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定性ていせい分析ぶんせき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

定性ていせい分析ぶんせき(ていせいぶんせき、えい: qualitative analysis)とは、ある試料しりょうにどんな成分せいぶんふくまれているかを調しらべることである。成分せいぶんなにであるかをあきらかにすることを同定どうていともいう。化合かごうぶつ構造こうぞう決定けっていおこなうこともふくまれる。

概要がいよう

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  • 試料しりょうふくまれている成分せいぶん推定すいていされていてそれを確認かくにんする場合ばあい
  • 成分せいぶんについてまったく情報じょうほうのない試料しりょうふくまれている成分せいぶん決定けっていする場合ばあい

の2つにおおきくけられる。

前者ぜんしゃ場合ばあいには、試料しりょうちゅう成分せいぶんが、推定すいていされる成分せいぶん特異とくいてき性質せいしつつことを確認かくにんする。このとき、推定すいてい成分せいぶん性質せいしつ測定そくていするために純粋じゅんすい推定すいてい成分せいぶんとわかっている試料しりょう使つかうことがあり、これをしるべひん標準ひょうじゅん試料しりょう標準ひょうじゅんサンプルなどという。

たとえば、

といったことを確認かくにんする。IR(あかがい分光ぶんこうほう)、NMR(かく磁気じき共鳴きょうめい分光ぶんこうほう)、MS(質量しつりょう分析ぶんせきほう)、粉末ふんまつXせん回折かいせつなどのスペクトルは分子ぶんし構造こうぞう結晶けっしょう構造こうぞうきわめて特異とくいてきであり、既知きちデータとの比較ひかくによりそれだけで物質ぶっしつ判明はんめいしてしまう場合ばあいもある。このような場合ばあいしるべひん測定そくていおこなうことなく、成分せいぶん推定すいてい確認かくにん段階だんかい同時どうじおこなうことが可能かのうである。

後者こうしゃ場合ばあいには、まず、成分せいぶん推定すいていおこない、さらにその推定すいていされる成分せいぶん特異とくいてき性質せいしつ確認かくにんする。

成分せいぶん推定すいていのためには、

測定そくていし、それらからられた情報じょうほう矛盾むじゅんしない成分せいぶん推定すいていする。

もし、試料しりょう複数ふくすう成分せいぶん混合こんごうぶつかんがえられる場合ばあいには、クロマトグラフィーなどにより、かく成分せいぶん分離ぶんりしてふたたかく成分せいぶんについての推定すいていおこなう。

そして、推定すいていした成分せいぶんしるべひんおな特異とくいてき性質せいしつられるかを確認かくにんする。

対象たいしょうとレベル

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定性ていせい分析ぶんせきは、分析ぶんせきしたい対象たいしょう同定どうていしたい物質ぶっしつ分類ぶんるいのレベルにおうじて、使つかわれる技術ぎじゅつ戦略せんりゃくことなる。現在げんざい化学かがくもっと基本きほんてきかんがかたでは、分子ぶんしイオン結晶けっしょう単位たんいなど一定いってい単位たんいなか原子げんし種類しゅるいかず配置はいちおな試料しりょうおな種類しゅるい物質ぶっしつなされる。ゆえに、物質ぶっしつ同定どうていとは、もっとくわしいレベルでは上記じょうきのような一定いってい単位たんいなか原子げんし種類しゅるいかず配置はいち特定とくていすることと同義どうぎである。しかし、かならずしもそこまでくわしいレベルでの分析ぶんせき意味いみしない場合ばあいおおい。

元素げんそ特定とくてい

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試料しりょうちゅう元素げんそ種類しゅるい特定とくていすることは定性ていせい分析ぶんせきのひとつである。とくふく成分せいぶん微量びりょう成分せいぶんとしての金属きんぞく成分せいぶん分析ぶんせきは、化合かごうぶつ形態けいたいにかかわらず金属きんぞく元素げんそ種類しゅるいることを意味いみする場合ばあいおおい。むろん、環境かんきょうちゅう有機ゆうき水銀すいぎん無機むき水銀すいぎん分析ぶんせきのように、対象たいしょう元素げんそふく化合かごうぶつ種類しゅるいをも特定とくていしたい場合ばあいおおい。環境かんきょう分析ぶんせきなどの分野ぶんやでは、ある元素げんそふく化合かごうぶつ種類しゅるいのことをその元素げんそ化学かがく形態けいたい存在そんざい形態けいたい、あるいはたん形態けいたいぶこともある。

物質ぶっしつ特定とくてい

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現代げんだい有機ゆうき分析ぶんせきでの物質ぶっしつ同定どうていは、基本きほんてき意味いみでは異性いせいたい区別くべつふくめて分子ぶんし種類しゅるい構造こうぞう)を特定とくていすることと同義どうぎである。だが、一群いちぐん異性いせいたいあつまり、さらにひろ一群いちぐん物質ぶっしつしゅあつまりであることまでを決定けっていすることにとどめる場合ばあいおおい。たとえば、ダイオキシン分析ぶんせきPCB分析ぶんせきは、一群いちぐん異性いせいたいあつまりまでを特定とくていする分析ぶんせきであることがおおい。

鉱物こうぶつがくでの鉱物こうぶつ同定どうてい伝統でんとうてき方法ほうほうは、標準ひょうじゅんとなる標本ひょうほん様々さまざま物性ぶっせい比較ひかくすることにより、どういち鉱物こうぶつしゅであると決定けっていするものであった。この場合ばあい物質ぶっしつしゅ同定どうていはしたことになるが、その物質ぶっしつ化学かがく構造こうぞう判明はんめいしているとはかぎらなかった。

また、ホルモン酵素こうそなどの生理せいり活性かっせい物質ぶっしつは、じゅんひんとしてたんはなされた物質ぶっしつ生理せいり作用さようにより物質ぶっしつ同定どうていすることもおおく、この場合ばあい構造こうぞう判明はんめいしているとはかぎらない。

構造こうぞう特定とくてい

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構造こうぞう簡単かんたん分子ぶんしやイオンの同定どうていは、各種かくしゅクロマトグラフィーの溶出ようしゅつ時間じかんしるべひんとの比較ひかくなど少数しょうすう物性ぶっせい測定そくていだけからできることもある。だが複雑ふくざつ分子ぶんしになると、NMRなど多様たよう方法ほうほう駆使くししないと構造こうぞうまらない場合ばあいえる。このように化学かがく構造こうぞうそのものを決定けっていすることで物質ぶっしつ種類しゅるい特定とくていすることを構造こうぞう解析かいせきまたは構造こうぞう決定けっていという。

さらに、構造こうぞう解析かいせきという言葉ことばは、定性ていせい分析ぶんせき範囲はんいえて、詳細しょうさい化学かがく構造こうぞう解析かいせきおこなうことをもしていることがある。たとえば分子ぶんし同士どうし位置いち関係かんけい解析かいせきする結晶けっしょう構造こうぞう解析かいせき溶液ようえきどうみち分布ぶんぷ関数かんすう解析かいせき、ひとつの分子ぶんしない電子でんし状態じょうたい振動しんどう回転かいてん状態じょうたい分子ぶんしスペクトルひとしによる解析かいせき[1]などである。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 山口やまぐち一郎いちろう しる黒田くろだ晴雄はるおほかへん へん物理ぶつり化学かがく 1 構造こうぞう化学かがく量子りょうし化学かがく朝倉書店あさくらしょてん現代げんだい化学かがく講座こうざ〉、1987ねんISBN 4-254-14531-4http://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-14531-1/ 

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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