異常 いじょう 磁気 じき モーメント (いじょうじきモーメント、英語 えいご : magnetic moment anomaly )とは、粒子 りゅうし の固有 こゆう 磁気 じき モーメント のヴォルフガング・パウリ により予想 よそう された値 ね からのずれである。異常 いじょう 磁気 じき モーメントは記号 きごう a で表 あらわ され、例 たと えば電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントであれば a e のように、粒子 りゅうし の記号 きごう を添 そ えて表 あらわ される。
異常 いじょう 磁気 じき モーメントは高次 こうじ の量子 りょうし 補正 ほせい の寄与 きよ として量子 りょうし 場 じょう 理論 りろん に基 もと づいて計算 けいさん され、理論 りろん の検証 けんしょう に用 もち いられている。特 とく に電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントでは電磁 でんじ 相互 そうご 作用 さよう の寄与 きよ が支配 しはい 的 てき であり、量子 りょうし 電磁 でんじ 力学 りきがく (QED)は非常 ひじょう に高 たか い精度 せいど で検証 けんしょう されている。摂動 せつどう 論 ろん による計算 けいさん ではファインマン図 ず のループとして表 あらわ される。
粒子 りゅうし の固有 こゆう 磁気 じき モーメントは、その粒子 りゅうし のスピン角 かく 運動 うんどう 量 りょう と関係付 かんけいづ けられ、この関係 かんけい はg -因子 いんし として表 あらわ される。パウリ方程式 ほうていしき によれば、スピン 1/2 のフェルミ粒子 りゅうし の g -因子 いんし が2であることが導 みちび かれるが、実際 じっさい に観測 かんそく される値 ね とはごく僅 わず かに異 こと なる。この違 ちが いが異常 いじょう 磁気 じき モーメントであり
a
=
g
−
2
2
{\displaystyle a={\frac {g-2}{2}}}
で定義 ていぎ される。
電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメント[ 編集 へんしゅう ]
フェルミ粒子 りゅうし の磁気 じき モーメントの1ループ補正 ほせい
電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントは1948年 ねん にR. KuschとH. M. Foleyにより実験 じっけん で発見 はっけん された[1] 。電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントは物理 ぶつり 定数 ていすう の中 なか でも極 きわ めて高 たか い精度 せいど で測定 そくてい されており、その値 ね は
a
e
=
0.001
159
652
180
46
(
18
)
{\displaystyle a_{\text{e}}=0.001~159~652~180~46(18)}
である(2022 CODATA推奨 すいしょう 値 ち [2] )。
電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントは頂点 ちょうてん 関数 かんすう を計算 けいさん することで求 もと められ、1ループからの寄与 きよ は上 うえ のファインマン図 ず で表 あらわ される。1ループでの計算 けいさん は比較的 ひかくてき 単純 たんじゅん で、微細 びさい 構造 こうぞう 定数 ていすう α あるふぁ を用 もち いて
a
e
1-loop
=
α あるふぁ
2
π ぱい
≃
0.001
161
4
{\displaystyle a_{\text{e}}^{\text{1-loop}}={\frac {\alpha }{2\pi }}\simeq 0.001\ 161\ 4}
となる[3] 。
この結果 けっか は1948年 ねん にジュリアン・シュウィンガー によって初 はじ めて導 みちび かれた[4] 。
現在 げんざい までに電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントのQED公式 こうしき は4ループ(α あるふぁ 4 )のオーダーまで計算 けいさん されている[5] 。木下 きのした 東一郎 とういちろう らによる最近 さいきん の計算 けいさん 結果 けっか は以下 いか のようになる。
a
e
theory
=
0.001
159
652
181
13
(
11
)
(
37
)
(
02
)
(
77
)
{\displaystyle a_{\text{e}}^{\text{theory}}=0.001\ 159\ 652\ 181\ 13(11)(37)(02)(77)}
である[6] 。
