ニタリクジラ (似 に 鯨 くじら 、学名 がくめい :Balaenoptera brydei )は、鯨 くじら 偶蹄 ぐうてい 目 め ナガスクジラ科 か に属 ぞく するヒゲクジラ の一種 いっしゅ である。
Rosel et al. (2021) によるミトコンドリアDNAに基 もと づくナガスクジラ科 か の系統 けいとう 図 ず (太字 ふとじ はニタリクジラ種 しゅ 群 ぐん )[2]
本 ほん 種 たね を中心 ちゅうしん とした「Bryde's Whale complex [注 ちゅう 2] 」には、本 ほん 種 たね とカツオクジラ をはじめ合計 ごうけい で3種 しゅ または4種 しゅ 以上 いじょう が存在 そんざい するとされている。これらを同 どう 一種 いっしゅ とする分類 ぶんるい もある[3] 。
元々 もともと はイワシクジラ と混同 こんどう されていた為 ため 、分類 ぶんるい されるまでは、イワシクジラとして捕鯨 ほげい されていた。日本 にっぽん において前述 ぜんじゅつ のカツオと群 む れる習性 しゅうせい からカツオクジラとも呼 よ ばれ、その別名 べつめい がついている。ただし、カツオクジラ の和名 わみょう は元々 もともと は混同 こんどう されていたイワシクジラの別名 べつめい であり、これは混同 こんどう されていた「Balaenoptera edeni 」の和名 わみょう になった。
ツノシマクジラ も沿岸 えんがん 型 がた ニタリクジラと似 に ており、それまでは混同 こんどう されていたとみられている。他 た にツノシマクジラとともに従来 じゅうらい ニタリクジラの東シナ海 ひがししなかい 系 けい 群 ぐん とされていたクジラもカツオクジラ もニタリクジラから分類 ぶんるい する意見 いけん もあり、高知 こうち 県 けん でホエールウォッチング の対象 たいしょう になっている「ニタリクジラ」もカツオクジラである可能 かのう 性 せい がある[4] 。
メキシコ湾 わん に定住 ていじゅう する地方 ちほう 個体 こたい 群 ぐん は、2021年 ねん にライスクジラ (英語 えいご 版 ばん )として新種 しんしゅ として分類 ぶんるい されたが、推定 すいてい 生息 せいそく 数 すう が50頭 とう 前後 ぜんこう と絶滅 ぜつめつ の危機 きき に瀕 ひん している[5] 。
遺伝子 いでんし 解析 かいせき の結果 けっか は、最 もっと も近 きん 縁 えん なのがイワシクジラであり、次 つ いでカツオクジラ、ツノシマクジラと遠 とお くなる。またシロナガスクジラ もこのグループと単 たん 系統 けいとう を形成 けいせい する[6] [7] 。
宮古島 みやこじま にて発掘 はっくつ された鮮新世 よ の化石 かせき はニタリクジラに近 きん 縁 えん だとされており、「シマジリクジラ」として宮古島 みやこじま 市 し の天然記念物 てんねんきねんぶつ に指定 してい されている[8] 。
人間 にんげん との比較 ひかく
イワシクジラ の近 きん 縁 えん 種 しゅ であるが、吻(ふん)の上面 うわつら の左右 さゆう 両側 りょうがわ に吻端から鼻孔 びこう 付近 ふきん にかけて各 かく 1条 じょう の隆起 りゅうき 線 せん があること、畝 うね (うね)が長 なが く先端 せんたん がへそに達 たっ していること、クジラヒゲ が短 みじか くて幅 はば が広 ひろ いこと、ひげ毛 げ が太 ふと いことなどで、外形 がいけい 的 てき に区別 くべつ される。
体長 たいちょう もイワシクジラよりやや小 ちい さく、最大 さいだい 15.5メートル [9] 程 ほど である。
