生命せいめい記号きごう論ろん

生命せいめい記号きごう論ろん（せいめいきごうろん、英えい：Biosemiotics）とは、ひとつの生体せいたい系けい内ないや複数ふくすうの生体せいたい系けい間あいだに見出みいだされる、多様たようなコミュニケーションの形式けいしきと、その真意しんいについて探究たんきゅうする、学際がくさい的てきな研究けんきゅう分野ぶんやである。この分野ぶんやの主おもな研究けんきゅう内容ないようとしては、遺伝子いでんしの塩基えんき配列はいれつ、細胞さいぼう間あいだの情報じょうほう伝達でんたつ、動物どうぶつの誇示こじ行動こうどう、言語げんごや思想しそうなどの人間にんげん界かいにおける記号きごう、等々とうとうの表現ひょうげん様式ようしき、意味いみ、趣意しゅい、そして、その暗号あんごうおよび記号きごうが形成けいせいされる過程かていにおける生物せいぶつ学がく的てき意義いぎが挙あげられる。

「意図いと」・「目的もくてき」・「信号しんごう」・「暗号あんごう」・「記号きごう」など、これらの用語ようごは、あまりに隠喩いんゆ的てきであるということと、いつの日ひか、そのような用語ようごは、物理ぶつり化学かがく的てきな数式すうしきや反応はんのう式しきへと還元かんげんされる、という考かんがえとは、今日きょうに至いたるまで、暗黙あんもくのうちに信しんじられてきた。しかし、このような考かんがえ（全すべての生命せいめい現象げんしょうは数式すうしきや反応はんのう式しきへと還元かんげんされる、という考かんがえ）は、理論りろん上じょうであっても、立証りっしょうし難がたいことが判わかってきつつある。そのような時代じだい背景はいけいにあって、生命せいめい記号きごう論ろんの学際がくさい的てき研究けんきゅうの場ばにおいては、生命せいめい科学かがくの諸しょ分野ぶんや間あいだの交流こうりゅう　―生命せいめい科学かがくと人文じんぶん科学かがくとの間あいだについても同様どうように―　を再燃さいねんさせようとしており、この分野ぶんやの活性かっせい化かを図はかっている。

研究けんきゅう者しゃ

• クラウス・エメッシェ（哲学てつがく、理論りろん生物せいぶつ学がく　コペンハーゲン大学だいがく）
• 川出かわで由ゆかり己おのれ（ウィルス学がく、分子生物学ぶんしせいぶつがく　京都大学きょうとだいがく）
• マルティン・クランペン（記号きごう学がく、視覚しかくコミュニケーション学がく　シュヴェービッシュ・グミュント造形ぞうけい大学だいがく）
• カレヴィ・クル（記号きごう学がく、理論りろん生物せいぶつ学がく　タルトゥ大学だいがく）
• レオン・クロワザ（植物しょくぶつ学がく、生物せいぶつ地理ちり学がく　アンデス大学だいがく）
• ポール・コブリー（記号きごう学がく、文芸ぶんげい学がく　ミドルセックス大学だいがく）
• トマス・セブク（またはシービオク）（記号きごう学がく、言語げんご人類じんるい学がく　インディアナ大学だいがく）
• テレンス・ディーコン（神経しんけい人類じんるい学がく　カルフォルニア大学だいがくバークレー校こう）
• ジョン・ディーリー（哲学てつがく、記号きごう学がく　聖せいヴィンセント大学だいがく）
• ルネ・トム（数学すうがく　フランス高等こうとう科学かがく研究所けんきゅうじょ）
• 中島なかじま敏幸としゆき（進化しんか生態せいたい学がく、生物せいぶつ物理ぶつり学がく　愛媛大学えひめだいがく）
• ハワード・Ｈ・パティー（理論りろん生物せいぶつ学がく　ニューヨーク州立しゅうりつ大学だいがくビンガムトン校こう）
• マルチェッロ・バルビエリ（理論りろん生物せいぶつ学がく　フェラーラ大学だいがく）
• ドナルド・ファヴァロー（哲学てつがく、応用おうよう言語げんご学がく　シンガポール国立こくりつ大学だいがく）
• マルセル・フローキン（生化学せいかがく　リエージュ大学だいがく）
• ジョージオ・プロディ（記号きごう学がく、腫瘍しゅよう学がく　ボローニャ大学だいがく）
• ハイニ・ヘディガー（動物どうぶつ園えん学がく　チューリッヒ大学だいがく）
• イェスパー（またはジェスパー）・ホフマイヤー（生化学せいかがく、理論りろん生物せいぶつ学がく　コペンハーゲン大学だいがく）
• ティモ・マラン（記号きごう学がく　タルトゥ大学だいがく）
• テューレ・ｖ・ユクスキュル（心療内科しんりょうないか学がく　ウルム大学だいがく）
• ヤーコブ・ｖ・ユクスキュル（哲学てつがく、動物どうぶつ学がく　ハンブルク大学だいがく）
• リュドミラ・ラツコヴァ（記号きごう学がく、言語げんご学がく　パラツキー大学だいがくオロモウツ）
• ロバート・ローゼン（生物せいぶつ物理ぶつり学がく　ダルハウジー大学だいがく）
• フリードリッヒ・Ｓ・ロートシルト（記号きごう学がく、精神せいしん医学いがく　ニューヨーク科学かがくアカデミー）
• ルイス・Ｍ・ロチャ（システム科学かがく　ニューヨーク州立しゅうりつ大学だいがくビンガムトン校こう）
• クラウディオ・J・ロドリゲス・H.（記号きごう学がく、形而上学けいじじょうがく　パラツキー大学だいがくオロモウツ）

