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貨幣かへい

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金銭きんせんから転送てんそう

貨幣かへい(かへい、えい: money)とは、経済けいざいがくにおいては、ざいサービスとの交換こうかん価値かち情報じょうほうおよびそのメディア(媒体ばいたい)総体そうたいであって、ざい・サービスとの交換こうかん保蔵やすぞうができるものであるとの社会しゃかい共通きょうつう認識にんしきのもとで使用しようされるものである。また、それは以下いか要件ようけんたす。

  • 商品しょうひん交換こうかんさい媒介ばいかいぶつで、価値かち尺度しゃくど流通りゅうつう手段しゅだん価値かち貯蔵ちょぞうの3機能きのうつもののこと[1]
  • 商品しょうひん価値かち尺度しゃくど交換こうかん手段しゅだんとして社会しゃかい流通りゅうつうしているもので、またそれ自体じたい価値かちあるもの、とみとして蓄蔵ちくぞうはかられるもの[2]

また、日本にっぽん法律ほうりつにおいては、貨幣かへいとは造幣局ぞうへいきょく製造せいぞうし、政府せいふ発行はっこうする硬貨こうか(coin)をし、日本にっぽん銀行ぎんこうけんとは区別くべつしている。

概説がいせつ

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ものやサービスとの交換こうかんもちいられる「おかね」を、経済けいざい用語ようごでは貨幣かへい、または通貨つうか[3]貨幣かへいとは、経済けいざいがくうえは、価値かち尺度しゃくど交換こうかん媒介ばいかい価値かち蓄蔵ちくぞう機能きのうったもののことである。

広義こうぎには、本位ほんい貨幣かへいほかにも、法律ほうりつにより強制きょうせい通用つうようりょくみとめられている信用しんよう貨幣かへいふくめる[1]。つまり「貨幣かへい」というかたりは、紙幣しへいくわえて預金よきんなどの信用しんよう貨幣かへいふくめて場合ばあいおお[2]。なお、慣習かんしゅうてき用法ようほうとして、法令ほうれい用語ようご意味いみにおける貨幣かへい紙幣しへい銀行ぎんこうけんをあわせて「おかね」とぶことがおおい。

政府せいふは、租税そぜい算定さんてい通貨つうかもちいる。法定ほうてい通貨つうか額面がくめんとおりの価値かちつためには、その貨幣かへい発行はっこうする政府せいふたいして国民こくみん信用しんよう存在そんざいすることが必要ひつよう条件じょうけんである。

しゃあいだざいサービス取引とりひきおこな場合ばあいには、信用しんよう取引とりひきとなる。一方いっぽうから他方たほうざい・サービスが移転いてんしたのちに、決済けっさいおこなうとすると、その場合ばあいざい・サービスのには、たいする信用しんようしょうじ、反対はんたいざい・サービスのには、たいする負債ふさいしょうじる。この取引とりひきにおける「信用しんよう/負債ふさい関係かんけいは、負債ふさい支払しはらわれることで解消かいしょうされる。ところで、実際じっさい経済けいざいにおいては、ざい・サービスの取引とりひきは、おおくの主体しゅたいあいだおこなわれるため、あいだの「信用しんよう/負債ふさい関係かんけい無数むすう存在そんざいし、ざい・サービスの他方たほうで、ざい・サービスのでもあるのが、通常つうじょう場合ばあいであり、現実げんじつ経済けいざいでは、無数むすうの「信用しんよう/負債ふさい関係かんけい複雑ふくざつからってくる。あるしゃあいだ定義ていぎされた負債ふさいべつしゃあいだ定義ていぎされた負債ふさい相殺そうさい決済けっさいするためには、負債ふさい計算けいさんする共通きょうつう表示ひょうじ単位たんい必要ひつようになる。この共通きょうつう表示ひょうじ単位たんいえんドルポンドなど)が貨幣かへい計算けいさん貨幣かへい)である。貨幣かへいとは共通きょうつう計算けいさん単位たんい表示ひょうじされた負債ふさいのことである。貨幣かへい負債ふさい一種いっしゅとみなす貨幣かへいかん信用しんよう貨幣かへいろんという[4][5]