ニタリクジラはかつて南 みなみ アフリカ沿岸 えんがん にだけ生息 せいそく するとされていたが、第 だい 二 に 次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん 後 ご 、小笠原諸島 おがさわらしょとう 周辺 しゅうへん で発見 はっけん され、北 きた 太平洋 たいへいよう にも広 ひろ く分布 ぶんぷ することが判明 はんめい した。国際 こくさい 捕鯨 ほげい 委員 いいん 会 かい は1970年 ねん に捕鯨 ほげい 条約 じょうやく の付表 ふひょう を修正 しゅうせい して、本 ほん 種 たね とイワシクジラを別種 べっしゅ として扱 あつか うこととした。南 みなみ アフリカ沿岸 えんがん では沿岸 えんがん 型 がた と遠洋 えんよう 型 がた の二 ふた つの型 かた があり、外形 がいけい 的 てき にも生態 せいたい 的 てき にも、若干 じゃっかん の差 さ が認 みと められている。
ブリーチング(英語 えいご 版 ばん )
本 ほん 種 たね が主食 しゅしょく とする小 しょう 魚 さかな はカツオ などの大型 おおがた 回遊 かいゆう 魚 ぎょ の餌 えさ でもあり、本 ほん 種 たね のいる海域 かいいき には大型 おおがた 回遊 かいゆう 魚 ぎょ の群 む れがいる可能 かのう 性 せい も高 たか くなる。
また、カツオには鯨 くじら につく事 こと でカジキから身 み を護 まも るメリットがあり、本 ほん 種 しゅ や近 きん 縁 えん のカツオクジラ は1個 いっこ 体 からだ で一 ひと つの小 ちい さな生態 せいたい 系 けい を形作 かたちづく る。こういった点 てん から水産庁 すいさんちょう の加藤 かとう 秀弘 ひでひろ に共生 きょうせい 関係 かんけい が指摘 してき されている(えびす の項 こう も参照 さんしょう )。尚 なお 、これらの群 む れは「鯨 くじら 付 つ き」と呼 よ ばれ、漁業 ぎょぎょう の際 さい には本 ほん 種 たね を探 さが す事 こと もある。
ザトウクジラ 等 ひとし と比較 ひかく すると、本 ほん 種 たね やカツオクジラ 等 ひとし は活発 かっぱつ な海面 かいめん 行動 こうどう を見 み せる機会 きかい は控 ひか えめだが、イワシクジラ 等 ひとし の自身 じしん よりも大型 おおがた のナガスクジラ科 か よりはブリーチング(英語 えいご 版 ばん )などを見 み せる傾向 けいこう が強 つよ い。
カリブ海 かりぶかい では「バブルネット・フィーディング 」またはそれに近 ちか い採 と 餌 えさ 方法 ほうほう を行 おこな うことが確認 かくにん されている[10] 。
サンパウロ州 しゅう ・イリャベラ島 とう のカステリャノス湾 わん にて。
カツオクジラ ・ライスクジラ(英語 えいご 版 ばん )・ツノシマクジラ と同様 どうよう に概 がい して暖海 だんかい 性 せい であり、北緯 ほくい 40度 ど と南緯 なんい 40度 ど の間 あいだ の、水温 すいおん 20℃以上 いじょう の海 うみ に広 ひろ く分布 ぶんぷ するが、カツオクジラより遠洋 えんよう に棲息 せいそく する場合 ばあい も多 おお く、また、亜寒帯 あかんたい に達 たっ する事 こと もあり、カツオクジラやライスクジラよりも北方 ほっぽう への回遊 かいゆう が見 み られる場合 ばあい もある。しかし、概 がい して他 た の大 だい 多数 たすう のヒゲクジラ 類 るい と比較 ひかく すると回遊 かいゆう の程度 ていど は限定 げんてい 的 てき である。
カツオクジラやライスクジラと同様 どうよう に、大 だい 規模 きぼ な回遊 かいゆう を行 おこな わずに特定 とくてい の沿岸 えんがん 域 いき や大陸棚 たいりくだな に定住 ていじゅう している個体 こたい 群 ぐん も存在 そんざい しており、ニュージーランド ・オークランド の沿岸 えんがん のハウラキ湾 わん (英語 えいご 版 ばん )やベイ・オブ・アイランズ (英語 えいご 版 ばん )やベイ・オブ・プレンティ地方 ちほう [11] 、ブラジル のサンパウロ州 しゅう やリオデジャネイロ州 しゅう [12] 、マデイラ諸島 しょとう やカナリア諸島 かなりあしょとう 、南 みなみ アフリカ の沿岸 えんがん 等 とう に分布 ぶんぷ する個体 こたい 群 ぐん がとくに知 し られている。
