(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ウラル語族 - Wikipedia コンテンツにスキップ

ウラル語族ごぞく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウラル語族ごぞく
原郷はらごうりょうかわ地域ちいきサヤン山脈さんみゃく
はなされる地域ちいき北欧ほくおう東欧とうおうきたアジア
言語げんご系統けいとうユカギールとの同系どうけいせつアルタイ諸語しょごウラル・アルタイ語族ごぞくすとするせつインド・ヨーロッパ語族ごぞくインド・ウラル語族ごぞくすとするせつがあるが、いずれも証明しょうめいされていない。
祖語そごウラル祖語そご
下位かい言語げんご
ISO 639-5urj
ウラル語族ごぞく分布ぶんぷ(ただし、ピンク色ぴんくいろユカギール諸語しょご分布ぶんぷであり、ウラル語族ごぞくふくまれない)

ウラル語族ごぞく(ウラルごぞく)は、シベリアきたアジアちゅう北部ほくぶきたヨーロッパひがしヨーロッパ話者わしゃ地域ちいき分布ぶんぷする語族ごぞくである。やく2,500まんにんはなされている。フィン・ウゴルサーミフィンランドエストニアなど)、サモエードネネツなど)に大別たいべつできる。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

ウラル語族ごぞくぞくする言語げんごにはつぎ特徴とくちょうがある。

なお語順ごじゅんは、東部とうぶおもSOVがた西部せいぶおもSVOがたである。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

ウラル語族ごぞく、ユカギール分布ぶんぷ
サモエード - SN:北部ほくぶサモエードぐん、SS:南部なんぶサモエードぐん
フィン・ウゴル - FU:ウゴル諸語しょご、FP:ペルム諸語しょご、FW:ボルガ・フィン諸語しょご、FS:サーミ、FO:バルト・フィン諸語しょご
(J:ユカギール

ウラル語族ごぞくとされる言語げんご以下いかとおり。

かく諸語しょごごとの系統けいとう関係かんけいはコンセンサスがられていないが、以下いかのようなせつがある。

比較ひかく[編集へんしゅう]

特徴とくちょう比較ひかく[編集へんしゅう]

特徴とくちょう サモエード諸語しょご オビ・ウゴル諸語しょご ハンガリー ペルム諸語しょご マリ諸語しょご モルドヴィン諸語しょご フィン諸語しょご サーミ諸語しょご
口蓋こうがい + + ± + - + - +
長子ちょうしおん - - + - - - + +
子音しいん階梯かいてい交替こうたい 1 - - - - - + +
母音ぼいん調和ちょうわ 2 2 + - + + + -
母音ぼいん交替こうたい + + - - - - 3 +
そうすう + + - - - - - +
受動態じゅどうたい - + + - - + + +
否定ひてい動詞どうし + - - + + ± + +
SVO語順ごじゅん - - - 4 - + + +
ちゅうした母音ぼいん
[ɨ]
+ 5 - + - + ± ±
  1. ガナサンのみにあり
  2. ガナサンみなみマンシひがしハンティにあり
  3. リヴォニアのみにあり
  4. コミにあるが、ウドムルトにはない
  5. ひがしハンティにあり

数詞すうし[編集へんしゅう]

かず フィン・ウゴル サモエード
祖語そご
バルト・フィン
祖語そご
サーミ
祖語そご
ペルム
祖語そご
モルドヴィン
祖語そご
マリ
祖語そご
ウゴル
祖語そご
フィン・ウゴル
祖語そご
'1' *yk-si *(w)ɘkʰ-tə *ɵk-ti *vejk- *ik-tə *əgʲ- *wik-tɨ *ŋoːpʔ/
*uk-
'2' *kak-si *kuokʰ-tə *kɨk *kavto *kok-tə *ket- *kek-tɨ *sid-
'3' *kolme *kolˠm *kujim *kolma *kom- *qoːləm *koləm *nagur
'4' *nʲelja *nʲelje *nʲɨlʲ- *nʲilʲa *nɘl- *nʲel- *ńeljä *tʲet-
'5' *viisi *vɨtʰ-tə *vit- *vetʲæ *βべーたiʦ- *wet *wit-tɨ *somplaŋk
'6' *kuuzi *kutʰ-tə *kwatʲ *koto *kud- *qot *kwaðʲ-tɨ *motuq
'7' *seiʦemæn *kieʧʲəm *sʲizʲɨm *sʲizʲem *ʃɘm- *sæːt *śećɨm *seqw
'8' *kah-(dekʃan) *kakʰ(-ʦɛ) *kɨk-jamɨs *kav-kso *kan-(dekʃ) *nʲol- 2x4
'9' *yh-(dekʃan) *(w)ɘkʰ(-ʦɛ) *ɵk-mɨs *vej-kse *(ɘn-dekʃ) 10-1 10-1 *10-1
'10' *kymmenæn *lɔːkʲe (*das) *kemenʲ *lu *low? *loki *juq?

