ゲーリー・ベッカー

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ゲーリー・ベッカー
シカゴ学派がくは
Gary Becker speaking in Chicago, May 24, 2008
生誕せいたん 1930ねん12月2にち
ペンシルヴァニアしゅうポッツヴィル
死没しぼつ (2014-05-03) 2014ねん5月3にち(83さいぼつ
国籍こくせき アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
研究けんきゅう機関きかん シカゴ大学だいがく(1968ねん現在げんざい)
コロンビア大学ころんびあだいがく(1957ねん–1968ねん)
研究けんきゅう分野ぶんや 社会しゃかい経済けいざいがく
母校ぼこう プリンストン大学ぷりんすとんだいがく
シカゴ大学だいがく
影響えいきょう
けた人物じんぶつ
ミルトン・フリードマン
実績じっせき 人的じんてき資本しほん分析ぶんせき
Rotten kid Theorem
受賞じゅしょう 1967ねんジョン・ベーツ・クラークしょう
1992ねんノーベル経済けいざいがくしょう
1997ねんPontifical Academy of Sciences
2000ねんアメリカ国家こっか科学かがくしょう
2004ねんジョン・フォン・ノイマン理論りろんしょう
2007ねん大統領だいとうりょう自由じゆう勲章くんしょう
情報じょうほう - IDEAS/RePEc
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ノーベルしょう受賞じゅしょうしゃノーベル賞
受賞じゅしょうねん1992ねん
受賞じゅしょう部門ぶもんノーベル経済けいざいがくしょう
受賞じゅしょう理由りゆう市場いちばにおける行動こうどうふくめた広範こうはんにわたるひと行動こうどう相互そうご作用さようミクロ経済けいざいがく分析ぶんせき応用おうようとなえて

ゲーリー・スタンリー・ベッカーGary Stanley Becker1930ねん12月2にち - 2014ねん5月3にち)は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく経済けいざい学者がくしゃ社会しゃかい学者がくしゃ

シカゴ大学だいがく経済学部けいざいがくぶ社会学部しゃかいがくぶ、そして同校どうこうブース・ビジネススクールにて教授きょうじゅしょくつとめる。従来じゅうらい金銭きんせん経済けいざい問題もんだいだけを分析ぶんせきしてきた経済けいざいがく適用てきよう範囲はんいを、きわめて広範こうはんかつ多様たよう人間にんげん行動こうどう社会しゃかい問題もんだい拡張かくちょうし、それにもとづくおおくの政策せいさく提言ていげんみちびき、現実げんじつ政策せいさくおおきな影響えいきょうあたえてきたことでられる。

経歴けいれき[編集へんしゅう]

  • 1930ねん ペンシルベニアしゅうポッツヴィル(ボッツタウン)でまれたドイツけいアメリカじん
  • 1951ねん プリンストン大学ぷりんすとんだいがく卒業そつぎょうする(B.A.)。
  • 1953ねん シカゴ大学だいがくより修士しゅうしごう取得しゅとくする(M.A.)。
  • 1954ねん - 1957ねん シカゴ大学だいがく助教授じょきょうじゅとなる。
  • 1955ねん シカゴ大学だいがくより博士はかせごう取得しゅとくする(Ph.D.、シカゴ大学だいがく大学院だいがくいんではミルトン・フリードマンまなんだ)。
  • 1957ねん - 1960ねん コロンビア大学ころんびあだいがく経済けいざいがく助教授じょきょうじゅ、そのじゅん教授きょうじゅとなる。
  • 1960ねん - 1968ねん 30さいコロンビア大学ころんびあだいがく教授きょうじゅとなる。
  • 1968ねん - 1969ねん コロンビア大学ころんびあだいがく教授きょうじゅ(Arthur Lehman Professor of Economics)となる。
  • 1969ねん - 1970ねん シカゴ大学だいがくのフォード財団ざいだん経済けいざいがく客員きゃくいん教授きょうじゅとなる。
  • 1970ねん - 1983ねん シカゴ大学だいがく経済学部けいざいがくぶのユニバーシティー教授きょうじゅとなる(せんもん価格かかく理論りろん弟子でしケヴィン・マーフィーがいる)。
  • 1974ねん アメリカ経済けいざい学会がっかいふく会長かいちょうつとめる。
  • 1983ねん - 2014ねん シカゴ大学だいがく経済学部けいざいがくぶ、ビジネス大学院だいがくいんおよび社会学部しゃかいがくぶのユニバーシティー教授きょうじゅとなる。
  • 1987ねん アメリカ経済けいざい学会がっかい会長かいちょうつとめる。
  • 1992ねん ノーベル経済けいざいがくしょうける。
  • 2014ねん5がつ3にち 死去しきょ[1]。83さいぼつ