貨幣かへい機能きのう

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貨幣かへい重要じゅうよう機能きのうとしてつぎのようなものがあり、いずれかにもちいられていれば貨幣かへいなせる。それぞれの機能きのう別個べっこ起源きげん目的もくてきをもっているとわれる[6]

1923ねん発行はっこうレンテンマルク硬貨こうか。この貨幣かへいは、1920ねんだいドイツいちちょうばいにもなったハイパーインフレ混乱こんらんした経済けいざいなおすために発行はっこうされた貨幣かへい一種いっしゅである。
価値かち尺度しゃくど
貨幣かへいは、計量けいりょう可能かのうなモノ(ざい)の交換こうかん価値かち客観きゃっかんてきあらわ尺度しゃくどとなる。これによってことなるモノの価値かちを、同一どういつ貨幣かへいにおいて比較ひかくないし計算けいさんできる。たとえば、ほん20さつうし1とうといった比較ひかく可能かのうになり、価格かかく計算けいさんできる。
支払しはらい
計量けいりょう可能かのうなモノをわたし、責務せきむ決済けっさいする。初期しょき社会しゃかいではとく示談じだんきん損害そんがい賠償ばいしょう租税そぜいなどの制度せいど関連かんれんしてしょうじた。
価値かち蓄蔵ちくぞう
計量けいりょう可能かのうなモノを貨幣かへい交換こうかんすることで、モノの価値かち蓄蔵ちくぞうすることができる。たとえば、モノとしての大根だいこん1ほん腐敗ふはいすれば消滅しょうめつするが、貨幣かへいえておけば将来しょうらい大根だいこん1ほん入手にゅうしゅ可能かのうとなる。あるいは「大根だいこん1ほん価値かち」を蓄蔵ちくぞうできる。ただし、自由じゆう取引とりひきもとでは通貨つうか価値かちないし物価ぶっか変動へんどうにより貨幣かへい入手にゅうしゅできるモノのりょう増減ぞうげんすることがある。
交換こうかん媒介ばいかい
貨幣かへいかいする社会しゃかいでは、計量けいりょう可能かのうなモノと貨幣かへい相互そうご交換こうかんすることで、共通きょうつうみとめられた価値かちである貨幣かへいかいすることで取引とりひきをスムーズにおこなえる。これにたいし、貨幣かへいかいさない等価とうか交換こうかんにおいては、取引とりひき成立せいりつする条件じょうけんとして、相手あいて自分じぶんしいモノをっていることと同時どうじに、自分じぶん相手あいてしいモノをっていることが必要ひつようとなる。

貨幣かへい歴史れきし

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貨幣かへいは4つの機能きのうによって用途ようとかれており、身分みぶんによって使つかえる貨幣かへいまっていたり、共同きょうどうたい内部ないぶ外部がいぶとでもちいられる貨幣かへいことなっていた。すべての機能きのうふくぜん目的もくてき貨幣かへいあらわれたのは、文字もじをもつ社会しゃかい誕生たんじょうして以降いこうとなる[6]

現在げんざいは1こくにつき1通貨つうか制度せいど主流しゅりゅうとなっているが、歴史れきしにおいては、公権力こうけんりょくによらずに国際こくさいてき貿易ぼうえき流通りゅうつうする貨幣かへいや、かく地域ちいき独自どくじ発行はっこうする貨幣かへい多数たすう存在そんざいしていた。このため、複数ふくすう貨幣かへいもちいられていた[7]

経済けいざいがくにおける貨幣かへい

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経済けいざいがくでは貨幣かへいという用語ようごは、銀行ぎんこう当座とうざ預金よきん普通ふつう預金よきんなどの預金よきん通貨つうかや、定期ていき預金よきんなどのじゅん通貨つうかふくむよりひろ意味いみもちいられることがおおい。貨幣かへい数量すうりょうせつ貨幣かへい乗数じょうすうなどの用語ようごにおける貨幣かへいは、こうした用例ようれいである。貨幣かへいは、ざい・サービスと交換こうかんできるため、人々ひとびともとめられるとかんがえる[8]貨幣かへいは、ざいとの交換こうかん回数かいすう節約せつやくというかたちで、経済けいざい効率こうりつ重要じゅうよう役割やくわりたしている[9]