QEDによる計算 けいさん 結果 けっか は実験 じっけん による測定 そくてい 値 ち と10桁 けた 以上 いじょう 一致 いっち しており、電子 でんし の磁気 じき モーメントは物理 ぶつり 学 がく の歴史 れきし 上 じょう でも最 もっと も正確 せいかく に理論 りろん と一致 いっち した数値 すうち となっている。
ミュー粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメント [ 編集 へんしゅう ]
ミュー粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントの値 ね は
a
μ みゅー
exp
=
0.001
165
920
62
(
41
)
{\displaystyle a_{\mu }^{\text{exp}}=0.001~165~920~62(41)}
である(2022 CODATA 推奨 すいしょう 値 ち [7] )。
ミュー粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントは電子 でんし の場合 ばあい と似 に た手法 しゅほう で計算 けいさん されるが、弱 よわ い相互 そうご 作用 さよう と強 つよ い相互 そうご 作用 さよう の寄与 きよ が無視 むし できないという点 てん で電子 でんし の場合 ばあい より複雑 ふくざつ である。この計算 けいさん 結果 けっか と実験 じっけん 値 ち を比較 ひかく することで標準 ひょうじゅん 模型 もけい のワインバーグ=サラム理論 りろん の正確 せいかく さの評価 ひょうか ができる。ミュー粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントの値 ね の予言 よげん は3つの部分 ぶぶん から構成 こうせい される。
a
μ みゅー
SM
=
a
μ みゅー
QED
+
a
μ みゅー
EW
+
a
μ みゅー
had
{\displaystyle a_{\mu }^{\text{SM}}=a_{\mu }^{\text{QED}}+a_{\mu }^{\text{EW}}+a_{\mu }^{\text{had}}}
最初 さいしょ の2つの項 こう はそれぞれ光子 こうし とレプトン のループとWボソンとZボソン のループによる寄与 きよ であり、電子 でんし 同様 どうよう 正確 せいかく に計算 けいさん することができる。3番目 ばんめ の項 こう はハドロン のループによる寄与 きよ であり、理論 りろん 単独 たんどく からは正確 せいかく に計算 けいさん することができない。これは実験 じっけん によるe+ e- の衝突 しょうとつ の断 だん 面積 めんせき 比 ひ
R
{\displaystyle R}
(ミュー粒子 りゅうし の断 だん 面積 めんせき に対 たい するハドロンの断 だん 面積 めんせき の比 ひ )の測定 そくてい によって推定 すいてい することができる。2006年 ねん 11月の時点 じてん では測定 そくてい 値 ち は標準 ひょうじゅん 模型 もけい と標準 ひょうじゅん 偏差 へんさ で3.4程度 ていど の不一致 ふいっち がある[8] 。
超 ちょう 対称 たいしょう 性 せい の寄与 きよ [ 編集 へんしゅう ]
ニュートラリーノ とスミューオン の1ループ補正 ほせい (左 ひだり )、及 およ びチャージーノ とミュー粒子 りゅうし のスニュートリノ の1ループ補正 ほせい (右 みぎ )
超 ちょう 対称 たいしょう 性 せい が自然 しぜん 界 かい で実現 じつげん しているならば、ミュー粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントには補正 ほせい が加 くわ わると考 かんが えられている。これはミュー粒子 りゅうし のファインマン図 ず に、超 ちょう 対称 たいしょう 粒子 りゅうし が関与 かんよ する新 あら たなループが加 くわ わるためである。これは標準 ひょうじゅん 模型 もけい を超 こ える物理 ぶつり があらわれる現象 げんしょう の一 いち 例 れい である。
理論 りろん 計算 けいさん の詳細 しょうさい [ 編集 へんしゅう ]
異常 いじょう 磁気 じき モーメントに寄与 きよ する量子 りょうし 効果 こうか は、厳密 げんみつ には電磁 でんじ 相互 そうご 作用 さよう だけでなく、弱 よわ い相互 そうご 作用 さよう と強 つよ い相互 そうご 作用 さよう の寄与 きよ も含 ふく まれている。しかし、電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントの場合 ばあい 、ウィークボソン やハドロン の効果 こうか は非常 ひじょう に小 ちい さく、電磁 でんじ 相互 そうご 作用 さよう だけを考 かんが えたとしてもかなりの精度 せいど で理論 りろん 値 ち と実験 じっけん 値 ち が一致 いっち する。
