接尾せつび辞じ

接尾せつび辞じ（せつびじ）、サフィックス（英えい: suffix）とは、接辞せつじのうち、語かたり基もとの後うしろに付つくもの。接尾せつび語ご（せつびご）とも言いうが、接尾せつび辞じは語かたりではない。対義語たいぎごは接頭せっとう辞じまたは接頭せっとう語ご。

日本語にほんごの接尾せつび辞じ

日本語にほんごの接尾せつび辞じを、活用かつよう語尾ごび・助詞じょし・形態素けいたいそ・いわゆる終おわり助詞じょしなどについて、いくつかの例れいを示しめす。

活用かつよう語尾ごび

〜ない（動詞どうしの語幹ごかんに接続せつぞくして否定ひてい・打だ消けしの意味いみの形容詞けいようしを作つくる。「-na-」「-ana-」とも表記ひょうきされる）
- 見みる＋〜な → 見みない
- 書かく＋〜な → 書かかない

〜ぬ（動詞どうしの語幹ごかんに接続せつぞくして否定ひてい・打だ消けしの意味いみの連体れんたい形がたを作つくる。「-na-」「-ana-」とも表記ひょうきされる）
- 見みる＋〜ぬ → 見みぬ
- 書かく＋〜ぬ → 書かかぬ

用例ようれい：「見みて見みぬふり」「撒まかぬ種たねは生はえぬ」

〜ず（動詞どうしの語幹ごかんに接続せつぞくして否定ひてい・打だ消けしの意味いみの「な」「に」に接続せつぞくする形かたちあるいは文ぶんを終止しゅうしする形かたち（形容動詞けいようどうしか？）^{[要よう校閲こうえつ]}を作つくる）
- 見みる＋〜ず → 見みず
- 書かく＋〜ず → 書かかず

用例ようれい：「見みず知しらず」「飲のまず食くわず」

〜ん（動詞どうしの語幹ごかんに接続せつぞくして否定ひてい・打だ消けしの意味いみを表あらわす連体れんたい形がたを作つくる）
- 見みる＋〜ん → 見みん
- 書かく＋〜ん → 書しょん

用例ようれい：「分わからん奴やつ」

とりたて詞し

〜は（名詞めいしが話題わだいの中心ちゅうしんを示しめすわけではなく、それほど重要じゅうようでないことを示しめす。弱よわいとりたて）
- 私わたし＋〜は　→ 私わたしは

用例ようれい：「春はるは、あけぼの」

〜が（名詞めいしが話題わだいの中心ちゅうしんを示しめすことを強調きょうちょうし、重要じゅうようであることを示しめす。強つよいとりたて）
- 私わたし＋〜が　→ 私わたしが

用例ようれい：「おれがおれが」

格かく助詞じょし

〜まで

二に種類しゅるいの用法ようほうがある。

「五ご月がつ七なな日にちの午後ごご五ご時じまで」と言いった場合ばあい、「五ご月がつ七なな日にち」は範囲はんいではあるが、午後ごご五ご時じからの一時いちじ間あいだは含ふくまれない。したがって、「五ご月がつ七なな日にちまでに入いれ品ひん」と言いわれた場合ばあい、「五ご月がつ七なな日にちの午前ごぜん零れい時じまで」なのか、「五ご月がつ八はち日にちの午前ごぜん零れい時じまで」なのかは曖昧あいまいである。

〜から

出発しゅっぱつ格かくの格かく助詞じょし

〜より

出発しゅっぱつ格かくの格かく助詞じょし。

〜へ

方向ほうこう格かく、あるいは到達とうたつ格かくの格かく助詞じょし。

形態素けいたいそ

使役しえき、可能かのう、尊敬そんけい・受動じゅどう
- 書かく＋〜使役しえき → 書かかせる
- 書かく＋〜可能かのう → 書かける
- 書かく＋〜尊敬そんけい・受動じゅどう → 書かかれる