どうみなもと[編集へんしゅう]

英語えいご ウラル祖語そご フィン イナリ・
サーミ
エルジャ マリ
(Meadow)
コミ ウドムルト ハンガリー マンシ
(northern)
ハンティ
(Kazym)
ネネツ
(Tundra)
'fire' *tuli tuli
(tule-)
tulla tol tul tyl- tyl tuu
'water' *weti vesi
(vete-)
ved´ wüt va vu víz wit jiʔ
'ice' *jäŋi jää jieŋa ej i ji jég jaaŋk jeŋk
'fish' *kala kala kyeli kal kol hal xuul xŭɬ xalʲa
'nest' *pesä pesä peesi pize pəžaš poz puz fészek pitʲi pʲidʲa
'hand, arm' *käti käsi
(käte-)
kieta ked´ kit ki ki kéz kaat
'eye' *śilmä silmä čalme śeĺme šinča śin śin, śinm- szem sam sem sæwə
'fathom' *süli syli
(syle-)
solla seĺ šülö syl sul öl(el) tal ɬăɬ tʲíbʲa
'vein / sinew' *sï(x)ni suoni
(suone-)
suona san šün sən sən ín taan ɬɔn teʔ
'bone' *luwi luu lovaža lu ly ly luw ɬŭw le
'liver' *mïksa maksa makso mokš mus mus máj maat mŏxəɬ mudə
'urine' /
'to urinate'
*kunśi kusi
(kuse-)
kužža kəž kudź kyź húgy xuńś- xŏs-
'to go' *meni- mennä
(men-)
moonnađ mija- mun- myn- menni men- măn- mʲin-
'to live' *elä- elää
(elä-)
eelliđ ila- ol- ul- él- jilʲe-
'to die' *ka(x)li- kuolla
(kuol-)
kulo- kola- kul- kul- hal- xool- xăɬ- xa-
'to wash' *mośki- muśke- muška- myśky- myśk- mos- masø-

母音ぼいん調和ちょうわ[編集へんしゅう]

ウラル語族ごぞく母音ぼいん調和ちょうわ祖語そご時代じだいから存在そんざいしたとかんがえられる。バルト・フィン諸語しょごモルドヴィン諸語しょごハンガリーガナサンとう存在そんざいし、おおくがぜんした母音ぼいんこうした母音ぼいん対立たいりつによる「した調和ちょうわ」である[1]母音ぼいん調和ちょうわ関与かんよしない母音ぼいん存在そんざいする。母音ぼいん調和ちょうわ接尾せつびまえせっふくめたかたり全体ぜんたいおよ[2]

ウラルけい民族みんぞく歴史れきし[編集へんしゅう]

ウラル語族ごぞくはな民族みんぞくは、おおきくサモエードけいフィン・ウゴルけい大別たいべつされる。

言語げんごがくてき知見ちけんからは、サモエド祖語そごとフィン・ウゴル祖語そご分岐ぶんき年代ねんだいはおよそ紀元前きげんぜん4000ねんごろとかんがえられている[3]

