V

	Vv Vv
ラテン文字もじ

Vは、ラテン文字もじ（アルファベット）の22番ばん目めの文字もじ。小文字こもじは v 。U, W, Yとともにギリシャ文字もじのΥうぷしろん（ウプシロン）に由来ゆらいし、キリル文字もじのУは同系どうけいの文字もじである。Υうぷしろん（ウプシロン）の別べつ形がたに由来ゆらいするFとも同系どうけいといえる。

キリル文字もじのВは、発音はつおんの上うえでは同類どうるいの文字もじだが、成なりたちは異ことなる（こちらはギリシャ文字もじのΒべーたに由来ゆらい）。

字形じけい

下したで屈曲くっきょくしたひと連つらなりの線せんであり、2本ほんの線分せんぶんである。大文字おおもじと小文字こもじで同おなじ形がたである。筆記ひっき体たいでは下部かぶが丸まるまることがあるが、Uないしuとの区別くべつのため、右みぎ上じょうで下したに折おり返かえして次つぎの字じに進すすむ。フラクトゥールは ${\mathfrak {V\ v}}$ 。

呼称こしょう

ラテン語らてんご: ウー
仏ふつ: vé（ヴェ）[ve]
伊い: vu（ヴ）
英えい: vee（ヴィー）[viː] 聞きく^{[ヘルプ/ファイル]}
独どく: vau, fau（ファウ）[faʊ]
洪ひろし：ヴェー [veː]
尼あま：フェー [feː]
蘭らん：ヴェー、フェー [veː]、[feː]
西にし: uve（ウベ）、ve（ベ）、u corta（ウコルタ）、u baja（ウバハ）、u chica（ウチカ）
エスペラント：ヴォ
日本語にほんご：ブイ（[bɯi]、[bui]）、ヴィー（[viː]）、ヴイ（[vɯi]、[vui]）、ヴィ（[vi]）

音素おんそ

この文字もじが表あらわす音声おんせいは、

国際こくさい音声おんせい記号きごうでは、小文字こもじの[v]が有ゆう声ごえ唇くちびる歯ぱ摩擦音まさつおんを表あらわす。通常つうじょうは子音しいんとして発音はつおんされるが、[vͅ]と単独たんどくで音節おんせつ性せいを持もつこともできる。
フランス語ふらんすご、英語えいご、イタリア語ご、ハンガリー語ご、ポルトガル語ご、エスペラント、リス語ご^[1]では [v]。
- フランス語ふらんすごでは語末ごまつの子音しいんは発音はつおんされない語かたりが多おおいが、v は発音はつおんすることが多おおい。
ラテン語らてんごでは本来ほんらいは、母音ぼいん[u] と半母音はんぼいん [w] を区別くべつせず表あらわした。[u] のために専用せんようの文字もじ U が導入どうにゅうされてからは、もっぱら [w] を表あらわす。
チワン語ごでは [w] を表あらわす^[2]。
ドイツ語ご、インドネシア語ごでは [f]を表あらわす。
- ドイツ語ごでは、主おもにラテン語らてんごなどからの借用しゃくよう語ごでは、[v] と発音はつおんする。
- インドネシア語ごではしばしば [p] で発音はつおんする。
オランダ語ごでは [v] だが、特とくに語頭ごとうで無声むせい化かした [f] で発音はつおんする人ひとが多おおい。
スペイン語ごでは B と V を発音はつおん上じょうは区別くべつしないため、もっぱら [b]を表あらわす。ただしイタリア系けい移民いみんの多おおいアルゼンチンや、アルゼンチンとともにブラジル（ポルトガル語ご圏けん）と国境こっきょうを接せっするウルグアイなどのうち一部いちぶ地域ちいきでは、他た国語こくごの影響えいきょうで両者りょうしゃを区別くべつし、 [v]を表あらわす（リオプラテンセ・スペイン語ごなど）。
中国ちゅうごく語ごの共通きょうつう語ご（普通ふつう話ばなし）の拼音では、ラテン基本きほん字じ26字じのうち唯一ゆいいつ使用しようされない。ただし、ü（[y] を表あらわすウムラウト付つきu）が使用しようできない場合ばあい、vで代用だいようすることがある。中国ちゅうごく語ごIMEのロろーマ字まじ入力にゅうりょくの際さいにもvキーで入力にゅうりょくするものが多おおい。また、中国ちゅうごくのパスポートでもVで代用だいようされている。
日本語にほんごのロろーマ字まじ表記ひょうきでは通常つうじょう使つかわれないが、IMEでの「ヴ」とヴァ行ぎょう音おとの入力にゅうりょくに使つかわれる。また、Unicodeにおける「ヴ」の名称めいしょうもKATAKANA LETTER VUとVを使用しようしている。
ミャオ語ごの川かわ黔滇方言ほうげん、滇東北とうほく方言ほうげんでは[v]を表あらわすが、黔東方言ほうげんでは有ゆう声ごえ軟口蓋なんこうがい摩擦音まさつおん[ɣ]を表あらわす^[3]。
ペー語ごでは子音しいんとしての[v]と音節おんせつ主音しゅおん、母音ぼいんとしての[vͅ]の両方りょうほうに用もちいる^[4]。
ハニ語ごの1957年ねんに考案こうあんされた『哈尼族ぞく文字もじ方案ほうあん』では、母音ぼいんの後のちにvを付つけると緊張きんちょう母音ぼいんを表あらわす^[5]。