使役しえきには「-ase-」「-as-」の二ふたつがあり、「-as-」は丁寧ていねい語ごではないとされるが、その後ごに可能かのうや尊敬そんけい・受動じゅどうの表現ひょうげんが続つづく場合ばあいは「-as-」が使つかわれる。使役しえきの「書かかせる」は正せいで「書かかす」は俗ぞくだが、使役しえき+受動じゅどうである場合ばあいは「書かかせられる」は使用しようされることが少すくなく、「書かかされる」が一般いっぱん的てきである。

〜さ（形容詞けいようしの語幹ごかんに接続せつぞくして名詞めいし化かする）
- 明あかるい＋〜さ → 明あかるさ
- 深ふかい＋〜さ → 深ふかさ
- 痛いたい＋〜さ → 痛やめさ

〜み（形容詞けいようしの語幹ごかんに接続せつぞくして名詞めいし化かする）
- 渋しぶい＋〜み → 渋しぶみ
- 痛いたい＋〜み → 痛いたみ

「渋しぶみ」は「渋しぶ味あじ」とも書かく。「深ふかみ」「高たかみ」などは別べつ義ぎなので、辞書じしょ的てきに網羅もうらしたほうが実際じっさい的てきである。

〜っぽい（名詞めいしに接続せつぞくして形容詞けいようし化かする）
- 女おんな＋〜っぽい → 女おんなっぽい
- 安やすい＋〜っぽい → 安やすっぽい

〜さん
- 鈴木すずき＋〜さん → 鈴木すずきさん
- 佐藤さとう＋〜さん → 佐藤さとうさん

「お医者いしゃさん」「お相撲すもうさん」「お巡まわりさん」「お魚屋さかなやさん」などの例れいがある。

〜がる（形容詞けいようしの語幹ごかんに接続せつぞくして表出ひょうしゅつを意味いみする動詞どうしを作つくる）
- 嬉うれしい＋〜がる → 嬉うれしがる
- 欲ほしい＋〜がる → 欲ほしがる

あくまで表出ひょうしゅつの意いである。「生意気なまいきな後輩こうはいを体育たいいく倉庫そうこ裏うらで可愛かわいがってやった」では、発話はつわ者しゃは後輩こうはいを「可愛かわいい」とは思おもってはいない。

〜的てき
- 圧倒あっとう＋〜的てき → 圧倒的あっとうてき
- 刺激しげき＋〜的てき → 刺激しげき的てき

「な」に接続せつぞくするのが一般いっぱん的てきだが、「の」に接続せつぞくする例れいもある。^{[要よう出典しゅってん]}

〜性せい
- 揮発きはつ＋〜性せい → 揮発きはつ性せい
- 耐たい熱ねつ＋〜性せい → 耐たい熱性ねっせい

〜状じょう

〜力ちから
- 読解どっかい＋〜力ちから → 読解どっかい力りょく

1998年ねんの赤瀬あかせ川原平かわらたい著ちょ「老人ろうじん力りょく」のヒット以降いこう、「○○力ちから」の造語ぞうごが多おおく見みられる。^{[独自どくじ研究けんきゅう?]}

〜系けい
- 草食そうしょく＋〜系けい → 草食そうしょく系けい

草食そうしょく系けい男子だんしという言葉ことばが流行りゅうこうしたのは2008年ねんから2009年ねんにかけて。対義語たいぎごとして肉食にくしょく系けい女性じょせいをクーガー女おんなあるいはピューマ女おんなと呼よぶ。^{[要よう出典しゅってん]}

英語えいごの接尾せつび辞じ

英語えいごの接尾せつび辞じをいくつか挙あげる。

抽象ちゅうしょう名詞めいしを作つくる。 -ation、-ance、-ism、-logy、-ship、-ment、-meter、-ness、-onym、-tomy など。
-er、-ist など：行為こうい者しゃを表あらわす名詞めいしを作つくる。
-ee：被ひ行為こうい者しゃを表あらわす名詞めいしを作つくる。
形容詞けいようしを作つくる。-ful （～でいっぱい）、-able、-ible （～できる）など。
-ly：形容詞けいようしに付つくと副詞ふくしを、名詞めいしに付つくと形容詞けいようしを作つくる。
-fy、-ify：動詞どうしを作つくる。

