玉たま松まつ真弘まさひろ

玉たま松まつ 真弘まさひろ（たままつ まひろ、文化ぶんか7年ねん3月17日にち（1810年ねん4月がつ20日はつか） - 明治めいじ5年ねん2月がつ15日にち（1872年ねん3月23日にち））は、江戸えど時代じだい末期まっき（幕末ばくまつ）から明治めいじにかけての国学こくがく者しゃ。通称つうしょうは操みさお（みさお）。雅号がごうは毅あつし軒のき。

生涯しょうがい

西園寺さいおんじ家かの庶流である山本やまもと家かの侍従じじゅう・山本やまもと公こう弘ひろしの二男じなんとして生うまれ、醍醐寺だいごじ無量むりょう寿ことぶき院いんにおいて出家しゅっけ得度とくどし、法名ほうみょうを猶なお海うみとした。大だい僧都そうず法印ほういんに任にんぜられたが、寺中じちゅうの綱紀こうき粛正しゅくせいをつよく唱となえたために反感はんかんを買かい、1839年ねん還俗げんぞく。山本やまもと毅あつし軒のきと号ごうし、さらに玉たま松まつ操みさおと改あらためた。

京都きょうとで国学こくがく者しゃ大国おおくに隆正たかまさに師事しじしたが、やがて師しと対立たいりつして泉州せんしゅうに下くだり、さらに近江おうみ国こく真野まのに隠棲いんせい。三上みかみ兵部ひょうぶ、樹下じゅか茂しげ国こくらを弟子でしとした。1867年ねん、三上みかみの紹介しょうかいによって岩倉いわくら具視ともみに会あい、その腹心ふくしんとなる。以後いご、小しょう御所ごしょ会議かいぎの席上せきじょう示しめされた王政おうせい復古ふっこの勅みことのりを起草きそうし、江戸えど幕府ばくふとの交戦こうせんに備そなえ官軍かんぐんの士気しきを鼓舞こぶするための錦旗きんきの意匠いしょうを考案こうあんするなど、岩倉いわくらの活動かつどうを学殖がくしょく・文才ぶんさいによって助たすけた。

王政おうせい復古ふっこの後のちは、内国ないこく事務じむ局きょく権けん判事はんじとなり、平田ひらた銕胤らと結むすんで大だい学寮がくりょう（漢学かんがく所しょ）を国学こくがくを中心ちゅうしんとする大学だいがく官かんに併合へいごうすることを求もとめるなど、きわめて保守ほしゅ的てきな立場たちばに立たち、徐々じょじょに岩倉いわくららとの距離きょりを深ふかめた。1869年ねんには堂上どうじょう家かの一員いちいんとなり、家いえ禄ろく30石せき3人にん扶持ふちが給付きゅうふされる。東京とうきょう奠都てんとにあたっては猶予ゆうよ願ねがいを出だし、1870年ねんに東京とうきょうで大学だいがく中ちゅう博士はかせ兼けん侍読じどくに任にんぜられたものの、政府せいふの欧化おうか政策せいさくを嫌悪けんおし、同年どうねん10月がつに辞職じしょくする。京都きょうとに帰かえって隠棲いんせいしたが、まもなく病没びょうぼつした。1884年ねん7月がつ、養嗣子ようしし玉たま松まつ真幸まさきが男爵だんしゃくに叙じょされた。

司馬しば遼りょう太郎たろうの短編たんぺん小説しょうせつ『加茂かもの水みず』の主人公しゅじんこうとして描えがかれている。