確保 かくほ できないことから、巻狩 まきがり ではなく罠 わな 猟 りょう が増 ふ えてきた。イノシシは警戒 けいかい 心 しん が強 つよ く、狩猟 しゅりょう 圧 あつ が高 たか まるにつれて生活 せいかつ リズムを昼 ひる 行 ぎょう 性 せい から夜行 やこう 性 せい に変 か えることが報告 ほうこく されており、夜 よる 間 あいだ 発 はつ 報 むくい できない猟銃 りょうじゅう よりもその点 てん でも有利 ゆうり である。罠 わな は通例 つうれい 、くくり罠 わな か箱 はこ 罠 わな を用 もち いる。箱 はこ 罠 わな は大型 おおがた で設置 せっち が大変 たいへん であり、また特 とく に成獣 せいじゅう は警戒 けいかい 心 しん が強 つよ く箱 はこ 罠 わな では捕獲 ほかく 率 りつ が下 さ がるといわれる[ 67]
。同 どう 一 いち 地域 ちいき における箱 はこ 罠 わな とくくり罠 わな ではくくり罠 わな で取 と れた個体 こたい の方 ほう が有意 ゆうい に大 おお きい[ 13] 。止 と めを刺 さ す場合 ばあい は箱 はこ 罠 わな の方 ほう がくくり罠 わな よりは安全 あんぜん であり、くくり罠 わな は止 と めを刺 さ すときに獲物 えもの が暴 あば れて事故 じこ が多 おお い。
罠 わな 猟 りょう の場合 ばあい 、目的 もくてき 外 がい の動物 どうぶつ が罠 わな にかかる錯誤 さくご 捕獲 ほかく の発生 はっせい が避 さ けられない。日本 にっぽん ではこの分野 ぶんや での議論 ぎろん や法 ほう 整備 せいび はクマがかかった場合 ばあい に幾 いく つかの規定 きてい がある程度 ていど で、他 た の動物 どうぶつ では進 すす んでいないことが指摘 してき されている[ 68] [ 69] 。縄文 じょうもん 時代 じだい でも落 お とし穴 あな などの罠 わな 猟 りょう 、もしくは追 お い込 こ み猟 りょう をしていた痕跡 こんせき が各地 かくち で見 み つかっている。
止 と めを刺 さ すのは銃 じゅう が普及 ふきゅう する前 まえ には刃物 はもの で行 おこな っていた。縄文 じょうもん 時代 じだい の発掘 はっくつ 物 ぶつ から推定 すいてい されるのは恐 おそ らく槍 やり だと見 み られる。ヨーロッパなどでは短剣 たんけん も使 つか われ、また槍 やり は馬 うま に乗 の った状態 じょうたい でも用 もち いていた。
犬 いぬ を使 つか うことは各地 かくち でよくみられる
鉄製 てつせい の箱 はこ 罠 わな (岐阜 ぎふ 県 けん )
木製 もくせい の箱 はこ 罠 わな (ポーランド)
くくり罠 わな (ドイツ)
知能 ちのう は高 たか く幼 よう 獣 じゅう から飼育 しいく するとよく懐 なつ き、芸 げい を仕込 しこ むこともできる。ブタはイノシシが家畜 かちく 化 か されたものである。
日本 にっぽん 列島 れっとう では縄文 じょうもん 時代 じだい にイノシシの飼養 しよう が行 おこな われていた[ 70] 。縄文 じょうもん 時代 じだい の遺跡 いせき からはイノシシの骨 ほね が出土 しゅつど しているが、弥生 やよい 時代 じだい に入 はい るとイノシシの他 ほか に骨 ほね の形状 けいじょう からブタだと考 かんが えられる骨 ほね の比率 ひりつ が急増 きゅうぞう している。また、日本 にっぽん 在来 ざいらい のイノシシとブタの中 なか 間 あいだ 的 てき な形態 けいたい の骨 ほね は出土 しゅつど していないことから、ブタは弥生 やよい 時代 じだい に、アジア大陸 たいりく から持 も ち込 こ まれたと考 かんが えられている。また、弥生 やよい 時代 じだい の遺跡 いせき から出土 しゅつど するイノシシ類 るい の骨 ほね は若 わか い個体 こたい が多 おお いため、弥生 やよい 時代 じだい に家畜 かちく 化 か されたブタ(弥生 やよい ブタ)が飼育 しいく されるようになったと考 かんが えられている[ 71] [ 72] 。
