財ざい

財ざい（ざい、英えい: good(s)）とは、経済けいざい学がくにおいて物質ぶっしつ的てき・精神せいしん的てきに何なんらかの効用こうようを持もっているもののことである。財貨ざいかとも。

狭義きょうぎには有形ゆうけい財ざいを指さして財ざいと呼よぶ場合ばあいがある。そのような場合ばあい、対比たいひして無形むけい財ざいをサービスと呼よぶ。

概要がいよう

ある財ざいの需要じゅように比くらべその財ざいに対たいする供給きょうきゅうが無限むげんにないとき財ざいは希少きしょうであるとされる。このような財ざいを経済けいざい財ざいと呼よび、経済けいざい学がく（特とくにミクロ経済けいざい学がく）の分野ぶんやで議論ぎろんされる。逆ぎゃくに需要じゅようよりもはるかに多おおくほぼ無限むげんの供給きょうきゅうが存在そんざいする場合ばあいは、このような財ざいは価格かかくを持もたない。これを自由じゆう財ざいという。空気くうきは人間にんげんの生存せいぞんにとって不可欠ふかけつのもので、巨大きょだいな効用こうようをもつが、希少きしょう性せいがないので市場いちば取引とりひきの対象たいしょうとはならず、自由じゆう財ざいの典型てんけいとされる。

その逆ぎゃくにダイヤモンドは単たんなる装身具そうしんぐであり空気くうきほど大おおきな効用こうようを持もつものではないが、非常ひじょうに希少きしょう性せいをもつので市場いちばで高価こうかで取引とりひきされている。

経済けいざい学がくで議論ぎろんされる財ざい

経済けいざい財ざいと自由じゆう財ざい

経済けいざい財ざい: 希少きしょう性せいがあり、需要じゅようと供給きょうきゅうのバランスが取とれているかややバランスを欠かいて価格かかくを有ゆうする財ざい。
自由じゆう財ざい: 希少きしょう性せいがなく、需要じゅようよりも供給きょうきゅうが遙はるかに上回うわまわっており、すなわち価格かかくを有ゆうしない財ざい。

私的してき財ざいと公共こうきょう財ざい

私的してき財ざい: 自分じぶんが消費しょうひすれば他人たにんの消費しょうひ量りょうを減少げんしょうさせる競合きょうごう性せいと、対価たいかを支払しはらえば他人たにんを排除はいじょできる排除はいじょ性せいとをともに備そなえた財ざい。
公共こうきょう財ざい: 競合きょうごう性せい・排除はいじょ性せいを備そなえない財ざい。

投資とうし財ざいと消費しょうひ財ざい

投資とうし財ざい（資本しほん財ざい）
中間ちゅうかん投入とうにゅう財ざい
消費しょうひ財ざい

そのまま、使用しようされてしまう財ざいと、財ざいを生うみ出だすための財ざいの違ちがい。原材料げんざいりょう（中間なかま投入とうにゅう財ざい）は投資とうし財ざいに含ふくまないが、投資とうし財ざいは長ながい目めで見みれば原材料げんざいりょうに近ちかい。

代替だいたい財ざいと補完ほかん財ざい

代替だいたい財ざい

ある財ざいの代用だいようとなる財ざい。代替だいたい効果こうかによって、一方いっぽうの価格かかく上昇じょうしょうが他方たほうの需要じゅよう量りょうを増大ぞうだいさせるような財ざい。例れいとして、コーヒーの価格かかくが上昇じょうしょうすればコーヒーの代かわりに紅茶こうちゃを飲のむ人ひとが増ふえ、逆ぎゃくに紅茶こうちゃの価格かかくが上昇じょうしょうすれば紅茶こうちゃの代かわりにコーヒーを飲のむ人ひとが増ふえるような場合ばあい、コーヒーと紅茶こうちゃはお互たがいに代替だいたい財ざいの関係かんけいにある。

補完ほかん財ざい

粗そ補完ほかん財ざい: 一方いっぽうの財ざいの消費しょうひが増ふえるにつれ、他方たほうの消費しょうひも増ふえるという補完ほかん的てき関係かんけいにある財ざい。例れいとして、パンにつけるジャムなど。

