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自由 じゆう 市場 いちば (じゆうしじょう、英 えい : free market )はすべての取引 とりひき が政府 せいふ や権力 けんりょく による強制 きょうせい で行 おこな われるのではなく、望 のぞ むものが自発 じはつ 的 てき に取引 とりひき を行 おこな う市場 いちば を意味 いみ する。経済 けいざい 学 がく の概念 がいねん としては、計画 けいかく 経済 けいざい の対極 たいきょく に位置 いち する。自由 じゆう 市場 いちば という言葉 ことば は経済 けいざい 全体 ぜんたい を指 さ すだけでなく、より小 ちい さな個々 ここ の市場 いちば を指 さ す場合 ばあい もある。自由 じゆう 市場 いちば の思想 しそう の根本 こんぽん には、個々 ここ の人間 にんげん の利益 りえき 追求 ついきゅう を目的 もくてき とする自由 じゆう な行動 こうどう は金銭 きんせん 的 てき かつ社会 しゃかい 福祉 ふくし 的 てき 利益 りえき の点 てん からして最大 さいだい の結果 けっか を産 う むという考 かんが えがある。
自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい では介入 かいにゅう が行 おこな われる場合 ばあい も強制 きょうせい を廃 はい し自発 じはつ 的 てき 取引 とりひき を助 たす ける事 こと を目的 もくてき とする。自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい では、政府 せいふ は課税 かぜい を行 おこな うが、税収 ぜいしゅう はこのような自発 じはつ 的 てき な市場 いちば の円滑 えんかつ 的 てき な活動 かつどう を推進 すいしん するためのみに用 もち いられる。欧米 おうべい では自由 じゆう 市場 いちば の形態 けいたい をしばしばレッセフェール というフランス語 ふらんすご で表 あらわ す。
自由 じゆう 市場 いちば は、一般 いっぱん 的 てき には現代 げんだい における資本 しほん 主義 しゅぎ および大衆 たいしゅう 文化 ぶんか と関連 かんれん づけられるが、市場 いちば といった形 かたち は社会 しゃかい 主義 しゅぎ 者 しゃ も提唱 ていしょう しており、市場 いちば 社会 しゃかい 主義 しゅぎ といったバリエーションも提案 ていあん されている[1] 。
政府 せいふ や権力 けんりょく による支配 しはい ではなく、民衆 みんしゅう の個々 ここ の自由 じゆう な経済 けいざい 活動 かつどう による市場 いちば は需要 じゅよう と供給 きょうきゅう の自然 しぜん 発生 はっせい 的 てき な調整 ちょうせい 機構 きこう によって、国 くに および民衆 みんしゅう にとってもっとも効率 こうりつ のよい生産 せいさん 関係 かんけい を生 う み出 だ し、ゆえに最大 さいだい の金銭 きんせん 的 てき 、社会 しゃかい 的 てき 、政治 せいじ 的 てき な利益 りえき をもたらすとの思想 しそう が基本 きほん 的 てき な自由 じゆう 市場 いちば の前提 ぜんてい である。
最大 さいだい の経済 けいざい 的 てき 自由 じゆう が最大 さいだい の利益 りえき をもたらすことから、政府 せいふ による市場 いちば への介入 かいにゅう は自由 じゆう 市場 いちば を阻害 そがい すると考 かんが えられる。そのため、多 おお くの規制 きせい がかけられた市場 いちば 経済 けいざい は自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい と見 み なすことはできない。どの程度 ていど の強制 きょうせい 力 りょく までを自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい として認 みと めることができるかは、論争 ろんそう の的 てき である。
社会 しゃかい 哲学 てつがく 視点 してん から見 み ると、自由 じゆう 市場 いちば は社会 しゃかい のある種 しゅ の財 ざい の配分 はいぶん 機構 きこう である。需要 じゅよう と供給 きょうきゅう という市場 いちば 内 ない の現象 げんしょう によって、品物 しなもの の価格 かかく および生産 せいさん 量 りょう が決定 けってい されるのであり、この過程 かてい で社会 しゃかい における財 ざい や資本 しほん の配分 はいぶん が自然 しぜん 発生 はっせい 的 てき になされてゆく。自由 じゆう 市場 いちば の優位 ゆうい 性 せい を論 ろん じるうえでもっとも大 おお きな根拠 こんきょ となっているのは、この仕組 しく みにおける効率 こうりつ 性 せい である。この需要 じゅよう と供給 きょうきゅう の結果 けっか として生 しょう じる調整 ちょうせい 機構 きこう を一般 いっぱん に市場 いちば 原理 げんり と呼 よ ぶ。
