試験しけんにでる英単語えいたんご

試験しけんにでる英単語えいたんご（しけんにでるえいたんご）とは、岩瀬いわせ順三じゅんぞうが企画きかくし、森もり一郎いちろう著ちょで青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃから発行はっこうされている、昭和しょうわ時代じだいからの受験じゅけん用よう英単語えいたんご集しゅうのベストセラーである。通称つうしょう「でる単たん」「しけ単たん」。

愛称あいしょうについて、青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃに関かんする記事きじが書かかれた『噂うわさの眞相しんそう』1980年ねん2月がつ号ごうの記事きじでは、「通称つうしょう『でる単たん』と言いわれて10年来ねんらい」と書かかれているが、2003年ねんの産経新聞さんけいしんぶんには「関東かんとうでは『デル単たん』、関西かんさいでは『シケ単たん』と呼よばれる。青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃの当時とうじの営業えいぎょう担当たんとう者しゃによると、名古屋なごやだけは『デル単たん』と『シケ単たん』が混在こんざいした地域ちいきだという。国立こくりつ国語こくご研究所けんきゅうじょの研究けんきゅう者しゃも『呼よび方かたの違ちがいに何なんらかの法則ほうそくがあるか否ひかは分わからない』と回答かいとうする。『デル単たん』の表記ひょうきだが、なぜ『でる単たん』『しけ単たん』ではないのか。当時とうじから、新聞しんぶん等とうではカタカナ表記ひょうきが多おおいのだが、理由りゆうは分わからない。きっと英語えいご関係かんけいの本ほんだからなのだろう。ちなみに著者ちょしゃの森もりは『デル単たん』と呼よんでいた」と書かかれている。しかし近年きんねんでは『でる単たん』『しけ単たん』とひらがな表記ひょうきの方ほうが多おおいようである。

概要がいよう

1967年ねん初版しょはん発行はっこう。後のちにKKベストセラーズを興おこした岩瀬いわせ順三じゅんぞうが青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃの共同きょうどう経営けいえい者しゃ兼けん編集へんしゅう長ちょう時代じだいに企画きかくした。2010年ねん10月がつ時点じてんで累計るいけいで1500万まん部ぶ以上いじょうを発行はっこうしている。別べつの記事きじによれば2011年ねん8月がつ時点じてんで累計るいけい1488万まん部ぶ。

昭和しょうわ30年代ねんだい、著者ちょしゃの森もりが教鞭きょうべんをとっていた東京とうきょう都立とりつ日比谷ひびや高等こうとう学校がっこうは東大とうだい進学しんがく率りつで高たかい実績じっせきを挙あげ、受験生じゅけんせいの憧あこがれの的てきであった。そのネームバリューも重かさなって全国ぜんこくの受験生じゅけんせいの信頼しんらいを勝かち得えた。

特徴とくちょう

以前いぜんの受験じゅけん用よう英単語えいたんご集しゅう（旺文社おうぶんしゃの『豆まめ単たん』など）は、『ソーンダイク式しき英単語えいたんご統計とうけい表ひょう』に基もとづいて、米国べいこくの新聞しんぶん（英語えいご）などで使つかわれる頻度ひんどの高たかい単語たんごが掲載けいさいされていた。

また、『豆まめ単たん』がそうであったように、収録しゅうろく語ごはアルファベット順じゅんで掲載けいさいされることが常つねであった。

しかし、大学だいがく受験じゅけんに求もとめられる語彙ごいと日常にちじょう生活せいかつで求もとめられる語彙ごいには隔へだたりがあり、また、学習がくしゅう効率こうりつからすればアルファベット順じゅんではなく出題しゅつだい頻度ひんど順じゅん（ないしは受験じゅけんにおける重要じゅうよう度どの順じゅん）に掲載けいさいするほうが望のぞましい。

それらの点てんをふまえ、過去かこの試験しけん問題もんだいを徹底てってい調査ちょうさし、同書どうしょによれば「最もっとも重要じゅうような単語たんごから順番じゅんばんに配列はいれつ」して出版しゅっぱんされたのが本書ほんしょであった。