歴史れきし

Vは、本来ほんらいラテン語らてんごにおける半母音はんぼいん/w/の音素おんそを表あらわす文字もじである。古代こだいのラテン文字もじにはUが存在そんざいせず、Vの文字もじは/w/とともに母音ぼいんの/u/を表あらわす文字もじとしても用もちいられていた（例れい: AVGVSTVS、BVLGARI）。

Uの文字もじは、/u/の発音はつおんを/w/と書かき分わけるために、Vの小文字こもじ体たいをもとに中世ちゅうせいのロマンス語ごにおいて初はじめて登場とうじょうし、やがてラテン語らてんご文献ぶんけんも遡さかのぼって区別くべつが行おこなわれるようになる。この表記ひょうきは当初とうしょは大文字おおもじは下したのとがったV、小文字こもじは早はやく書かくために下したの丸まるいuだった。

ゲルマン語ごには、/w/ と別べつにラテン語らてんごにない /v/ という音素おんそが存在そんざいしており、母音ぼいん/u/を表あらわす文字もじとして U が定着ていちゃくした結果けっか、V の文字もじが/v/音おとを表あらわすようになった。

さらに英語えいごなどでは /w/ を表あらわす文字もじとして V(U) を二ふたつ重かさねて新あらたに W が作つくられた。ゲルマン語ごの一派いっぱである中世ちゅうせい高地たかちドイツ語ごでは W が /v/ を表あらわす文字もじとして使つかわれ始はじめ、同時どうじにドイツ語ごからは /w/ の音素おんそが失うしなわれた。さらに V が /f/ の音素おんそで発音はつおんする変化へんかが起おこった。同一どういつの現象げんしょうはドイツ語ごに近ちかいオランダ語ごでもみられるが、オランダ語ごでは V の音素おんそは /v/ とするのが標準ひょうじゅんとされており、音韻おんいん変化へんかは不完全ふかんぜんである。

日本語にほんごではラテン語らてんごと同おなじく /w/ の音素おんそはあるが /v/ がなかったため、近代きんだい英語えいごなどにおいて V で表あらわされる /v/ の音素おんそを様々さまざまに音おと写うつししている（この点てんについての詳細しょうさいは、ヴの記事きじを参照さんしょう）。

V の意味いみ・用法ようほう

主おもに大文字おおもじ

記号きごう

バナジウムの元素げんそ記号きごう。(vanadium)。
ボルト（電圧でんあつの単位たんい）の単位たんい記号きごう。(volt)。
分散ぶんさん (variance)。
量りょう記号きごう
- 体積たいせき・容積ようせき (volume)。
- 電圧でんあつ・電位でんい (voltage)。
- 色いろ空間くうかんの明度めいど (value)。
- 比ひ視し感度かんど。
鉄道てつどうのサインシステムにおいて、JR 関西かんさい線せん（加茂かも駅えき〜亀山かめやま駅えき）、JR 伯備線はくびせんの路線ろせん記号きごうとして用もちいられる。
時刻じこく表ひょうで近鉄きんてつ特急とっきゅうのビスタカー使用しよう列車れっしゃを示しめす記号きごう。
京急けいきゅう1000形かたち電車でんしゃ (2代だい)の大半たいはんの編成へんせいの編成へんせい記号きごう。
アメリカ軍用ぐんよう機きの命名めいめい規則きそくのでの記号きごう
- 現状げんじょう接頭せっとう記号きごうとしては、要人ようじん輸送ゆそう。
- 型式けいしき記号きごうとしては、垂直すいちょくまたは単たん距離きょり離着陸りちゃくりく機き。
紋章もんしょう学がくでの英えい仏ふつ式しきの略記りゃっき号ごうで、緑色みどりいろ (vert)。

