与太郎よたろう

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与太郎よたろう(よたろう)は落語らくご登場とうじょうする架空かくう人物じんぶつ。「くまさんっつぁん」などとならぶ、代表だいひょうてき落語らくご登場とうじょう人物じんぶつである[1]

人物じんぶつぞう[編集へんしゅう]

性格せいかく[編集へんしゅう]

性格せいかく呑気のんき楽天的らくてんてきだが、ぼんやりしゃで、なにをやっても失敗しっぱいばかりする。そういった性格せいかくから、与太郎よたろう登場とうじょうするはなし滑稽こっけいぶつおおく、与太郎よたろうばなし分類ぶんるいされる場合ばあいもある。さらに寄席よせ楽屋がくや符丁ふちょうとして「間抜まぬしゃ」「使つかえない、のきかないもの」の代名詞だいめいしとなっていて「こんどはいった前座ぜんざは、ありゃ与太郎よたろうだ」というように使つか[2]

職業しょくぎょう[編集へんしゅう]

定職ていしょくたずにぶらついていることがおおいが、しょくっている場合ばあい大工だいくであることがおおい。「大工だいく調しら」では、棟梁とうりょう信頼しんらいあつ職人しょくにんとして登場とうじょうする。

家族かぞく親族しんぞく[編集へんしゅう]

孝行こうこうとう」では親孝行おやこうこうということになっている。「うしほめ」などに父親ちちおや登場とうじょうする。母親ははおや直接ちょくせつ登場とうじょうすることはすくないが、2人ふたりらしていることがうかがえ、間接かんせつてき存在そんざいあきらかにされるはなし父親ちちおやよりおおい。「ろくろくび」ではあにがいることになっている。また、「にしき袈裟けさ」ではつまがいて、しりかれている。伯父おじはきまってしっかりしゃで、かれから意見いけんされたり就職しゅうしょく世話せわをされたりするが失敗しっぱいするパターンがおおい。

東西とうざい[編集へんしゅう]

もっぱら江戸えど落語らくごにて登場とうじょうする。東西とうざい落語らくごについてろんじられるさい、しばしば上方かみがた落語らくごの「ろくきよしはち」のろく与太郎よたろうとの関連かんれんとしてげられるが、両者りょうしゃには類似るいじするてんもあるが、相違そういするてんもある。

おも登場とうじょう作品さくひん[編集へんしゅう]