人間 にんげん との関係 かんけい [ 編集 へんしゅう ]
本 ほん 種 たね が現在 げんざい も直面 ちょくめん する商業 しょうぎょう 捕鯨 ほげい 以外 いがい の人間 にんげん による脅威 きょうい としては、混 こん 獲 え 、船舶 せんぱく との衝突 しょうとつ 、ゴミの誤 あやま 飲 いん 、環境 かんきょう 汚染 おせん 、「混 こん 獲 え 」と称 しょう した意図 いと 的 てき な捕獲 ほかく 、密猟 みつりょう などが存在 そんざい し[13] 、保護 ほご 対象 たいしょう である南半球 みなみはんきゅう の個体 こたい 群 ぐん に該当 がいとう する肉 にく がシロナガスクジラ などの他 ほか の保護 ほご 対象 たいしょう 種 しゅ と共 とも に日本 にっぽん の市場 いちば から発見 はっけん されたこともある[14] 。
なお、日本 にっぽん 列島 れっとう でも鯨 くじら 類 るい と人間 にんげん の関係 かんけい には捕鯨 ほげい だけでなく、クジラを神聖 しんせい 視 し して捕鯨 ほげい を禁止 きんし する風潮 ふうちょう も強 つよ かった とされている。
日本 にっぽん 国内 こくない では、本 ほん 種 しゅ はカツオクジラ だけでなく他 ほか のナガスクジラ科 か との混同 こんどう が著 いちじる しかった可能 かのう 性 せい があり、さらに、捕鯨 ほげい 業者 ぎょうしゃ による不正 ふせい 捕獲 ほかく が横行 おうこう していた可能 かのう 性 せい が指摘 してき されている[15] 。
本 ほん 種 しゅ は「ボン条約 じょうやく 」の保護 ほご 対象 たいしょう 種 しゅ に指定 してい されている[16] が、後述 こうじゅつ の通 とお り、日本 にっぽん は2024年 ねん 現在 げんざい も捕獲 ほかく 対象 たいしょう としている。
2019年 ねん 7月 がつ の日本 にっぽん の商業 しょうぎょう 捕鯨 ほげい 再開 さいかい に際 さい し、本 ほん 種 しゅ は捕獲 ほかく 対象 たいしょう となり、水産庁 すいさんちょう は年間 ねんかん 捕獲 ほかく 枠 わく を187頭 とう と設定 せってい している[17] 。他 た にミンククジラ ・イワシクジラ も捕獲 ほかく 対象 たいしょう となっているが、頭数 とうすう ・鯨 くじら 体 たい の大 おお きさ・得 え られる肉 にく の量 りょう から、当面 とうめん 日本 にっぽん で流通 りゅうつう する鯨 くじら 肉 にく はニタリクジラ肉 にく が中心 ちゅうしん となる。
^ a b c 田島 たじま 木綿子 ゆうこ ・山田 やまだ 格 かく 総 そう 監修 かんしゅう 「海 うみ 棲哺乳類 ほにゅうるい 種 しゅ 名 めい 表 ひょう 」『海 うみ 棲哺乳類 ほにゅうるい 大全 たいぜん :彼 かれ らの体 からだ と生 い き方 かた に迫 せま る』緑 みどり 書房 しょぼう 、2021年 ねん 、341-343頁 ぺーじ 。
^ Patricia E. Rosel, Lynsey A. Wilcox, Tadasu K. Yamada & Keith D. Mullin, “A new species of baleen whale (Balaenoptera) from the Gulf of Mexico, with a review of its geographic distribution ,” Marine Mammal Science , Volume 37, Issue 2, Society for Marine Mammalogy, 2021, Pages 577-610.
