ウィークボソン

Wボソン
組成そせい	素粒子そりゅうし
グループ	ゲージ粒子りゅうし
相互そうご作用さよう	弱よわい相互そうご作用さよう 電磁でんじ相互そうご作用さよう 重力じゅうりょく相互そうご作用さよう
反はん粒子りゅうし	Wボソン
理論りろん化か	ジュリアン・シュウィンガー
発見はっけん	CERN(1983年ねん)
記号きごう	W±
質量しつりょう	80.385±0.015 GeV/c2
電荷でんか	±e
スピン	1

Zボソン
組成そせい	素粒子そりゅうし
グループ	ゲージ粒子りゅうし
相互そうご作用さよう	弱よわい相互そうご作用さよう 重力じゅうりょく相互そうご作用さよう
反はん粒子りゅうし	Zボソン
理論りろん化か	シェルドン・グラショー、スティーヴン・ワインバーグ、アブドゥッサラーム
発見はっけん	CERN(1983年ねん)
記号きごう	Z
質量しつりょう	91.1876±0.0021 GeV/c2
電荷でんか	0
スピン	1

ウィークボソン（英えい: weak boson）は素粒子そりゅうし物理ぶつり学がくにおいて、弱よわい相互そうご作用さようを媒介ばいかいする素粒子そりゅうしである。弱じゃくボソンとも言いう。 ウィークボソンはスピン1のベクトルボソンで、WボソンとZボソンの二に種類しゅるいが存在そんざいする。Wボソンは陽子ようしの約やく80倍ばい、Zボソンは約やく90倍ばいと他たの素粒子そりゅうしに比くらべて大おおきな質量しつりょうをもち、ごく短時間たんじかんのうちに別べつの粒子りゅうしに崩壊ほうかいしてしまうという特徴とくちょうを持もつ。 Wボソンは電荷でんか ±1 （W⁺,W⁻）をもち、両者りょうしゃは互たがいに反はん粒子りゅうしの関係かんけいにある。 Zボソンは電荷でんか 0 で、反はん粒子りゅうしは自分じぶん自身じしんである。

1968年ねんに理論りろんで存在そんざいが予言よげんされ、1983年ねんに欧州おうしゅう合同ごうどう原子核げんしかく研究所けんきゅうじょにてその存在そんざいが確認かくにんされた。

概要がいよう

弱よわい相互そうご作用さようはベータ崩壊ほうかいに代表だいひょうされる、粒子りゅうしの種類しゅるいを変かえる相互そうご作用さようである。

$n\to p^{+}+e^{-}+{\bar {\nu }}_{e}$

ベータ崩壊ほうかいでは4つのフェルミオンが関かかわっており、フェルミ相互そうご作用さようと呼よばれる。 湯川ゆかわ秀樹ひできはこの反応はんのうを

$n\to p^{+}+W^{-},~W^{-}\to e^{-}+{\bar {\nu }}_{e}$

のように2段階だんかいで起おきているとした。それぞれの反応はんのうでは2つのフェルミオンと1つのボソンが関かかわっており、湯川ゆかわ相互そうご作用さようと呼よばれる。

シュウィンガーは弱よわい相互そうご作用さようと電磁でんじ相互そうご作用さようの共通きょうつう性せいから両者りょうしゃには関係かんけいがあると考かんがえ、Wボソンと光子こうしを合あわせて SU(2) の三重みえ項こう（随伴ずいはん表現ひょうげん）とする模型もけいを考かんがえた。 この模型もけいには、光子こうしは質量しつりょうをもたないがWボソンが質量しつりょうをもつ理由りゆうや、Wボソンが質量しつりょうをもつ故ゆえに相互そうご作用さようのくりこみが不可能ふかのうであるなどの困難こんなんがあった。

グラショウは対称たいしょう性せいを SU(2)×U(1) に拡張かくちょうする必要ひつよう性せいに気付きづいた。 ワインバーグとサラムはヒッグス機構きこうにより対称たいしょう性せいが自発じはつ的てきに破やぶれて質量しつりょうを与あたえる理論りろんを考かんがえた。 この理論りろんによりZボソンの存在そんざいと、Zボソンが関かかわる中性ちゅうせいカレントというそれまでに無なかった相互そうご作用さようが予言よげんされた。 この予言よげんによりグラショウ、サラム、およびワインバーグは1979年ねんにノーベル物理ぶつり学がく賞しょうを受賞じゅしょうした。

WボソンとZボソンは1983年ねんにCERNのスーパー陽子ようしシンクロトロン（SPS）によって発見はっけんされた。

ウィークボソンの質量しつりょう程度ていどのエネルギースケール（100GeV程度ていど）は通常つうじょうウィークスケールと呼よばれる。 WボソンとZボソンの質量しつりょうはCERNの大型おおがた電子でんし陽電子ようでんし衝突しょうとつ型がた加速器かそくき（Large Electron–Positron Collider, LEP）により精度せいど良よく測定そくていされている。 特とくに、ヒッグス機構きこうによって破やぶれた電でん弱じゃく対称たいしょう性せいがウィークスケールにおいてどの程度ていどの量子りょうし補正ほせいを受うけられるかはLEPによる精密せいみつ測定そくていから厳きびしい制限せいげんがつけられており素粒子そりゅうし模型もけいの構築こうちくの指針ししんとなっている。

参考さんこう文献ぶんけん

論文ろんぶん

• S. L. Glashow (1961). “Partial Symmetries of Weak Interactions”. Nucl. Phys. 22: 579. doi:10.1016/0029-5582(61)90469-2. 
• S. Weinberg (1967). “A Model of Leptons”. Phys. Rev. Lett. 19: 1264. doi:10.1103/PhysRevLett.19.1264. 

書籍しょせき

• 中村なかむら誠まこと太郎たろう『現代げんだい物理ぶつり学がくの世界せかい』講談社こうだんしゃ〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉、1988年ねん。ISBN 978-4-06-158849-3。 
• 南部なんぶ陽一郎よういちろう、他た『大学院だいがくいん素粒子そりゅうし物理ぶつり１』講談社こうだんしゃ、1997年ねん。ISBN 4-06-153224-3。 

関連かんれん項目こうもく

• ワインバーグ＝サラム理論りろん
• ベータ崩壊ほうかい
• ニュートリノ
• 弱よわい相互そうご作用さよう
• ゲージ粒子りゅうし
• 素粒子そりゅうし物理ぶつり学がく
• W'ボソンとZ'ボソン

外部がいぶリンク

• Particle Data Group
  • “pdgLive （Wボソン）”. 2019年ねん3月がつ20日はつか閲覧えつらん。
  • “pdgLive （Zボソン）”. 2019年ねん3月がつ20日はつか閲覧えつらん。
• “The Nobel Prize in Physics 1979”. 2014年ねん7月がつ12日にち閲覧えつらん。
• 素粒子そりゅうしWボソン、予想よそうより重おもい？　「事実じじつなら世紀せいきの大だい発見はっけん」（朝日新聞あさひしんぶん2022年ねん4月がつ14日にち）