分子ぶんし人類じんるいがくてき知見ちけんからは、ウラル語族ごぞく話者わしゃ関連かんれんする遺伝子いでんしとしてY染色せんしょくたいハプログループNがあげられる。ハプログループNはひがしアジア発祥はっしょうかんがえられ[4]、ほとんどのウラルけい民族みんぞくこう頻度ひんど観察かんさつされる。中国ちゅうごく北東ほくとうりょうかわ文明ぶんめい時代じだい人骨じんこつからY染色せんしょくたいハプログループNが60%以上いじょうこう頻度ひんど検出けんしゅつされており[5]、フィン・ウゴルけい民族みんぞく関連かんれんする櫛目くしめぶん土器どき最古さいこのものがりょうかわ地域ちいき興隆こうりゅうくぼ文化ぶんか紀元前きげんぜん6200ねん - 紀元前きげんぜん5400ねん)の遺跡いせき発見はっけんされている[6]ことをあわせてかんがえれば、ウラルけい民族みんぞくりょうかわ文明ぶんめいにな集団しゅうだん関連かんれんせい示唆しさされる。

また、mtDNAハプログループZ極北きょくほく地域ちいき中心ちゅうしんサーミじんフィンじんシベリア北東ほくとうアジア中央ちゅうおうアジア中国ちゅうごく朝鮮ちょうせん日本にっぽんなどで観察かんさつされており[7]、Y染色せんしょくたいハプログループNとおなじようなながれが想定そうていされ[8]、ウラル語族ごぞく拡散かくさんとの関連かんれん示唆しさするものとかんがえられる。

朝鮮半島ちょうせんはんとうでは、紀元前きげんぜん4000ねんから紀元前きげんぜん1500ねんにかけて櫛目くしめぶん土器どき発見はっけんされる。さらにウラル語族ごぞくひろられるなかした母音ぼいん[ɨ]が古代こだい朝鮮ちょうせん存在そんざいしたとかんがえられることから、かつての朝鮮半島ちょうせんはんとうにウラルけい言語げんごはなされていた可能かのうせいがある。

また、日本にっぽん日本海にほんかいがわ東北とうほく地方ちほう観察かんさつされるなかした母音ぼいんの[ɨ](いわゆるズーズーべん)についても、ウラル語族ごぞく音声おんせい特徴とくちょう由来ゆらいする可能かのうせいがある[9]

語族ごぞくとの関連かんれん[編集へんしゅう]

ユカギールとのあいだウラル・ユカギール語族ごぞく形成けいせいするというせつ有力ゆうりょくである。両者りょうしゃ人称にんしょう代名詞だいめいしひとしあきらかにどうみなもとであり、否定ひてい動詞どうし存在そんざいするなど類型るいけいてき特徴とくちょう類似るいじしている。ユカギールじんはかつては西にしバイカルまで分布ぶんぷしていたといわれており、りょうかわモンゴル付近ふきんでウラル語族ごぞく分岐ぶんき東方とうほうかったとかんがえられる。ハプログループN (Y染色せんしょくたい) がユカギールじんでも31%観察かんさつされる[10]ことから、遺伝子いでんしめんからも両者りょうしゃどうみなもとせい示唆しさされる。

アルタイ諸語しょごとのあいだウラル・アルタイ語族ごぞく形成けいせいするというせつふるくからあるが、語族ごぞくとしての条件じょうけんたさないため現在げんざい棄却ききゃくされている。話者わしゃてんからもアルタイ諸語しょごハプログループC2 (Y染色せんしょくたい)、ウラル語族ごぞくはハプログループN (Y染色せんしょくたい) とことなっている。しかしウラル語族ごぞくとアルタイ諸語しょご類型るいけいてき類似るいじはなはだしく、おそらくアルタイ山脈さんみゃく付近ふきん分布ぶんぷしていたはらアルタイ諸語しょごが、りょう河方かわかためんから拡散かくさんしてきたウラル語族ごぞく上層じょうそう言語げんごとして混合こんごうし、ウラル語族ごぞく類型るいけいてき特徴とくちょう現在げんざいのアルタイ諸語しょご形成けいせいされたものとおもわれる[独自どくじ研究けんきゅう?]