^ 谷戸 たにと 崇 たかし ・岡部 おかべ 晋 すすむ 也・池田 いけだ 悠 ゆう 吾 われ ・本川 ほんがわ 雅治 まさはる 「Illustrated Checklist of the Mammals of the Worldにおける日本 にっぽん 産 さん 哺乳類 ほにゅうるい の種 たね 分類 ぶんるい の検討 けんとう 」『タクサ:日本 にっぽん 動物 どうぶつ 分類 ぶんるい 学会 がっかい 誌 し 』第 だい 53巻 かん (号 ごう )、日本 にっぽん 動物 どうぶつ 分類 ぶんるい 学会 がっかい 、2022年 ねん 、31-47頁 ぺーじ 。
^ 高知新聞 こうちしんぶん , 2020年 ねん , 「実 じつ は「カツオクジラ」だった!? 分類 ぶんるい 学 がく の最前線 さいぜんせん 土佐湾 とさわん ニタリと違 ちが うDNA「別種 べっしゅ 」学説 がくせつ 有力 ゆうりょく に」
^ A petition to list the Gulf of Mexico Bryde’s whale (Balaenoptera edeni) as endangered underthe Endangered Species Act
^ 中央 ちゅうおう 水 すい 研 けん ニュースNo.34
^ 雑記 ざっき - 進化 しんか ・分類 ぶんるい 学 がく ヒゲクジラの系統 けいとう も SINE 法 ほう で〆(2006.08.01)
^ 宮古島 みやこじま 市 し , 名勝 めいしょう ・天然記念物 てんねんきねんぶつ
^ 図鑑 ずかん /世界 せかい の鯨 くじら 類 るい 8
^ Kot, B. W., Sears, R., Zbinden, D., Borda, E., & Gordon, M. S. (2014). “Rorqual whale (Balaenopteridae) surface lunge feeding behaviors: Standardized classification, repertoire diversity, and evolutionary analyses”. Marine Mammal Science 30 (4): 1335–1357. doi :10.1111/mms.12115 .
^ Bryde's Whales in the Hauraki Gulf
^ ViralHog. “Aerial Footage Of Bryde's Whale Feeding, Arraial Do Cabo, Rio De Janeiro, Brazil ”. Pond5(英語 えいご 版 ばん ) . 2023年 ねん 12月28日 にち 閲覧 えつらん 。
^ 環境庁 かんきょうちょう 自然 しぜん 保護 ほご 局 きょく (1998年 ねん 3月 がつ ). “セミクジラ ”. 生物 せいぶつ 多様 たよう 性 せい センター (環境省 かんきょうしょう ) . 海域 かいいき 自然 しぜん 環境 かんきょう 保全 ほぜん 基礎 きそ 調査 ちょうさ - 海 うみ 棲動物 どうぶつ 調査 ちょうさ 報告 ほうこく 書 しょ . pp. 68-69. 2023年 ねん 12月7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ “Scientists find strong evidence of black market for whale meat ”. デザレット・ニュース(英語 えいご 版 ばん ) (1998年 ねん 5月 がつ 16日 にち ). 2023年 ねん 8月 がつ 6日 にち 閲覧 えつらん 。
^ 環境庁 かんきょうちょう 自然 しぜん 保護 ほご 局 きょく (1998年 ねん 3月 がつ ). “ニタリクジラ ”. 生物 せいぶつ 多様 たよう 性 せい センター (環境省 かんきょうしょう ) . 海域 かいいき 自然 しぜん 環境 かんきょう 保全 ほぜん 基礎 きそ 調査 ちょうさ - 海 うみ 棲動物 どうぶつ 調査 ちょうさ 報告 ほうこく 書 しょ . pp. 72-73. 2023年 ねん 12月7日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Convention on the Conservation of Migratory Species of Wild Animals, Species
^ 2019年 ねん 7月 がつ 1日 にち 付 づけ 読売新聞 よみうりしんぶん