フランシス・イシドロ・エッジワース

フランシス・イシドロ・エッジワース

新しん古典こてん派は経済けいざい学がく
生誕せいたん	(1845-02-08) 1845年ねん2月がつ8日にち アイルランド, カウンティ・ロングフォード, エッジワースタウン
死没しぼつ	1926年ねん2月がつ13日にち(1926-02-13)（81歳さい没ぼつ） イングランド,オックスフォードシャー,オックスフォード
研究けんきゅう分野ぶんや	論理ろんり学がく, 経済けいざい学がく
母校ぼこう	トリニティ・カレッジ,ダブリン ベリオル・カレッジ,オックスフォード
影響えいきょうを 受うけた人物じんぶつ	ジェレミ・ベンサム ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ アルフレッド・マーシャル
実績じっせき	財ざいの交換こうかんの理論りろん（契約けいやく曲線きょくせん、エッジワース・ボックス）
署名しょめい

フランシス・イシドロ・エッジワース（Francis Ysidro Edgeworth、1845年ねん2月がつ8日にち - 1926年ねん2月がつ13日にち）は、イギリスの経済けいざい学者がくしゃ。アイルランドの名家めいかに生うまれ、スペイン人ひとの血統けっとうも引ひく。

生涯しょうがい

• 1845年ねん、アイルランドのロングフォード県けんに生うまれる。
• 17歳さいの時ときにダブリンのトリニティー・カレッジへ進学しんがくし、
• オックスフォおっくすふぉード大学どだいがくベリオル・カレッジを卒業そつぎょう。そのころからその記憶きおく力りょくと機知きちは顕著けんちょであった。
• 1877年ねんに弁護士べんごしの資格しかくを授さづけられる。
• キングス・カレッジ・ロンドンで、最初さいしょは論理ろんり学がくを、ついで経済けいざい学がくを教おしえ、オックスフォおっくすふぉード大学どだいがくの経済けいざい学がく教授きょうじゅとなる（1891年ねん - 1922年ねん）。
• 1889年ねんと1922年ねんには大だい英えい学術がくじゅつ協会きょうかいの経済学部けいざいがくぶ会かいの会長かいちょうであった。
• 王立おうりつ統計とうけい学会がっかいの会長かいちょう・王立おうりつ経済けいざい学会がっかいの副ふく会長かいちょう・英国えいこく学士がくし院いんの会員かいいんを歴任れきにんする。
• 1907年ねんに立たて統計とうけい学会がっかいよりガイ・メダル金きんメダル受賞じゅしょう。
• イギリスの有力ゆうりょくな経済けいざい学がく誌し"Economic　Journal"には、1891年ねんの創刊そうかんから彼かれの死しに到いたるまで、有能ゆうのうな編集へんしゅう者しゃとして関かかわり続つづけていた。
• 1926年ねん、オックスフォードで死去しきょ。

人生じんせい

• フランス語ふらんすご・ドイツ語ご・イタリア語ご・スペイン語ごに通つうじ、あらゆる機会きかいに応おうじてミルトン・ポープ・ウェルギリウス・ホメロスのような古典こてんから自由じゆうに引用いんようができるという伝統でんとうに属ぞくした人ひとであった。生涯しょうがい独身どくしんで、国際こくさい的てきな幅広はばひろい人脈じんみゃくを保たもちつつ、皮肉ひにくと諧謔かいぎゃくと超然ちょうぜんとした態度たいど、そして多おおくの奇行きこう・逸話いつわで同どう時代じだい人じんに強つよい印象いんしょうを与あたえている。

経済けいざい学がく

• エッジワースの初期しょきの経済けいざい思想しそうに影響えいきょうを与あたえていたのは、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズとアルフレッド・マーシャルであり、特とくにマーシャルとはともに数学すうがくと倫理りんり学がくを通つうじて経済けいざい学がくに達たっしたという類似るいじ点てんがある。エッジワースは社会しゃかい科学かがくに数学すうがくの手法しゅほうを適用てきようした先駆せんく者しゃの一人ひとりである。彼かれ自身じしんはその手法しゅほうを「数理すうり心理しんり学がく」と名なづけていた。

