炎ほのお色しょく反応はんのう

炎ほのお色しょく反応はんのう（えんしょくはんのう、焔ほのお色しょく反応はんのうとも）とは、アルカリ金属きんぞく、あるいはアルカリ土ど類るい金属きんぞくなどの塩しおを炎ほのおの中なかに入いれると、揮発きはつしてできた金属きんぞく原子げんしが励起れいきされ、元素げんそ固有こゆうの可視かし光線こうせんを出だす現象げんしょうのこと。あるいは単体たんたいまたは化合かごう物ぶつを炎ほのおの中なかに入いれて熱ねっすると炎ほのおがそれらの元素げんそに固有こゆうの色いろを呈ていする反はん応おうのこと。

全すべての金属きんぞく元素げんそについて可視かし光こう内ないで観測かんそくできるわけではないものの、炎ほのお色しょく反応はんのうを示しめす金属きんぞく元素げんその場合ばあいは、その定性ていせい分析ぶんせきに利用りようできる。また、花火はなびの着色ちゃくしょくにも利用りようされている。

反応はんのうの原理げんり

熱ねつエネルギーによって電子でんしが励起れいきされた結果けっか、高こうエネルギーの軌道きどうへと遷移せんいした電子でんしが、基底きてい状態じょうたいへ戻もどる際さいに電子でんしはエネルギーを電磁波でんじはの光ひかりとして放出ほうしゅつする場合ばあいが有ある。この電子でんしがエネルギーを放出ほうしゅつした際さいに生しょうじた光ひかりが、炎ほのお色しょく反応はんのうである。

高温こうおんの炎ほのお中ちゅうに、ある種しゅの金属きんぞく粉末ふんまつや金属きんぞく化合かごう物ぶつを置おくと、試料しりょうが熱ねつエネルギーによって解離かいりし、原子げんし化かされる。それぞれの原子げんしは熱ねつエネルギーによって電子でんしが励起れいきされ、外側そとがわに存在そんざいする高こうエネルギーの電子でんし軌道きどうへと移動いどうする。励起れいきされた電子でんしが、安定あんていな基底きてい状態じょうたいに戻もどろうとする際さいに、余分よぶんなエネルギーを電磁波でんじはとして放出ほうしゅつする。電磁波でんじはのエネルギーは、その周波数しゅうはすうで決きまるわけだが、この際さいに放出ほうしゅつするエネルギーが、ちょうどヒトの可視かし光線こうせんの範囲はんいに入はいる場合ばあいが有ある。これが、炎ほのお色しょく反応はんのうを示しめす原理げんりである。

したがって、比較的ひかくてき低温ていおんで熱ねつ励起れいきされ、発光はっこう波長はちょうが可視かし光線こうせんの領域りょういきに存在そんざいする元素げんそが、微粉びふん末まつや塩しおのような原子げんし化かされ易やすい状態じょうたいになっている場合ばあいにのみ、炎ほのお色しょく反応はんのうが観察かんさつされる。

なお、原子げんしの電子でんし軌道きどうのエネルギーは、連続れんぞくした値ねではなく、飛とび飛とびの値ねであるため、励起れいきされた電子でんしが基底きてい状態じょうたいに戻もどる際さいに放出ほうしゅつされるエネルギーも、連続れんぞくした値ねではない。このため、炎ほのお色しょく反応はんのうとして放出ほうしゅつされた光ひかりは、連続れんぞくスペクトルではなく、輝線きせんスペクトルを示しめす。また、元素げんそによっても、電子でんし軌道きどうのエネルギーは、ある程度ていど決きまるため、元素げんそによって特徴とくちょう的てきな輝線きせんスペクトルを示しめす。これが、炎ほのお色しょく反応はんのうを示しめす元素げんその種類しゅるいにより、炎ほのお色しょく反応はんのうによって放出ほうしゅつされる光ひかりの色いろが決きまる理由りゆうである。

主おもな元素げんその炎ほのお色しょく反応はんのう

炎ほのお色しょく反応はんのうを呈ていする主おもな元素げんそが、炎ほのお色しょく反応はんのうを起おこした際さいに放出ほうしゅつする主おもな輝線きせんスペクトルの波長はちょうと、その色いろを示しめした。なお、かっこ内ないには、コバルトガラスを通とおして観察かんさつした場合ばあいの色いろを示しめした。