a
e
S
M
=
a
e
Q
E
D
+
a
e
E
W
+
a
e
h
a
d
≈
a
e
Q
E
D
{\displaystyle a_{e}^{\mathrm {SM} }=a_{e}^{\mathrm {QED} }+a_{e}^{\mathrm {EW} }+a_{e}^{\mathrm {had} }\approx a_{e}^{\mathrm {QED} }}
一方 いっぽう 、ミュー粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントの場合 ばあい は弱 よわ い相互 そうご 作用 さよう 、強 つよ い相互 そうご 作用 さよう の寄与 きよ が比較的 ひかくてき 大 おお きく、電子 でんし の場合 ばあい より複雑 ふくざつ な計算 けいさん を必要 ひつよう とする。
a
μ みゅー
S
M
=
a
μ みゅー
Q
E
D
+
a
μ みゅー
E
W
+
a
μ みゅー
h
a
d
{\displaystyle a_{\mu }^{\mathrm {SM} }=a_{\mu }^{\mathrm {QED} }+a_{\mu }^{\mathrm {EW} }+a_{\mu }^{\mathrm {had} }}
この事情 じじょう から、電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントは量子 りょうし 電磁 でんじ 力学 りきがく (QED)の検証 けんしょう 、ミュー粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントはワインバーグ=サラム理論 りろん の検証 けんしょう に適 てき している。また、タウ粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントは、ミュー粒子 りゅうし 以上 いじょう に弱 よわ い相互 そうご 作用 さよう 、強 つよ い相互 そうご 作用 さよう の寄与 きよ が大 おお きくなるが、実験 じっけん で測定 そくてい することが困難 こんなん なため、理論 りろん の検証 けんしょう に用 もち いるのは難 むずか しい。
レプトン質量 しつりょう 依存 いぞん 性 せい [ 編集 へんしゅう ]
2ループ以上 いじょう の頂点 ちょうてん 補正 ほせい では、光子 こうし の真空 しんくう 偏 へん 極 きょく によって電子 でんし 、ミュー粒子 りゅうし 、タウ粒子 りゅうし の3種類 しゅるい のレプトン対 たい 生成 せいせい が起 お こるため、3種類 しゅるい の閉 と じたレプトンループを持 も つファインマン図 ず が含 ふく まれる。これより、異常 いじょう 磁気 じき モーメントの式 しき 中 ちゅう にレプトン質量 しつりょう 比 ひ (me /mμ みゅー など)に依存 いぞん する項 こう が現 あらわ れる。これを考慮 こうりょ すると、例 たと えば、電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントは
a
e
Q
E
D
=
A
1
u
n
i
v
e
r
s
a
l
+
A
2
(
m
e
/
m
μ みゅー
)
+
A
2
(
m
e
/
m
τ たう
)
+
A
3
(
m
e
/
m
μ みゅー
,
m
e
/
m
τ たう
)
{\displaystyle a_{e}^{\mathrm {QED} }=A_{1}^{\mathrm {universal} }+A_{2}(m_{e}/m_{\mu })+A_{2}(m_{e}/m_{\tau })+A_{3}(m_{e}/m_{\mu },m_{e}/m_{\tau })}
と書 か ける。ここで、第 だい 1項 こう はどのレプトンに対 たい しても等 ひと しい値 ね を持 も つ、すなわち、レプトン質量 しつりょう に依存 いぞん しない普遍 ふへん 的 てき な項 こう である。第 だい 2項 こう 、第 だい 3項 こう はレプトンの質量 しつりょう 比 ひ に依存 いぞん する項 こう で、2ループ以上 いじょう の計算 けいさん において現 あらわ れる。第 だい 2項 こう は電子 でんし の頂点 ちょうてん 関数 かんすう にミュー粒子 りゅうし ループの補正 ほせい が存在 そんざい する図 ず 、第 だい 3項 こう はタウ粒子 りゅうし ループの補正 ほせい が存在 そんざい する図 ず に対応 たいおう している。第 だい 4項 こう は2種類 しゅるい の質量 しつりょう 比 ひ に依存 いぞん する項 こう で、3ループ以上 いじょう の計算 けいさん において現 あらわ れる。