受賞じゅしょうれき[編集へんしゅう]

幾多いくた受賞じゅしょうれきち、代表だいひょうてきなものとして、

業績ぎょうせき[編集へんしゅう]

経済けいざいがく分析ぶんせき手法しゅほう家族かぞく差別さべつ犯罪はんざい麻薬まやく政治せいじなど様々さまざま社会しゃかい問題もんだい応用おうようした最初さいしょ経済けいざい学者がくしゃ一人ひとりであり、1970年代ねんだいにはジョージ・スティグラーとともに価格かかく理論りろんによる嗜好しこう表現ひょうげん方法ほうほう洗練せんれんし、それまで経済けいざいにおける市場いちば行動こうどう分析ぶんせきかぎられていたしん古典こてん経済けいざいがく枠組わくぐみによってあらゆる人間にんげん行動こうどう合理ごうりてき選択せんたく結果けっかとして分析ぶんせきできることを提唱ていしょうした。

人的じんてき資本しほんのパイオニアの一人ひとりとしてもられる一方いっぽうで、ロバート・バローらととも出生しゅっしょう行動こうどう結婚けっこん経済けいざい分析ぶんせき確立かくりつした。またソースティン・ヴェブレン顕示けんじてき消費しょうひシャルウィン・ローゼン文化ぶんか経済けいざいがくのパイオニア)に由来ゆらいするスター現象げんしょう価格かかく理論りろんによって説明せつめいけようというこころみもシカゴ大学だいがく同僚どうりょうロバート・フランクらとともにっている。また、進化しんかろんによる価格かかく理論りろん生物せいぶつがくてき基礎きそけもおこなっていた。

政治せいじかんしては、利益りえき集団しゅうだんがどのように搾取さくしゅおこなうかという観点かんてんから分析ぶんせきおこなった。これはのちジーン・グロスマンエルハナン・ヘルプマン分析ぶんせきがれている。なお政治せいじがくからはこの立場たちば合理ごうりてき選択せんたく理論りろんばれている。また犯罪はんざいかんする分析ぶんせきスティーヴン・レヴィットなどにがれている。移民いみんぜい提唱ていしょうしている。

論文ろんぶん[編集へんしゅう]

かれ有名ゆうめいにした初期しょき論文ろんぶんは4つある。

  1. 差別さべつ経済けいざいがく」(1957ねん博士はかせ論文ろんぶん) - これは、雇用こようしゃによる差別さべつかん)を係数けいすうし、白人はくじん労働ろうどうしゃ黒人こくじん労働ろうどうしゃ賃金ちんぎん格差かくさという客観きゃっかんてき事実じじつ説明せつめいしようとした。
  2. 人的じんてき資本しほん」(1964ねん) - 学校がっこう教育きょういく労働ろうどう熟練じゅくれんとおして人的じんてき資本しほん形成けいせいかんがえた。
  3. 時間じかん配分はいぶん理論りろん」(1965ねん) - 経済けいざいがくがこれまで無視むししてきたいち家族かぞくいち社会しゃかい団体だんたい成員せいいんあいだ分業ぶんぎょう探求たんきゅうした。
  4. つみばっ経済けいざいがくてき接近せっきん」(1968ねん) - つみ期待きたい便益べんえきつみ期待きたいコスト、リスク選好せんこうあたえられていれば、合理ごうりてき理由りゆうからおこなひとつの仕事しごとぎないとした。

人物じんぶつ[編集へんしゅう]

