破産はさん宣告せんこく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

破産はさん宣告せんこく(はさんせんこく)とは、いわゆるきゅう破産はさんほう大正たいしょう11ねん4がつ25にち法律ほうりつ71ごう)において、債務さいむしゃについて破産はさん手続てつづき開始かいしするむね決定けっていをいう。法文ほうぶんじょうすで廃止はいしされた用語ようごであり、2005ねんから施行しこうされた現行げんこう破産はさんほう平成へいせい16ねん6がつ2にち法律ほうりつだい75ごう)においては「破産はさん手続てつづき開始かいし決定けってい」という。

以下いか本稿ほんこう記述きじゅつすで廃止はいしされた旧法きゅうほうかんするものであるから、注意ちゅういされたい。

破産はさん宣告せんこく同時どうじ廃止はいしふくむ)[編集へんしゅう]

破産はさん原因げんいん存在そんざい証明しょうめいされれば、裁判所さいばんしょ破産はさん宣告せんこくをなす。

裁判所さいばんしょは、破産はさん宣告せんこく同時どうじ破産はさん管財かんざいじん選任せんにんし、債権さいけん届出とどけで期間きかんだい1かい債権さいけんしゃ集会しゅうかい期日きじつおよ債権さいけん調査ちょうさ期日きじつさだめる(破産はさんほう142じょう1こう、157じょう)。

また、裁判所さいばんしょは、ただちに、破産はさん決定けってい主文しゅぶん破産はさん管財かんざいじん住所じゅうしょ氏名しめい債権さいけん届出とどけで期間きかんとう公告こうこくし、判明はんめいしている債権さいけんしゃ債務さいむしゃとうにこれらを記載きさいした書面しょめん送達そうたつすることをようする(どうほう143じょう1こう、2こう、118じょう1こう)。

なお、公告こうこく送達そうたつにつき、破産はさんほう111じょう、115じょう1こう、117じょう、118じょう2こう参照さんしょうされたい。

もっとも、裁判所さいばんしょが、破産はさん財団ざいだんをもって破産はさん手続てつづき費用ひようつぐなうにりないとみとめるときは、破産はさん宣告せんこく同時どうじ破産はさん廃止はいし破産はさん手続てつづき清算せいさん目的もくてきたっしないまま終了しゅうりょうさせる決定けってい)をなすことをようする(どうほう145じょう1こう)。これを同時どうじ破産はさん廃止はいし、あるいはたん同時どうじ廃止はいしといい、この場合ばあい破産はさん管財かんざいじん選任せんにんされないし、債権さいけん届出とどけで期間きかんとうさだめられない。

破産はさん財団ざいだん[編集へんしゅう]

破産はさんしゃ破産はさん宣告せんこくときにおいてゆうする一切いっさい財産ざいさんは、破産はさん財団ざいだんとなる(どうほう6じょう1こう)。

*その詳細しょうさいは、破産はさん財団ざいだん参照さんしょう

破産はさんしゃ管理かんり処分しょぶんけん喪失そうしつ[編集へんしゅう]

破産はさん財団ざいだん管理かんり処分しょぶんけん破産はさん管財かんざいじん専属せんぞくし(どうほう7じょう)、破産はさんしゃ管理かんり処分しょぶんけん喪失そうしつする。

破産はさんしゃが、破産はさん宣告せんこくのち破産はさん財団ざいだんぞくする財産ざいさんかんしてなした法律ほうりつ行為こういは、これをもって破産はさん債権さいけんしゃ対抗たいこうすることができないし(どうほう53じょう1こう)、破産はさん宣告せんこくのち破産はさん財団ざいだんぞくする財産ざいさんかんし、破産はさんしゃ法律ほうりつ行為こういによらないで権利けんり取得しゅとくしても、その取得しゅとくは、これをもって破産はさん債権さいけんしゃ対抗たいこうすることができない(どうほう54じょう1こう)。

不動産ふどうさんまた船舶せんぱくかんし、破産はさん宣告せんこくまえしょうじた登記とうき原因げんいんもとづき、破産はさん宣告せんこくになした登記とうきまた不動産ふどうさん登記とうきほう2じょう1こう規定きていによるかり登記とうきは、これをもって破産はさん債権さいけんしゃ対抗たいこうすることができない(どうほう55じょう1こう本文ほんぶん)。もっとも、登記とうき権利けんりしゃ破産はさん宣告せんこく事実じじつらずになした登記とうきまたかり登記とうきは、これをもって破産はさん債権さいけんしゃ対抗たいこうすることができる(どうこう但書ただしがき)。

権利けんり設定せってい移転いてんまた変更へんこうかんする登録とうろくまたかり登録とうろくおよ企業きぎょう担保たんぽけん設定せってい移転いてんまた変更へんこうかんする登記とうきについても、同様どうようである(どうじょう2こう、3こう)。

破産はさん宣告せんこくのち、その事実じじつらずに破産はさんしゃになした弁済べんさいは、これをもって破産はさん債権さいけんしゃ対抗たいこうすることができる(どうほう56じょう1こう)。