  • いしがえ[3]:たちのわる御家人ごけにんたちにっていた蕎麦そばのこらずただいされてしまう内容ないよう
  • うしほめ[1]新築しんちく叔父おじいえ訪問ほうもんし、父親ちちおやおしえられたとおりに世辞せじならべて感心かんしんされるが、最後さいごうしせられ失敗しっぱいする。
  • おし[1]いのおとこ殺生せっしょう禁断きんだん寛永寺かんえいじいけりをしていることっていてく。
  • かぼちゃ[1]叔父おじ与太郎よたろうカボチャ行商ぎょうしょうをさせようとするが、すべ仕入しいってしまったため、なんもうけにもならなかった。
  • 孝行こうこうとう[1]親孝行おやこうこうということで奉行ぶぎょうしょからもらった褒美ほうび元手もとであめ行商ぎょうしょうはじめるが、水戸みとはんやしきまえ門番もんばんとのりがいになってしまい、なぐられる。
  • 大工だいく調しら[1]うでぷし大工だいくとして登場とうじょうし、滞納たいのうした店賃たなちんかたちとして没収ぼっしゅうされた道具どうぐばこかえすべく、大工だいく棟梁とうりょう助言じょげんで、あこぎな家主やぬし相手あいて訴訟そしょうこす。
  • 『つづらどろ[4]与太郎よたろう泥棒どろぼうこころみる数少かずすくないはなし
  • いもたわら』:やはり与太郎よたろう泥棒どろぼう参加さんかする数少かずすくないはなし
  • 道具どうぐ[1]叔父おじ与太郎よたろう古道具ふるどうぐ露天商ろてんしょうをさせようとするが、きゃく頓珍漢とんちんかん会話かいわをするだけでまった商売しょうばいにならない。代表だいひょうてき与太郎よたろうばなしの1つ。
  • にしき袈裟けさ[1]長屋ながやおとこたちが吉原よしはら遊廓ゆうかくにしきのふんどしをめてそうという計画けいかくてる。高価こうかにしきなどえない与太郎よたろうは、つま知恵ちえで、知人ちじんぼうさんからりたにしき袈裟けさをふんどしのわりにする。
  • 厄払やくはら[5]叔父おじ与太郎よたろう厄払やくはらをさせようとするが、商売敵しょうばいがたき邪魔じゃまをしたすえ面倒臭めんどうくさくなってげてしまう。
  • ろくろくび[1]夜中よなかになるとくびびる「ろくろくび」のおじょうさんのした与太郎よたろう婿入むこいりする。
  • 酢豆腐すどうふ[1]あそ仲間なかま通人つうじんぶった若旦那わかだんなをおだてて、与太郎よたろうくさらせてしまった豆腐とうふべさせる。
  • つください[1]完全かんぜんかたちえんじる場合ばあい不可欠ふかけつ登場とうじょう人物じんぶつとなる。つくだとうまつりのかえりにわたぶね転覆てんぷくしてんだ(とおもわれた)近所きんじょ旦那だんないえに、長屋ながや代表だいひょう一人ひとりとして弔問ちょうもんおとずれる(ほかの住人じゅうにんたちにれてかれる)が、くやみといやみの区別くべついていなかったり、最初さいしょ一言ひとことが「このたびはどうもありがとう御座ございます」だったりで、厳粛げんしゅく雰囲気ふんいきこわすが、そのやみが連中れんちゅうのような形式けいしきてきなものではない、真心まごころからのものだったので、かえってめられる。
  • 長屋ながや花見はなみ[3]長屋ながや住人じゅうにん一人ひとりとして登場とうじょう店賃たなちんなんだからない(当人とうにんいわく「そんなもの、まだもらっていない」)。当然とうぜんはらってもいない。
  • 寄合よりあいさけ[4]さけさかなってなければいけないとわれ、味噌みそってる。どこからってたとくと「はらっぱから」とこたえるので、「くそ」と勘違かんちがいしているとおもわれたが、きちんとした味噌みそだった。じつはらっぱにいてあった三河屋みかわや荷物にもつからぱらっててしまっていた。

影響えいきょう[編集へんしゅう]

落語らくご以外いがいへの登場とうじょう[編集へんしゅう]

  • 講談こうだん水戸黄門みとこうもん漫遊まんゆう 東海道とうかいどうまき』に登場とうじょうする。沼津ぬまづ宿やどで、ぐん奉行ぶぎょう大野おおのわたる太夫たゆう与太郎よたろう地蔵じぞう格好かっこうをさせ、「れると人肌ひとはだのようにあたたかい、ありがたい人肌ひとはだ地蔵じぞうさま」として善男善女ぜんなんぜんにょからかねをだましっていたのを、水戸黄門みとこうもんあらわれてらしめる、というのがあらすじ。

与太郎よたろうをモチーフとしたキャラクター[編集へんしゅう]

  • 山本やまもと周五郎しゅうごろう長屋ながやたかしいちぼう』:てんいちぼう事件じけん触発しょくはつされて家系かけいマニアとした家主やぬししずめるため、長屋ながや住人じゅうにんが「ごやくいん(ご落胤らくいん)」に仕立したててれてきた若者わかもの言動げんどうのほか、一人称いちにんしょうが「あたい」であることなど、与太郎よたろう影響えいきょうつよられる。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i j k 落語らくご登場とうじょう人物じんぶつ辞典じてん』 157ぺーじ
  2. ^ 現代げんだい落語らくご事典じてん』 159ぺーじ
  3. ^ a b 落語らくご人物じんぶつ事典じてん 』 257ぺーじ
  4. ^ a b 落語らくご人物じんぶつ事典じてん 』 260ぺーじ
  5. ^ 落語らくご人物じんぶつ事典じてん 』 259ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]