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馬鹿ばか

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

馬鹿ばか(ばか)とは、

  • おろかなこと[1]
  • 社会しゃかい常識じょうしきけていること[2][1](「せんもん馬鹿ばか」・「役者やくしゃ馬鹿ばか」・「親馬鹿おやばか」などともちいる)。
  • 知能ちのうおとおろかなこと[2]
  • つまらないこと[2]無益むえきなこと[1]
  • やくにたないこと[1]機能きのうたさないこと[2]
  • 記憶きおくりょく理解りかいりょくなどがひとくらべておとっていること[3]

漢字かんじでは馬鹿ばか莫迦ばかうまやぶいえひとし表記ひょうきするが、である[3]平仮名ひらがな片仮名かたかなばかバカ表記ひょうきする場合ばあいもある。

概説がいせつ

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日本語にほんご相手あいてをからかったり、罵倒ばとう(その立場たちばひくなすことで、相手あいて感情かんじょうそこなう・人格じんかく否定ひてい)するため、もっと普通ふつう使つかわれる[4]単語たんごおおやけせき使つかうと刺激しげきつよぎることがある[4]

広辞苑こうじえんによると、ふるくは僧侶そうりょ隠語いんごであったものとされており[1]、おそらく梵語ぼんごサンスクリット)のmoha(「無知むち」という意味いみかたり)からてんじたかたりだとされている[1]が、そのにも様々さまざませつがある(語源ごげん参照さんしょう)。

このかたりは、日本語にほんごひろもちいられているが、地域ちいき使つかわれる自分じぶん他人たにんけたかにより、意味いみやニュアンスはおおきくことなる。たとえば関東かんとう地方ちほうでは、一般いっぱんてきにはかる揶揄やゆ程度ていど使つかわれるのだが、近畿きんき地方ちほうではつよ感情かんじょうめてののしたおすときに使用しようされる、といった相違そういがある。ききて出身しゅっしんによって、『馬鹿ばか』のられかたおおきくことなることには注意ちゅういようする(下記かき方言ほうげん分布ぶんぷじょうきょう参照さんしょう)。

ジョージ・サヴィル馬鹿ばかについて「内部ないぶ対話たいわたないひと」と定義ていぎしたように、比較的ひかくてきおおられるニュアンスでは「知識ちしきりない」や「思慮しりょりない」、さらには「理解りかい度合どあいがりない(ステレオタイプ乱用らんようしている)」という意味合いみあいでもちいられる。

ただ、基本きほんてき当人とうにん理解りかいしようとする意思いし努力どりょく不足ふそくしているとする傾向けいこうつよい。ちなみに『馬鹿ばか風邪かぜかない』の原義げんぎは『鈍感どんかんなので風邪かぜいても気付きづかない』であることが由来ゆらい

類語るいごの「阿呆あほう(あほう・あほ:理解りかいしたり思考しこうする能力のうりょく不足ふそくしている)」との使つかけ(意味いみ強弱きょうじゃく)には地域ちいきによる相違そういがある。関東かんとうでは「馬鹿ばか」はののしりの感情かんじょうめずにかる意味いみで(ときには愛情あいじょうめて)もちいられることおおいのにたいして、「阿呆あほう」というと、かなりつよ軽蔑けいべつ感情かんじょうめてもちいられることおおい。だが関西かんさいでは、その反対はんたいに、「阿呆あほう」がかるいニュアンスでもちいられることおおいが(愛情あいじょうめてもちいられることもあるのにたいして)、「馬鹿ばか」はつよののしりの感情かんじょうめてもちいられることおおい。[よう出典しゅってん]

短所たんしょあわせてっている間柄あいだがらなどでももちいられる。この場合ばあい意味いみにはののし意味いみはない。「したしさ」の表現ひょうげんや「じらい」、または「本気ほんきあいしている」を表現ひょうげんするじょうでの符丁ふちょうのように、様々さまざま局面きょくめんもちいられる。非常ひじょう親密しんみつ状態じょうたいしめ尺度しゃくどともなりる。