デイヴィッド・ヒュームは、貨幣かへい商業しょうぎょう実体じったいではなく、財貨ざいか相互そうご交換こうかん容易よういにするために人々ひとびと承認しょうにんした道具どうぐ定義ていぎした[10]アダム・スミスは、とみとは貨幣かへいではなく貨幣かへいえる商品しょうひんであり、貨幣かへい商品しょうひんえるから価値かちがあるにすぎないとろんじた[11]デヴィッド・リカードは、貨幣かへい交換こうかんのためのたんなる媒介ばいかい定義ていぎしている[12]。スミスやリカードによる、貨幣かへい商品しょうひん交換こうかん媒介ばいかいにすぎないという思想しそうは、19世紀せいき後半こうはんしん古典こてん経済けいざいがくでは「貨幣かへい中立ちゅうりつせい」と表現ひょうげんされた[13]

貨幣かへい価値かち

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貨幣かへい価値かち」は「貨幣かへいのモノとしての価値かち」とはことなる。たとえば、不換紙幣ふかんしへい場合ばあい、モノとしての日本にっぽんせんえんさつ印刷物いんさつぶつでしかない。「せんえんさつ」を文字もじ模様もよう印刷いんさつされたかみとして利用りようしてられる効用こうようは、「せんえんられているランチ」からられる効用こうようおよばない。

時点じてんあいだにおける貨幣かへい価値かちをあらわす概念がいねんとして割引わりびき現在げんざい価値かちがある。これは、将来しょうらい貨幣かへい価値かち現在げんざい貨幣かへい価値かち利息りそくぶん上積うわづみされたものとかんがえて、その利息りそくむために必要ひつよう現在げんざい貨幣かへい価値かち同等どうとうとみなすものである。たとえば利率りりつとしに10%であり、日本円にほんえんで9091えん預金よきんすると来年らいねんには909えん(=9091×10/100)の利子りしることができるものとする。すると、来年らいねんにはあわせて10000えんになる。この場合ばあい来年らいねんの10000えん割引わりびき現在げんざい価値かちは9091えんである。

通貨つうか価値かち根拠こんきょは、その通貨つうか裏付うらづけとなっている貴金属ききんぞく内在ないざいてき価値かちにあるとみなす金属きんぞく主義しゅぎと、その発行はっこう主体しゅたい、とりわけ国家こっか主権しゅけん権力けんりょくにあるとみなすひょうけん主義しゅぎがある[14]

貨幣かへい購買こうばいりょく

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貨幣かへいはあらゆる商品しょうひん価値かち統一とういつてき表現ひょうげんできるため、これを逆算ぎゃくさんすれば一定いってい貨幣かへいりょう購買こうばい可能かのう商品しょうひんりょう表現ひょうげんできる。この貨幣かへい能力のうりょくを「購買こうばいりょく」とぶ。また一定いってい商品しょうひんりょう購買こうばいするのにどのくらいの貨幣かへいりょう必要ひつようかを調しらべ、これを国際こくさい比較ひかくすることで数値すうちができ、これを購買こうばいりょく平価へいか(PPP)とぶ。

貨幣かへい情報じょうほう

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商品しょうひん交換こうかんには、ざいサービス交換こうかん比率ひりつかんする情報じょうほう必要ひつようとなる。貨幣かへいは、この情報じょうほう入手にゅうしゅするための費用ひよう節約せつやくする。この情報じょうほうけていると、たがいに相手あいて所有しょゆうする商品しょうひん同時どうじほっしている場合ばあいにしか交換こうかん成立せいりつしない。このような「欲求よっきゅうじゅう一致いっち」なしに交換こうかん成立せいりつさせるものとして、貨幣かへい商品しょうひん経済けいざい発達はったつ進展しんてんさせ、分業ぶんぎょう交易こうえき拡大かくだいをもたらす。また貨幣かへいは、完全かんぜん情報じょうほう仮定かていするミクロ経済けいざいがくでは登場とうじょうせず、マクロ経済けいざいがく分析ぶんせき対象たいしょうとなる[15]