実際 じっさい には、電子 でんし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントに対 たい して、me /mμ みゅー やme /mτ たう に比例 ひれい する項 こう の寄与 きよ は非常 ひじょう に小 ちい さい。一方 いっぽう 、ミュー粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントの場合 ばあい は、mμ みゅー /me に比例 ひれい する項 こう の寄与 きよ は比較的 ひかくてき 大 おお きく、mμ みゅー /mτ たう に比例 ひれい する項 こう の寄与 きよ は非常 ひじょう に小 ちい さい。これは、電子 でんし と比 くら べてミュー粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメントの計算 けいさん が複雑 ふくざつ な原因 げんいん の一 ひと つである。
上 うえ 式 しき の各項 かくこう は電磁 でんじ 相互 そうご 作用 さよう の結合 けつごう 定数 ていすう (微細 びさい 構造 こうぞう 定数 ていすう )α あるふぁ によって摂動 せつどう 展開 てんかい される。
A
1
u
n
i
v
e
r
s
a
l
=
A
1
1
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
+
A
1
2
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
2
+
A
1
3
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
3
+
⋯
{\displaystyle A_{1}^{\mathrm {universal} }=A_{1}^{\mathrm {1-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)+A_{1}^{\mathrm {2-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)^{2}+A_{1}^{\mathrm {3-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)^{3}+\cdots }
A
2
=
A
2
2
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
2
+
A
2
3
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
3
+
A
2
4
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
4
+
⋯
{\displaystyle A_{2}=A_{2}^{\mathrm {2-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)^{2}+A_{2}^{\mathrm {3-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)^{3}+A_{2}^{\mathrm {4-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)^{4}+\cdots }
A
3
=
A
3
3
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
3
+
A
3
4
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
4
+
A
3
5
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
5
+
⋯
{\displaystyle A_{3}=A_{3}^{\mathrm {3-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)^{3}+A_{3}^{\mathrm {4-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)^{4}+A_{3}^{\mathrm {5-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)^{5}+\cdots }
シュウィンガーによって導出 みちびきだ された電子 でんし の1ループ異常 いじょう 磁気 じき モーメントは上 うえ のA1 の第 だい 1項 こう に対応 たいおう している。
a
e
Q
E
D
1
−
l
o
o
p
=
A
1
1
−
l
o
o
p
(
α あるふぁ
π ぱい
)
=
α あるふぁ
2
π ぱい
{\displaystyle a_{e}^{\mathrm {QED\,1-loop} }=A_{1}^{\mathrm {1-loop} }\left({\frac {\alpha }{\pi }}\right)={\frac {\alpha }{2\pi }}}
