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ヒゲクジラるい

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ヒゲクジラ小目こもくから転送てんそう
ヒゲクジラるい
生息せいそく年代ねんだい: ややしん現世げんせい
fossil range
ミナミセミクジラ
地質ちしつ時代じだい
新生代しんせいだいふるだい三紀みきややしん前期ぜんき - だいよんかんしんメーガーラヤン現世げんせい
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
: くじら偶蹄ぐうてい Cetartiodactyla
階級かいきゅうなし : くじら河馬かばがたるい Whippomorpha
階級かいきゅうなし : くじらるい Cetacea
小目こもく : ヒゲクジラ小目こもく Mysticeti
学名がくめい
Mysticeti J. Gray1864[1]
和名わみょう
ヒゲクジラ小目こもく[2]
うえ
ほか、絶滅ぜつめつぐん多数たすう

ヒゲクジラるいひげくじらるい、Mysticeti)は、くじら偶蹄ぐうていぞくする分類ぶんるいぐんで、現生げんなまくじらるいを2ふんするだいグループのひとつ。リンネしき分類ぶんるいではヒゲクジラまたはヒゲクジラ小目こもく階級かいきゅうあたえられているが[2]、20世紀せいきまつにクジラるい偶蹄ぐうていから分岐ぶんきした系統けいとうであることがあきらかになったため、ヒゲクジラるい・ハクジラるい位置いちづけは今後こんご変更へんこうされる可能かのうせいたか[3]

形態けいたい

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現生げんなまのクジラるいは、ヒゲクジラるいハクジラるいおおきくかれる。ヒゲクジラるいをもたないが、上顎じょうがくからえた「ひげばん」または「鯨鬚くじらひげ」(くじらひげ)とばれる器官きかん使つかってオキアミコペポーダひとしプランクトンしょうさかなとうちいさなエサを大量たいりょうしとり、食料しょくりょうとする。おもプランクトンなど浮遊ふゆうせい生物せいぶつ捕食ほしょくするが、イワシひとししょうさかな基本きほんてきにその海域かいいきおお群集ぐんしゅうせい魚類ぎょるい)のほかイカなども捕獲ほかくされた個体こたいから確認かくにんされている。これらのさかななどはほとんど無傷むきずであり、ひげばんはあくまで濾過ろかするための器官きかんであることはあきらかである[4]。ヒゲクジラのしょくせいたね生息せいそくいきによってもことなり、ひげばん形状けいじょうもまたしょくせいによってそれぞれことなる。コククジラのみ、そこせい生物せいぶつ捕食ほしょくすることでられる(濾過ろか摂食せっしょく参照さんしょう)。

くじらひげ以外いがいのハクジラるいとの差異さいとしては、外観がいかんじょうではハクジラ以上いじょう頭部とうぶ大型おおがたくび短縮たんしゅくしている。噴気ふんきあなふたつ。のど多数たすうひだつ。現生げんなましゅでは最大さいだい動物どうぶつであるシロナガスクジラふくまれるように、ヒゲクジラは全体ぜんたいてき大型おおがたする傾向けいこうがある、などである[5]。また皮下ひか形態けいたいでは、メロンたず、またおとはっするための器官きかんである発声はっせいくちびるたないため、高周波こうしゅうはエコロケーション能力のうりょくく。ただしてい周波しゅうはおんはっし、そのエコーをいて遠方えんぽう地形ちけいさぐっているとされる[6]

上顎じょうがくこつ鼻孔びこう頭頂とうちょうへの移動いどうにともなうテレスコーピングばれる形態けいたいしめすが、伸長しんちょうした上顎じょうがくこつ眼窩がんかしたとおり(ハクジラるいうえ)、くじらひげひろ付着ふちゃく部位ぶいあたえている[5]。また、頭骨とうこつ形態けいたい左右さゆう対称たいしょうとなっている(ハクジラは左右さゆう非対称ひたいしょう)が、これは高周波こうしゅうはエコロケーションにとくした機能きのうたないためとかんがえられる。現生げんなまのクジラるいではみみこつ頭骨とうこつから遊離ゆうりしているが、ヒゲクジラはハクジラにくらべて遊離ゆうり度合どあいがひくく、ほねかべかこまれている。また、ハクジラでは分離ぶんりしているみみこつ構成こうせい要素ようそみみしゅうこつ蝸牛かぎゅうなどをおさめたほね)としつみみ小骨こぼねおさめたほね)が癒合ゆごうしている[7]。これと関連かんれんして、ハクジラはしもあご脂肪しぼう組織そしきつがヒゲクジラは同様どうよう組織そしきたない。これはハクジラがしもあごをエコーをくためのピックアップとしてもちいるための適応てきおうとされるが、脂肪しぼう組織そしきたないヒゲクジラはしもあごかいしておといていないと推測すいそくされる[8]