兵庫 ひょうご 県 けん の六甲山 ろっこうざん では野生 やせい のイノシシとの接触 せっしょく 機会 きかい が多 おお く、1960年代 ねんだい より登山 とざん 者 しゃ によって餌付 えづ け が行 おこな われるようになり、大 だい 規模 きぼ な餌付 えづ け場 じょう として「芦屋 あしや イノシシ村 むら 」が作 つく られるなど、六甲 ろっこう 山系 さんけい 全体 ぜんたい でイノシシに対 たい して餌付 えづ けが行 おこな われたが、人馴 ひとな れしたイノシシによるトラブルが増加 ぞうか し、2002年 ねん に神戸 こうべ 市 し は全国 ぜんこく で初 はじ めてイノシシへの給餌 きゅうじ などを禁止 きんし したイノシシ条例 じょうれい を制定 せいてい した[ 73] 。
参考 さんこう に畜産 ちくさん 総合 そうごう 事典 じてん (1997)に記載 きさい のブタ肥育 ひいく 中 ちゅう 個体 こたい の飼料 しりょう および注意 ちゅうい 点 てん は以下 いか の通 とお りである。肥育 ひいく の飼料 しりょう は濃厚 のうこう 飼料 しりょう を中心 ちゅうしん に、風 ふう 乾 いぬい 重量 じゅうりょう 比 ひ でトウモロコシ 種子 しゅし を5から6、ソルガム 種子 しゅし を3から2、ダイズ の絞 しぼ り粕 かす を1、その他 た 飼料 しりょう およびビタミン と微量 びりょう 元素 げんそ 類 るい を1程度 ていど とする。トウモロコシや魚粉 ぎょふん は与 あた えすぎると黄色 おうしょく 脂肪 しぼう 症 しょう を発症 はっしょう し肉質 にくしつ が落 お ちる。また、肉 にく のタンパク質 たんぱくしつ の増加 ぞうか よりも脂肪 しぼう の増加 ぞうか 速度 そくど の方 ほう が早 はや く、極度 きょくど に脂肪 しぼう を厚 あつ くさせないために、適当 てきとう なところで出荷 しゅっか する[ 74] 。ただし、繁殖 はんしょく 用 よう の雌 めす などは粗 そ 飼料 しりょう を多 おお めに、これとはかなり違 ちが う割合 わりあい の飼料 しりょう で飼育 しいく する。なお、ブタの出荷 しゅっか 時 じ の体重 たいじゅう については通例 つうれい 100kgから120kg程度 ていど が多 おお い。
ダニが付 つ いていることが多 おお く、ダニを介 かい したいくつかの人 ひと 獣 じゅう 共通 きょうつう 感染 かんせん 症 しょう が知 し られる。南西諸島 なんせいしょとう ではダニ個体 こたい 群 ぐん の維持 いじ にはイノシシの存在 そんざい が大 おお きいと見 み られている[ 75] 。近 きん 縁 えん のブタは日本脳炎 にほんのうえん を媒介 ばいかい することで知 し られるが、イノシシについてはよくわかっていない。
肉 にく や内臓 ないぞう の生食 なましょく はトキソプラズマ [ 76] [ 77] や肝炎 かんえん [ 78] 、肺 はい 吸虫[ 79] 、マンソン裂 きれ 頭 あたま 条 じょう 虫 ちゅう などの感染 かんせん リスクがあるとして世界 せかい 各地 かくち の保健 ほけん 当局 とうきょく が注意 ちゅうい を呼 よ び掛 か けている。