なにかに熱中ねっちゅうするあまり、社会しゃかいてき常識じょうしきうしなってしまったような状態じょうたいも「馬鹿ばか」とう。これはなにかに熱中ねっちゅうするあまり、一般いっぱんてき配慮はいりょ常識じょうしきてき配慮はいりょ等閑なおざり(なおざり)になっている様子ようすしている。

以下いかのようなれいがある。

  • 親馬鹿おやばか」(おやばか) - おや自分じぶん子供こどもばかりを溺愛できあいするあまりに、はたにはおろかなことをしてしまっているのにそのおろかさにしん自身じしんづいていないことである[5]
    • 他人たにんあたえた(可能かのうせいのある)不快ふかいかんについてびをするために、「親馬鹿おやばかですみません」など比喩ひゆ表現ひょうげんもちいられることもある。
  • せんもん馬鹿ばか」 - 特定とくてい分野ぶんや特定とくてい学問がくもんなど)についてのみ異常いじょうなほど執着しゅうちゃく知識ちしきっているが、その分野ぶんや以外いがいかんしては、一般人いっぱんじん以上いじょうにひどく無知むちひとのことである。
  • りバカ」 - 熱中ねっちゅうするあまりに、社会しゃかいてき常識じょうしきうしなってしまい、家族かぞく仕事しごとよりもりを優先ゆうせんしてしまうようなひとす(この意味いみでは「道楽どうらく」や「キチ」が類義語るいぎごたる)。

馬鹿ばか」はおおかれすくなかれ感情かんじょうてき意味合いみあいをふく言葉ことばであるため、その用法ようほう公的こうてきでは制限せいげんされることおおい。たとえば、所属しょぞく組織そしき上司じょうしかいどうかたりもちいると、社会しゃかいじんとして致命ちめいてき状況じょうきょうまれる可能かのうせいがある。また、子供こども同士どうし他愛たあい喧嘩けんかなどで、おたがいにバカだなにだとののしう・つかさまがしばしばられるが、これは傍目はためには、双方そうほう馬鹿ばかのようにえるひとつのケースである。さらに、どうかたりかえもちいると、相手あいて気分きぶんがいしたり、ひと見下みくだ意味合いみあいになる場合ばあいもある。

かたりわされる場合ばあい

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馬鹿ばか強調きょうちょうする場合ばあいにはまえに「だい」をける「だい馬鹿ばかげ(おおばか)」がひとつの定型ていけいである。そして、もうひとつの定型ていけいとしては、うしろに野郎やろうがつく「馬鹿ばか野郎やろう」がある。また、「馬鹿者ばかもの(ばかもの)」という使つかわれかたもある。さらに、強調きょうちょうではなく個人こじん特定とくていする表現ひょうげんでも「馬鹿者ばかもの」が使つかわれる。これを強調きょうちょうする場合ばあいには「だい馬鹿者ばかもの(おおばかもの)」が使つかわれる。

罵倒ばとう同士どうしわせとしては「馬鹿ばかたれ」がある。ぎゃく皮肉ひにく表現ひょうげんとしては「小馬鹿こばか(こばか)」がある。

馬鹿ばかきたな場合ばあいにはまえに「くそ」をつける「くそ馬鹿ばか」がある。

肯定こうていてきあつかわれる場合ばあい

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不器用ぶきようながらもひとつのみちげずにあるつづけることでなんらかのものを大成たいせいする、そのような姿すがたをバカという場合ばあいもある(れい:『空手からてバカいちだい』)。 類似るいじ表現ひょうげんとして「愚直ぐちょく一念いちねん」がある。

ややこしいかんがえやたくらみをらなければ、きてゆくうえでは失敗しっぱいそんもあるだろう。とくにだまされることはあるにちがいない。「正直しょうじきもの馬鹿ばかる」との言葉ことばもある。これは、「馬鹿ばか」という単語たんご否定ひていてきとらえているが、だますのはつみだがだまされるのはつみではない(場合ばあいおおい)。

