計画けいかく経済けいざい

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計画けいかく経済けいざい（けいかくけいざい）とは、経済けいざいの資源しげん配分はいぶんを市場いちばの価格かかく調整ちょうせいメカニズムに任まかせるのではなく、国家こっかの物もの財ざいバランスに基もとづいた計画けいかくによって配分はいぶんされる体制たいせい。対立たいりつ概念がいねんは市場いちば経済けいざい。また、計画けいかく経済けいざいと市場いちば経済けいざいの利点りてんを共ともに備そなえた混合こんごう経済けいざいや参加さんか型がた経済けいざいがある。

生産せいさん・分配ぶんぱい・流通りゅうつう・金融きんゆうを国家こっかが統制とうせいし、経済けいざいを運営うんえいする。原則げんそく的てきに全すべての生産せいさん手段しゅだんが公有こうゆうとされる。主おもに社会しゃかい主義しゅぎ国こくの経済けいざい体制たいせいであり、現代げんだいでは純粋じゅんすいにこれを採用さいようする国くには少すくない。より細こまかい分類ぶんるいとして、以下いかが可能かのうである。

• ソ連それんなどにおける「指令しれい型がた（行政ぎょうせい的てき）」
• ハンガリーなどにおける「誘導ゆうどう型がた（または規制きせいされた）」
• ユーゴスラビアにおける「自主じしゅ管理かんり社会しゃかい主義しゅぎ」

現在げんざいの実施じっし国こく

• 朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく - 指令しれい型がたであるが、社会しゃかい主義しゅぎ企業きぎょう責任せきにん管理かんり制せいに移行いこう。一部いちぶ市場いちば経済けいざいを容認ようにんしており、副業ふくぎょうも認みとめられている。経済けいざい特区とっくも設置せっちされている。
• キューバ - 指令しれい型がた。市場いちば経済けいざいを取とり入いれており、自営業じえいぎょうも認みとめられている。

歴史れきし

計画けいかくの機能きのうを初はじめて本格ほんかく的てきに取とり上あげた人物じんぶつは、『反はんデューリング論ろん』や『空想くうそうから科学かがくへ』を著あらわしたドイツのフリードリヒ・エンゲルスである。カール・マルクスも生産せいさんが「自由じゆうに社会しゃかい化かされた人間にんげんの産物さんぶつとして彼かれらの意識いしき的てき計画けいかく的てき管理かんりのもとにおかれる」(資本しほん論ろん第だい1部ぶ)としている。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん前まえ

計画けいかく経済けいざいの原型げんけいはウラジーミル・レーニンのゴエルロ計画けいかく、ヨシフ・スターリンによる第だい一いち次じ五ごか年ねん計画けいかく期きソ連それんだった。複雑ふくざつ極きわまりない経済けいざい動態どうたいを当局とうきょく者しゃ（ソ連それんではゴスプランと呼よばれた）が完全かんぜんに把握はあくし、需要じゅようと供給きょうきゅうを調整ちょうせいしたりするのは極きわめて難むずかしく、コンピュータを用もちいてこれを解決かいけつしようという試こころみもあった（経済けいざい計算けいさん論争ろんそう）。また計画けいかく経済けいざいシステムの内在ないざい的てきな欠陥けっかんを市場いちばメカニズムの導入どうにゅうにより解決かいけつしようという試こころみがコスイギン改革かいかくやハンガリーにおいて進すすめられたが、結果けっか的てきに失敗しっぱいした。

当時とうじは世界せかい恐慌きょうこうの影響えいきょうを全まったく受うけず非常ひじょうに高たかい経済けいざい成長せいちょうを達成たっせいしたため、世界せかい各国かっこくが大おおきな影響えいきょうを受うけた。特とくに枢軸すうじく国こくへの影響えいきょうは顕著けんちょだった。例たとえば、

• 満まん洲しゅう国こくは、満まん洲しゅう産業さんぎょう開発かいはつ五ごカ年かねん計画けいかくなどを採用さいようした。
  →詳細しょうさいは「満まん洲しゅう産業さんぎょう開発かいはつ五ごカ年かねん計画けいかく § 同どう計画けいかくの具体ぐたい的てき内容ないよう」、および「満まん鉄てつ調査ちょうさ部ぶ事件じけん § 経緯けいい」を参照さんしょう
• 日本にっぽんも、企画きかく院いん事件じけんなどで不発ふはつに終おわったものもあったが、経済けいざい新しん体制たいせい確立かくりつ要綱ようこうでは計画けいかく経済けいざいを目指めざすことが明記めいきされた。官僚かんりょうはソ連それんの計画けいかく経済けいざいに感化かんかされていた。
  →詳細しょうさいは「経済けいざい新しん体制たいせい確立かくりつ要綱ようこう § 内容ないよう」、および「基本きほん国策こくさく要綱ようこう § 内容ないよう」を参照さんしょう
  →「日本にっぽんの経済けいざい史し § 二に度どの世界せかい大戦たいせん」、および「企画きかく院いん事件じけん § 経緯けいい」も参照さんしょう
• ナチス・ドイツでは、私的してき所有しょゆう権けんは保護ほごされたものの、四よんカ年かねん計画けいかくが作成さくせいされた。
  →詳細しょうさいは「ナチス・ドイツの経済けいざい § 四よんカ年かねん計画けいかく」、および「四よんカ年かねん計画けいかく § 第だい二に次じ四よんカ年かねん計画けいかく」を参照さんしょう
• イタリアは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんが勃発ぼっぱつする1939年ねんまで国有こくゆう企業きぎょうが占しめる割合わりあいがソ連それんに次ついで最もっとも高たかく、事実じじつ上じょうソ連それんの経済けいざい体制たいせいとほとんど変かわらなくなった。
  →詳細しょうさいは「ファシズム § 経済けいざい政策せいさく」、および「ベニート・ムッソリーニ § 経済けいざい政策せいさくの転換てんかん」を参照さんしょう
  →「コーポラティズム § 国家こっかコーポラティズム」も参照さんしょう