出版しゅっぱん経緯けいい

岩瀬いわせと森もりが出会であった経緯けいいははっきりしないが、岩瀬いわせと森もりは『デル単たん』の前まえに二人ふたりで『試験しけんにでる英語えいご』を出版しゅっぱんしていた。だが、あまりパッとせず。そこで岩瀬いわせが「二に冊さつ目めは虎とらの子このプリントを出だそう」と森もりを口説くどいた。『デル単たん』出版しゅっぱん準備じゅんびをしていた1966年ねん頃ごろ、新宿しんじゅく紀伊國屋きのくにや書店しょてんに近ちかいマンモス喫茶きっさ「カトレア」でインテリくずれのような岩瀬いわせと森もりが何なん度どとなく打うち合あわせをしてた。岩瀬いわせのそれは強引ごういんだったと見みられ、森もりは一いち作さく目めの前文ぜんぶんに「強引ごういん、敏腕びんわん、誠実せいじつなる編集へんしゅう長ちょう岩瀬いわせ順三じゅんぞう」と評ひょうし、謝辞しゃじを述のべている。岩瀬いわせは『デル単たん』編集へんしゅう中ちゅうに青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃを飛とび出だしたため、その後ご、岩瀬いわせの名前なまえは森もりの著作ちょさくに登場とうじょうしないが、岩瀬いわせがいなければ『デル単たん』はなく、森もりの名声めいせいもなかった。森もりは岩瀬いわせが他界たかいした1986年ねん5月がつ18日にちから、奈良なら県けんの自宅じたく書斎しょさいに岩瀬いわせのポートレートを飾かざり始はじめ、家族かぞくに「この人ひとは人生じんせい最大さいだいの恩人おんじんなのだよ」と話はなしたという。

森もりはある日ひ、学校がっこうの廊下ろうかで生徒せいとが落おとしたと見みられる一いち枚まいの単語たんごカードを拾ひろった。表ひょうに「flourish」、裏うらに「振ふり回まわす」と書かかれてあった。「振ふり回まわす」より先さきに「繁栄はんえいする」を覚おぼえるべきだろう、と思おもい、これが受験じゅけん英語えいごに関心かんしんを持もつきっかけとなった。森もりは明治めいじ時代じだいからの大学だいがく入試にゅうし英語えいごを徹底的てっていてきに分析ぶんせき。その結果けっか、入試にゅうし英語えいごは知的ちてき抽象ちゅうしょう的てきな単語たんごが多おおく、この出題しゅつだい傾向けいこうはほとんど変かわっていないことを突つき止とめた。豆まめ単たんを丸まる暗記あんきしてもまったく意味いみがない。そこで新あらたに入試にゅうしの必須ひっす単語たんごだけをまとめたプリントを作つくり始はじめ、これが『デル単たん』に結実けつじつした。

編集へんしゅう状じょう況きょう

同書どうしょによれば 「明治めいじ35年ねん以降いこう、大正たいしょう時代じだいを経へて 昭和しょうわ50年ねんの現在げんざいに至いたる約やく70年間ねんかんの新制しんせい大学だいがく・旧制きゅうせい大学だいがく・旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう・旧制きゅうせい高等こうとう専門せんもん学校がっこうの入学にゅうがく試験しけん問題もんだいを手元てもとに揃そろえ、十じゅう数すう年間ねんかんにわたって独自どくじの方法ほうほうで分析ぶんせき調査ちょうさし整理せいりした結果けっかでき上あがったもの」ということである。また執筆しっぴつ当時とうじコンピューターが日常にちじょう的てきに使つかえる時代じだいではなく、著者ちょしゃはこのデータ整理せいりを全すべて手作業てさぎょうで行おこなった。

執筆しっぴつされた時代じだいを反映はんえいして（著者ちょしゃの世代せだいを反映はんえいして）、前書まえがきには「テレビのコマーシャルで見みるように、夏なつの海辺うみべでガール・フレンドとたわむれるのも青春せいしゅんのひとコマであるが、ひとり部屋へやに閉とじこもって黙々もくもくと勉学べんがくするのもまた尊とうとい青春せいしゅんの姿すがたである。どちらが諸君しょくんの将来しょうらいにとって真しんのカッコいい青春せいしゅんであるのか云々うんぬん・・」といったやや古風こふうな読者どくしゃへのメッセージが掲載けいさいされていた。