沖縄 おきなわ 県 けん は病原 びょうげん 性 せい スピロヘータ による人間 にんげん のレプトスピラ症 しょう の発症 はっしょう が多 おお い地域 ちいき として知 し られているが、保菌 ほきん 動物 どうぶつ としてはよく知 し られているネズミの他 ほか にイノシシ、ジャワマングースなどが重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たしていると見 み られている[ 80] [ 81] 。なお、一部 いちぶ のレプトスピラはブタの流産 りゅうざん を引 ひ き起 お こすことが報告 ほうこく されている[ 82] 。その他 ほか にも人 じん 獣 じゅう 共通 きょうつう 感染 かんせん 症 しょう がいくつかあり、上村 うえむら ら(2020)の総説 そうせつ に詳 くわ しい[ 83] 。
重要 じゅうよう な産業 さんぎょう 動物 どうぶつ であるブタと極 きわ めて近 きん 縁 えん であることから、ブタに病気 びょうき を媒介 ばいかい することがありこちらの方面 ほうめん もよく研究 けんきゅう されている。日本 にっぽん の家畜 かちく 伝染 でんせん 病 びょう 予防 よぼう 法 ほう (昭和 しょうわ 26年 ねん 法律 ほうりつ 第 だい 166号 ごう )には家畜 かちく 伝染 でんせん 病 びょう と届出 とどけで 伝染 でんせん 病 びょう 合 あ わせてブタが関係 かんけい するものが約 やく 15種類 しゅるい あるが、すべてブタとイノシシがまとまって指定 してい されている。特 とく にブタに致死 ちし 性 せい の豚 ぶた 熱 ねつ (classical swine fever, CSF, 旧称 きゅうしょう :豚 ぶた コレラ)、さらに危険 きけん なアフリカ豚 ぶた 熱 ねつ (African swine fever, ASF, 旧称 きゅうしょう アフリカ豚 ぶた コレラ)は感染 かんせん が発覚 はっかく すると全 ぜん 頭 あたま 殺 ころせ 処分 しょぶん が基本 きほん であり、養豚 ようとん 業者 ぎょうしゃ には大 おお きな脅威 きょうい になっている。このうち豚 ぶた 熱 ねつ は日本 にっぽん では明治 めいじ 時代 じだい から100年 ねん ほど流行 りゅうこう したものの1990年代 ねんだい にいったん根絶 こんぜつ した。しかし2018年 ねん に岐阜 ぎふ 県 けん から始 はじ まった流行 りゅうこう では初期 しょき の封 ふう じ込 こ めに失敗 しっぱい し野生 やせい のイノシシにも感染 かんせん が拡大 かくだい した結果 けっか 、2024年 ねん 現在 げんざい も終息 しゅうそく の見通 みとお しが立 た っていない。
牙 きば や毛皮 けがわ は利用 りよう できる。イノシシの牙 きば は象牙 ぞうげ に比 くら べるとかなり小 ちい さいために用途 ようと は限 かぎ られるが、島根 しまね 県 けん 西部 せいぶ で作 つく られた根付 ねつけ には、イノシシの牙 きば で作 つく られたものがある[ 84] 。
古代 こだい ギリシャには多数 たすう のイノシシの牙 きば を集 あつ めて作 つく った兜 かぶと があった。兜 かぶと そのもののほか、これを頭 あたま に被 こうむ った人 ひと を掘 ほ った石像 せきぞう なども見 み つかっている。
イノシシの牙 きば 製 せい の根付 ねつけ
組 く み合 あ わせ方 かた が違 ちが うタイプ
インドを中心 ちゅうしん にアジア圏 けん ではイノシシを神格 しんかく 化 か することがしばしば見 み られ、ヒンドゥー教 きょう のヴァラーハ 、仏教 ぶっきょう の摩利 まり 支 ささえ 天 てん 、ゾロアスター教 きょう のウルスラグナ などではイノシシが神 かみ そのもの、もしくは神 かみ の使 つか いとして扱 あつか われる。武神 ぶしん として描 えが かれることも多 おお い。