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご

戦後せんごも中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくやベトナムのように社会しゃかい主義しゅぎを標榜ひょうぼうする国くに以外いがいでも、大韓民国だいかんみんこく、マレーシアなど開発かいはつ独裁どくさい下したの東南とうなんアジアで五ごカ年かねん計画けいかくが採用さいようされた。しかし、もともとその運用うんようはソ連それんや東欧とうおう諸国しょこくに比くらべて弛緩しかんしていたため、皮肉ひにくにも経済けいざい改革かいかく（市場いちば経済けいざい化か）がスムーズに実行じっこうできる要因よういんとなった。特とくに中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでは毛沢東もうたくとう時代じだいから既すでに経済けいざいの分権ぶんけん化かが進すすんでいたと指摘してきされる。

→詳細しょうさいは「漢江かんこうの奇跡きせき § 詳細しょうさい」、および「開発かいはつ独裁どくさい § 開発かいはつ独裁どくさいと共産きょうさん主義しゅぎ」を参照さんしょう

→「四よっつの近代きんだい化か § 周しゅう恩来おんらいの宿願しゅくがんとしての「四よっつの近代きんだい化か」」、および「毛沢東もうたくとう § 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく建国けんこく」も参照さんしょう

現在げんざいの中国ちゅうごくでは「五ごヵ年かねん規ぶんまわし画が」という言葉ことばが使つかわれており、当局とうきょくが予あらかじめ目標もくひょうを定さだめて経済けいざいをそれに誘導ゆうどうしようと試こころみるものの、価格かかく設定せっていなど仔細しさいな点てんまで立たち入いらず、目標もくひょうにも固執こしつせず柔軟じゅうなんに対応たいおうしている。したがって後者こうしゃに近ちかいと考かんがえられるが、「社会しゃかい主義しゅぎ市場いちば経済けいざい」という言葉ことばが用もちいられる。なお、中国ちゅうごく語ごの「規ぶんまわし画が」は「計画けいかく」より自由じゆうなニュアンスだが、実態じったいとして依然いぜん、国くに進しん民みん退すさなどに象徴しょうちょうされるように党とうの指導しどう性せいが強つよいことから、日本語にほんごの「計画けいかく」に訳やくされる場合ばあいが多おおい。

→詳細しょうさいは「五ごカ年かねん計画けいかく § その他たの国くにの経済けいざい計画けいかく」、「中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの経済けいざい § 改革かいかく開放かいほう以前いぜん」、および「改革かいかく開放かいほう § 開放かいほう政策せいさく」を参照さんしょう

特徴とくちょう

利点りてん

• 国家こっか主導しゅどうで物品ぶっぴんの生産せいさん量りょうや種類しゅるい、労働ろうどう者しゃの労働ろうどう時間じかんなどを計画けいかく的てきに管理かんりするため、格差かくさが発生はっせいしにくい。
• 外国がいこく発はつの世界せかい的てき不況ふきょうや外国がいこくからの経済けいざい制裁せいさいの影響えいきょうを受うけにくい。

欠点けってん

→詳細しょうさいは「マルクス経済けいざい学がくへの批判ひはん § 計画けいかく経済けいざい」を参照さんしょう

• 格差かくさが発生はっせいしにくく、企業きぎょう同士どうしの競争きょうそうも緩ゆるやかになる分ぶん、労働ろうどう者しゃの労働ろうどう意欲いよくが低下ていかするため、経済けいざい成長せいちょう率りつが下さがる。
• ごく少数しょうすう、または一個人いっこじん主導しゅどうで生産せいさん計画けいかくを立たてなければならず、生産せいさんの自由じゆうが失うしなわれるため、国家こっか指導しどう者しゃの誤算ごさんが発生はっせいすると生産せいさんに無駄むだが生しょうじてしまい、損失そんしつが大おおきくなる。

崩壊ほうかいの要因よういん

経済けいざい学者がくしゃの野口のぐち旭あさひは「社会しゃかい主義しゅぎ経済けいざいが崩壊ほうかいしたその根本こんぽん的てき原因げんいんは、市場いちば経済けいざいと比較ひかくして効率こうりつの悪わるさ・生産せいさん性せいの低ひくさにある。社会しゃかい主義しゅぎ最大さいだいの問題もんだい点てんは、計画けいかく経済けいざいよりもむしろ『分配ぶんぱいと所有しょゆうの不平等ふびょうどうが存在そんざいしない社会しゃかい』を標榜ひょうぼうすることで経済けいざいの効率こうりつ化かを望のぞむ人々ひとびとのインセンティブを阻害そがいしてしまったことにある」と指摘してきしている。

参考さんこう文献ぶんけん

Jose Harris（柏野かしの健三けんぞう訳わけ）『ウィリアム　ベヴァリッジ　その生涯しょうがい（中なか）』ふくろう出版しゅっぱん、1997年ねん

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