空中くうちゅう消火しょうか

空中くうちゅう消火しょうか（くうちゅうしょうか）とは、航空機こうくうきを用もちいて、空そらから消火しょうか活動かつどうを行おこなうことである。空中くうちゅう消火しょうかは直接ちょくせつ消火しょうかではなく延焼えんしょうを防ふせぐために行おこなわれる^[1]。

概要がいよう

広大こうだいな森林しんりんや険けわしい山やまが多おおい国くにでは、林野りんや火災かさいの現場げんばまで消防車しょうぼうしゃがたどり着つけないことが多おおく、空中くうちゅう消火しょうか専せん門もんの消防しょうぼう隊たいが存在そんざいしている。国くにによっては消防しょうぼう隊たいではなく軍隊ぐんたい、警察けいさつや国境警備隊こっきょうけいびたい、山林さんりんを管轄かんかつする機関きかん、民間みんかん企業きぎょうなどが行おこなっていることもある。またパラシュート降下こうかを行おこない現場げんばで延焼えんしょうを防ふせぐ防火ぼうか帯たいを設置せっちする空挺くうてい消防しょうぼう隊たいとしてスモークジャンパー（英語えいご版ばん）が置おかれる場合ばあいもある。

空中くうちゅう消火しょうか機きは『エアタンカー』とも呼よばれる。

航空機こうくうき

航空機こうくうきは陸上りくじょう機きと水上すいじょう機き（飛行ひこう艇てい）に大別たいべつされる。

陸上りくじょう機きは搭載とうさい水量すいりょうが多おおいが、火災かさい現場げんばと給水きゅうすいする飛行場ひこうじょうの往復おうふくに時間じかんを要ようするため、基地きちとなる飛行場ひこうじょうの確保かくほが重要じゅうようとなる^[2]。飛行ひこう艇ていは水上すいじょうを滑走かっそうしながら給水きゅうすいし、そのまま離水りすい、消火しょうかを行おこなうことができるため比較的ひかくてき効率こうりつ的てきな消火しょうか活動かつどうが行おこなえる。

アメリカなどでは水みずタンクを増設ぞうせつするスペースがある大型おおがた機き（陸上りくじょう機き）を改造かいぞうし運用うんようするのが主流しゅりゅうであり、輸送ゆそう機き（C-130、C-47、IL-76など)や、低空ていくう低速ていそくでの飛行ひこうを前提ぜんていとした哨戒しょうかい機き（S-2、P-3)などの退役たいえきした軍用ぐんよう機き、航空こうくう会社かいしゃから売却ばいきゃくされた旅客機りょかくき（B-747、DC-10、DHC-6、DC-6）が利用りようされる。

ヨーロッパでは消防しょうぼう飛行ひこう艇ていが多おおく運用うんようされている。これはヨーロッパでは比較的ひかくてき平野へいや部ぶに森林しんりん火災かさいが集中しゅうちゅうしており、飛行ひこう艇ていが取水しゅすいするための湖水こすい、河川かせん、海うみ等とうの給水きゅうすい場所ばしょが多おおく、効率こうりつ的てきな運用うんようが可能かのうなためである^[2]。

ヘリコプター

航空機こうくうきと比較ひかくして航続こうぞく距離きょりが短みじかく搭載とうさい量りょうが少すくない一方いっぽう、火災かさい現場げんば近ちかくに河川かせんや学校がっこうのプールなどの水源すいげんを確保かくほすることにより効率こうりつ的てきな消火しょうか活動かつどうが可能かのうである^[2]。山間さんかん部ぶが多おおく、航空機こうくうきでは効率こうりつ的てきな消火しょうか活動かつどうが困難こんなんな日本にっぽんや韓国かんこくではヘリコプターの運用うんようが主流しゅりゅうである。

その機能きのうから、山やま火事かじ消火しょうか用ように改装かいそうされたS-64Eや消防しょうぼう防災ぼうさいヘリのように固定こてい式しき消火しょうか装置そうちを備そなえたものと、汎用はんようヘリコプターにバケット(空中くうちゅう用よう消火しょうかバケツ（英語えいご版ばん）、空中くうちゅう消火しょうか用よう水すいのう)を吊つり下さげたものに分わけられる。