日本 にっぽん でも狛 こま 猪 いのしし は神 かみ 使 し の一 ひと つとされ、護 まもる 王 おう 神社 じんじゃ を始 はじ め多 おお くの神社 じんじゃ に祀 まつ られており、猪子石 いのこいし の猪子石 いのこいし 神社 じんじゃ と大石 おおいし 神社 じんじゃ のように安産 あんざん や子孫 しそん 繁栄 はんえい など多産 たさん と関連 かんれん する御利益 ごりやく がみられる。亥 い の子 こ は、日本 にっぽん の俳句 はいく 文化 ぶんか において冬 ふゆ の季語 きご である。花札 はなふだ では七 なな 月 がつ の表現 ひょうげん に「萩 はぎ と猪 いのしし 」として描 えが かれている[ 85] 。「猪目 いのめ 」という文様 もんよう があり、火 ひ 伏 ぶ せや魔除 まよけ けの効果 こうか があるとされ、古墳 こふん 時代 じだい から武具 ぶぐ の装飾 そうしょく に用 もち いられたほか、神社 じんじゃ を初 はじ めとした建築 けんちく 物 ぶつ にも使 つか われいる[ 86] 。
十二支 じゅうにし の12番目 ばんめ は亥年 いどし がイノシシである。ただし、これは日本 にっぽん のみであり、他 た の中華 ちゅうか 文化 ぶんか 圏 けん においてはブタとなる。
狩猟 しゅりょう 採集 さいしゅう 生活 せいかつ では崇 あが められていたと考 かんが えられ、縄文 じょうもん 時代 じだい の遺跡 いせき からはしばしばイノシシの紋様 もんよう や土器 どき が見 み つかる。これに対 たい して日本 にっぽん ではシカを象 かたど ったと思 おも われる土器 どき は極 きわ めて少 すく なく、両者 りょうしゃ の違 ちが いは研究 けんきゅう 者 しゃ の興味 きょうみ を集 あつ めてきた。逆 ぎゃく に弥生 やよい 時代 じだい 以降 いこう の銅鐸 どうたく はシカの絵 え が多 おお い。
八ヶ岳 やつがたけ 山麓 さんろく の金生 きんせい 遺跡 いせき からは100体 たい 以上 いじょう ものイノシシの下 しも 顎骨 がっこつ が発見 はっけん され、大半 たいはん が幼 よう 獣 じゅう の骨 ほね であり全 すべ てが火 ひ で焼 や かれていた。食用 しょくよう の可能 かのう 性 せい もあるが、何 なん らかの祭祀 さいし に関 かか わる遺物 いぶつ である説 せつ もある。また、これだけ多 おお くの幼 よう 獣 じゅう が一 いち か所 しょ で見 み つかるという事 こと は、幼 よう 獣 じゅう を手 て に入 い れるために飼養 しよう され、馴化 じゅんか していたと推測 すいそく されている[ 87] [ 88] 。北海道 ほっかいどう には生息 せいそく しないとされるイノシシの幼 よう 獣 じゅう (瓜 ふり 坊 ぼう )の土偶 どぐう が、道 みち 南 みなみ の恵山 えさん 町 まち (現 げん :函館 はこだて 市 し )にある日ノ浜 ひのはま 遺跡 いせき から出土 しゅつど したり、道内 どうない 各地 かくち からイノシシの骨 ほね や骨 ほね 牙 きば の加工 かこう 品 ひん が見 み つかったりするなど、本州 ほんしゅう と北海道 ほっかいどう の縄文 じょうもん 人 じん に交易 こうえき 活動 かつどう があったと推測 すいそく される[ 89] 。宮崎 みやざき 県 けん 中央 ちゅうおう 部 ぶ にはイノシシの首 くび を供物 くもつ として捧 ささ げる神楽 かぐら が伝 つた わっており[ 90] 、狩猟 しゅりょう 採集 さいしゅう 時代 じだい の風習 ふうしゅう を残 のこ している重要 じゅうよう 無形 むけい 民俗 みんぞく 文化財 ぶんかざい 「米良 めら の神楽 かぐら 」として指定 してい された。
