洗濯せんたく板ばん

洗濯せんたく板ばん（せんたくいた、英語えいご: washboard）とは、洗濯せんたくのために用もちいられる波状はじょう（鋸のこ状じょう、三角さんかく状じょう）の刻きざみを多数たすう付つけた板いた状じょうの道具どうぐ。

洗濯せんたく板ばん

1797年ねんにヨーロッパで発明はつめいされた^[1]。ただし、このような構造こうぞうを持もつ道具どうぐは、中国ちゅうごく発祥はっしょうのものとする仮説かせつもある^[2]。 19世紀せいき後半こうはんから20世紀せいきの前半ぜんはんにかけて、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは中国ちゅうごく式しきの洗濯せんたく板ばんが広ひろく利用りようされた^[2]。日本にっぽんでは近代きんだいになるまで、たらいを用もちいた手洗てあらい・手てもみ・足あしもみが一般いっぱん的てきな洗濯せんたく方法ほうほうで、洗濯せんたく板ばんのようなものは見みられなかった^[2]。日本にっぽんへは欧米おうべいを通とおして移入いにゅうされたが、洗濯せんたく板ばんを用もちいた洗濯せんたくが一般いっぱん的てきになるのは、大正たいしょう時代じだいからである^[3]。

電気でんき洗濯せんたく機きの普及ふきゅうとともに洗濯せんたく板ばんは必需ひつじゅ品ひんではなくなり、用もちいられる頻度ひんどが激減げきげんし、洗濯せんたく板ばんは持もたない家庭かていのほうが増ふえた。しかし、今いまでも靴下くつしたなどの汚よごれの酷ひどい部分ぶぶんを予よ洗あらいするため、使つかわれることがある。日本にっぽんでは、ハンカチや靴下くつした、また一人暮ひとりぐらし用ようの少量しょうりょうの洗濯せんたくをするための、洗濯せんたく機きより安上やすあがりで簡易かんいな洗濯せんたく道具どうぐとして見直みなおされている。百ひゃく円えんショップなどで、小型こがたのプラスチック素材そざいの洗濯せんたく板ばんも販売はんばいされている。

なお欧米おうべいでは、副次的ふくじてきな楽器がっきとしての用途ようとで用もちいられることもある。

利用りよう

洗濯せんたく

材質ざいしつは木材もくざい・金属きんぞく・ガラスが用もちいられ、形状けいじょうは一いち枚まいの長方形ちょうほうけいで洗濯せんたくに用もちいられる表側おもてがわとそうでない裏側うらがわとがある。表側おもてがわには長ちょう辺べに対たいして、垂直すいちょく方向ほうこうに鋸のこ状じょうの切きり込こみがあり、これに水みずに濡ぬらした洗濯せんたく物ぶつを押おしつけながら、洗濯せんたく物ぶつを往復おうふくさせることによって、衣服いふくの汚よごれを落おとす。洗濯せんたく板ばんはタライや桶おけと併用へいようし固定こていする。

洗濯せんたく物ぶつは大抵たいていの場合ばあいは繊維せんい品ひんであり、洗濯せんたく板ばんに押おしつけられることによる圧力あつりょくと摩擦まさつにある程度ていどまで耐たえることができる。一方いっぽう、乾燥かんそう状態じょうたいの洗濯せんたく物ぶつにとりついた汚よごれは、洗濯せんたく物ぶつが水みずに濡ぬれている環境かんきょうでは、洗濯せんたく板ばん上じょうでの圧力あつりょく・摩擦まさつ・振動しんどうなどによって分解ぶんかい・剥離はくりして洗濯せんたく物ぶつから分離ぶんりする。分離ぶんりした汚よごれは水みずによって洗あらい流ながされるが、洗濯せんたく物ぶつはその姿すがたをとどめることになる。これが洗濯せんたく板ばんを用もちいた洗濯せんたくの原理げんりである。

界面かいめん活性かっせい剤ざい（石鹸せっけんや合成ごうせい洗剤せんざい）を併用へいようすると、汚よごれの分離ぶんりが促進そくしんされる。

楽器がっき

ジャグミュージックでは、洗濯せんたく板ばんを楽器がっきに用もちいる事ことがある。日本にっぽんでは現代げんだい的てきなチンドン屋やなどが用もちいて演奏えんそうをする。

「ウォッシュボード」を参照さんしょう

比喩ひゆ

「洗濯せんたく板ばん」は、非常ひじょうに痩やせている痩身そうしんの隠喩いんゆとして用もちいられた。1960年代ねんだいまでは、日本にっぽんでも食糧しょくりょう事情じじょうが悪わるく、栄養えいよう不足ふそくから、肋骨あばらぼねが透すけて見みえるほど痩やせた子供こどもがかなりいたのである。1990年代ねんだいからは、週刊しゅうかん誌しなどで「巨乳きょにゅう」の対義語たいぎごである『貧乳ひんにゅう』を例たとえる表現ひょうげんとして用もちいられることがある。同様どうようの表現ひょうげんに「まな板いた」があるが、「洗濯せんたく板ばん」の場合ばあい、胸むねの谷間たにまが目立めだたないことに加くわえて、肋骨あばらぼねの凹凸おうとつ感かんも強調きょうちょうされた表現ひょうげんになる。