この観点かんてんから、このような馬鹿ばかすくなくとも正直しょうじきしゃではいられる、という意味いみで「馬鹿ばか」がもちいられることがある(れい:『イワンの馬鹿ばか』、『あめニモマケズ』)。

上記じょうきとややているが、様々さまざま状況じょうきょう配慮はいりょし、それにそうかたち物事ものごと解決かいけつするような大人おとな判断はんだんたいして、それでは正義まさよしぐにつらぬけない場合ばあいがある。若者わかものがそういった状況じょうきょうえられずにぐにすすようを「馬鹿ばか」というれいもある。馬鹿ばか正直しょうじきなどは場合ばあいによってはこれを意味いみする。あるいは若者わかもの暴発ぼうはつしがちなエネルギーをさして馬鹿ばかというれいもある。たとえば年齢ねんれいかんじて「もう馬鹿ばかはできないなあ」というのが逆説ぎゃくせつてきであるがそれをしめしている。

他方たほう物事ものごとかんがえるちからよわく、うまく物事ものごとすすめられない場合ばあい様々さまざま失敗しっぱいをすることになるが、その姿すがたは、むしろ色々いろいろなことにつかい、さきんでうごかざるをない社会しゃかいにおいては、一服いっぷく清涼せいりょうざいともなるであろう。禅僧ぜんそうひとつの姿すがたとしての良寛りょうかんなどはこれにちかい。漫画まんが天才てんさいバカボン』のキャラクターであるバカボンのパパもそういう役割やくわりになうことがある。

遠藤えんどう周作しゅうさく小説しょうせつ『おバカさん』はキリストしているとされる。

なお、よりおおきな馬鹿ばか大物おおものとなりる、といった表現ひょうげん文学ぶんがくなどでることがある。たとえば司馬しばりょう太郎たろう小説しょうせつ項羽こうう劉邦りゅうほう』にてかん高祖こうそ劉邦りゅうほうをそのようにえがいている。

たいら成之しげゆきだい馬鹿ばかもん騒動そうどうというのもあった。これは、彫刻ちょうこくそらたかしあき佛教大学ぶっきょうだいがく寄贈きぞうした石造いしづくりのもんはしらにこのかたりまれていたのが発端ほったんである。佛教ぶっきょう大学だいがくは「馬鹿ばかという言葉ことば大学だいがくには不適切ふてきせつ」としてこのかたりけずることをもとめたが、そらがこれを拒否きょひしたことなどにより大騒おおさわぎに発展はってんした。結局けっきょく門柱もんちゅう佛教ぶっきょう大学だいがくから撤去てっきょされたが、そら思想しそう共感きょうかんした兵庫ひょうごけん宍粟しさわぐん千種ちくさまちげん兵庫ひょうごけん宍粟しさわ)がこの門柱もんちゅうり、町内ちょうないの2つのやま山頂さんちょうに1ほんずつ移設いせつされた。