しかしながらこの市場 いちば 原理 げんり のみに従 したが った自由 じゆう 市場 いちば では独占 どくせん や寡占 かせん といった経済 けいざい 的 てき に不 ふ 効率 こうりつ な弊害 へいがい (市場 いちば の失敗 しっぱい と呼 よ ぶ)が起 お こりうるため、それを防 ふせ ぐ目的 もくてき で政府 せいふ などの市場 いちば を監督 かんとく すべき機関 きかん が市場 いちば へ介入 かいにゅう することが先進 せんしん 諸国 しょこく では一般 いっぱん 的 てき となりつつある。このような市場 いちば のことを自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい と計画 けいかく 経済 けいざい の混合 こんごう との意味 いみ で、混合 こんごう 経済 けいざい と呼 よ ぶ。
ソビエト連邦 れんぽう が勃興 ぼっこう して以来 いらい 、自由 じゆう 市場 いちば の機構 きこう は中央 ちゅうおう 指令 しれい 型 がた 経済 けいざい や中央 ちゅうおう 計画 けいかく 経済 けいざい と対比 たいひ されることが多 おお いが、そもそも自由 じゆう 市場 いちば が18世紀 せいき に理論 りろん 的 てき に推奨 すいしょう され始 はじ めた当初 とうしょ は、中世 ちゅうせい 型 がた 経済 けいざい や初期 しょき 近代 きんだい 経済 けいざい との対比 たいひ で優位 ゆうい 性 せい が論 ろん じられていた。
自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい は、近代 きんだい 以前 いぜん の経済 けいざい システムとは異 こと なると見 み なされている。近代 きんだい 以前 いぜん の社会 しゃかい では貨幣 かへい 経済 けいざい も存在 そんざい していたが、貨幣 かへい の流通 りゅうつう だけでは自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい とは見 み なすことができない。市場 いちば 取引 とりひき が自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい の本質 ほんしつ であるため、個人 こじん 間 あいだ の贈答 ぞうとう は市場 いちば 取引 とりひき とは見 み なされず、年貢 ねんぐ などに代表 だいひょう される財 ざい の強制 きょうせい 移転 いてん も市場 いちば 取引 とりひき ではない。純粋 じゅんすい な自営 じえい 農業 のうぎょう などの、市場 いちば 取引 とりひき の伴 ともな わない社会 しゃかい も、一般 いっぱん 的 てき に自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい とはみない。
現代 げんだい の自由 じゆう 市場 いちば では、個人 こじん と会社 かいしゃ 単位 たんい のいずれにても起業 きぎょう 家 か がいるのが当然 とうぜん となっている。また典型 てんけい 的 てき な現代 げんだい の自由 じゆう 市場 いちば では株式 かぶしき 市場 いちば や金融 きんゆう サービス業 ぎょう などが広 ひろ く受 う け入 い れられているが、自由 じゆう 市場 いちば の定義 ていぎ としては市場 いちば に必 かなら ずしも必要 ひつよう としない。
自由 じゆう 市場 いちば は社会 しゃかい 組織 そしき の自然 しぜん 形態 けいたい であり、取引 とりひき などの活動 かつどう が制限 せいげん されていなければ、自由 じゆう 市場 いちば は自然 しぜん 発生 はっせい すると仮定 かてい した理論 りろん もある。経済 けいざい 史学 しがく では広 ひろ く、自由 じゆう 市場 いちば 経済 けいざい は特別 とくべつ な近代 きんだい の歴史 れきし 現象 げんしょう であり、中世 ちゅうせい 後期 こうき や近代 きんだい 初期 しょき のヨーロッパにて誕生 たんじょう したと受 う け入 い れられている。また、自由 じゆう 市場 いちば の構成 こうせい 要素 ようそ はすでにギリシャ・ローマ古典 こてん 時代 じだい や西側 にしがわ 社会 しゃかい 以外 いがい の中 なか から見 み いだすことができる、と考 かんが えているものもいる。
19世紀 せいき までには、レッセフェール 的 てき な自由 じゆう 主義 しゅぎ の伸張 しんちょう のもとで、市場 いちば は政府 せいふ より自由 じゆう 市場 いちば 推進 すいしん のための体系 たいけい 的 てき なサポートを得 え るようになっていた。個人 こじん の身体 しんたい 的 てき 、思想 しそう 的 てき 自由 じゆう が個人 こじん および社会 しゃかい の安定 あんてい 、発展 はってん につながるとする自由 じゆう 主義 しゅぎ 的 てき 方法 ほうほう 論 ろん を市場 いちば に適用 てきよう したのが自由 じゆう 市場 いちば ともいえる。しかし、政府 せいふ のサポートが自由 じゆう 市場 いちば を生 う み出 だ したのか、自由 じゆう 市場 いちば の成功 せいこう が政府 せいふ のサポートを引 ひ き出 だ したのかは明 あき らかではない。経済 けいざい 史 し 学者 がくしゃ の中 なか には、自由 じゆう 主義 しゅぎ イデオロギーの進展 しんてん 、成功 せいこう がアントレプレナー の特定 とくてい の利益 りえき と結 むす びつき、結果 けっか 的 てき に自由 じゆう 市場 いちば の発展 はってん を促 うなが したと主張 しゅちょう するものもある。マルクス主義 まるくすしゅぎ では、自由 じゆう 市場 いちば 的 てき 機構 きこう は単 たん なる封建 ほうけん 制度 せいど から資本 しほん 主義 しゅぎ への長期 ちょうき 的 てき 移行 いこう 過程 かてい であるとしている。
