リテラル

「導出どうしゅつ原理げんり」も参照さんしょう

リテラル・直ちょく値ね（英えい: literal）は、「文字もじどおり」「字義じぎどおり」を意味いみする語かたりで、letter と同おなじくラテン語らてんごの littera（文字もじ）に由来ゆらいする。数理すうり論ろん理学りがくとコンピュータプログラミングで異ことなる意味いみの専門せんもん用語ようごとして使つかわれる。

数理すうり論ろん理学りがく

リテラルとは、数理すうり論ろん理学りがくにおいて、原子げんし論理ろんり式しきあるいは原子げんし論理ろんり式しきの否定ひていのこと。

基礎きそリテラルとは、リテラルのうち、変数へんすうを含ふくんでいないものを指さす。

共通きょうつうな変数へんすうを持もたない2つの節ふしに対たいして、節ふしのそれぞれのリテラルで使つかって再さい汎ひろし単一化たんいつか要素ようそをもち、二に次元じげん導出どうしゅつ系けい (英えい: binary resolvant) を作つくる場合ばあいに導出どうしゅつに使つかわれたリテラル (英えい: literal resolved upon) と呼よぶ。共通きょうつうの変数へんすうを含ふくまない2つの節ふしで、推論すいろんした節ふしの二に次元じげん等号とうごう調整ちょうせい系けい (英えい: binary paramodulant) を作つくったとき、等号とうごう調整ちょうせいに使つかわれたリテラル (英えい: literal paramodulated upon) という。

コンピュータプログラミング

コンピュータプログラミング言語げんごにおいてリテラルは、ソースコード内うちに値ねを直接ちょくせつ表記ひょうきしたものをいう。言語げんごによってリテラルとして表記ひょうきできる型かたの種類しゅるいや表記ひょうき方法ほうほうは異ことなる。簡略かんりゃくに記述きじゅつできることが好このまれるスクリプティング言語げんごはリテラルの種類しゅるいが多おおい傾向けいこうにある。リテラル表記ひょうきができるかどうかはその型かたが第だい一いち級きゅうオブジェクトかどうかを検討けんとうする材料ざいりょうにもなるが、必かならずしもそうとは限かぎらない。静的せいてきに構文こうぶん解析かいせきが可能かのうなことが多おおいためシンタックスハイライトではたいてい色分いろわけされる。なお言語げんごによっては（標準ひょうじゅん規格きかく等とうで）このリテラルのことを指さして「定数ていすう」という用語ようごを使つかっている場合ばあいもあるが、「リテラル」という語かたりと使つかい分わける場合ばあいは、「定数ていすう」とは「初期しょき化かできるだけで、その後ごは値ねを変かえられない変数へんすう」というようなものを指さす。

数値すうち

整数せいすう、浮動ふどう小数点しょうすうてん数すうはほとんどの言語げんごでサポートされる。他ほかにも固定こてい小数点しょうすうてん数かず、複素数ふくそすう、実数じっすう、分数ぶんすうなどに対応たいおうする言語げんごがある。

同おなじ種類しゅるいのリテラルに対応たいおうしていても言語げんごごとに機能きのう面めんで違ちがいがある。以下いかに挙あげるのはその代表だいひょう的てきなもの。

• 10進しん法ほう以外いがいに、2進しん法ほう、8進しん法ほう、16進しん法ほうで表記ひょうきできるか。また、その表記ひょうき法ほう。
• 0.1F のように型かたを明示めいじするためのサフィックスがあるか。
• 0.1 を .1 と整数せいすう部ぶを省略しょうりゃくして書かけるか。
• 数値すうちの間あいだに桁けた区切くぎりとして _ などを挟はさめるか。

文字もじ型がた

'A'のようにシングルクォートで文字もじを挟はさみ、エスケープシーケンスが使つかえる場合ばあいが多おおい。ASCIIやUnicodeの1文字もじを表あらわすものがある。Schemeでは #\A、#\newline などのような記法きほうである。SGML などでは λ、ዀ などのような記法きほうである。