馬鹿ばかのもつ意味合いみあいと使用しようされる状況じょうきょうれい

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失敗しっぱいした場合ばあい失敗しっぱいをした相手あいて罵倒ばとうする。
おろかな行為こうい人物じんぶつ
馬鹿ばかなことをした」「馬鹿者ばかもの」「正直しょうじきしゃ馬鹿ばかる」など。
一般いっぱん常識じょうしき知識ちしきとぼしい人物じんぶつ
「○○もらないの? おまえ馬鹿ばかだな」「テスト0てんだったの? 馬鹿ばかだね」など。
並外なみはずれてすごいものを表現ひょうげんする接頭せっとう
馬鹿ばか正直しょうじき」「馬鹿騒ばかさわぎ」「馬鹿ばかでかい」など。「バカけ」「バカれ」などはあたらしい用法ようほう
米菓べいかばかうけ」は肯定こうていてき意味いみ使つかわれている(栗山くりやま米菓べいかがある新潟にいがた地方ちほうではふるくから「馬鹿ばか〜」が“程度ていどはなはだしい”という方言ほうげんとしてもちいられていた[6])。
ある特定とくてい分野ぶんやにのみ通暁つうぎょうし、その一般いっぱん常識じょうしき欠落けつらくしている人物じんぶつひょうする場合ばあい
「あいつは数学すうがく馬鹿ばかだから」「サッカーバカ」「野球やきゅうバカ」「専門せんもんバカ」「せん馬鹿ばか」など。『空手からてバカいちだい』『りバカ日誌にっし』というマンガもある。
ある得意とくい分野ぶんやにはひいでているが、知識ちしきいちじるしくうと状態じょうたい・またはひと、という否定ひていてき意味いみ使つかわれる。しかし、その分野ぶんや知識ちしきだけは豊富ほうふち、その方向ほうこうには異常いじょう執着しゅうちゃくしめ人物じんぶつという肯定こうていてき意味いみ使つかわれる場合ばあいもある。
なにかにこだわるなどして客観きゃっかんてき理性りせいてき判断はんだん出来できない状態じょうたい
親馬鹿おやばかなど。
やくにたないことを場合ばあい
ネジ馬鹿ばかになる」(過度かどしめづけトルクでネジやま破損はそんした状態じょうたいで、いくニュートンけてめようにも、ネジは空回からまわりするだけで締結ていけつできない)など。なお、後述こうじゅつのように「バカあなとおす」とうという場合ばあいは「ネジをこと」にかんしては無意味むいみになるが、「ネジをとおす」ことかんしては必要ひつようことになるので、けっしてほんこうげる「やくにたない」意味いみであるとは一概いちがいにはえない。

語源ごげん

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語源ごげんについてはいくつかせつがあるが、決定的けっていてきなものはない。ただし、文献ぶんけんによる初出しょしゅつ太平たいへいにおける「馬鹿者ばかもの」であり、「馬鹿ばか」という用法ようほうはそれより後世こうせいであることから、当初とうしょは「馬鹿者ばかもの」という熟語じゅくごとしてのみ使つかわれたとおもわれ、それを前提ぜんていとしたせつのほうが若干じゃっかん優勢ゆうせいであるとえる。[よう出典しゅってん]