また、レプトン質量 しつりょう に依存 いぞん しない普遍 ふへん 項 こう A1 は、どのレプトンに対 たい しても共通 きょうつう の値 ね を持 も つ。例 たと えば、1ループのQED頂点 ちょうてん 補正 ほせい を表 あらわ すファインマン図 ず は1種類 しゅるい だけであるので、当然 とうぜん 、光子 こうし の真空 しんくう 偏 へん 極 きょく は存在 そんざい せず、レプトンループを考慮 こうりょ する必要 ひつよう はなくなる。これより、QEDの範囲 はんい においては、電子 でんし 、ミュー粒子 りゅうし 、タウ粒子 りゅうし の1ループの異常 いじょう 磁気 じき モーメントは厳密 げんみつ に等 ひと しくなる。つまり、
a
e
Q
E
D
1
−
l
o
o
p
=
a
μ みゅー
Q
E
D
1
−
l
o
o
p
=
a
τ たう
Q
E
D
1
−
l
o
o
p
{\displaystyle a_{e}^{\mathrm {QED\,1-loop} }=a_{\mu }^{\mathrm {QED\,1-loop} }=a_{\tau }^{\mathrm {QED\,1-loop} }}
である。
高次 こうじ の理論 りろん 計算 けいさん (QED2ループ)[ 編集 へんしゅう ]
QED2ループの異常 いじょう 磁気 じき モーメントの普遍 ふへん 項 こう は、7種類 しゅるい のファインマン図 ず を足 た し上 あ げることで計算 けいさん され、その結果 けっか は以下 いか となる。
A
1
2
−
l
o
o
p
=
[
197
144
+
π ぱい
2
12
−
π ぱい
2
2
ln
2
+
3
4
ζ ぜーた
(
3
)
]
≈
−
0.328
478
965
579
193
78
{\displaystyle A_{1}^{\mathrm {2-loop} }=\left[{\frac {197}{144}}+{\frac {\pi ^{2}}{12}}-{\frac {\pi ^{2}}{2}}\ln 2+{\frac {3}{4}}\zeta (3)\right]\approx -0.328\,478\,965\,579\,193\,78}
ここで、ζ ぜーた (3)はリーマンゼータ関数 かんすう である。この計算 けいさん は1950年 ねん にKarplusとKrollによって行 おこな われたが[9] 、その結果 けっか は間違 まちが っていたため、1957年 ねん にPetermann[10] とSommerfield[11] によって再 さい 導出 どうしゅつ された。
高次 こうじ の理論 りろん 計算 けいさん (QED3ループ)[ 編集 へんしゅう ]
QED3ループの異常 いじょう 磁気 じき モーメントの普遍 ふへん 項 こう は、72種類 しゅるい のファインマン図 ず を足 た し上 あ げることで計算 けいさん され、その結果 けっか は以下 いか となる。
A
1
3
−
l
o
o
p
=
[
28259
5184
+
17101
810
π ぱい
2
−
298
9
π ぱい
2
ln
2
+
139
18
ζ ぜーた
(
3
)
+
100
3
{
L
i
4
(
1
2
)
+
1
24
ln
4
2
−
1
24
π ぱい
2
ln
2
2
}
−
239
2160
π ぱい
4
+
83
72
π ぱい
2
ζ ぜーた
(
3
)
−
215
24
ζ ぜーた
(
5
)
]
≈
1.181
241
456
587
{\displaystyle {\begin{aligned}A_{1}^{\mathrm {3-loop} }=&\left[{\frac {28259}{5184}}+{\frac {17101}{810}}\pi ^{2}-{\frac {298}{9}}\pi ^{2}\ln 2+{\frac {139}{18}}\zeta (3)\right.\\&\left.+{\frac {100}{3}}\left\{\mathrm {Li} _{4}({\frac {1}{2}})+{\frac {1}{24}}\ln ^{4}2-{\frac {1}{24}}\pi ^{2}\ln ^{2}2\right\}\right.\\&\left.-{\frac {239}{2160}}\pi ^{4}+{\frac {83}{72}}\pi ^{2}\zeta (3)-{\frac {215}{24}}\zeta (5)\right]\approx 1.181\,241\,456\,587\end{aligned}}}
ここで、
L
i
4
(
1
/
2
)
=
∑
n
=
1
∞
1
/
(
2
n
n
4
)
{\displaystyle \mathrm {Li} _{4}(1/2)=\sum _{n=1}^{\infty }1/(2^{n}n^{4})}
である。3ループ計算 けいさん の値 ね は1995年 ねん に木下 きのした 東一郎 とういちろう によって数値 すうち 的 てき に計算 けいさん され[12] 、1996年 ねん には上 うえ 式 しき のような解析 かいせき 的 てき な表記 ひょうき がLaportaとRemiddiによって導出 みちびきだ された[13] 。