参照さんしょう

学会がっかい・団体だんたい

• 国際こくさい生命せいめい記号きごう論ろん研究けんきゅう学会がっかいホームページ
• 国際こくさい記号きごう学会がっかいホームページ
• 日本にっぽん記号きごう学会がっかいホームページ
• 日本にっぽん数理すうり生物せいぶつ学会がっかいホームページ
• 日本にっぽん生態せいたい心理しんり学会がっかいホームページ
• 日本にっぽん生物せいぶつ音響おんきょう学会がっかいホームページ
• 日本にっぽん動物どうぶつ行動こうどう学会がっかいホームページ
• 日本にっぽん動物どうぶつ心理しんり学会がっかいホームページ
• 日本にっぽん認知にんち科か学会がっかいホームページ

図書としょ

• 今西いまにし錦司きんじ著ちょ『生物せいぶつの世界せかい』（講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ、1972年ねん）

• ハイニ・ヘディガー著ちょ『文明ぶんめいに囚とらわれた動物どうぶつたち　動物どうぶつ園えんのエソロジー』（今泉いまいずみ吉晴よしはる、今泉いまいずみみね子こ訳わけ、思索しさく社しゃ、1983年ねん）

• トマス・シービオク著ちょ『自然しぜんと文化ぶんかの記号きごう論ろん』（池上いけがみ嘉彦よしひこ編へん訳やく、勁草書房しょぼう、1985年ねん）
• トマス・シービオク著ちょ『動物どうぶつの記号きごう論ろん』（池上いけがみ嘉彦よしひこ編へん訳やく、勁草書房しょぼう、1989年ねん）
• 多田ただ富雄とみお著ちょ『免疫めんえきの意味いみ論ろん』（青土おうづち社しゃ、1993年ねん）
• 多田ただ富雄とみお著ちょ『生命せいめいの意味いみ論ろん』（新潮社しんちょうしゃ、1997年ねん）
• ジョン・ディーリー『記号きごう学がくの基礎きそ理論りろん』（大熊おおくま昭信あきのぶ訳わけ、法政大学ほうせいだいがく出版しゅっぱん局きょく・ウニベルシタス叢書そうしょ、1998年ねん）
• テレンス・ディーコン『ヒトはいかにして人ひととなったか　―言語げんごと脳のうの共きょう進化しんか』（金子かねこ隆芳たかよし訳わけ、新しん曜社、1999年ねん）

• ジェスパー・ホフマイヤー著ちょ『生命せいめい記号きごう論ろん　―宇宙うちゅうの意味いみと表象ひょうしょう―』（松野まつの幸一郎こういちろう、高原たかはら美よし規ぶんまわし訳わけ、青土おうづち社しゃ、1999年ねん）
• ヤーコプ・ｖ・ユクスキュル、ゲオルク・クリサート著ちょ『生物せいぶつから見みた世界せかい』（日高ひだか敏隆としたか、羽田はた節子せつこ訳わけ、岩波いわなみ文庫ぶんこ、2005年ねん）
• 川出かわで由ゆかり己おのれ著ちょ『生物せいぶつ記号きごう論ろん　主体性しゅたいせいの生物せいぶつ学がく』（京都きょうと大学だいがく学術がくじゅつ出版しゅっぱん会かい、2006年ねん）
• 日高ひだか敏隆としたか著ちょ『動物どうぶつと人間にんげんの世界せかい認識にんしき　―イリュージョンなしに世界せかいは見みえない』（ちくま学芸がくげい文庫ぶんこ、2007年ねん）
• アントニオ・リマ＝デ＝ファリア著ちょ『生物せいぶつへの周期しゅうき律りつ　―自然しぜん界かいのリズムと進化しんか』（松野まつの幸一郎こういちろう監修かんしゅう、土ど明文めいぶん訳わけ、工作こうさく舎しゃ、2010年ねん）
• ヤーコプ・ｖ・ユクスキュル著ちょ『動物どうぶつの環境かんきょうと内的ないてき世界せかい』（前野まえの佳彦よしひこ訳わけ、みすず書房しょぼう、2012年ねん）
• 矢倉やくら英隆ひでたか著ちょ『免疫めんえきから哲学てつがくとしての科学かがくへ』（みすず書房しょぼう、2023年ねん）