サンスクリット(梵語ぼんごせつ
サンスクリットで「おろか」を意味いみするmohaおとうつしである莫迦ばかみからくるとするせつ僧侶そうりょ使つかっていた隠語いんごであって馬鹿ばかという表記ひょうきであるとする。江戸えど時代じだい国学こくがくしゃ天野あまの信景さだかげ提唱ていしょうしたせつであり、広辞苑こうじえんをはじめとした主要しゅよう国語こくご辞典じてん採用さいようされている。
おなじサンスクリットmahallaka訶羅無知むち)(新村しんむらいずる石黒いしぐろおさむ)、あるいはmaha:おおきい、偉大いだいな)を語源ごげんとするせつもある。
バングラデシュ公用こうようであるベンガルでも「バカ」という単語たんご日本語にほんごおなじくおろかなものす。ベンガルサンスクリット祖語そごとする。
史記しきの「ゆび鹿しかため(しかをさしてうまとなす)」の故事こじ語源ごげんとするせつ
はたの・えびす時代じだい権力けんりょくをふるった宦官かんがんちょうだか謀反むほんたくらみ、廷臣ていしんのうち自分じぶん味方みかたてき判別はんべつするため一策いっさくあんじた。かれ宮中きゅうちゅう鹿しかいてこさせ『めずらしいうまはいりました』と皇帝こうていけんじた。皇帝こうていは『これは鹿しかではないのか』とたずねたが、ちょうだか左右さゆう廷臣ていしんに『これはうま相違そういあるまい?』とくとかれおそれるものうまい、かれおそれぬ気骨きこつのあるもの鹿しかこたえた。ちょうだかあとで、鹿しかこたえたものをすべてころしたという。なお、『源氏物語げんじものがたり』「須磨すま」のまきでは、ひろし徽殿だいきさき光源氏ひかるげんじかれした人々ひとびと非難ひなんしたさいにこの故事こじもちいている。現代げんだい中国ちゅうごくでは「馬鹿ばか」はたんアカシカ意味いみする。
ゆび鹿しかため(しろくいば)(鹿しかしてうまとなす)
若者わかものせつ
若者わかもの(wakamono)」のwおとがbおとてんじて「馬鹿者ばかもの」となったとするせつ[ちゅう 1]民俗みんぞくがくもの柳田やなぎだ國男くにおは、広辞苑こうじえん編者へんしゃ新村しんむらいずる提唱ていしょうしたといているが、新村しんむら文章ぶんしょうとしてのこしていないため不明ふめい新村しんむら広辞苑こうじえんでサンスクリットせつ採用さいようしているが、積極せっきょくてき採用さいようではなかったようである。その楳垣など。
やぶいえせつ
禅宗ぜんしゅう仏典ぶってんなどにてくる破産はさんするという意味いみの「やぶいえ」と「しゃ」をくっつけて、「破産はさんするほどおろかなもの」というところから「馬鹿者ばかもの」という言葉ことばまれたとするせつ東北大学とうほくだいがく佐藤さとう喜代治きよじによって提唱ていしょうされ、日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん採用さいようされている。
うませつ
中国ちゅうごくにいたうまというせい富裕ふゆう一族いちぞくが、くだらぬことにかまけて散財さんざいし、そのいえ放題ほうだいとなったというしろきょえきはく文集ぶんしゅうにある一節いっせつからまれたとするせつ。「うまもの」から「馬鹿者ばかもの」となったとする。「うま」は平安へいあん時代じだいでも漢音かんおんで「バカ」とまれており、発音はつおんについての矛盾むじゅんく、「馬鹿者ばかもの」が室町むろまち時代じだいには「狼藉ろうぜきしゃ」にちか意味いみ使用しようされていたことなどとも整合せいごうするとして、松本まつもとおさむ提唱ていしょうし、木田きだ章義あきよしなどが支持しじしている[7]
はかなしせつ
雅語がご形容詞けいようしである「はかなし」の語幹ごかん変化へんかしたというせつ金田一きんだいち春彦はるひこはこのせつによっており、これをとる国語こくご辞典じてんもある。
をこせつ
古語こごおろかなことを「をこ」といい、これがなまったとするせつ(アホもこれに由来ゆらいするのではないかともいうが、いずれも証拠しょうこはない)(柳田やなぎだ國男くにおわらい本願ほんがん』)。
ぼけせつ
「ぼけ(おそらく、「ほうけ(る)」「ふうけ(る)」の転訛てんか)」がなまったとするせつ小山田おやまだ与清ともきよ松屋まつや筆記ひっき』、永田ながた直行なおゆき菊池きくち俗言ぞくげんこう』)。

歴史れきし

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文献ぶんけんにおける出典しゅってんつぎのとおり。

南北なんぼくあさ時代じだい太平たいへいでの「馬鹿者ばかもの(バカノモノ)」の使用しよう初出しょしゅつである。 初期しょきころでの「馬鹿者ばかもの」は文明ぶんめい本節ほんぶしようしゅうにあるとおり「狼藉ろうぜきをはたらくもの」で、現在げんざいの「おろか」の意味いみふく言葉ことばではなかった[ちゅう 2]。「おろか」を言葉ことばには古代こだいから使つかわれていた「がらすよびしゃ(ヲコノモノ)」があり、そちらが使用しようされていた。馬鹿ばかが「おろか」のふくむようになるのは江戸えど時代じだい好色こうしょくいちだいおとこあたりからである。

方言ほうげん分布ぶんぷじょうきょう

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関東かんとう地方ちほうは「馬鹿ばか」、近畿きんき地方ちほうは「阿呆あほうアホ)」であるとする場合ばあいもあるが、実際じっさい分布ぶんぷじょうきょうはそう簡単かんたんではない。