農耕 のうこう が始 はじ まった弥生 やよい 時代 じだい になると雰囲気 ふんいき が変 か わり、遺跡 いせき からはイノシシの絵柄 えがら を用 もち いた土器 どき は多 おお くは出土 しゅつど していない。しかし、佐賀 さが 県 けん 唐津 からつ 市 し の菜畑 なばた 遺跡 いせき からは穴 あな の開 あ けられたイノシシ(ブタ)の下 しも 顎 あご の骨 ほね に棒 ぼう を通 とお したものが見 み つかり、骨 ほね の周 まわ りからは朱 しゅ 塗 ぬ りの土器 どき が見 み つかっている[ 71] 。岡山 おかやま 市 し の南方 なんぽう 遺跡 いせき からはイノシシ(ブタ)の下 しも 顎 あご が12個 こ が整然 せいぜん と並 なら べられているのがみつかるなど、弥生 やよい 時代 じだい にもイノシシ(ブタ)が祭 まつ りや儀式 ぎしき 、魔 ま よけに使 つか われていたと考 かんが えられている[ 91] 。三重 みえ 県 けん 伊勢 いせ 市 し の伊 い 我 わが 理 り 神社 じんじゃ の祭神 さいじん 「伊 い 我利 がり 比 ひ 女 おんな 命 いのち 」(いがりひめのみこと)は、その名 な の由来 ゆらい が「猪狩 いかり 」であり、五穀 ごこく を食 く い荒 あ らすイノシシを狩 か る女神 めがみ だとされている[ 92] 。ヨーロッパにも同 おな じような話 はなし があり、神 かみ の怒 いか りの象徴 しょうちょう やイノシシを狩 か る田 た の神 かみ のような神話 しんわ が発生 はっせい したとされる。ギリシャ神話 しんわ の狩猟 しゅりょう の神 かみ であるアルテミス は人間 にんげん への怒 いか りとしてパイア 、カリュドーンの猪 いのしし やエリュマントスの猪 いのしし など巨大 きょだい なイノシシを放 はな った。狩猟 しゅりょう 採集 さいしゅう 社会 しゃかい と違 ちが い、農耕 のうこう 社会 しゃかい では田畑 たはた を荒 あ らす害 がい 獣 じゅう として扱 あつか われていたことがうかがえる。
日本 にっぽん では大国 たいこく 主 ぬし の神話 しんわ において八 はち 上 うえ 比 ひ 売 うり に求婚 きゅうこん する大 だい 国主 こくしゅ を殺 ころ そうとした八十神 やそがみ が赤 あか い猪 いのしし を捕 と らえるように命令 めいれい する話 はなし があり、赤 あか 猪 いのしし 岩 がん 神社 じんじゃ がこの舞台 ぶたい とされる。日本 にっぽん 神話 しんわ 最大 さいだい の英雄 えいゆう ヤマトタケル は古事記 こじき には白 しろ 猪 いのしし に化身 けしん した山神 さんじん の怒 いか りに触 ふ れて命 いのち を落 お としたとある(ただし日本書紀 にほんしょき では蛇 へび 神 しん )。ヨーロッパではカヴァス によるトゥルッフ・トゥルウィス などイノシシを仕留 しと める狩猟 しゅりょう 伝説 でんせつ がある。
ウリ坊 ぼう をたくさん引 ひ き連 つ れて群 む れで行動 こうどう する様 よう から、多産 たさん と子孫 しそん 繁栄 はんえい の象徴 しょうちょう にイノシシやブタを当 あ てることは各地 かくち で見 み られる。
イスラム教 いすらむきょう やユダヤ教 きょう ではイノシシは豚 ぶた と同等 どうとう の扱 あつか いを受 う け、不浄 ふじょう のものとされている。これらの宗教 しゅうきょう の厳格 げんかく な信仰 しんこう 者 しゃ はこの肉 にく を食 た べない。
西遊 せいゆう 記 き に登場 とうじょう する半 はん 獣 しし 半 はん 人 にん のキャラクター「猪八戒 ちょはっかい 」は字 じ は猪 いのしし だが、中国 ちゅうごく では猪 いのしし =ブタ、野猪 やちょ =イノシシでありブタのイメージで描 えが かれることが多 おお い。
身近 みぢか な動物 どうぶつ として世界 せかい 各地 かくち で絵画 かいが 、木工 もっこう 、金属 きんぞく 工芸 こうげい などが見 み られる。
壁画 へきが (イラク)
野猪 やちょ (
石川 いしかわ 光明 こうめい 作 さく 、1912