自由 じゆう 市場 いちば を薦 すす める理論 りろん 的 てき 背景 はいけい には近代 きんだい における自由 じゆう 主義 しゅぎ の発展 はってん 、成功 せいこう が存在 そんざい する。政治 せいじ 的 てき 、社会 しゃかい 的 てき 、思想 しそう 的 てき な自由 じゆう の拡大 かくだい を求 もと めた自由 じゆう 主義 しゅぎ の原理 げんり が、経済 けいざい 的 てき 自由 じゆう を体現 たいげん する自由 じゆう 市場 いちば の原理 げんり につながる。個人 こじん にとっての最大 さいだい の自由 じゆう がその個人 こじん を含 ふく む社会 しゃかい のさまざまな意味 いみ での最大 さいだい の利益 りえき をもたらすと主張 しゅちょう するのが自由 じゆう 主義 しゅぎ であり、その理論 りろん を経済 けいざい 市場 いちば に適用 てきよう したものが自由 じゆう 市場 いちば である。自由 じゆう な個々人 ここじん の経済 けいざい 的 てき 活動 かつどう が国家 こっか や民衆 みんしゅう に最大 さいだい の利益 りえき (効率 こうりつ 性 せい )を生 う み出 だ すとする。この仕組 しく みはアダム・スミス の著書 ちょしょ にある表現 ひょうげん を用 もち いて「神 かみ の見 み えざる手 て 」と称 しょう されることが多 おお い。また自由 じゆう や自治 じち という人間 にんげん の本質 ほんしつ 的 てき 願望 がんぼう の方向 ほうこう 性 せい を自由 じゆう 市場 いちば 奨励 しょうれい の理由 りゆう とする意見 いけん もある。
自由 じゆう 市場 いちば に伴 ともな う問題 もんだい としては、独占 どくせん や寡占 かせん 、情報 じょうほう の偏在 へんざい による影響 えいきょう などがある。情報 じょうほう が市場 いちば に参加 さんか するすべての個人 こじん ではなく一部 いちぶ の人間 にんげん にのみ提供 ていきょう される場合 ばあい 、情報 じょうほう を持 も たざる者 もの は適切 てきせつ な判断 はんだん を阻害 そがい され結果 けっか として市場 いちば 全体 ぜんたい もその不利益 ふりえき を被 こうむ ることがある。インサイダー取引 とりひき や同 どう 業者 ぎょうしゃ による価格 かかく の協議 きょうぎ などが例 れい として上 あ げられる。そのため多 おお くの自由 じゆう 市場 いちば ではこのような問題 もんだい を防 ふせ ぐための機構 きこう が整備 せいび されている。例 たと えば日本 にっぽん では独占 どくせん 禁止 きんし 法 ほう などによって規制 きせい されている。
自由 じゆう 市場 いちば の根本 こんぽん にある、個々人 ここじん の自由 じゆう な活動 かつどう を一 いち 単位 たんい とする市場 いちば の調整 ちょうせい 機構 きこう は民主 みんしゅ 主義 しゅぎ の概念 がいねん に極 きわ めて類似 るいじ したものである。個人 こじん の自由 じゆう で活発 かっぱつ な活動 かつどう が、社会 しゃかい や国家 こっか へも最大 さいだい の利益 りえき をもたらすとする方法 ほうほう 論 ろん は、政治 せいじ 的 てき 、社会 しゃかい 的 てき に捉 とら えると民主 みんしゅ 主義 しゅぎ であり、経済 けいざい 的 てき に見 み るのであれば自由 じゆう 市場 いちば とも言 い える。この意味 いみ で自由 じゆう 市場 いちば での経済 けいざい 活動 かつどう は貨幣 かへい を媒介 ばいかい としての選挙 せんきょ とも表現 ひょうげん できる。すなわち個々人 ここじん の金銭 きんせん (票 ひょう )を適切 てきせつ と考 かんが える物品 ぶっぴん (政治 せいじ 家 か )に用 もち いる(投票 とうひょう する)と考 かんが えられる。この金銭 きんせん を媒介 ばいかい とする選挙 せんきょ に類似 るいじ した機構 きこう を Dollar Voting (ドル投票 とうひょう 、金銭 きんせん 投票 とうひょう )と表現 ひょうげん することがある。
^ Bockman, Johanna (2011). Markets in the name of Socialism: The Left-Wing origins of Neoliberalism . Stanford University Press. ISBN 978-0-8047-7566-3