のちに、多おおくの出版しゅっぱん社しゃから、同おなじような英単語えいたんご集しゅうが多数たすう出版しゅっぱんされたが、この本ほんは受験じゅけん参考さんこう書しょ界かいのベストセラーとして長ながく愛用あいようされ続つづけている。著者ちょしゃ没ぼつ後ごも改訂かいていが続つづけられ、全盛期ぜんせいきに比くらべると人気にんきは衰おとろえつつも、いまだに版はんを重かさねている。

1975年ねんに時事じじ的てきな単語たんごを6語ご追加ついか。1997年ねんには赤あかい暗記あんき用ようシートが付ついた。2003年ねんにはCD付つき、二に色刷いろずり、赤あかい暗記あんき用ようシート付つきの版はんが発売はつばいされた。

2011年ねん時点じてんでの編集へんしゅう部ぶのコメントによると、今後こんご収録しゅうろく語ごを変更へんこうする予定よていは全まったくないという。

姉妹しまい本ほんに『試験しけんにでる英えい熟語じゅくご』がある。

評価ひょうか

『噂うわさの眞相しんそう』1980年ねん2月がつ号ごうには「通称つうしょう『でる単たん』と言いわれて10年来ねんらい、受験生じゅけんせいのなくてはならない受験じゅけん新しん兵器へいきとなった『試験しけんにでる英単語えいたんご』。それまでは旺文社おうぶんしゃ刊かん『赤尾あかおの豆まめ単たん』（『英語えいご基本きほん単語たんご熟語じゅくご集しゅう』）がもてはやされていたに関かかわらず、『でる単たん』は一挙いっきょに追撃ついげきして、学まなべ参まいものの売うれゆきトップの座ざに躍おどり出でた。単たんなる豆まめ単語たんご辞典じてんではダメだったのである。受験生じゅけんせいたちは、もはや、AからZまでのアルファベット順じゅんに並ならぶ英単語えいたんごの羅列られつだけでは満足まんぞくしきれないほど焦あせり始はじめていたのである。そこで『試験しけんにでる英単語えいたんご』だ。とにもかくにも"試験しけんに出でる""これだけ覚おぼえればもう安心あんしん"と言いわれたら不安ふあんな日々ひびを送おくる受験生じゅけんせいが飛とびつかない方ほうがおかしい。そうした心理しんり的てき不安ふあんをくすぐると同時どうじに内容ないようもアルファベット順じゅんではなかった。確たしかに覚おぼえやすいし、整理せいりをつけやすい。『赤尾あかおの豆まめ単たん』は巷ちまたから消きえ、代かわって『でる単たん』が受験生じゅけんせい必携ひっけいの一いち冊さつとなった。青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃは毎年まいとし、受験じゅけんシーズンになる毎ごとにベストセラー入いりする『でる単たん』だけで、充分じゅうぶんな収益しゅうえきを上あげることが出来できるという。受験じゅけんに悩なやむ生徒せいとたちの『試験しけんに出でるものだけ勉強べんきょうしたい』という、合理ごうり的てき勉強べんきょう法ほうを求もとめる素朴そぼくな気持きもちをピシャリと一言ひとことでい切いきった感かんのあるタイトルとオビ。通俗つうぞく的てきなこと、元来がんらいどうでもよかったことを一言ひとこと一いち句くまで執着しゅうちゃくして対象たいしょう読者どくしゃにアピールする方法ほうほうには、まさに一いち分ぶんのスキもないほどの売うり込こみに賭かける執念しゅうねんすら感かんじさせる」と書かかれている。

エピソード

青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃが森もりに支払しはらっていた印税いんぜいは定価ていかの10％だったが、『デル単たん』がベストセラーになり始はじめた頃ころ、他社たしゃが森もりの引ひき抜ぬきを図はかったことで、森もりが青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃに印税いんぜい15％を要求ようきゅうして来きた。当時とうじの小沢おざわ和一かずいち青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃ社長しゃちょうが森もりとの交渉こうしょうにあたり、印税いんぜい10％はそのままで、著作ちょさくは常つねに書店しょてんの目立めだつところに置おく、などのVIP待遇たいぐうで森もりの了承りょうしょうを得えた。青春せいしゅん出版しゅっぱん社しゃは毎年まいとし一いち回かい、森もりの家族かぞく四よん人にんを海外かいがい旅行りょこうに招待しょうたいし、最後さいごは行いき先さきがなくなる程ほど、たくさんの国くにを訪おとずれたという。