石坂いしざか周造しゅうぞう

石坂いしざか 周造しゅうぞう（いしざか しゅうぞう、天保てんぽう3年ねん1月がつ1日にち〈1832年ねん2月がつ2日にち〉 - 明治めいじ36年ねん〈1903年ねん〉5月22日にち）は、幕末ばくまつの志士しし。尊皇そんのう攘夷じょうい論者ろんしゃ。明治めいじ期きには石油せきゆ産業さんぎょうの祖そとして知しられる。幼名ようみょうは源みなもと造づくり、号ごうは宗そう順じゅん（そうじゅん）。江戸えどでは彦根ひこね藩はん脱藩だっぱん浪士ろうしを自称じしょうしていた。

概要がいよう

信濃しなの国こく水内みずうち郡ぐん桑名くわな川村かわむら（現げん・長野ながの県けん飯山いいのやま市し）に渡辺わたなべ彦右衛門えもんの次男じなんとして生うまれとしている資料しりょうが多おおい。ただし、碑文ひぶんには「両国りょうこく生うまれ」と記載きさいされており。また、生前せいぜんに出版しゅっぱんされた自伝じでん「石坂いしざか翁おう小伝しょうでん」には他たのほとんどの資料しりょうと矛盾むじゅんする以下いかの記述きじゅつがある。

私わたしは天保てんぽう三さん年ねん辰たつの正月しょうがつ元旦がんたんに両國りょうこく山伏やまぶし井戸いど石せき阪ばん宗そう哲あきらの屋敷やしきに生うまれましたもので私わたしが母ははは分娩ぶんべん後ご死亡しぼういたしました、其母たるや自分じぶんの母ははの(こ)とを知しらぬと言げんふのは是ぜはマアーッ不思議ふしぎでございます。偖其の不思議ふしぎと云いうものは何なにかと云うんふと妾わらわでありましたか或あるいは召使めしつかい女おんなでありましたか私わたしの母ははの素性すじょうと云いうものは私わたしは知しりませぬ、分娩ぶんべん後ご立川たちかわ宗達そうたつと云いう即そく石いし坂ざかの門人もんじんの所ところへ養子ようし同様どうように先まず引取ひきとって世話せわをいたしました(中略ちゅうりゃく)渡邉わたなべ彦右衛門えもんと云いう所ところへ里さとにやられまして、夫おっとれから十じゅう一いち歳さいの時ときにまた石いし坂ざかに帰かえりまして — 石坂いしざか周造しゅうぞう(き取きとり柿沼かきぬま柳作りゅうさく)、 石坂いしざか翁おう小伝しょうでん

上記じょうき、石坂いしざか翁おう小伝しょうでんの記述きじゅつが正ただしければ複雑ふくざつな出生しゅっしょうと養子ようし縁組えんぐみを繰くり返かえしている事こととなる。一般いっぱん的てきな資料しりょうには6歳さいで飯山いいやまの英えい岩がん寺てらに入門にゅうもんし、11歳さいで高こう源みなもと院いんに移うつり、その後ご江戸えどに出でて石坂いしざか宗そう哲あきらの養子ようしとなったとある。石坂いしざか翁おう小伝しょうでんの記述きじゅつが正ただしければ、出戻でもどり養子ようしであり、また実子じっしである可能かのう性せいもあるが小伝しょうでんに実父じっぷへの戻もどり養子ようしであったかどうかの明確めいかくな記述きじゅつは無ない。養子ようしとして戻もどった後のちは、石坂いしざか塾じゅくで学まなんだとあり、また、その間あいだの事ことは「其間は何なにも申もうし上あげる程ほどの事ことはありません」と自みずから述のべている。22歳さいにして尊皇そんのう攘夷じょういに目覚めざめた。石坂いしざか塾じゅくで同志どうしを集あつめ、禁令きんれいを犯おかして征夷大将軍せいいたいしょうぐんの君側くんそくの奸を除のぞく「密談みつだん」を行おこない、斬き奸書を配くばっていたところ発覚はっかくし、乳母うばの手引てびきで僧侶そうりょに化ばけて命いのちからがら逃走とうそうした。この江戸えどからの逃走とうそう中ちゅうに、岡おかっ引ぴき40〜50に囲かこわれ刀かたなを振ふるって飛とび出だした所ところ、遠巻とおまきに囲かこうだけで戦闘せんとうにならずに逃にげ出だせたり、一いち度どは諦あきらめて切腹せっぷくするも不思議ふしぎに生いき残のこっている逸話いつわを語かたっている。