各国かっこくの運用うんよう

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく農務のうむ省しょうの森林しんりん局きょく（英語えいご版ばん）では山やま火事かじに対応たいおうするため森林しんりん消防しょうぼう隊たいが組織そしきされており、自治体じちたいが組織そしきした消防しょうぼう隊たいの消火しょうか活動かつどうを補助ほじょする。また航空機こうくうきから火災かさい現場げんばに直接ちょくせつ降下こうかする降下こうか消防しょうぼう員いん（スモークジャンパー）も存在そんざいする。しかし森林しんりん面積めんせきに対たいして規模きぼが十分じゅうぶんではなく、予算よさんが不足ふそくし大だい規模きぼな消防しょうぼう隊たいを常設じょうせつできない自治体じちたいも多おおいため、火災かさい発生はっせい時じにはエバーグリーン航空こうくうなど空中くうちゅう消火しょうか事業じぎょうも行おこなう航空こうくう会社かいしゃやエアロユニオン（英語えいご版ばん）のような専門せんもん会社かいしゃへ業務ぎょうむをアウトソーシングするなど、航空こうくうビジネスとして市場いちばが形成けいせいされている。民間みんかん企業きぎょうであるためカナダやメキシコなど隣国りんごくでも事業じぎょうを展開てんかいしている。またエリクソン・エアロ・タンカー (Erickson Aero Tanker)はMD-87を空中くうちゅう消火しょうか機きに改造かいぞうして運用うんようしている^[3]^[4]。

ロシア

世界せかい初はつの森林しんりん専門せんもん消防しょうぼう隊たいである航空こうくう森林しんりん消防しょうぼう隊たいが、広大こうだいな森林しんりんで発生はっせいする火災かさいに備そなえ待機たいきしている^[5]。

2020年ねん6月がつには、ロシアはトルコ政府せいふの要請ようせいで消防しょうぼう飛行ひこう艇ていBe-200を派遣はけんし、トルコ国内こくないで消火しょうか活動かつどうにあたった^[6]。

日本にっぽん

日本にっぽんでは1960年代ねんだいからヘリコプターによる空中くうちゅう消火しょうかが実施じっしされている。

2023年ねん4月がつ1日にち現在げんざい、沖縄おきなわ県けんを除のぞく46都道府県とどうふけんに、計けい77機きの消防しょうぼう防災ぼうさいヘリコプターが配備はいびされており、機体きたい固定こてい式しきタンク（約やく1800L）又または吊つるしり下さげ式しきバケット（約やく1000L）を使用しようし消火しょうかを行おこなう^[7]。
また自衛隊じえいたいも自治体じちたい等とうからの要請ようせいを受うけ消火しょうか活動かつどう（災害さいがい派遣はけん活かつ）をする^[8]。多た用途ようとヘリコプターUH-1の場合ばあい、吊つり下さげ式しきバケット（約やく500L）、大型おおがた輸送ゆそうヘリコプターCH-47の場合ばあい、吊つり下さげ式しきバケット（約やく8000L）を使用しようし消火しょうかを行おこなえる^[8]。

横浜よこはま市し消防局しょうぼうきょく航空こうくう隊たいの放水ほうすい訓練くんれん
東京とうきょう消防庁しょうぼうちょう航空こうくう隊たいの放水ほうすい訓練くんれん
UH-1Jによる空中くうちゅう消火しょうかのデモンストレーション

大韓民国だいかんみんこく

農林のうりん畜産ちくさん食品しょくひん部ぶ山林さんりん庁ちょうは山やま火事かじ対応たいおうとして山林さんりん航空こうくう本部ほんぶを組織そしきしており、2020年ねん現在げんざい大型おおがたヘリコプターS-64Eを6機き配備はいびしている。

また消防庁しょうぼうちょう及および全国ぜんこくの消防しょうぼう本部ほんぶに、2021年ねん現在げんざい計けい32台だいの消防しょうぼうヘリコプターが配備はいびされている^[9]。