文字もじコードを表あらわすと考かんがえて、数値すうち型がたに含ふくめる場合ばあいもある。

文字もじ列れつ型がた（文字もじ列れつリテラル）

"this is a string literal"のようにダブルクォートや、シングルクォートで文字もじ列れつを囲かこむ場合ばあいが多おおいが、一ひとつの言語げんごに複数ふくすうの記述きじゅつ法ほうがあり、特殊とくしゅな記法きほうが用意よういされる場合ばあいもある。その際さいにはエスケープシーケンスの処理しょり、文字もじ列れつ補間ほかん（式しき展開てんかい）の有無うむ、文字もじ列れつの終おわりの解釈かいしゃくなどがそれぞれ異ことなる。

また、改行かいぎょうやホワイトスペースをそのまま反映はんえいする文字もじ列れつリテラルの記法きほうをヒアドキュメントと呼よぶ。特とくにプログラミング言語げんごのソースコード内ないにスクリプト言語げんごやデータ記述きじゅつ言語げんごのソースコードを文字もじ列れつとして記述きじゅつしたり、正規せいき表現ひょうげんを文字もじ列れつとして記述きじゅつしたりするときに便利べんりである。C++11では生なまの文字もじ列れつリテラル (raw string literal) と呼よばれる。C#ではもともと逐語ちくご的てき文字もじ列れつリテラル (verbatim string literal) と呼よばれる機能きのうが備そなわっていたが、C# 11ではさらにダブルクォートのエスケープも不要ふようとなる生なま文字もじ列れつリテラルの機能きのうが追加ついかされた。

関数かんすう

関数かんすうリテラルは関数かんすうを第だい一いち級きゅうオブジェクトとして扱あつかえる言語げんごに備そなわっている。

無名むめい関数かんすう（ラムダ式しき）を表現ひょうげんする。クラスなどに関数かんすうが定義ていぎできるだけでは関数かんすうリテラルとはみなされない。

同様どうようの機能きのうであっても関数かんすうリテラルと呼よばない言語げんごもある。第だい一いち級きゅう関数かんすうも参照さんしょう。

正規せいき表現ひょうげん

/regex/のようにスラッシュで挟はさむ。「大文字おおもじ小文字こもじを区別くべつしない」等々とうとうのオプションが後うしろに付つけることができるような仕様しようであることが多おおい。

配列はいれつ

配列はいれつのリスト初期しょき化か構文こうぶんをサポートする言語げんごは多おおいが、配列はいれつのリテラルをサポートしているとは限かぎらない。

C言語げんごをはじめとするC系けいの言語げんごでは、{1, 2, 3}のように要素ようそをコンマで区切くぎり、ブレースで囲かこむ。ただしC/C++では、この記法きほうは「初期しょき化か子こリスト」であり、配列はいれつのリテラルではない。Javaでは「配列はいれつ初期しょき化か子こ」、C#では「コレクション初期しょき化か子こ」であり、ともに配列はいれつのリテラルではない。

RubyやJavaScriptなどは、[1, 2, 3]のようにブラケットで囲かこむ。

Pythonはリストのリテラル[1, 2, 3]、タプルのリテラル(1, 2, 3)、セットのリテラル{1, 2, 3}をサポートするが、配列はいれつ（数値すうち用ようのコンパクトなコレクション表現ひょうげん）のリテラルはサポートしない。

OCamlおよびF#は配列はいれつのリテラル（[| 1; 2; 3 |]など）およびリストのリテラル（[ 1; 2; 3 ]など）をサポートする。

Goは[3]int{1, 2, 3}のように要素ようそ数すうと型かたを指定していすることで配列はいれつ（固定こてい長ちょうのコレクション）のリテラルとなる。[]int{1, 2, 3}のように要素ようそ数すうを省略しょうりゃくするとスライス（可変長かへんちょうのコレクション）のリテラルとなる。

連想れんそう配列はいれつ

一いち例れいとしては、{"hoge":1, "piyo":2} といったように書かく。このように書かいた場合ばあいは、キーが"hoge"で値ねが1のペアと、キーが"piyo"で値ねが2のペアの配列はいれつを示しめす。言語げんごによってキーと値ねの間あいだの記号きごうが=>や->であることがある。