公共こうきょう貨幣かへい債務さいむ貨幣かへい

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貨幣かへいは、公共こうきょう貨幣かへい(public money)[16]債務さいむ貨幣かへい(debt money)に大別たいべつされる。公共こうきょう貨幣かへいは、いかなるものにも債務さいむ発生はっせいさせることなく、公共こうきょう機関きかん通貨つうか発行はっこうけんもとづいて発行はっこうされる。他方たほう債務さいむ貨幣かへいは、だれかの債務さいむえに発行はっこうされる。

人類じんるい歴史れきしにおけるおも貨幣かへいながらく公共こうきょう貨幣かへいであった。たとえば、古代こだいギリシャのエレクトロン貨日本にっぽん和同開珎わどうかいちん藩札はんさつ太政官だじょうかんさつなどは、公共こうきょう貨幣かへいである。今日きょうでも、公共こうきょう貨幣かへいは、政府せいふ発行はっこう貨幣かへい(おも硬貨こうか)として、わずかながら存続そんぞくしている。

近代きんだい銀行ぎんこう制度せいど普及ふきゅうにともなって、中央ちゅうおう銀行ぎんこうけん要求ようきゅうはらい預金よきんなどの債務さいむ貨幣かへい流通りゅうつうりょう主流しゅりゅうめるようになった。中央ちゅうおう銀行ぎんこうけんは、発行はっこうみの債務さいむ証書しょうしょ(国債こくさい社債しゃさいなど)とえに、中央ちゅうおう銀行ぎんこう負債ふさいとして発行はっこうされる。要求ようきゅうはらい預金よきんは、いつでも現金げんきんできることを前提ぜんていとして支払しはらい手段しゅだんとして流通りゅうつうするため、一般いっぱん貨幣かへい一種いっしゅとみなされる。要求ようきゅうはらい預金よきんおおくは、銀行ぎんこう貸付かしつけにともなって、預金よきんしゃ借用しゃくよう証書しょうしょえに市中しちゅう銀行ぎんこう負債ふさいとして「発行はっこう」される。また、その一部いちぶは、中央ちゅうおう銀行ぎんこうけん(債務さいむ貨幣かへい)を市中しちゅう銀行ぎんこうあづけることによって、その代用だいよう貨幣かへいとして「発行はっこう」される。

世代せだい重複じゅうふくモデル

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貨幣かへいてき成長せいちょうモデル

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マルクス経済けいざいがく

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マルクス経済けいざいがく一般いっぱんてき通貨つうかの3機能きのう尺度しゃくど保蔵やすぞう交換こうかん)にくわえ、債権さいけん債務さいむ支払しはらい手段しゅだんとして信用しんよう創造そうぞうされた貨幣かへい一種いっしゅ信用しんよう貨幣かへい)、国際こくさいてき決済けっさい支払しはらいにもちいる世界せかい貨幣かへい労働ろうどう価値かちせつとの関係かんけい指摘してきしている。

現代げんだい貨幣かへい理論りろん(MMT)

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現代げんだい貨幣かへい理論りろんでは、貨幣かへい負債ふさいいち形式けいしきであり、経済けいざいにおいて交換こうかん手段しゅだんとしてれられた特殊とくしゅ負債ふさいとされる[17]とく現代げんだい経済けいざいにおいては、すべての経済けいざい主体しゅたい信頼しんらいする借用しゃくようしょのこと。今日きょうおおくのくににおいて貨幣かへいとして流通りゅうつうするものは、現金げんきん中央ちゅうおう銀行ぎんこうけん)と預金よきん通貨つうか銀行ぎんこう預金よきん)とされている。現代げんだい経済けいざいでは貨幣かへい大半たいはん銀行ぎんこう預金よきんであり、借入かりいれの需要じゅようたいする商業しょうぎょう銀行ぎんこう貸出かしだしによって、預金よきんという貨幣かへいあらたに創造そうぞうされ、返済へんさいされることで消滅しょうめつする[18]。また、政府せいふ支出ししゅつによって銀行ぎんこう預金よきん創造そうぞうされ、納税のうぜいすることで消滅しょうめつする[19]現代げんだい貨幣かへい信用しんよう価値かち国家こっか徴税ちょうぜいけんによって保証ほしょうされている[20]

現代げんだい貨幣かへい理論りろんではひょうけん主義しゅぎ立場たちばっており、公式こうしき計算けいさん尺度しゃくどとしてみとめられる貨幣かへい決定けってい発行はっこうする権限けんげんっているのは主権しゅけんゆうする政府せいふとしている[21]