嗅覚きゅうかくかんしては、退化たいかいちじるしいながらものう嗅球ち、また嗅上がわには細胞さいぼう存在そんざいしている。これらが機能きのうしているかはさだかでないが、えささがしにエコロケーションを使つかわないかれらが、嗅覚きゅうかくによってえさ探知たんちしている可能かのうせい指摘してきされている。たいしてハクジラでは、一部いちぶたね発生はっせい段階だんかいのぞいて嗅球や嗅神経しんけい消失しょうしつし、嗅覚きゅうかくうしなわれている[9]

生態せいたい

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ヒゲクジラげいニタリクジラコセミクジラのぞいて、高緯度こういど海域かいいき摂食せっしょくいきてい緯度いど海域かいいき繁殖はんしょくいきあいだだい回遊かいゆうおこなう。ひや水域すいいきである高緯度こういど海域かいいき動物どうぶつせいプランクトンやそこすご生物せいぶつ捕食ほしょくし、あぶらがわにして栄養えいようたくわえて、温暖おんだんてい緯度いど海域かいいき繁殖はんしょくおこなう。これは、くじらあぶらがわうすく、ひや水域すいいきではえられないという理由りゆうにもよる。シロナガスクジラはたくわえたからだ脂肪しぼうのみで、繁殖はんしょくいきではほとんど摂食せっしょくはおこなわれないとされ、基本きほんてきのヒゲクジラくじらもほとんど摂食せっしょくしないとされる。また、この回遊かいゆう赤道あかみちえることはほとんどない。なお、ホッキョククジラ回遊かいゆう小規模しょうきぼで、北極圏ほっきょくけんからることはないとかんがえられている[10]

進化しんか

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ヒゲクジラるいはハクジラるいとともにせいくじらるい構成こうせいするが、その起源きげんは、やく3,390まんねんまえややしん前期ぜんきもとめられる。その祖先そせん所謂いわゆるムカシクジラるい」のドルドンなどにきんえんなグループであった。現生げんなまぐんこそ「ヒゲ」クジラとばれているが、ハクジラるい分岐ぶんきした直後ちょくごかれらは当然とうぜんヒゲをたず、多数たすうにあった。最古さいこのヒゲクジラであるエティオケタスは、獣類じゅうるい基本形きほんけいである44ほんち、また臼歯きゅうしにはふく咬頭があるなどのせい[11]しめしていた。このぞくは、かつてはつという形態けいたいから、ムカシクジラるい分類ぶんるいされていたが、北海道ほっかいどう足寄あしょろまちなどからられた良好りょうこう標本ひょうほん研究けんきゅうにより、ヒゲクジラとして分類ぶんるいされた。かれらの摂食せっしょく形態けいたいとしては、現生げんなまカニクイアザラシようをトラップとした濾過ろか摂食せっしょくおこなっていたとするせつもあるが、トラップとしては機能きのうない形態けいたいたねもあり、結論けつろんていない。また、とともにくじらひげ原型げんけいともいえるものをっていたのではないかとする研究けんきゅうしゃもいる。こうしたつヒゲクジラのグループは、エティオケタスうえとしてまとめられている[12]

いであらわれたのが、現生げんなまちかい、うしなくじらひげつグループである。ややしん後期こうきには出現しゅつげんしていたことが化石かせき記録きろくから確認かくにんされている。この時点じてんでは、つヒゲクジラの系統けいとう生存せいぞんしていた。かつてはケトテリウムいちのみであったが、これは現生げんなまの4以外いがい化石かせきクジラるいすべてこの分類ぶんるいされていたからである。しかし研究けんきゅうすすみ、最初さいしょのグループはエオミスティケタスうえとして分割ぶんかつされ、ケトテリウム自体じたいたん系統けいとうぐんとしてさい構成こうせいされつつある[13]