高次 こうじ の理論 りろん 計算 けいさん (QED4ループ)[ 編集 へんしゅう ]
QED4ループの異常 いじょう 磁気 じき モーメントの普遍 ふへん 項 こう は、891種類 しゅるい のファインマン図 ず を足 た し上 あ げることで計算 けいさん される。この中 なか で、373個 こ の図 ず は真空 しんくう 偏 へん 極 きょく による閉 と じたレプトンループを持 も ち、残 のこ りの518個 こ の図 ず はレプトンループを持 も たない4個 こ の光子 こうし が飛 と ぶだけの過程 かてい である。木下 きのした らによる2007年 ねん の数値 すうち 的 てき な計算 けいさん によると、その結果 けっか は以下 いか のようになる[14] 。
A
1
4
−
l
o
o
p
≈
−
1.914
4
(
35
)
{\displaystyle A_{1}^{\mathrm {4-loop} }\approx -1.914\,4(35)}
複 ふく 合 あい 粒子 りゅうし の異常 いじょう 磁気 じき モーメント[ 編集 へんしゅう ]
バリオン などの複 ふく 合 あい 粒子 りゅうし は非常 ひじょう に大 おお きな異常 いじょう 磁気 じき モーメントを持 も つことがある。古典 こてん 的 てき には電荷 でんか 質量 しつりょう 比 ひ q/m の荷電 かでん 体 たい が角 かく 運動 うんどう 量 りょう L で回転 かいてん するときの磁気 じき モーメントは
μ みゅー
=
(
q
/
m
)
L
{\displaystyle \mu =(q/m)L}
で与 あた えられ、これに基 もと づけば、陽子 ようし の磁気 じき モーメントは核 かく 磁子
μ みゅー
N
=
e
ℏ
/
2
m
p
{\displaystyle \mu _{\text{N}}=e\hbar /2m_{\text{p}}}
となり、中性子 ちゅうせいし は電荷 でんか をもたないので 0 となるはずだが、実際 じっさい は陽子 ようし の磁気 じき モーメントは核 かく 磁子に対 たい して
μ みゅー
p
/
μ みゅー
N
=
2.792
847
344
63
(
82
)
{\displaystyle \mu _{\text{p}}/\mu _{\text{N}}=2.792\ 847\ 344\ 63(82)}
であり(2018 CODATA 推奨 すいしょう 値 ち [15] )、中性子 ちゅうせいし の場合 ばあい は
μ みゅー
n
/
μ みゅー
N
=
−
1.913
042
73
(
45
)
{\displaystyle \mu _{\text{n}}/\mu _{\text{N}}=-1.913\ 042\ 73(45)}
である(2018 CODATA 推奨 すいしょう 値 ち [16] )。
一方 いっぽう で、陽子 ようし が電荷 でんか を持 も たない中性子 ちゅうせいし と電荷 でんか を持 も つパイ中間子 ちゅうかんし π ぱい + に、また中性子 ちゅうせいし も負 まけ の電荷 でんか を持 も つ π ぱい − と正 せい の電荷 でんか をもつ陽子 ようし に、それぞれ分裂 ぶんれつ する崩壊 ほうかい 過程 かてい が観測 かんそく されている。クォークモデル では、陽子 ようし や中性子 ちゅうせいし が実際 じっさい は電荷 でんか をもったクオーク の複 ふく 合 あい 粒子 りゅうし であり、崩壊 ほうかい 過程 かてい がそれぞれ
p
(
u
u
d
)
→
n
(
u
d
d
)
+
π ぱい
+
(
u
d
¯
)
{\displaystyle \mathrm {p} (\mathrm {uud} )\to \mathrm {n} (\mathrm {udd} )+\pi ^{+}(\mathrm {u{\bar {d}}} )}
n
(
u
d
d
)
→
p
(
u
u
d
)
+
π ぱい
−
(
d
u
¯
)
{\displaystyle \mathrm {n} (\mathrm {udd} )\to \mathrm {p} (\mathrm {uud} )+\pi ^{-}(\mathrm {d{\bar {u}}} )}
として説明 せつめい される。陽子 ようし や中性子 ちゅうせいし の磁気 じき モーメントは、それぞれを構成 こうせい するクォークの磁気 じき モーメントについて重要 じゅうよう な手 て がかりを与 あた えている。
脚注 きゃくちゅう と参考 さんこう 文献 ぶんけん [ 編集 へんしゅう ]
^
Kusch, R.; Foley, H. M. (1948). “The Magnetic Moment of the Electron”. Physical Review 74 (3): 250–263. doi :10.1103/PhysRev.74.250 .
