公共こうきょう財ざい

公共こうきょう財ざい（こうきょうざい、英えい: public good）は、経済けいざい学がくの用語ようごであり、非ひ競合きょうごう性せいあるいは非ひ排除はいじょ性せいの少すくなくとも一方いっぽうを有ゆうする財ざいとして定義ていぎされる。対語ついごとして、競合きょうごう性せいと排除はいじょ性せいとを有ゆうする私的してき財ざいがある。

競合きょうごう性せいとは、消費しょうひ者しゃ（利用りよう者しゃ）たちによるその財ざいの消費しょうひが増ふえるにつれ、追加ついか的てきな費用ひようなしでは、次第しだいに財ざいの便益べんえき（質しつ・量りょうなど）が保たもたれない性質せいしつを指さす。

排除はいじょ性せいとは、対価たいかを支払しはらわず財ざいを消費しょうひしようとする行為こういを実際じっさいに排除はいじょ可能かのうな性質せいしつを指さす。この場合ばあい市場いちばでは、価あたい格付かくづけされた財ざいが対価たいかの支払しはらいを条件じょうけんとして販売はんばいされる。

分類ぶんるい

純粋じゅんすい公共こうきょう財ざい

非ひ競合きょうごう的てきかつ非ひ排除はいじょ的てきな狭義きょうぎの公共こうきょう財ざいを純粋じゅんすい公共こうきょう財ざいという。この純粋じゅんすい公共こうきょう財ざいの典型てんけい的てきな例れいとしては政府せいふによる外交がいこうや国防こくぼうがしばしば挙あげられる。国民こくみんの内うちの特定とくていの集団しゅうだんが政府せいふの外交がいこう政策せいさくや国防こくぼうの利益りえきを受うけないように排除はいじょすることが困難こんなんであり、また、集団しゅうだんを排除はいじょしなくてもそれによって追加ついか的てきな費用ひようが発生はっせいしないことが多おおい。ほかの例れいとしては、花火はなび大会たいかいにおける花火はなびなどがある。

準じゅん公共こうきょう財ざい

厳密げんみつには純粋じゅんすい公共こうきょう財ざいではないが、非ひ競合きょうごう性せいあるいは非ひ排除はいじょ性せいのいずれかを有ゆうする広義こうぎの公共こうきょう財ざいを準じゅん公共こうきょう財ざいという。

非ひ競合きょうごう的てきかつ排除はいじょ的てきな財ざいは、「クラブ財ざい」と呼よばれる。たとえば、有線ゆうせん放送ほうそうのようなサービスは、放送ほうそう用ようのケーブル網もうの敷設ふせつや番組ばんぐみ制作せいさくなどには費用ひようがかかるが、これを100人にんの消費しょうひ者しゃに供給きょうきゅうする代かわりに150人にんの消費しょうひ者しゃに供給きょうきゅうすることによってもそれらの費用ひようは余あまり増加ぞうかしない。排除はいじょ可能かのう性せいは高たかいが、競合きょうごう性せいが低ひくい例れいとなる。

非ひ排除はいじょ的てきかつ競合きょうごう的てきな財ざいは、「コモンプール財ざい（共有きょうゆう資源しげん）」と呼よばれる。たとえば、一般いっぱん道路どうろや橋はしなどは、ある程度ていどまでであれば利用りよう者しゃ全員ぜんいんは問題もんだいなく便益べんえきを受うけられるが、利用りよう者しゃが増ふえるに従したがって混雑こんざつ費用ひようが高たかまり、競合きょうごう性せいは高たかい。個々ここの限界げんかい便益べんえきに他者たしゃへ与あたえる外部がいぶ費用ひようが含ふくまれていないためである。しかし利用りよう者しゃ全員ぜんいんに実際じっさいに課金かきんするためのコストが高たかく、排除はいじょ性せいは低ひくい。そのため市場いちばに任まかせると過剰かじょう消費しょうひがなされる傾向けいこうにある（共有きょうゆう地ちの悲劇ひげき）。

公共こうきょう財ざいの提供ていきょう

政府せいふや市場いちば

国防こくぼうなどの純粋じゅんすい公共こうきょう財ざいの提供ていきょうにあたっては、対価たいかを支払しはらわない者ものも利用りようできる（非ひ排除はいじょ性せい）。そのため市場いちば経済けいざいに任まかせた場合ばあい、フリーライダーの問題もんだいが起おきて供給きょうきゅうが過少かしょうとなる。そこで、そのような公共こうきょう財ざいの供給きょうきゅうは政府せいふが行おこなうべきとされる。