年 ねん )
狛 こま 猪 いのしし (京都 きょうと 府 ふ )
日本 にっぽん には古 ふる くから生息 せいそく しているため様々 さまざま な諺 ことわざ がある。
禁 きん を犯 おか して一時 いちじ 的 てき に良 よ い思 おも いをしても、後 あと で必 かなら ずそれ相応 そうおう の悪 わる い報 むく いを受 う けるという意味 いみ 。
イノシシ肉 にく をよく食 た べる兵庫 ひょうご 県 けん 丹波 たんば 篠山 しのやま 市 し では、本当 ほんとう は「しし食 く うて温 あつし (ぬく)い」で、いのししを食 た べると精力 せいりょく がつき、体 からだ が温 あたた まるという意味 いみ だが、他人 たにん 様 さま には食 た べさせたくないので、「しし食 ぐ った報 むく い」と言 い うという説 せつ があることを紹介 しょうかい している[ 93] 。
鹿 しか 肉 にく も「しし」と言 い うことがあり、いのししにかぎらず、獣肉 じゅうにく を食 た べると障 ざわ りがあるという意味 いみ だとも言 い われている。
「ちょとつもうしん」と読 よ み、一 ひと つの物事 ものごと に対 たい して、猛烈 もうれつ な勢 いきお いで一直線 いっちょくせん に突 つ き進 すす むことを指 さ す。前述 ぜんじゅつ のように実際 じっさい の生態 せいたい とはやや異 こと なる。
読 よ みは「いのししむしゃ」。進 すす むことだけを考 かんが え、退 しりぞ くことを知 し らない武者 むしゃ すなわち武士 ぶし (ひいては人物 じんぶつ 全般 ぜんぱん )を指 さ す。浅慮 せんりょ ぶりが含意 がんい される表現 ひょうげん なので、あまり良 よ い意味 いみ では用 もち いられない。
地域 ちいき 的 てき な個体 こたい 群 ぐん 等 とう で保護 ほご が行 おこな われているものがある。絶滅 ぜつめつ のおそれのある地域 ちいき 個体 こたい 群 ぐん (環境省 かんきょうしょう レッドリスト ):徳之島 とくのしま のリュウキュウイノシシ個体 こたい 群 ぐん は鹿児島 かごしま 県 けん 版 ばん レッドデータブックで絶滅 ぜつめつ 危惧 きぐ II類 るい 、徳之島 とくのしま の個体 こたい 群 ぐん :絶滅 ぜつめつ 危惧 きぐ I類 るい 、沖縄 おきなわ 県 けん 版 ばん レッドデータブックでは情報 じょうほう 不足 ふそく
Mammal Species of the World, 3rd edition によれば、イノシシには16の亜種 あしゅ が確認 かくにん されている[ 94] 。ただしこの資料 しりょう はブタを扱 あつか っていない。西洋 せいよう 種 しゅ と東洋 とうよう 種 しゅ は亜種 あしゅ ではなく別種 べっしゅ 扱 あつか いする説 せつ もあるが、本 ほん 項 こう では亜種 あしゅ 説 せつ で記述 きじゅつ する。
Sus scrofa algira
アルジェリア 周辺 しゅうへん でみられる北 きた アフリカ亜種 あしゅ 。ヨーロッパ産 さん 基 もと 亜種 あしゅ に含 ふく める説 せつ もある。基 もと 亜種 あしゅ より小型 こがた 。
Sus scrofa attila
ウクライナ 及 およ び周辺 しゅうへん 国 こく でみられる東欧 とうおう 亜種 あしゅ 。基 もと 亜種 あしゅ より体 からだ が大 おお きく、毛色 けいろ は明 あか るい色合 いろあ いである。
Sus scrofa cristatus
インド亜種 あしゅ 。長 なが いたてがみを持 も つ。
Sus scrofa davidi
パキスタン 亜種 あしゅ 。
Sus scrofa leucomystax - ニホンイノシシ
日本 にっぽん 亜種 あしゅ 。やや小型 こがた で毛色 けいろ は黄 き 色味 いろみ が混 こん じる褐色 かっしょく