^ https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?ae
^ See section 6.3 of Michael E. Peskin and Daniel V. Schroeder, An Introduction to Quantum Field Theory , Addison-Wesley, Reading, 1995.
^
Schwinger, Julian (1948). “On Quantum electrodynamics and the magnetic moment of the electron”. Physical Review 73 (4): 416-417. doi :10.1103/PhysRev.73.416 .
^ 電子 でんし の磁石 じしゃく の強 つよ さを1兆 ちょう 分 ぶん の1の精度 せいど まで計算 けいさん - 理化学研究所 りかがくけんきゅうしょ プレスリリース
^
Aoyama, Tatsumi; Hayakawa, Masashi; Kinoshita, Toichiro; Nio, Makiko (2012). Tenth-Order QED Contribution to the Lepton Anomalous Magnetic Moment - Sixth-Order Vertices Containing an Internal Light-by-Light-Scattering Subdiagram . arXiv :1201.2461
^ https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?amu
^
Hagiwara, K. ; Martin, A. D. and Nomura, Daisuke and Teubner, T. (2006) (abstract). Improved predictions for g-2 of the muon and alpha(QED)(M(Z)**2) . http://arxiv.org/abs/hep-ph/0611102 .
^
Karplus, Robert; Kroll, Norman M. (1950). “Fourth-Order Corrections in Quantum Electrodynamics and the Magnetic Moment of the Electron”. Physical Review 77 (4): 536-549. doi :10.1103/PhysRev.77.536 .
^
Petermann, Andre (1957). “Fourth order magnetic moment of the electron”. Helv. Phys. Acta 30 : 407-408. doi :10.1016/0029-5582(58)90065-8 .
^
Sommerfield, Charles M. (1957). “Magnetic Dipole Moment of the Electron”. Physical Review 107 (1): 328-329. doi :10.1103/PhysRev.107.328 .
^
Kinoshita, Toichiro (1995). “New Value of the α あるふぁ 3 Electron Anomalous Magnetic Moment”. Physical Review Letters 75 (26): 4728–4731. doi :10.1103/PhysRevLett.75.4728 .
^
Laporta, Stefano; Remiddi, Ettore (1996). “The analytical value of the electron (g − 2) at order α あるふぁ 3 in QED”. Physics Letters B379 : 283-291. doi :10.1016/0370-2693(96)00439-X . arXiv :hep-ph/9602417v1
^
Aoyama, Tatsumi; Hayakawa, Masashi; Kinoshita, Toichiro; Nio, Makiko (2007). “Revised value of the eighth-order electron g-2”. Physical Review Letters 99 (11): 110406. doi :10.1103/PhysRevLett.99.110406 . arXiv :0706.3496
^ https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?mupsmun
^ https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?munsmun