企業きぎょう

VISA社しゃのニューヨーク証券しょうけん取引とりひき所しょ証券しょうけんコード（ティッカーシンボル）。
携帯けいたい電話でんわではVodafone（現げんソフトバンク）。
音楽おんがく業界ぎょうかいではJVCケンウッド・ビクターエンタテインメントを表あらわす
V_(カナダのテレビ局てれびきょく) - カナダケベック州しゅうのフランス語ふらんすごテレビネットワーク。

製品せいひん

ナチス・ドイツが第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん末期まっきに開発かいはつしたロケット兵器へいきVergeltungswaffe（報復ほうふく兵器へいき）の略称りゃくしょう。V1飛行ひこう爆ばく弾だん、V2ロケットなど。
メルセデス・ベンツの車種しゃしゅ・Vクラス。
ボルボの、ワゴン車種しゃしゅ名めいを示しめす略号りゃくごう。
V - 1980年代ねんだいに開発かいはつされた分散ぶんさん OS。
中国ちゅうごくで発売はつばいされているWiiタイプのゲーム機き。Viiとは異ことなる。
ソニーの記録きろくメディア (VHS, DVD, BD) のブランド。

作品さくひんタイトル

ハイドンの交響こうきょう曲きょく第だい88番ばん『V字じ』。
V. - トマス・ピンチョンの小説しょうせつ
V (1983年ねんのテレビドラマ) - 1983年ねんにアメリカで製作せいさくされたテレビミニシリーズ。地球ちきゅうに来襲らいしゅうした異い星ほし人じん「ビジター」と人類じんるいとの戦たたかいを描えがく。
- V (2009年ねんのテレビドラマ) - 2009年ねんから2011年ねんまで放送ほうそうされた上記じょうき作品さくひんのリメイク版ばん。
音楽おんがくゲーム、beatmania IIDXシリーズ (beatmania IIDX 5th Style以降いこう) に収録しゅうろくされている楽曲がっきょく・TAKA名義めいぎの石川いしかわ貴之たかゆきの楽曲がっきょく。アントニオ・ヴィヴァルディの四季しきの『冬ふゆ』をモチーフとしている。続編ぞくへんの『V2』は「beatmania IIDX 16 EMPRESS」に収録しゅうろく。
V (マルーン5のアルバム) - マルーン5が2014年ねんに発表はっぴょうした5thアルバム。
V (MY FIRST STORYのアルバム) - MY FIRST STORYが2020年ねんに発売はつばいしたアルバム。
V (ボルト) - 遊ゆう助すけのシングル「V/時給じきゅう850円えんのサンタクロース」収録しゅうろく曲きょく。テレビ東京てれびとうきょう系けいアニメ『ポケットモンスター XY』OPテーマ。
戸塚とつか祥さち太ふとしの楽曲がっきょく。A.B.C-Zのアルバム「ABC STAR LINE」収録しゅうろく曲きょく。
堂本どうもと光一こういちのアルバム「PLAYFUL」収録しゅうろく曲きょく。

人物じんぶつ

V (歌手かしゅ) - BTSのメンバー。
1980年代ねんだいのグラフィックノベル『Vフォー・ヴェンデッタ』の主人公しゅじんこう。復讐ふくしゅうを意味いみするVendettaの頭文字かしらもじをとっている。2006年ねんに映画えいが化かもされている。

その他た

ローマ数字すうじの5 (V)。
- 医療いりょう用ようカルテの日付ひづけ記載きさいで5月を表あらわす。例れい:「3/V」（5月がつ3日にち）。
- ヨーロッパの古ふるい日付ひづけ表記ひょうきで、5日にちを表あらわす。
- 第だい五ご脳神経のうしんけい（三叉みつまた神経しんけい）。
三さん十じゅう一いちを意味いみする数字すうじ。三さん十じゅう六ろく進しん法ほうなど、三さん十じゅう二進法にしんほう以上いじょう（参照さんしょう: 位取くらいどり記数きすう法ほう#Nが十じゅうを超過ちょうか）において三さん十じゅう一いち（十進法じっしんほうの31）を一いち桁けたで表あらわすために用もちいられる。ただし、アルファベットの I と数字すうじの 1 、およびアルファベットの O と数字すうじの 0 が混同こんどうし易やすいために、アルファベットの I と O を用もちいないことがあり、この場合ばあい、J が十じゅう八はち、K が十じゅう九きゅう、…、N が二に十じゅう二に、P が二に十じゅう三さん、…、V が二に十じゅう九きゅうを意味いみする。
母音ぼいん (vowel、vowelle)。
バーチャルYouTuber (virtual YouTuber)。通称つうしょうである「VTuber」をさらに略りゃくして、Vと呼よぶことがある。
放送ほうそう業界ぎょうかいではビデオテープ、転てんじて、収録しゅうろく済ずみの素材そざいを表あらわす。
優勝ゆうしょう・勝利しょうり (victory)。
- Vサイン（ピースサイン）
- V+数字すうじで、連続れんぞく優勝ゆうしょう。
V字じ回復かいふく - 企業きぎょうなどの業績ぎょうせきが急激きゅうげきに落おち込こみ、その後ご企業きぎょう努力どりょくなどで一気いっきに業績ぎょうせきが回復かいふくすること。
V字じ谷だに - V字じの断面だんめんをした谷たに。
動詞どうし (verb)。
ベクトル空間くうかんを表あらわすのにしばしば用もちいる。