一方いっぽうで、一部いちぶ形態素けいたいそいちじるしい一致いっちからインド・ヨーロッパ語族ごぞくとの同系どうけいせつ存在そんざいする。しかしインド・ヨーロッパ語族ごぞく原郷はらごう黒海こっかい北岸ほくがんであり、両者りょうしゃどうみなもとであるとはかんがえられない。クルガン仮説かせつでは、ふる時代じだいインド・ヨーロッパぞく北方ほっぽう森林地帯しんりんちたいウラルけい民族みんぞくとの活発かっぱつ交流こうりゅうがあったことが想定そうていされており、おそらくインド・ヨーロッパ語族ごぞく成立せいりつ過程かていにおいて、ウラル語族ごぞくとの接触せっしょくにより言語げんご混合こんごうこしたものと推測すいそくされる。フィン・ウゴルにおけるインド・ヨーロッパ語族ごぞくとの形態素けいたいそ類似るいじが、サモエードやユカギールにおけるそれにくらべてたかいのは、インド・ヨーロッパ祖語そごとの接触せっしょくがフィン・ウゴルかぎられていたおもわれる[独自どくじ研究けんきゅう?]

また、マイケル・ホーテスキューによって1998ねん最初さいしょ提案ていあんされたウラル・シベリア語族ごぞく[11]存在そんざいする。これはウラル語族ごぞく、ユカギールチュクチ・カムチャツカ語族ごぞくエスキモー・アレウト語族ごぞくふくまれるが、げん段階だんかいでは定説ていせつにはいたっていない。ただし、上記じょうき諸語しょごぞく話者わしゃにハプログループN (Y染色せんしょくたい) がこう頻度ひんどふくまれていることから、ハプログループNにぞく集団しゅうだんながれを反映はんえいしている可能かのうせいがある。

仮説かせつ[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 小泉こいずみたもつ(1991)『ウラルのはなし』 大学だいがく書林しょりん P82-P83
  2. ^ 言語げんごがくだい辞典じてんだい1かん世界せかい言語げんごへん】 (うえ) ウラル語族ごぞく p850
  3. ^ 言語げんごがくだい辞典じてんだい1かん 世界せかい言語げんごへんうえ)P845-P854
  4. ^ Roosti et al.(2004)Phylogeography of Y-chromosome haplogroup I reveals distinct domains of prehistric gene flow n Europe. Am.J.Hum.Genet.75:128-137
  5. ^ Yinqiu Cui, Hongjie Li, Chao Ning, Ye Zhang, Lu Chen, Xin Zhao, Erika Hagelberg and Hui Zhou(2013)"Y Chromosome analysis of prehistoric human populations in the West Liao River Valley, Northeast China. " BMC 13:216
  6. ^ 中国ちゅうごく北方ほっぽうしん石器せっき文化ぶんか研究けんきゅうしん展開てんかい詳細しょうさい報告ほうこく】「東北とうほくアジアにおける先史せんし文化ぶんか交流こうりゅうおう たかし中国ちゅうごく社会しゃかい科学かがくいん考古こうこ研究所けんきゅうじょふく所長しょちょう
  7. ^ 篠田しのだ謙一けんいち (2007)『日本人にっぽんじんになった祖先そせんたち - DNAから解明かいめいするその多元的たげんてき構造こうぞう日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん協会きょうかい P126
  8. ^ 崎谷さきやみつる『DNA・考古こうこ言語げんご学際がくさい研究けんきゅうしめしん日本にっぽん列島れっとう』(つとむまこと出版しゅっぱん 2009ねん
  9. ^ 崎谷さきやみつる(2009)『しん日本人にっぽんじん起源きげんつとむまこと出版しゅっぱん pp113-115
  10. ^ Duggan AT, Whitten M, Wiebe V, Crawford M, Butthof A, et al. (2013) Investigating the Prehistory of Tungusic Peoples of Siberia and the Amur-Ussuri Region with Complete mtDNA Genome Sequences and Y-chromosomal Markers PLoS ONE 8(12): e83570. doi:10.1371/journal.pone.0083570
  11. ^ Fortescue, Michael. 1998. Language Relations across Bering Strait: Reappraising the Archaeological and Linguistic Evidence. London and New York: Cassell. ISBN 0-304-70330-3.

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]