破産はさん宣告せんこくのち、その事実じじつって破産はさんしゃになした弁済べんさいは、破産はさん財団ざいだんけた利益りえき限度げんどにおいてのみ、これをもって破産はさん債権さいけんしゃ対抗たいこうすることができる(どうじょう2こう)。

破産はさんほう55じょうないし57じょう適用てきようについては、破産はさん宣告せんこく公告こうこくまえにあってはその事実じじつらなかったものと推定すいていし、公告こうこくにあってはその事実じじつっていたものと推定すいていする(どうほう58じょう)。

破産はさん財団ざいだん運営うんえい機構きこう[編集へんしゅう]

破産はさん管財かんざいじんは、裁判所さいばんしょがこれを選任せんにんし(どうほう157じょう)、裁判所さいばんしょ監督かんとくぞくする(どうほう161じょう)。裁判所さいばんしょは、債権さいけんしゃ集会しゅうかい決議けつぎしくは監査かんさ委員いいん申立もうしたてにより、また職権しょっけんをもって、破産はさん管財かんざいじん解任かいにんすることができる(どうほう167じょう本文ほんぶん)。

破産はさん財団ざいだん管理かんり処分しょぶんけん破産はさん管財かんざいじん専属せんぞくし(どうほう7じょう)、破産はさん財団ざいだんかんするうったえについては破産はさん管財かんざいじんをもって原告げんこくまた被告ひこくとする(どうほう162じょう)。

破産はさん管財かんざいじん任務にんむ終了しゅうりょう場合ばあいにおいては、破産はさん管財かんざいじんまたはその相続そうぞくじんは、遅滞ちたいなく債権さいけんしゃ集会しゅうかい計算けいさん報告ほうこくをなすことをようする(どうほう168じょう)。

監査かんさ委員いいんくかかは、だい1かい債権さいけんしゃ集会しゅうかいにおいてこれを議決ぎけつすることをようする(どうほう170じょう本文ほんぶん)。監査かんさ委員いいんは3にん以上いじょうとし、債権さいけんしゃ集会しゅうかいにおいてこれを選任せんにんし(どうほう172じょう1こう)、裁判所さいばんしょ認可にんかることをようする(どうじょう2こう)。監査かんさ委員いいんは、いつでも債権さいけんしゃ集会しゅうかい決議けつぎをもってこれを解任かいにんすることができるし(どうほう174じょう1こう)、重要じゅうよう事由じゆうがあるときは、裁判所さいばんしょは、利害りがい関係かんけいじん申立もうしたてにより、監査かんさ委員いいん解任かいにんすることができる(どうじょう2こう)。

かく監査かんさ委員いいんは、いつでも破産はさん管財かんざいじんたいして破産はさん財団ざいだんかんする報告ほうこくもとめ、また破産はさん財団ざいだん状況じょうきょう調査ちょうさすることができる(どうほう173じょう)。

債権さいけんしゃ集会しゅうかいは、破産はさん管財かんざいじんしくは監査かんさ委員いいん申立もうしたてにより、また職権しょっけんをもって、裁判所さいばんしょがこれを招集しょうしゅうし(どうほう176じょう前段ぜんだん)、裁判所さいばんしょがこれを指揮しきする(どうほう178じょう)。

破産はさん債権さいけんしゃは、確定かくてい債権さいけんがくおうじてその議決ぎけつけん行使こうしすることができる(どうほう182じょう1こう)。確定かくてい債権さいけん停止ていし条件じょうけんづけ債権さいけん将来しょうらい請求せいきゅうけんまたべつじょけん行使こうしによって弁済べんさいけることができないであろう債権さいけんは、そのがくについて破産はさん管財かんざいじんまた破産はさん債権さいけんしゃ異議いぎがあるときは、裁判所さいばんしょは、議決ぎけつけんおこなわせるかおよびいかなる金額きんがくについてこれをおこなわせるかをさだめる(どうじょう2こう)。

債権さいけんしゃ集会しゅうかい決議けつぎには、議決ぎけつけんおこなうことができる出席しゅっせき破産はさん債権さいけんしゃ過半数かはんすうであって、その債権さいけんがく出席しゅっせき破産はさん債権さいけんしゃそう債権さいけんがく半額はんがくえるもの同意どういがあることをようする(どうほう179じょう1こう)。

債権さいけんしゃ集会しゅうかい決議けつぎは、これをもって監査かんさ委員いいん同意どういえることができ(どうほう183じょう1こう)、債権さいけんしゃ集会しゅうかい決議けつぎ監査かんさ委員いいん意見いけんことなるときは、その決議けつぎしたがう(どうじょう2こう)。

契約けいやく関係かんけい処理しょり[編集へんしゅう]