上記じょうきの、派生はせいに用もちいられる接尾せつび辞じが派生はせい接尾せつび辞じと呼よばれるのに対たいし、動詞どうしの時制じせいや態たいを変化へんかさせる -ed、-en、-ing は屈折くっせつ接尾せつび辞じと呼よばれ、活用かつよう語尾ごびを構成こうせいする。

コンピュータ

コンピュータ関連かんれんの分野ぶんやでは、文字もじ列れつやデータ列れつの末尾まつびに付加ふかされ、何なんらかの意味いみを表あらわす要素ようそを指さす^[1]。

コンピュータプログラミングでは、ソースコード上じょうの識別子しきべつしの命名めいめいにおいて、特定とくていの接尾せつび辞じを使つかう命名めいめい規則きそくを採用さいようしているライブラリやフレームワークもある。例たとえば.NETのタスク非同期ひどうきプログラミングでは、C#のasync修飾しゅうしょく子こを伴ともなう非同期ひどうきメソッドは、名前なまえにAsync接尾せつび辞じを付つける慣習かんしゅうとなっている^[2]。

リテラル

プログラミング言語げんごなどでは、ソースコード上じょうのリテラルに対たいして、末尾まつびに特定とくていの文字もじや記号きごうを付加ふかすることで、データ型がたなどを指定していする仕組しくみが用意よういされていることがある。

例たとえばC言語げんごやC++では、100という表記ひょうきは符号ふごう付つき汎ひろし整数せいすう型がたintのリテラルを表あらわすが、int型かたリテラルの範囲はんいはINT_MINからINT_MAXに制限せいげんされる。このリテラルに接尾せつび辞じを付つけることによって、以下いかのように型かたが変化へんかする。接尾せつび辞じの大文字おおもじ・小文字こもじは区別くべつされない。

100Lという表記ひょうきは符号ふごう付つき長ちょう整数せいすう型がたlongのリテラルを表あらわす。リテラルの範囲はんいはLONG_MINからLONG_MAXに制限せいげんされる。
100Uという表記ひょうきは符号ふごう無なし汎ひろし整数せいすう型がたunsigned intのリテラルを表あらわす。リテラルの範囲はんいは0UからUINT_MAXに制限せいげんされる。
100ULという表記ひょうきは符号ふごう無なし長ちょう整数せいすう型がたunsigned longのリテラルを表あらわす。リテラルの範囲はんいは0ULからULONG_MAXに制限せいげんされる。
100.0という表記ひょうきは倍精度ばいせいど浮動ふどう小数点しょうすうてん数すう型かたdoubleのリテラルを表あらわす。
100.0fという表記ひょうきは単精度たんせいど浮動ふどう小数点しょうすうてん数すう型かたfloatのリテラルを表あらわす。

このようなリテラルは、変数へんすうの初期しょき化か時じの右辺うへん値ちといった任意にんいの式しきの中なかで使用しようされるが、型かたによって表現ひょうげん可能かのうな範囲はんいや精度せいどが異ことなるため、使つかい分わけが必要ひつようとなる。また、型かた推論すいろんによって右辺うへん値ちから変数へんすうや定数ていすうの型かたを決定けっていさせる際さいには、型かたキャストもしくは接尾せつび辞じによってリテラルの型かたを明示めいじする必要ひつようがある。C/C++のように、異ことなる型かたのリテラルや変数へんすうが式しきの中なかに混在こんざいする場合ばあいの暗黙あんもく変換へんかんを許可きょかするような緩ゆるい言語げんごも多おおいが、F#のように、型かたに応おうじてリテラルの接尾せつび辞じが細こまかく用意よういされており、暗黙あんもく変換へんかんを許可きょかしない厳密げんみつな言語げんごもある^[3]。

脚注きゃくちゅう

出典しゅってん

参考さんこう文献ぶんけん

日本語にほんご

英語えいご

『英語えいごの「語かたり脳のう」をつくる接頭せっとう辞じと接尾せつび辞じの完全かんぜんガイド』酒井さかい玲子れいこ、国際こくさい語学ごがく社しゃ、2009年ねん、ISBN 9784877314620