大阪おおさか朝日放送あさひほうそうのバラエティ番組ばんぐみ探偵たんてい!ナイトスクープ』において「『アホ』と『バカ』の境界きょうかいせんはどこか」という視聴しちょうしゃからの依頼いらいもとにした調査ちょうさおこなわれた。このさい名古屋なごやで「タワケ」がもちいられていたこと、番組ばんぐみ秘書ひしょとして出演しゅつえんしていた長崎ながさきけん出身しゅっしん岡部おかべまりが「(長崎ながさきでは)『バカ』とっていた」と発言はつげんしたこと、これを視聴しちょうしゃから全国ぜんこく各地かくちの「バカ」に相当そうとうする日本語にほんご方言ほうげんせられたことなどから、出演しゅつえんしゃ上岡うえおか龍太郎りゅうたろう提案ていあんで、より本格ほんかくてき調査ちょうさこころみられた。

1991ねん平成へいせい3ねん)、(当時とうじの)すべての市町村しちょうそん教育きょういく委員いいんかい対象たいしょうにした、このたね表現ひょうげん分布ぶんぷじょうきょうについてのだい規模きぼアンケート調査ちょうさおこなわれ、その調査ちょうさ結果けっかもとづいた特別とくべつ番組ばんぐみ放映ほうえいされ、多数たすうしょう受賞じゅしょうしたほか、日本にっぽん方言ほうげん研究けんきゅうかいでも注目ちゅうもくされた。この制作せいさく過程かていしるした『全国ぜんこくアホ・バカ分布ぶんぷこう はるかなる言葉ことば旅路たびじ』(どう番組ばんぐみプロデューサー松本まつもとおさむしるISBN 4101441219)に非常ひじょうくわしい調査ちょうさ結果けっか考察こうさつっている。

この番組ばんぐみ制作せいさくされた「全国ぜんこくアホ・バカ分布ぶんぷ」によれば、「馬鹿ばか」は近畿きんき以西いせいでもかえって使つかわれており、また全国ぜんこく各地かくち方言ほうげんにおいて「馬鹿ばか以外いがい表現ひょうげん数多かずおおられる。たとえば東北とうほく地方ちほうでは「ホンジナシ」という言葉ことばや、これに言葉ことばおおられるが、「バカ」けい言葉ことばや「タクランケ[ちゅう 3]」「ハンカクサイ」(はんくさい)という言葉ことばられる。愛知あいちけんは「タワケ」がおおいとわれるがこれは西部せいぶ尾張おわり地方ちほう)で、東部とうぶ三河みかわ地方ちほう)では静岡しずおかけん一部いちぶなどとともに「トロイ」「トロクサイ」がおおい。三重みえけん岡山おかやまけんには「アンゴウ」という言葉ことばられる。富山とやまけん石川いしかわけん滋賀しがけん高島たかしま[8]鳥取とっとりけん島根しまねけん東部とうぶには「ダラ」・「ダラズ」という言葉ことばられる。また沖縄おきなわ地方ちほうでは「フリムン」や「プリムヌ」という言葉ことばられる(これらはいちれいであり、これら以外いがい語彙ごいもそれぞれの地域ちいきられることに注意ちゅういする必要ひつようがある)。「ボケ」などといったその言葉ことばふくめて、同心円どうしんえんじょう分布ぶんぷしており、同書どうしょではそのえん中心ちゅうしんながらく日本にっぽん首都しゅとであった京都きょうとであると指摘してきしている。これは柳田やなぎだ國男くにおが『蝸牛かぎゅうこう』で考察こうさつしているほか言葉ことば分布ぶんぷじょうきょうとも対応たいおうする。

馬鹿ばか阿呆あほうのどちらがきびしい表現ひょうげんか、「概要がいよう」のふしれたように、関東かんとうひとは「アホ」とわれると非常ひじょう侮辱ぶじょくされたとかんじる場合ばあいおおいし、関西かんさいひとは「バカ」とわれると非常ひじょう見下みくだされたとかんじる場合ばあいおおい。ややこしいのが北海道ほっかいどうで、移住いじゅう入植にゅうしょく)した人々ひとびとがそれぞれに「バカ」・「アホ」その言葉ことばんだのだが、地域ちいきによってどの言葉ことばがよりきびしい表現ひょうげんなのかがことなっている。