オブジェクトリテラル

JavaScriptではオブジェクトが属性ぞくせい名めいと属性ぞくせい値ちのペアの集あつまりであり、前述ぜんじゅつの連想れんそう配列はいれつのようにしてオブジェクトをリテラルとして書かける。

JavaScriptにおけるオブジェクトリテラルと、その他たの基本きほん的てきなデータ型がた（文字もじ列れつと数値すうちと真理しんり値ち）のリテラル記法きほうの組くみ合あわせは、階層かいそう構造こうぞうを持もつデータを記述きじゅつするのに便利べんりである。データ記述きじゅつ言語げんごのひとつに、JavaScriptの構文こうぶんと意味いみからリテラルの部分ぶぶんだけを取とり出だしたサブセットとして規格きかく化かされたJSONがある。

構造こうぞう体たい（レコード）

構造こうぞう体たいのリスト初期しょき化かや指示しじ付つき初期しょき化かの構文こうぶんをサポートする言語げんごは多おおいが、構造こうぞう体たいのリテラルをサポートしているとは限かぎらない。

C言語げんごのC99規格きかく以降いこうでは、designated initializer（指示しじ付つき初期しょき化か子こまたは指示しじ初期しょき化か子こ）のサポートにより、任意にんいの構造こうぞう体たいにおいて任意にんいのメンバの初期しょき値ちについて指示しじができる。C++20規格きかくでも同様どうようの指示しじ付つき初期しょき化か機能きのうのサブセットが導入どうにゅうされた。

複ふく合あいリテラル (compound literal)

C言語げんごのC99規格きかく以降いこうでは、compound literal（複ふく合あいリテラル）のサポートにより、従来じゅうらいはリテラルを書かけなかった型かたのうちいくつかについて、リテラルを書かけるようになった。例たとえば、配列はいれつの場合ばあいは(int[]){ 1, 2, 3 }のように書かき、構造こうぞう体たいの場合ばあいは(struct tm){ .tm_year = 107, .tm_mon = 7, .tm_mday = 24 }のように書かく。

ユーザー定義ていぎリテラル (user-defined literal)

C++のC++11規格きかく以降いこうでは、演算えんざん子こオーバーロードによりプログラマが任意にんいの型かたのリテラルを定義ていぎできるようになった。

null

null、nil、nullptr

真偽しんぎ値ち

false/true、#f/#t

シンボル

'symbol、:symbol

ベクター

#(1.2 3.4 cat)（Schemeでの例れい）

範囲はんい

[1, 8)（Synopsys IC Validator の PXL 言語げんごでの例れい）

例れい

下したのC#コードにおいて、7, 3.14, true, "hello"がそれぞれの型かたのリテラルである。

int x = 7;
double pi = 3.14;
bool flag = true;
string s = "hello";

C#ではリテラルもオブジェクトであり、以下いかのようにメソッドを呼よび出だすこともできる。

using System;

Console.WriteLine(7.GetType());
Console.WriteLine(3.14.GetType());
Console.WriteLine(true.GetType());
Console.WriteLine("hello".GetType());

出力しゅつりょく結果けっかは以下いかのようになる（C#の組くみ込こみ型がたは、.NETのCLR型かたへのエイリアスである）。

System.Int32
System.Double
System.Boolean
System.String

参考さんこう文献ぶんけん

• Chang, Chin-Liang、Lee, Richard Char-Tung 著ちょ、長尾ながお真しん、辻井つじい潤一じゅんいち 訳やく『コンピュータ定理ていりの証明しょうめい』 27巻かん、日本にっぽんコンピュータ協会きょうかい (編へん)〈コンピュータ・サイエンス研究けんきゅう書しょシリーズ〉、1983年ねん9月がつ。 NCID BN00844314。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:85013050。  原書げんしょ: Symbolic Logic and Mechanical Theorem Proving

関連かんれん項目こうもく

• 値ね (計算けいさん機き科学かがく)