くに国民こくみん納税のうぜい義務ぎむ名目めいもくてき納税のうぜいがくめることで、国民こくみんなか貨幣かへい需要じゅようまれ、副次的ふくじてきはたらきとしてそのくになか国定こくてい貨幣かへいによる取引とりひきまれるとしており、租税そぜい貨幣かへい流通りゅうつうさせる[22]

貨幣かへい商品しょうひん交換こうかんレートは、市場いちばつうじて決定けっていされるか政府せいふ支出ししゅつ公務員こうむいん給与きゅうよ公的こうてき事業じぎょう発注はっちゅうがくによって決定けっていされるとかんがえられている。

政府せいふ発行はっこうした貨幣かへいは、納税のうぜい手段しゅだんとしてることを政府せいふ約束やくそくしているため、政府せいふ負債ふさいである。銀行ぎんこう預金よきん中央ちゅうおう銀行ぎんこう政府せいふ発行はっこうした通貨つうかとの交換こうかん他行たこうとの取引とりひき利用りようできることとう約束やくそくしているため、民間みんかん銀行ぎんこう預金よきん民間みんかん銀行ぎんこうにとっての負債ふさいである。また、私的してき支払しはらい手形てがた小切手こぎって銀行ぎんこう預金よきんとの交換こうかん約束やくそくしている。このように政府せいふ中央ちゅうおう銀行ぎんこう負債ふさい民間みんかん銀行ぎんこう負債ふさい民間みんかん銀行ぎんこう以外いがい私的してき負債ふさいといった負債ふさいピラミッドが存在そんざいしており、ピラミッドが存在そんざいしているため貨幣かへいによる決済けっさい可能かのう説明せつめいしている[23]

そして貨幣かへい財政ざいせい支出ししゅつ民間みんかん銀行ぎんこう信用しんよう創造そうぞうによって創造そうぞうおよび流通りゅうつうおよび消滅しょうめつするプロセスと仕組しくみに焦点しょうてんてている(en:Monetary circuit theory)。

法律ほうりつにおける貨幣かへい

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法律ほうりつにより強制きょうせい通用つうようりょくみとめられる通貨つうか法定ほうてい通貨つうかぶ。法定ほうてい通貨つうか造幣局ぞうへいきょく製造せいぞう政府せいふ発行はっこうする硬貨こうかと、中央ちゅうおう銀行ぎんこう発行はっこうする銀行ぎんこうけん区別くべつされ、法令ほうれいにおける貨幣かへいとはこのうち、硬貨こうかのことをう。

実際じっさいアメリカ発行はっこうされる紙幣しへいには「この紙幣しへいは、公的こうてきおよび私的してきな、すべての債務さいむたいする法定ほうてい支払しはらい手段しゅだんである」と明示めいじされ、カナダ紙幣しへいには「この紙幣しへい法定ほうてい支払しはらい手段しゅだんである」、オーストラリア紙幣しへいには「このオーストラリア紙幣しへいは、オーストラリアとその領土りょうどないにおいて法定ほうてい支払しはらい手段しゅだんである」とかれている[24]

日本にっぽんにおける定義ていぎ

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日本にっぽん硬貨こうかひょう)。1えん左上ひだりうえ)、5えん右上みぎうえ)、10えんひだりちゅう)、50えんみぎちゅう)、100えん左下ひだりした)、500えんみぎ)。

かつて貨幣かへい本位ほんい貨幣かへい本位ほんいきん銀貨ぎんか)を言葉ことばであり、政府せいふ紙幣しへい銀行ぎんこうけんとは区別くべつされていた。明治めいじ4ねん(1871ねん)に造幣局ぞうへいきょく創業そうぎょうして以来いらい日本にっぽん法律ほうりつじょうの「貨幣かへい」とは、しん貨条れいおよび貨幣かへいほうもとづき発行はっこうされた本位ほんい貨幣かへいおよび補助ほじょ貨幣かへいした。臨時りんじ通貨つうかほう施行しこうは1988ねん3がつまつまで臨時りんじ補助ほじょ貨幣かへいのみの発行はっこうとなったが、1988ねん昭和しょうわ63ねん)4がつ1にち通貨つうか単位たんいおよ貨幣かへい発行はっこうとうかんする法律ほうりつ昭和しょうわろくじゅうねんろくがついちにち法律ほうりつだいよんじゅうごう)が施行しこうされると、法的ほうてき本位ほんい貨幣かへい補助ほじょ貨幣かへい区別くべつはなくなり、すべて「貨幣かへい」としょうすることになった。