狭義きょうぎのケトテリウム自体じたいナガスクジラきんえんであるとしてナガスクジラうえふくめられたが、現生げんなま系統けいとう最初さいしょ分岐ぶんきしたのはセミクジラである。確実かくじつ記録きろくでは中新ちゅうしん前期ぜんきであるが、ややしん後期こうき地層ちそうからこのである可能かのうせいのある化石かせき発見はっけんされている。いであらわれたのがコセミクジラであるが、この系統けいとうはかつてセミクジラきんえんであるとされていたが、形態けいたい差異さいおおきすぎ、また分子ぶんし研究けんきゅう成果せいかからもべつ系統けいとうであると結論けつろんけられた[14]

現生げんなまのヒゲクジラで最大さいだいのグループが、ナガスクジラ、コククジラふくむナガスクジラうえである。これ以外いがいにも絶滅ぜつめつぐんとしてケトテリウムふくんでいる。このうちコククジラはナガスクジラきんえんとされることおおいが、セミクジラやケトテリウムきんえんであるという意見いけんされるなど、やや分類ぶんるいにはらぎがある。ナガスクジラには現生げんなまではナガスクジラぞくおよザトウクジラぞくふたつがぞくするが、絶滅ぜつめつぐんとして5 - 6程度ていどぞく存在そんざいするとされる[15]。-

分類ぶんるい

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現生げんなましゅは60しゅ以上いじょうのハクジラるいたいして、ヒゲクジラるいは14しゅ亜種あしゅのぞく)と、かなりすくない。日本にっぽん周辺しゅうへんでは、そのうちの10しゅ記録きろくされている。2003ねん11月には、和田わだ志郎しろうらによって新種しんしゅツノシマクジラ (Balaenoptera omurai) が発見はっけんされている[16]。また、ニタリクジラには複数ふくすうたねふくまれているとされ、Balaenoptera edeniカツオクジラ)として分離ぶんりされた。

†は絶滅ぜつめつ絶滅ぜつめつぐん主要しゅようなもののみ掲載けいさい

一部いちぶ参照さんしょう[17][18]

ギャラリー

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Stephen Jackson and Colin Groves, “Parvorder Mysticeti,” Taxonomy of Australian Mammals, CSIRO Publishing, 2015, Pages 313-315.
  2. ^ a b 日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい しゅめい標本ひょうほん検討けんとう委員いいんかい 目名めな問題もんだい検討けんとう作業さぎょう部会ぶかい哺乳類ほにゅうるい高次こうじ分類ぶんるいぐんおよび分類ぶんるい階級かいきゅう日本語にほんご名称めいしょう提案ていあんについて」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい43かん 2ごう日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2003ねん、127-134ぺーじ
  3. ^ くじらるいがく』 2ぺーじ
  4. ^ 哺乳類ほにゅうるい進化しんか』 219ぺーじ
  5. ^ a b 絶滅ぜつめつ哺乳類ほにゅうるい図鑑ずかん』 123ぺーじ
  6. ^ くじらるいがく』 148 - 149ぺーじ
  7. ^ くじらるいがく』 11 - 13ぺーじ
  8. ^ くじらるいがく』 14ぺーじ
  9. ^ くじらるいがく』 55 - 56, 177ぺーじ
  10. ^ 『クジラ・ウォッチング』平凡社へいぼんしゃ構成こうせい 中村なかむら庸夫みちお、44-45ぺーじ
  11. ^ 異形いぎょうせいとも。える場所ばしょにより形態けいたいことなること。
  12. ^ くじらるいがく』 36 - 38ぺーじ
  13. ^ くじらるいがく』 39 - 41ぺーじ
  14. ^ くじらるいがく』 39 - 42ぺーじ
  15. ^ くじらるいがく』 41 - 43ぺーじ
  16. ^ ツノシマクジラ 日本にっぽん発見はっけんされた新種しんしゅのヒゲクジラ
  17. ^ くじらるいがく』 4ぺーじ
  18. ^ 哺乳類ほにゅうるい系統けいとう分類ぶんるい

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 村山むらやまつかさくじらるいがく東海大学とうかいだいがく出版しゅっぱんかい東海大学とうかいだいがく自然しぜん科学かがく叢書そうしょ〉、2008ねん、2,14,36-43,55-56,148-149,177ぺーじISBN 978-4-486-01733-2 
  • 富田とみた幸光ゆきみつ絶滅ぜつめつ哺乳類ほにゅうるい図鑑ずかん伊藤いとうへいゆう岡本おかもと泰子やすこ丸善まるぜん、2002ねん、123ぺーじISBN 4-621-04943-7 
  • 遠藤えんどう秀紀ひでき哺乳類ほにゅうるい進化しんか東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱんかい、2002ねん、219ぺーじISBN 978-4-13-060182-5