流ながれ藻も

サルガッソー海うみの流ながれ藻も

流ながれ藻も（ながれも、drifting algae, drifting seaweeds）とは、海面かいめんに浮遊ふゆうしている種々しゅじゅな藻類そうるいの総称そうしょうである。

各かく海域かいいきにおける流ながれ藻も

世界せかい的てきには大西おおにし洋ひろしのサルガッソー海うみ (Sargasso Sea) の流ながれ藻もが有名ゆうめいであるが、この流ながれ藻ももホンダワラ属ぞくの Sargassum natans と Sargassum fluitans である。両りょう種たねとも浮遊ふゆうした状態じょうたいで繁殖はんしょくする生活せいかつ史しを繰くり返かえしている。また、ベルギーではホンダワラ属ぞくの Sargassum muticum、ヒバマタ目めの Ascophyllum nodosum とヒバマタ科かの Fucus vesiculosus の流ながれ藻もが確認かくにんされている。アイスランドでは同おなじくヒバマタ目めの A. nodosum とヒバマタ科かの F. vesiculosus が、カリフォルニア州しゅう沿岸えんがんではジャイアントケルプ (Macrocytis pyrifera) が流ながれ藻もとなっている。

日本にっぽんでは初夏しょかの沿岸えんがん水域すいいきで普通ふつうに見みられ、日本にっぽん周辺しゅうへんではホンダワラ属ぞくおよびそれに近きん縁えんの属ぞくの植物しょくぶつが流ながれ藻もの大だい部分ぶぶんを占しめている。これは浅海せんかい域いきの岩礁がんしょう上じょうに分布ぶんぷしているホンダワラ属ぞくの海藻かいそうが、流ながれや波なみによって基質きしつから引ひき剥はがされ、沖合おきあい域いきに流ながされたものである。もっとも、この類るいは多年生たねんせいまたは一いち年生ねんせいであり、根ね状じょうの付着ふちゃく部位ぶいから再ふたたび芽めを出だす。それより上うえの部分ぶぶんが切きり離はなされるのは生活せいかつ史上しじょうの普通ふつうな現象げんしょうでもある。

吉田よしだ（1963）によると、日本にっぽん各地かくちの流ながれ藻もの構成こうせい種しゅは12属ぞく40種しゅにものぼるが、流ながれ藻もの主体しゅたいはホンダワラ属ぞくおよびその類縁るいえんの海藻かいそうであり、その他たのものは種類しゅるい数すうにおいても量的りょうてきにおいても極きわめて少すくない。

生物せいぶつ群集ぐんしゅうにおける意味いみ

海面かいめんにかたまって漂ただよう流ながれ藻もには大洋たいよう性せいの魚類ぎょるいの稚魚ちぎょや、ヨコエビやワレカラなどの端はし脚あし類るいといった小型こがたの節足動物せっそくどうぶつなどが集あつまる。また、流ながれ藻もはブリやアジなどの重要じゅうよう水産すいさん資源しげんの稚やや仔こ魚ぎょが随伴ずいはんしたり、サンマなどのダツ目め魚類ぎょるいが産卵さんらん基質きしつにしたりと水産すいさん上じょう、重要じゅうような役割やくわりを果はたしている。これはある意味いみで、隠かくれるものの少すくない海洋かいよう水面すいめん近ちかくにおける一種いっしゅのシェルターの役割やくわりを果はたす。さらにハナオコゼなどそれに住すみ着ついて生活せいかつするものもある。このように流ながれ藻もは沿岸えんがんー沖合おきあい、および沖合おきあいー沖合おきあいでの生物せいぶつの移動いどうに関係かんけいする媒体ばいたいとなっている。

幼魚ようぎょが流ながれ藻もにつく理由りゆうには次つぎのような理由りゆうが挙あげられる。

食餌しょくじ

流ながれ藻もの周囲しゅういにはエサとなるプランクトンが多おおい。

産卵さんらん

流ながれ藻もに卵たまごを産うみ付つける魚さかな種しゅが多おおい。

シェルター

流ながれ藻もに隠かくれて外敵がいてきから身みを守まもる。

移動いどう

泳およぐ力ちからの弱よわい魚類ぎょるいが遠とおくに移動いどうする手段しゅだん。

しかし、近年きんねんの日本にっぽん沿岸えんがんでは開発かいはつや埋うめ立たてなどが進すすみ、流ながれ藻ものもととなるガラモ場じょうが減少げんしょうしている。また、世界せかい的てきな海水温かいすいおん上昇じょうしょうの影響えいきょうで藻も場じょうの構成こうせい種しゅが変化へんかし、原因げんいん不明ふめいの磯いそ焼やけ現象げんしょうが増加ぞうかしていることが報告ほうこくされている。