  • 家族かぞく行動こうどう経済けいざいがくてきアプローチ』(1976ねん)、『家族かぞく経済けいざいがく』(1981ねん)などの著作ちょさくがある。
  • 社会しゃかい学者がくしゃジェームズ・コールマン親交しんこうがあり、1980年代ねんだい前半ぜんはんより共同きょうどうシカゴ大学だいがくうち学際がくさいてき合理ごうりてき選択せんたくセミナーを開設かいせつした。
  • 1985ねんから2004ねんまでビジネスウィーク毎月まいつきコラムを執筆しっぴつ
  • 2004ねんより判事はんじで、ほう経済けいざいがく専門せんもんリチャード・ポズナーともにThe Becker-Posner Blogを開設かいせつした。
  • ベッカーは自身じしん研究けんきゅう科学かがくてき客観きゃっかんてきであるてん強調きょうちょうし、ノーベル経済けいざいがくしょう政治せいじてき利用りようしようとする受賞じゅしょうしゃ批判ひはんしている[2]。また、ベッカーは分野ぶんやのノーベルしょう受賞じゅしょうしゃについても「物理ぶつり化学かがくといった分野ぶんやでノーベルしょう受賞じゅしょうした連中れんちゅうともずいぶんったが、みんな経済けいざい問題もんだいについてはうるさいだけで、ろくなものじゃなかった」とべている[3]

著書ちょしょ[編集へんしゅう]

たんちょ[編集へんしゅう]

  • The Economics of Discrimination, (University of Chicago Press, 1957, 2nd ed., 1971).
  • Human Capital: A Theoretical and Empirical Analysis, with Special Reference to Education, (National Bureau of Economic Research, 1964, 2nd ed., 1975, 3rd ed., 1993).
  • Economic Theory, (Alfred A. Knopf, 1971, new ed., 2007).
  • The Economic Approach to Human Behavior, (University of Chicago Press, 1976).
  • A Treatise on the Family, (Harvard University Press, 1981, Enl. ed., 1991).
  • An Economic Analysis of the Family, (Economic and Social Research Institute, 1986).
  • Economic Growth, Inequality and Population Growth: the Family and the State, (Institute of Economics, Academia Sinica, 1987).
  • Accounting for Tastes, (Harvard University Press, 1996).

共著きょうちょ[編集へんしゅう]

  • The Allocation of Time and Goods over the Life Cycle, with Gilbert R. Ghez, (National Bureau of Economic Research, 1975).
  • The Economics of Life: From Baseball to Affirmative Action to Immigration, How Real-world Issues Affect Our Everyday Life, with Guity Nashat Becker, (McGraw-Hill, 1997).
    • くらたに雅敏まさとし岡田おかだしげるぎょうわけ『ベッカー教授きょうじゅ経済けいざいがくではこうかんがえる--教育きょういく結婚けっこんから税金ぜいきん通貨つうか問題もんだいまで』(東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ, 1998ねん
  • Social Economics: Market Behavior in a Social Environment, with Kevin M. Murphy, (Harvard University Press, 2000).
  • くらたに雅敏まさとし遠藤えんどう幸彦さちひこわけ『ベッカー教授きょうじゅ、ポズナー判事はんじのブログでまな経済けいざいがく』(東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ, 2006ねん
  • くらたに雅敏まさとし遠藤えんどう幸彦さちひこ稲田いなだまことやく『ベッカー教授きょうじゅ、ポズナー判事はんじ常識じょうしきやぶりの経済けいざいがく』(東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ, 2011ねん

共編きょうへんちょ[編集へんしゅう]

  • Essays in the Economics of Crime and Punishment, co-edited with William M. Landes, (Columbia University Press, 1974).

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 日本にっぽん終身しゅうしん雇用こよう合理ごうりせい説明せつめい、ベッカー死去しきょ[リンク] 読売新聞よみうりしんぶん 2014ねん5がつ5にち閲覧えつらん
  2. ^ トーマス・カリアー 『ノーベル経済けいざいがくしょうの40ねんうえ〉-20世紀せいき経済けいざい思想しそう入門にゅうもん筑摩書房ちくましょぼう筑摩ちくま選書せんしょ〉、2012ねん、88ぺーじ
  3. ^ トーマス・カリアー 『ノーベル経済けいざいがくしょうの40ねんうえ〉-20世紀せいき経済けいざい思想しそう入門にゅうもん筑摩書房ちくましょぼう筑摩ちくま選書せんしょ〉、2012ねん、89ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]