上級じょうきゅう財ざいと下級かきゅう財ざい

上級じょうきゅう財ざい

上級じょうきゅう財ざいとは、所得しょとく効果こうかによって、所得しょとくの増加ぞうかにともない需要じゅようが増加ぞうかしていく財ざいである。

劣等れっとう財ざい（下級かきゅう財ざい）

所得しょとくの増加ぞうかに伴ともない、需要じゅようが減少げんしょうしていく財ざいである。たとえばマーガリンよりバターのほうが高価こうかでバターを好このむ消費しょうひ者しゃが多おおい場合ばあい、所得しょとくが上昇じょうしょうすれば多おおくの人ひとがマーガリンに代かわりバターを買かうようになるため、バターの需要じゅようが増加ぞうかし、マーガリンの需要じゅようは減少げんしょうするので、マーガリンが劣等れっとう財ざいとなると考かんがえられる。

品質ひんしつが劣おとるという意味いみではない。

ギッフェン財ざい: 下級かきゅう財ざいの一種いっしゅで、所得しょとく効果こうかが代替だいたい効果こうかよりも強つよく働はたらく。

有形ゆうけい財ざいと無形むけい財ざい

有形ゆうけい財ざい: 財ざい
無形むけい財ざい: サービス

販売はんばい・譲渡じょうと・購入こうにゅう等とうにより所有しょゆう権けんを移転いてんさせることができる有形ゆうけい財ざい（財）ざいだんほうじんに対たいして、所有しょゆう権けんの移転いてんを伴ともなわないものを無形むけい財ざい（サービス）として区別くべつすることができる。たとえば英会話えいかいわレッスンなどは所有しょゆう権けんの移転いてんがないのでサービスである。また、どこかに行いくときに他者たしゃが運行うんこうする航空機こうくうき・列車れっしゃ・バス・タクシー・船ふねなどの乗のり物ものに対価たいか（運賃うんちんや特別とくべつ料金りょうきんなど）を支払しはらって乗のって移動いどうする場合ばあい、乗のり物もの自体じたいを購入こうにゅうするのではないので、サービスとして利用りようしていることになる。

代替だいたい効果こうかと所得しょとく効果こうか

ある財ざいX、その補完ほかん財ざいY、その代替だいたい財ざいZを仮定かていする。代替だいたい効果こうかのみを考慮こうりょした場合ばあい、財ざいXの価格かかくが下落げらくすると、補完ほかん財ざいYの需要じゅようは増大ぞうだいし、代替だいたい財ざいZの需要じゅようは減少げんしょうする。逆ぎゃくに財ざいXの価格かかくが上昇じょうしょうすると、補完ほかん財ざいYの需要じゅようは減少げんしょうし、代替だいたい財ざいZの需要じゅようは増大ぞうだいする。

これに所得しょとく効果こうかを加くわえたとき、補完ほかん財ざいYが下級かきゅう財ざいであるか、代替だいたい財ざいZが上級じょうきゅう財ざいの場合ばあい、所得しょとく効果こうかが逆ぎゃく向むきに作用さようする。そのため、その総そう効果こうかは、代替だいたい関係かんけいや補完ほかん関係かんけいの強つよさによって変かわってくる。

前ぜん近代きんだいにおける財ざいの位置いちづけ

平安へいあん末期まっきから用もちいられ続つづけた学問がくもんと道徳どうとくを説といた教科書きょうかしょ『実み語ご教きょう』では、「富とみは、これ一生いっしょうの財ざい、身み滅めっすれば、すなわち共ともに滅ほろぼす。智さとしは、これ万代ばんだいの財ざい」と位置付いちづけ、富とみ＝物質ぶっしつ的てきな財ざいは個人こじん的てきな繋つながりでしかなく、残のこることはないが、知識ちしき・知恵ちえといった財ざいは社会しゃかいや一族いちぞくが持続じぞくする限かぎり残のこり続つづけると定義ていぎしている。すなわち、教養きょうようこそ財ざいとして重おもきを置おくべき（精神せいしん的てき財ざいを貴たっとべ）とする教育きょういくがなされていた。

また、中世ちゅうせいにおける財産ざいさん目録もくろくの文書ぶんしょ研究けんきゅうから、鎌かまは財ざいに数かぞえられなかったと考かんがえられており、消耗しょうもうと消費しょうひが激はげしいために、古ふるくから多おおくの人ひとに用もちいられ続つづけた道具どうぐにもかかわらず、家財かざいとしての価値かちが認知にんちされず、除外じょがいされていた（当時とうじは使つかい古ふるされた鉄器てっきは鋳潰いつぶされ、リサイクルされた）。このように、人間にんげん生活せいかつにとって、深ふかく効用こうようのあるものでも、時代じだいによって、財ざいとはならない例れいがある。

外部がいぶリンク

『財ざい』 - コトバンク