双務そうむ契約けいやくにつき、破産はさんしゃおよびその相手方あいてがた破産はさん宣告せんこく当時とうじいまだともにその履行りこう完了かんりょうしていないときは、破産はさん管財かんざいじんは、その選択せんたくしたがい、契約けいやく解除かいじょをなし、また破産はさんしゃ債務さいむ履行りこうして相手方あいてがた債務さいむ履行りこう請求せいきゅうすることができる(どうほう59じょう1こう)。

契約けいやく解除かいじょがあったときは、相手方あいてがたは、その損害そんがい賠償ばいしょうにつき破産はさん債権さいけんしゃとしてその権利けんりおこなうことができる(どうほう60じょう1こう)。

また、相手方あいてがたは、破産はさんしゃけた反対はんたい給付きゅうふ破産はさん財団ざいだんちゅう現存げんそんするときはその返還へんかん請求せいきゅうし、現存げんそんしないときはその価額かがくにつき財団ざいだん債権さいけんしゃとしてその権利けんり行使こうしすることができる(どうじょう2こう)。

賃貸ちんたいじん破産はさん宣告せんこくけた場合ばあいにおいては、ちん前払まえばらいまたちん債権さいけん処分しょぶんは、破産はさん宣告せんこくときにおける当期とうきおよ次期じきかんするものをのぞくほか、これをもって破産はさん債権さいけんしゃ対抗たいこうすることができない(どうほう63じょう1こう)。

このことによって損害そんがいけたものは、その損害そんがい賠償ばいしょうにつき、破産はさん債権さいけんしゃとしてその権利けんりおこなうことができる(どうじょう2こう)。

訴訟そしょうの受継とう[編集へんしゅう]

破産はさん財団ざいだんぞくする財産ざいさんかん破産はさん宣告せんこく当時とうじ係属けいぞくする訴訟そしょうは、破産はさん管財かんざいじんまた相手方あいてがたにおいて、これを受継することができる(どうほう69じょう1こう前段ぜんだん)。

破産はさん債権さいけんにつき破産はさん財団ざいだんぞくする財産ざいさんたいしなした強制きょうせい執行しっこうかり差押さしおさえ、仮処分かりしょぶんまた企業きぎょう担保たんぽけん実行じっこう手続てつづきは、破産はさん財団ざいだんたいしては、その効力こうりょくうしなう。ただし、強制きょうせい執行しっこうについては、破産はさん管財かんざいじんにおいて、破産はさん財団ざいだんのためその手続てつづき続行ぞっこうすることができる(どうほう70じょう1こう)。

一般いっぱん先取せんしゅ特権とっけんしゃ破産はさん財団ざいだんぞくする財産ざいさんたいしてなした競売きょうばい手続てつづきも、同様どうようである(どうじょう3こう)。

破産はさん財団ざいだんぞくする財産ざいさんたい国税こくぜい徴収ちょうしゅうほうまた国税こくぜい徴収ちょうしゅうれいによる滞納たいのう処分しょぶんをなした場合ばあいにおいては、破産はさん宣告せんこくは、その処分しょぶん続行ぞっこうさまたげない(どうほう70じょう1こう)。

破産はさん財団ざいだんぞくする財産ざいさんかんし、破産はさん宣告せんこく当時とうじ行政ぎょうせいちょう係属けいぞくする事件じけんがあるときは、その手続てつづきは、受継また破産はさん手続てつづきかいどめいたるまで、これを中断ちゅうだんする(どうじょう2こう)。

いつわりがい行為こうい取消とりけし訴訟そしょう民法みんぽう424じょう)が破産はさん宣告せんこく当時とうじ係属けいぞくするときは、その訴訟そしょう手続てつづきは、受継また破産はさん手続てつづきかいどめいたるまで中断ちゅうだんする(どうほう86じょう1こう)。

破産はさんしゃとうたいする制限せいげん[編集へんしゅう]

破産はさんしゃは、裁判所さいばんしょ許可きょかなければ、その居住きょじゅうはなれることができない(どうほう147じょう)。これは、破産はさん手続てつづき進行しんこう必要ひつよう情報じょうほうは、破産はさんしゃもっともよく立場たちばにあるため、破産はさんしゃ居住きょじゅうはなれると手続てつづき進行しんこう支障ししょうをきたすからである。

裁判所さいばんしょは、必要ひつようみとめるときは、破産はさんしゃ引致いんちめいじることができるし(どうほう148じょう1こう)、破産はさんしゃ逃走とうそうし、また財産ざいさん隠匿いんとくしくは毀棄ききするおそれがあるときは、その監守かんしゅめいずることができる(どうほう149じょう1こう)。

これらの制限せいげんは、破産はさんしゃ法定ほうてい代理人だいりにん理事りじおよびこれにじゅんじるべきもの支配人しはいにんなどについても準用じゅんようされる(どうほう152じょう)。

破産はさんしゃ、その代理人だいりにん、その理事りじおよびこれにじゅんじるべきものなどは、破産はさん管財かんざいじん監査かんさ委員いいんまた債権さいけんしゃ集会しゅうかい請求せいきゅうにより、破産はさんかん必要ひつよう説明せつめいをなすことをようする(どうほう153じょう1こう)。