実在じつざいする動物どうぶつ馬鹿ばかげ(ばろく)

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中国ちゅうごくには馬鹿ばか(ばろく)という、鹿しか一種いっしゅがいる。ヨーロッパ中東ちゅうとうアカシカ学名がくめい:Cervus elaphus)にきんえんで、北米ほくべい北部ほくぶユーラシア大陸たいりく北東ほくとう分布ぶんぷするワピチ学名がくめい:Cervus canadensis en)のうち、北東ほくとうアジアむものであり、「馬鹿ばか」を「マールー(mǎ lù)」と発音はつおんする。馬鹿ばかふるかくが、脱落だつらくしたのち新生しんせいするようかく乾燥かんそうさせたものは、漢方薬かんぽうやく鹿しかだけ(ロクジョウ)として珍重ちんちょうされている。

妖怪ようかい馬鹿ばかげ(うましか)

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馬鹿ばか(うましか)
尾田おだごうきよし百鬼夜行ひゃっきやこう絵巻えまき

[江戸えど時代じだい後期こうき妖怪ようかい絵巻えまきえがかれている妖怪ようかいうまあたま鹿しかあしがついており、かおは「馬鹿ばか」というあらわしたよう滑稽こっけい表情ひょうじょうをしている。

馬鹿ばかキャラ

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馬鹿ばかキャラとは、馬鹿ばかキャラクター意味いみするかたりである。

落語らくごにおいては、知恵ちえらない(りない)馬鹿ばか代表だいひょう与太郎よたろうがある。また、常識じょうしきらない馬鹿ばか代表だいひょう権助ごんすけなどがある。

2007ねん平成へいせい19ねん)ごろから日本にっぽんではバカ(無知むち)なキャラクターをりにしたタレントであるおバカタレント(バカタレ)がブームとなった(おバカタレントブーム、鈴木すずき奈々なななど)[9][10]。このブームのきっかけはテレビのクイズ番組ばんぐみであるクイズ!ヘキサゴンIIだといわれる[9][10]若手わかてのスポーツ選手せんしゅもクイズ番組ばんぐみでボケたこたえを連発れんぱつするため、このくくりにれられてしまっている。

日本にっぽん国外こくがいにおける馬鹿ばか

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アメリカで、ってる日本語にほんごげよとえば「バカタレ」がこう頻度ひんどげられる[よう出典しゅってん]。これは、日本にっぽんからの初期しょきアメリカ移民いみん出身しゅっしんが、このかたり多用たようする中国ちゅうごく地方ちほう九州きゅうしゅう地方ちほうであったことからとかんがえられ、映画えいがせい部隊ぶたい」の台詞せりふなかでもたびたびかれる。

太平洋戦争たいへいようせんそう末期まっき日本にっぽん特攻とっこう兵器へいき櫻花おうか」には連合れんごうぐんから、日本語にほんご馬鹿ばか由来ゆらいする「BAKA」のコードネームあたえられていたとされる[11][12]

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでも、太平洋戦争たいへいようせんそうから現在げんざいまで無数むすうつくられてきた抗日こうにち題材だいざい映画えいがやテレビドラマでは、日本にっぽんへい口癖くちぐせのように「バカヤロ」(はちかくきば=「馬鹿ばか野郎やろう」)とくちにするものとしてえがかれる。「バカヤロ」は、おなじく日本にっぽんへい口癖くちぐせとされる「ミシミシ」(「めしめし」)に頻繁ひんぱん中国ちゅうごくのマスメディアに登場とうじょうする日本語にほんごである。

中国ちゅうごくの「馬鹿ばか」(马鹿)は、動物どうぶつアカシカ[13]