主おもに小文字こもじ

ベクトル (vector) 変数へんすう。2文字もじ目めには u を使つかうことが多おおい。
速度そくど（velocity）の量りょう記号きごう。2文字もじ目めには u を使つかうことが多おおい。
量子りょうし群ぐんのパラメータ
バージョン(version)。v1.1など（大文字おおもじで表記ひょうきされる場合ばあいもある）。
巻まき（かん）(volume)。
記号きごうのASCII表現ひょうげん。
- インターネット上うえのチャットや掲示板けいじばんではハートマークをvで表あらわす事ことがある。連続れんぞくして使つかわれることもある（例れい「大好だいすきvvv」）。主おもに若わかい女性じょせいが用もちいる表現ひょうげんである。
- チェックマーク「✓」。対応たいおうするバロットサイン「✗」はx。
- 下向したむき矢印やじるし「↓」。対応たいおうする上向うわむき矢印やじるし「↑」は^。
姓せいの一部いちぶの、ドイツ語ごの前置詞ぜんちしフォン (von) またはオランダ語ごの前置詞ぜんちしヴァン (van)。
副ふく (vice)。たとえば v.president = vice president（副ふく大統領だいとうりょう・副ふく社長しゃちょう）。

大文字おおもじ・小文字こもんじ

単位たんい接頭せっとう辞じ - いずれもジム・ブロワーズ (Jim Blowers) の提案ていあん。
- V = 10³³ = ベンダカ (vendeka) またはブンダ (vunda)
- v = 10⁻³³ = ベンデコ (vendeko) またはブンクト (vunkto)

符号ふごう位置いち

大文字おおもじ	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	小文字こもんじ	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	備考びこう
V	`U+0056`	`1-3-54`	`V` `V`	v	`U+0076`	`1-3-86`	`v` `v`
Ｖ	`U+FF36`	`1-3-54`	`Ｖ` `Ｖ`	ｖ	`U+FF56`	`1-3-86`	`ｖ` `ｖ`	全角ぜんかく
Ⓥ	`U+24CB`	`‐`	`Ⓥ` `Ⓥ`	ⓥ	`U+24E5`	`1-12-54`	`ⓥ` `ⓥ`	丸まる囲かこみ
🄥	`U+1F125`	`‐`	`🄥` `🄥`	⒱	`U+24B1`	`‐`	`⒱` `⒱`	括弧かっこ付つき
𝐕	`U+1D415`	`‐`	`𝐕` `𝐕`	𝐯	`U+1D42F`	`‐`	`𝐯` `𝐯`	太字ふとじ

他たの表現ひょうげん法ほう

フォネティックコード	モールス符号ふごう
Victor	・・・－


信号しんごう旗はた	手旗てばた信号しんごう	点字てんじ

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 徐じょ琳ほか、『傈僳語ご簡志』p126、1986年ねん、民族みんぞく出版しゅっぱん社しゃ、北京ぺきん
^ 韋景雲くも、覃祥周しゅう、『壮語そうご基礎きそ教程きょうてい』p29、2008年ねん、中央ちゅうおう民族みんぞく大学だいがく出版しゅっぱん社しゃ、北京ぺきん、ISBN 978-7-81108-475-7
^ 王おう輔世、『苗なえ語ご簡志』pp146-147、1985年ねん、民族みんぞく出版しゅっぱん社しゃ、北京ぺきん
^ 徐じょ琳、趙ちょう衍蓀、『白しろ語ご簡志』p135、1984年ねん、民族みんぞく出版しゅっぱん社しゃ、北京ぺきん
^ 李り永ひさし燧ひうち、『哈尼語ご語法ごほう』p14、1990年ねん、民族みんぞく出版しゅっぱん社しゃ、北京ぺきん、ISBN 710500648X