• エッジワースは限界げんかい理論りろんが前提ぜんていしていた功利こうり主義しゅぎの倫理りんりと心理しんり学がくを最後さいごまでもちつづけたのであり、そうした確信かくしんのもとに、経済けいざい学がくへの貢献こうけんを果はたした。(1)契約けいやく曲線きょくせん　(2)エッジワース・ボックスなどのように経済けいざい価値かちを測定そくていするために指数しすうを使用しようしたことと、確かく率りつ計算けいさんを統計とうけい学がくに応用おうようし、ウィルヘルム・レキシスが創始そうししたドイツ学派がくはにイギリスの研究けんきゅう家かを接触せっしょくさせたことが、後世こうせいにとって特とくに有益ゆうえきであった。

• 2財ざい2消費しょうひ者しゃ経済けいざいにおいて、均衡きんこうを視覚しかく的てきに描写びょうしゃすることができるエッジワース・ボックス・ダイアグラムを提示ていじした。

思想しそうと著作ちょさく

Papers relating to political economy, 1925

• 1877年ねんの『倫理りんり学がくの新しん方法ほうほうと旧きゅう方法ほうほう』（"New and Old Methods of Ethics"）では、ヘンリー・シジウィックの著書ちょしょの論評ろんぴょうという形かたちをとりながら、功利こうり主義しゅぎと計量けいりょうの問題もんだいを論議ろんぎしている。1881年ねんにあらわれた『数理すうり心理しんり学がく』（"Mathematical Psychics : Essays on the Application of Mathematics to the Moral Sciences"）では、エッジワースは「感覚かんかくの、つまり快楽かいらく・苦痛くつうの計算けいさん法ほう」についての論述ろんじゅつをさらに進すすめている。「ある場合ばあいにはより大おおきな、しかし、ある場合ばあいにはより小ちいさな快楽かいらく単位たんいの集あつまり、幸福こうふくの量りょうが観察かんさつできる」ことが、数学すうがくを経済けいざいに応用おうようできる根拠こんきょとなるように、彼かれには思おもわれた。

• エッジワースの、道徳どうとく学がくに対たいする数学すうがくの応用おうようとして、「確信かくしん、つまり確かく率りつ計算けいさん」がある。確率かくりつ論ろんそのものへの述作じゅっさくは1884年ねんの『マインド』誌しに寄稿きこうされた『見込みこみの哲学てつがく』（"The Philosophy of Chance"）がある。しかし、後年こうねんになるとエッジワースは確かく率りつよりも統計とうけい学がくへと興味きょうみの中心ちゅうしんが移行いこうし、確信かくしんや見込みこみのような主観しゅかんが大おおきく左右さゆうする対象たいしょうを数学すうがくによって規定きていできるかということについて、疑うたがいをもつようになってきたようだ。心理しんり学がくでは、全体ぜんたいは部分ぶぶんの総和そうわに等ひとしくなく、数量すうりょうの比較ひかくは意味いみをなさず、小ちいさな変化へんかが大おおきな効果こうかをもたらし、一様いちようで等質とうしつな連続れんぞくは仮定かていできない。ただ哲学てつがく上じょうの普遍ふへん性せいは主張しゅちょうできないとしても、大量たいりょうの統計とうけい資料しりょうは現実げんじつに応用おうようして差さし支つかえないほど確実かくじつ性せいを備そなえている、とエッジワースはジョン・メイナード・ケインズに答こたえている。

• エッジワースの著作ちょさくは、彼かれ自身じしんにより"Papers relating to political economy", 3巻かん（1925年ねん）として集録しゅうろくされたが、ほかの膨大ぼうだいな数かずの論文ろんぶんは雑誌ざっしなどに散在さんざいしている。文体ぶんたいは気きまぐれで、古典こてんの引用いんようと数式すうしきが入いりまじり、精彩せいさいに富とみ脈絡みゃくらくは曖昧あいまいという矛盾むじゅんした性格せいかくを兼かね備そなえ、翻訳ほんやくに適てきさないせいか、いまだ日本語にほんご訳やくがない。