インドネシアには、日本にっぽんによる占領せんりょう時代じだい名残なごりとして、「馬鹿ばか野郎やろう」に由来ゆらいする『(バケロ)』という単語たんごがある。

用語ようごの『バカ』

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リールもちいない釣竿つりざおである竿ざおもちいたにおいて、とく渓流けいりゅうりでは竿ざおながさにたいしてみちいとハリスわせた仕掛しかけの全長ぜんちょうながくなったぶんを「バカをす」という。たとえば、全長ぜんちょう3 m竿ざおたい仕掛しかけのながさが3 m 10 cm あった場合ばあい、10 cm がバカとなる。

いと能力のうりょく竿ざお使つか場合ばあい竿ざおよりあまりになが仕掛しかけではったさかなむという最大さいだい目的もくてき達成たっせいできなくなる。このため仕掛しかけのながさは竿ざおおおむひとしいことがのぞましいが、渓流けいりゅうふかじょうねらいやテンカラひとしといったりょうほうでは多少たしょうなりともバカを必要ひつようがある。

工業こうぎょう用語ようごの『バカ』

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ネジを必要ひつようがないがネジをとおためには必要ひつようあなを「バカあな」とう。たとえば「ここにバカあなける」場合ばあいは「そこにはネジぼうとおる」こと意味いみする。建築けんちく現場げんばでは、鋼材こうざいなどにボルトとうとおすためにけたあなで、必要ひつよう以上いじょうおおきいものを「ばかあな」と[14](p268)(ネジをとおすための「あそび」程度ていどではなく、調整ちょうせいのために位置いちをずらせるくらいのもの)。 トンネル工事こうじなどでダイナマイト充填じゅうてんするためにあなのうち、実際じっさいには充填じゅうてんしない可能かのうせいのある余分よぶんあなを「ばかあなぶこともある[14](p268)

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ このせつ場合ばあい開国かいこく当時とうじよりの学生がくせい由来ゆらいにドイツ系列けいれつおおこと根拠こんきょとしている(ドイツ発音はつおんでw字母じぼはヴ発音はつおんあらわすため。この場合ばあいいわゆるクサチューのヴァカ由来ゆらいひとつでもある)。事実じじつ日本語にほんご初学しょがくするドイツじん例外れいがいなくwのつづりをヴとむ。
  2. ^ 同様どうよう原義げんぎからおおきくわった悪党あくとうとはぎゃく変遷へんせんをしてことになる(こちらの原義げんぎ狼藉ろうぜきしゃ意味いみではない)。
  3. ^ なお、同型どうけい標準ひょうじゅんで「たくらだ」があり、「たくらだねことなりあるき」ということわざ存在そんざいする。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f 広辞苑こうじえん「ばか」
  2. ^ a b c d 大辞泉だいじせん「ばか」
  3. ^ a b 「ばか」『しん明解めいかい国語こくご辞典じてん だいろくはん三省堂さんせいどう、2005ねんISBN 4-385-13105-8
  4. ^ a b しん明解めいかい国語こくご辞典じてん 初版しょはん
  5. ^ 広辞苑こうじえん親馬鹿おやばか
  6. ^ 「ばかうけ」の名前なまえのヒミツ | 株式会社かぶしきがいしゃ栗山くりやま米菓べいか|Befco(ベフコ)
  7. ^ 全国ぜんこくアホ・バカ分布ぶんぷこう はるかなる言葉ことば旅路たびじ』(松本まつもとおさむちょ新潮しんちょう文庫ぶんこ、1996ねん)pp.372 - 403、pp.438 - 445
  8. ^ かつては加賀かがはん領地りょうちだった。
  9. ^ a b アナタは何人なんにんっている? 年末ねんまつ年始ねんしりだこの“おバカ”タレント、そのブームの背景はいけいせまる! 日経にっけいトレンディネット(2007ねん12月27にち2011ねん平成へいせい23ねん4がつ7にち閲覧えつらん
  10. ^ a b おバカタレント、その真価しんかさぐ All About(2008ねん10がつ23にち2011ねん平成へいせい23ねん)4がつ7にち閲覧えつらん
  11. ^ Edward P. Stafford, Little Ship, Big War, New York: Jove, 1985, pp. 253 & 282, ISBN 0515084182, OL 7656661M.
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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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