濡女

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わきかさひゃくかいまき』より「ぬれおんな
鳥山とりやま石燕せきえん画図えず百鬼夜行ひゃっきやこう』より「濡女」
鳥取とっとりけん境港さかいみなと水木みずきしげるロード設置せっちされている「おんな」のブロンズぞう
河鍋かわなべ暁斎きょうさい暁斎きょうさい漫画まんが』より「ぬれおんな

濡女(ぬれおんな)は、日本にっぽん妖怪ようかいひとつで、「ヌレヨメジョ」のでもられるうみ怪異かいいおおくは人間にんげんうとつたえられるが、形状けいじょう性質せいしつ一様いちようではない。

概要がいよう[編集へんしゅう]

九州きゅうしゅう妖怪ようかいいそおんなちかいもので、いそおんな同様どうよううみかわあらわれるという[1]名称めいしょうは、つねかみれているという伝承でんしょう由来ゆらいする[1]ウミヘビ化身けしんとするせつもある[1]

江戸えど時代じだいの『ひゃくかいまき』『画図えず百鬼夜行ひゃっきやこう』などで蛇体じゃたいおんな妖怪ようかいとしておおくの妖怪ようかいのこされていることから、当時とうじはよくられた妖怪ようかいだったとかんがえられているが、蛇体じゃたいとしての濡女のはなしは、当時とうじ古典こてん資料しりょうでは確認かくにんされていない。しかし昭和しょうわ初期しょき民俗みんぞく学者がくしゃ藤沢ふじさわ衛彦もりひこ著書ちょしょ妖怪ようかいだん全集ぜんしゅう 日本にっぽんへん じょう』によれば、参考さんこうとされたいち出典しゅってんげられていないものの、江戸えど時代じだい文久ぶんきゅう2ねん1819ねん)のはなしとして以下いかのように記述きじゅつされている。

越後えちごこくげん新潟にいがたけん)と会津あいづげん福島ふくしまけん)のさかいのとある川岸かわぎしに、若者わかものたちが木材もくざいるためになんそうかのふねかけたところ、1そう彼方かなたながされてしまった。ながれたふねものたちが、かみあらっている1人ひとりおんなつけ、不思議ふしぎおもっていたが、やがて悲鳴ひめいげて必死ひっしふねした。

ようやく仲間なかまふね合流ごうりゅうし、仲間なかまが「大蛇おろちでもたか?」とたずねると、ながされたほうのものたちは「もっとおそろしいものだ。濡女だ!」とこたえた。仲間なかまはなししんじず、そのものたちの制止せいしかずにおんなのいたという場所ばしょかった。ながされたものたちは恐怖きょうふのあまりかえしたが、濡女のほうへかった仲間なかまたちのしたからはおそろしいさけごえなんこえた。濡女の尻尾しっぽは3まちやく327メートル)さきまでとどくので、つかったら最後さいごけっしてげることはできないのだといわれ、その仲間なかまたちもついにもどってることはなかったという[2]

このはなしにおいては濡女の姿すがた直接ちょくせつ描写びょうしゃされていないものの、尻尾しっぽが3まちさきまでとどくということから、蛇体じゃたい姿すがたかんがえられている[3]同様どうようはなし山田野やまだのおっと著書ちょしょ東北とうほく怪談かいだんたび』や、文学ぶんがく博士はかせささあいだ良彦よしひこ著書ちょしょ図説ずせつ日本にっぽん未確認みかくにん生物せいぶつ事典じてん』にもえるが[4][5]ともいち出典しゅってんとなる資料しりょうげられていない[3]

濡女の伝承でんしょう[編集へんしゅう]

島根しまねけん石見いわみ地方ちほうでいう「ヌレオンナ」は、「うしおに」に使つかわれるみず妖で、海辺うみべあらわれ、いている赤子あかごひとわたしてうみはいると、うしおにあらわれる。たのまれた人間にんげんは、赤子あかごててげようとするが、赤子あかごおもいしになってはなれない。そのためうしおにころされてしまうとつたえられる。したがって、赤子あかごいだかされたときは手袋てぶくろをはめていだき、げるときは手袋てぶくろごと赤子あかごすものだと[6]。また濡女はうしおに化身けしんとのせつもあり、島根しまね大田おおた伝承でんしょうでは、濡女に赤子あかごあづけられたおとこうしおにおそわれ、どうにかったところ、うしおにった「残念ざんねんだ、残念ざんねんだ」とのこえが濡女とおなごえであったという[1][7]

漫画まんが・アニメへの登場とうじょう[編集へんしゅう]

邪神じゃしんちゃんドロップキック2の3にて邪神じゃしんちゃんいちぎょう妖怪ようかいてんかいにてメデューサが邪神じゃしんちゃんにているといこのぬれおんなてくるというかいがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d 多田ただ克己かつみ しる京極きょうごく夏彦なつひこ多田ただ克己かつみ へん妖怪ようかいまき国書刊行会こくしょかんこうかい、2000ねん、145-146ぺーじISBN 978-4-336-04187-6 
  2. ^ 藤沢ふじさわ衛彦もりひこ へん妖怪ようかいだん全集ぜんしゅう 日本にっぽんへん じょう中央ちゅうおう美術びじゅつしゃ、1929ねん、1-10ぺーじNCID BA49584216 
  3. ^ a b 村上むらかみ健司けんじ編著へんちょ日本にっぽん妖怪ようかいだい事典じてん角川書店かどかわしょてん〈Kwai books〉、2005ねん、250ぺーじISBN 978-4-04-883926-6 
  4. ^ ささあいだ良彦よしひこ図説ずせつ日本にっぽん未確認みかくにん生物せいぶつ事典じてん柏書房かしわしょぼう、1994ねん、102-104ぺーじISBN 978-4-7601-1299-9 
  5. ^ 山田野やまだのおっと東北とうほく怪談かいだんたび自由じゆう国民こくみんしゃ、1974ねん、171-172ぺーじNCID BA42139725 
  6. ^ 大藤おおふじ時彦ときひこほか しる民俗みんぞくがく研究所けんきゅうじょ柳田やなぎだ國男くにお監修かんしゅう へん綜合そうごう日本にっぽん民俗みんぞく語彙ごいだい3かん平凡社へいぼんしゃ、1955ねん、1163ぺーじNCID BN05729787 
  7. ^ 宮田みやたのぼる妖怪ようかい民俗みんぞくがく 日本にっぽんえない空間くうかん岩波書店いわなみしょてんどう時代じだいライブラリー〉、1990ねん、20-22ぺーじISBN 978-4-00-260052-9 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]