公園こうえんやプールなどのように、（準じゅん）公共こうきょう財ざいであっても民間みんかんでの供給きょうきゅうが可能かのうなものが多おおい。民間みんかんが行おこなう場合ばあいに供給きょうきゅうが過少かしょうとなるので、CSでのスクランブル放送ほうそうのように排除はいじょ性せいを高たかめるなど私的してき財ざいに近付ちかづける工夫くふうをするなど、政府せいふが介入かいにゅうを行おこなう場合ばあいがある。

コミュニティ

公共こうきょう財ざいおよび共有きょうゆう資源しげんの提供ていきょうは、市場いちばや政府せいふの他ほかに、コミュニティによる自主じしゅ管理かんりによっても行おこなわれている。エリノア・オストロムは、公共こうきょう財ざいの自主じしゅ管理かんりが長期間ちょうきかん持続じぞくするための設計せっけい原理げんりを分析ぶんせきし、コミュニティが効率こうりつ的てきに公共こうきょう財ざいを管理かんりできることを、フィールド調査ちょうさとゲーム理論りろんによって示しめした。この研究けんきゅうにより、オストロムは2009年ねんにノーベル経済けいざい学がく賞しょうを受賞じゅしょうした。

知識ちしきの公共こうきょう財ざい的てき性格せいかく

知識ちしきもまた非ひ競合きょうごう性せいと非ひ排除はいじょ性せいをもち、公共こうきょう財ざいであると考かんがえられている。そのため、公共こうきょう財ざいと同様どうようにフリーライダーが生しょうじたり、知識ちしき生産せいさん（研究けんきゅう開発かいはつ）への投資とうしが過少かしょうになる可能かのう性せいがある。

この問題もんだいの解消かいしょう方策ほうさくとして

• 公的こうてき機関きかんによる知識ちしき（という財ざい）の供給きょうきゅう。大学だいがくや国立こくりつ研究所けんきゅうじょがあてはまる。
• 新あたらしく発明はつめいされた知識ちしきに対たいし人為じんい的てきに占有せんゆう権けんを与あたえ、フリーライダーを阻止そしする。知的ちてき財産ざいさん権けんが該当がいとうする。

が採用さいようされている。

フリーライダーを問題もんだいとは捉とらえず、推奨すいしょうする考かんがえ方かたとしてコピーレフトやクリエイティブ・コモンズがある。公共こうきょう財ざいとしての知識ちしきは、クリエイティブ・コモンズ発起人ほっきにんでもあるローレンス・レッシグによって、共有きょうゆう経済けいざいとの関連かんれんも指摘してきされている。

メリット財ざい

公共こうきょう財ざいと混同こんどうされるものとして、私的してき財ざいではあるがある種しゅの公共こうきょう性せいを有ゆうするメリット財ざいがある。たとえば医療いりょう、介護かいご、義務ぎむ教育きょういくなどがメリット財ざいとされる。これらのサービスは、あらゆる人ひとが享受きょうじゅする権利けんりをもつと考かんがえられている。しかし、非ひ競合きょうごう性せい・非ひ排除はいじょ性せいの問題もんだいがないのであれば、これらの財ざいは民間みんかんによって適切てきせつに供給きょうきゅうされ得える。

参考さんこう文献ぶんけん

• エリノア・オストロム、ジェイムス・ウォーカー 著しる、関谷せきや登のぼる・大岩おおいわ雄次郎ゆうじろう 訳わけ「市場いちばでも国家こっかでもなく：集合しゅうごう的てき行動こうどう領域りょういきでの変換へんかん過程かていを結むすびつけること」、デニス・C・ミューラー 編へん『公共こうきょう選択せんたくの展望てんぼう : ハンドブック』 1巻かん、多賀たが出版しゅっぱん、2000年ねん1月がつ。ISBN 978-4-8115-5721-2。OCLC 1183329891。http://www.taga-shuppan.co.jp/books/books.php?id=501。 

関連かんれん項目こうもく

• 公共こうきょう
• 公共こうきょう選択せんたく
• コモンズの悲劇ひげき
• 小ちいさな政府せいふ、大おおきな政府せいふ
• 情報じょうほう経済けいざい学がく

外部がいぶリンク

• “市場いちばの失敗しっぱい　(2)公共こうきょう財ざいと準じゅん公共こうきょう財ざい”. 用語ようご解説かいせつ. 消費しょうひ者しゃ庁ちょう. 2011年ねん3月がつ23日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2011年ねん5月がつ13日にち閲覧えつらん。
• 『公共こうきょう財ざい』 - コトバンク