その後ご、清河きよかわ八郎はちろうと共ともに尊皇そんのう攘夷じょうい運動うんどうに荷担かたんし、「虎とら尾おの会かい」に参加さんかする。幕府ばくふを欺あざむいて浪士ろうし組ぐみを結成けっせい。浪士ろうし組ぐみ（後ご、新選しんせん組ぐみと新しん徴ちょう組ぐみに分離ぶんり）頭取とうどりの一人ひとりに就任しゅうにんして文久ぶんきゅう3年ねん（1863年ねん）3月がつ、京都きょうとに入はいった。京都きょうとに入はいってからも清河きよかわ八郎はちろうらと尊皇そんのう活動かつどうを続つづけて、水戸みと藩はん出身しゅっしんの芹沢鴨せりざわかもや佐幕さばく派はの近藤こんどう勇いさむらに反感はんかんを買かう。石坂いしざか自身じしんも上洛じょうらく道中どうちゅうより近藤こんどう達いたるに良よい感情かんじょうを抱だいていなかったらしい。

やがて京都きょうとから江戸えどへ帰還きかんするよう命令めいれいが下くだると、大半たいはんの浪士ろうし達たちを率ひきいて江戸えどへ戻もどるが、幕府ばくふを欺あざむいた罪つみにより同年どうねん4月がつ13日にち、幕臣ばくしん・佐々木ささき只三郎たださぶろうらに清河きよかわ八郎はちろうは斬殺ざんさつされ（この時とき石坂いしざかは八はち郎ろうの首くびと攘夷じょうい党とうへの連盟れんめい状じょうを奪うばい返かえしている）、石坂いしざかもまた翌よく14日にちに下総しもうさ国こく佐原さわらで幕吏ばくりに包囲ほういされて5年間ねんかん投獄とうごくされた。預あずかり先さきを転々てんてんとしながら幕府ばくふ瓦解がかいを獄中ごくちゅうで過すごし、慶応けいおう4年ねん（1868年ねん）3月がつ15日にちに山岡やまおか鉄舟てっしゅう預あずかりの身みとなる。妻つまの桂子けいこは高橋泥舟たかはしでいしゅうの妹いもうとであり、桂子けいこの姉あね・英子えいこは鉄舟てっしゅうの妻つまである。

その後ご赦免しゃめんされて後ご、長野ながの村むら郊外こうがいの浅川あさがわに石油せきゆが噴出ふんしゅつしているのを知しり、半なかば強引ごういんに石油せきゆの鉱区こうくを買収ばいしゅう。明治めいじ4年ねん（1871年ねん）東京とうきょう湯島ゆしまに長野ながの石炭せきたん油ゆ会社かいしゃを設立せつりつすると、刈萱かるかや山さん西光寺さいこうじ境内けいだいにわが国くに最初さいしょの石油せきゆ精製せいせい所しょを置おいた。アメリカから輸入ゆにゅうした綱つな掘ほり式しき掘削くっさく機械きかいで相良さがら油田ゆでんからも石油せきゆを採集さいしゅう。多額たがくの投資とうしをしたが、石いし油井ゆせいの開発かいはつは進すすまず、周造しゅうぞうが手てを引ひいて明治めいじ14年ねん（1881年ねん）に会社かいしゃは倒産とうさんした。

明治めいじ36年ねん（1903年ねん）、死去しきょ。享年きょうねん72。鉄舟てっしゅうが建たてた全ぜん生なま庵あん（東京とうきょう都と台東たいとう区く谷中たになか）に眠ねむる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『長野ながの県けん歴史れきし人物じんぶつ大だい事典じてん』 郷土きょうど出版しゅっぱん社しゃ、1989年ねん。
• 滝澤たきざわ忠義ただよし『信州しんしゅうの人物じんぶつ余聞よぶん』2010年ねん。

関連かんれん項目こうもく

• 日本石油にほんせきゆ
• 相良さがら油田ゆでん

外部がいぶリンク

• 清河きよかわ八郎はちろう関係かんけい人物じんぶつ録ろく 石坂いしざか周造しゅうぞう - 山形やまがた県けん庄内しょうない町まちのサイト。