• 第だい1族ぞく元素げんその全すべて元素げんそのアルカリ金属きんぞく。
  • リチウム - 深紅しんく、670.8 nm（紫紅しこうあるいは赤あか紫むらさき）
  • ナトリウム - 黄き、589.3 nm（無色むしょく）
  • カリウム - 淡あわ紫むらさき、すみれ、あるいは紫むらさき、404.4 nm（赤あか紫むらさき）、特とくにナトリウムに邪魔じゃまされ易やすいためコバルトガラスが役立やくだつ。
  • ルビジウム - 暗くら赤あか、深ふか赤あか、795.0、781.1 nm（紫むらさき）
  • セシウム - 青あお紫むらさき。（紫むらさき青あおあるいは紫むらさき）励起れいきに必要ひつような高温こうおんを得えるため、酸さん水素すいそ炎えんで観察かんさつする。
• 第だい2族ぞく元素げんその一部いちぶの元素げんそであるアルカリ土ど類るい金属きんぞく。
  • カルシウム - 橙だいだい赤あか（橙だいだい緑みどり）
  • ストロンチウム - 深紅しんく、460 nm（紫むらさき）
  • バリウム - 黄き緑みどり（青あお緑みどり）
  • ラジウム - 洋紅ようこう
• 第だい6族ぞく元素げんその一部いちぶ
  • モリブデン - 黄き緑みどり（青あお緑みどり）
• 第だい11族ぞく元素げんその一部いちぶ
  • 銅どう - 青あお緑みどりあるいは緑みどり、510 nm（青あお紫むらさきあるいは淡あわ青あお）
  • 金きむ − 緑みどり
• 第だい13族ぞく元素げんそ（土ど類るい金属きんぞく）
  • ホウ素ほうそ - 黄き緑みどり（青あお紫むらさき）、エタノール炎えん外縁がいえんの呈てい色しょくで観察かんさつする。
  • ガリウム - 青あお（青あお紫むらさき）
  • インジウム - 深ふか青あおあるいは藍あい、410 nm（紫むらさき青あおあるいは紫むらさき）
  • タリウム - 淡あわ緑みどり
• 第だい14族ぞく元素げんその中なかで、金属きんぞく元素げんそのみ。
  • スズ - 淡あわ青あお（淡あわ紫むらさき）
  • 鉛なまり - 淡あわ青あお（淡あわ紫むらさき）
• 第だい15族ぞく元素げんその一部いちぶ。
  • リン - 淡あわ青あお、（淡あわ紫むらさき）リン酸さんイオンによる反応はんのう。
  • ヒ素ひそ - 淡あわ青あお（淡あわ紫むらさき）
  • アンチモン - 淡あわ青あお（淡あわ紫むらさき）

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  試料しりょうを加くわえない場合ばあいのガスバーナーの炎ほのおの色いろ
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  リチウム
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  ナトリウム
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  カリウム（コバルトガラスを通とおした場合ばあい）
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  カリウム
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  ルビジウム
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  カルシウム
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  ストロンチウム
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  銅どう
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  ホウ素ほうそ
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  鉛なまり
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  ヒ素ひそ
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  アンチモン

その他た

炎ほのお色しょく反応はんのうによる発光はっこうは輝線きせんスペクトルであるから、特定とくていの波長はちょう範囲はんいを吸収きゅうしゅうするフィルターを通とおす方法ほうほうにより、不要ふような波長はちょうを遮断しゃだんして観察かんさつできる。例たとえば、ナトリウムは炎ほのお色しょく反応はんのうが起おこり易やすく、微量びりょうであっても波長はちょう 589 nm の強つよい黄色おうしょくを呈ていする。そこで、500 nmから700 nm の範囲はんいの波長はちょうの光ひかりを強つよく吸収きゅうしゅうするコバルトガラスを通とおすと、ナトリウムの輝線きせんは吸収きゅうしゅうされて見みえなくなる。このため、コバルトガラスを通とおした場合ばあい、少々しょうしょうのナトリウムが混入こんにゅうしていても、他たの元素げんそからの発光はっこうが観察かんさつし易やすくなる場合ばあいが有ある。ただし、その他たの元素げんそでもこの波長はちょう域いきの発光はっこうがカットされるため、元素げんそによっては色調しきちょうが変化へんかして観察かんさつされる。

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