Sus scrofa libycus
Sus scrofa majori
Sus scrofa meridionalis
スペイン亜種 あしゅ 。シチリア、コルシカにも分布 ぶんぷ 。たてがみを欠 か く。
Sus scrofa moupinensis
ベトナム 亜種 あしゅ 。中国 ちゅうごく 南西 なんせい 部 ぶ にも分布 ぶんぷ 。
Sus scrofa nigripes
中央 ちゅうおう アジア亜種 あしゅ 。モンゴル
Sus scrofa riukiuanus - リュウキュウイノシシ
Sus scrofa scrofa
基本 きほん 亜種 あしゅ 。中 ちゅう 欧 おう から西欧 せいおう にかけて分布 ぶんぷ する。
Sus scrofa sibiricus
ロシアのバイカル湖 こ 周辺 しゅうへん 亜種 あしゅ 。亜種 あしゅ の中 なか では最 もっと も小型 こがた 。
Sus scrofa taivanus
台湾 たいわん 亜種 あしゅ 。
Sus scrofa ussuricus
ウスリー満州 まんしゅう 亜種 あしゅ 。中国 ちゅうごく 北東 ほくとう 部 ぶ に分布 ぶんぷ する。
Sus scrofa vittatus
マレ まれ ー半島 はんとう 、インドネシア亜種 あしゅ 。
学名 がくめい は「Sus scrofa 」であり、「Sus (イノシシ属 ぞく )」+「scrofa (雌 めす 豚 ぶた )」という意味 いみ でリンネ による命名 めいめい である。ウシ やウマ など他 た の家畜 かちく の学名 がくめい では野生 やせい 種 しゅ より前 まえ に家畜 かちく 種 しゅ に命名 めいめい されている例 れい が多々 たた あり、先取 せんしゅ 権 けん の点 てん から問題 もんだい となった(審議 しんぎ 会 かい の強権 きょうけん により解決 かいけつ された)が、イノシシとブタの間 あいだ ではそのような問題 もんだい は起 お きなかった。なおブタの学名 がくめい は「Sus scrofa domesticus 」であり、「domesticus (家畜 かちく の)」と家畜 かちく 化 か されていることが強調 きょうちょう されている。
英語 えいご では boar であるが、「去勢 きょせい していない雄 お 豚 ぶた 」という意味 いみ で使 つか われることもあるため[ 95] 、区別 くべつ するために wild boar や wild pig とも呼 よ ばれる。
日本語 にほんご の古 ふる い大和言葉 やまとことば では「ヰ(イ)」と呼 よ んだ。イノシシは「ヰ(猪 いのしし )のシシ(肉 にく )」が語源 ごげん であり、シシは大和言葉 やまとことば で「肉 にく 」を意味 いみ する(「ニク」は音読 おんよ み の呉音 ごおん )。現代 げんだい 中国 ちゅうごく 語 ご では、「猪 いの (豬 / 猪 いのしし )」の漢字 かんじ は主 おも にブタ の意味 いみ で用 もち いられており、イノシシは「野猪 やちょ (野 の 豬 / 野猪 やちょ )」と呼 よ んで区別 くべつ する。同様 どうよう に、朝鮮 ちょうせん 語 ご の固有 こゆう 語 ご においても「豚 ぶた 」は「テジ(돼지 、dwaeji / twaeji )」、イノシシは「メッテジ(멧돼지 、metdwaeji / mettwaeji )」と接頭 せっとう 辞 じ で区別 くべつ される。
沖縄 おきなわ 方言 ほうげん ではヤマシシ[ 96] またはヤマンシー[ 97] と呼 よ ばれる。奄美 あまみ 方言 ほうげん では「シシ」と呼 よ ばれ[ 98] 、西表島 いりおもてじま では「カマイ」と呼 よ ばれる
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