通貨つうか単位たんいおよ貨幣かへい発行はっこうとうかんする法律ほうりつ」によれば、「通貨つうかとは、貨幣かへいおよ日本にっぽん銀行ぎんこうほう平成へいせいきゅうねん法律ほうりつだいはちじゅうきゅうごうだいよんじゅうろくじょうだいいちこう規定きていにより日本銀行にっぽんぎんこう発行はっこうする銀行ぎんこうけんをいう。」(どうほう2じょう3こう) とされ、また「貨幣かへい種類しゅるいは、ひゃくえんひゃくえんじゅうえんじゅうえんえんおよいちえんろく種類しゅるいとする。」(どうほう5じょう1こう)と規定きていされる。また、どうほう附則ふそくにより貨幣かへいとみなす臨時りんじ補助ほじょ貨幣かへいとしてどう法律ほうりつ施行しこう以前いぜん発行はっこうされたひゃくえんいちえん硬貨こうかおよび記念きねん硬貨こうか規定きていされている。この法律ほうりつ施行しこうにより、明治めいじ時代じだいから発行はっこうされていた本位ほんい貨幣かへいいちえんえんえんじゅうえんじゅうえんきゅう金貨きんか(それぞれ額面がくめんの2ばい通用つうよう)とえんじゅうえんじゅうえんしん金貨きんかは1988ねん3がつ31にちかぎりで廃止はいしになり、名実めいじつともに管理かんり通貨つうか制度せいど移行いこうした。

したがって、現在げんざい日本にっぽん法律ほうりつじょう貨幣かへいとは、1948ねん昭和しょうわ23ねん以降いこう発行はっこうされたえん硬貨こうか1951ねん昭和しょうわ26ねん以降いこうじゅうえん硬貨こうか1955ねん昭和しょうわ30ねん以降いこういちえん硬貨こうかじゅうえん硬貨こうか1957ねん昭和しょうわ32ねん以降いこうひゃくえん硬貨こうか1982ねん昭和しょうわ57ねん以降いこうひゃくえん硬貨こうかと、1964ねん昭和しょうわ39ねん以降いこう記念きねんのために発行はっこうされたせんえん硬貨こうかせんえん硬貨こうかいちまんえん硬貨こうかまんえん硬貨こうかじゅうまんえん硬貨こうかす。貨幣かへい一覧いちらんについては、通常つうじょう貨幣かへいは「日本にっぽん硬貨こうか」を、記念きねん貨幣かへいは「日本にっぽん記念きねん貨幣かへい」をそれぞれ参照さんしょうのこと。

2021ねんれい3ねん現在げんざい日本にっぽんにおける法令ほうれい用語ようごとしての「貨幣かへい」は、もっぱら補助ほじょ貨幣かへい性格せいかく硬貨こうかのみをし、「紙幣しへいおよび「銀行ぎんこうけん」とは区別くべつされている。

民間みんかん取引とりひきにおける強制きょうせい通用つうようりょく

どうほうだい7じょうにより、貨幣かへい額面がくめん価格かかくの20ばいまでにかぎって、強制きょうせい通用つうようりょくみとめられている。すなわち、支払しはらいけるがわは、貨幣かへい種類しゅるいごとに20まいまではりをこばむことはできない。たとえば、12,000えんものをして、ひゃくえん硬貨こうかひゃくえん硬貨こうかかく20まい支払しはらうことはみとめられる。ただし、21まい以上いじょうであっても、支払しはらいけるがわ拒否きょひせずるのは自由じゆうである。

税金ぜいきん納付のうふにおける制限せいげん受領じゅりょう

税金ぜいきんひとし公金こうきん納付のうふについては、1937ねん昭和しょうわ12ねん)の大蔵省おおくらしょう理財りざい局長きょくちょう通達つうたつ補助ほじょ貨ヲ制限せいげんこう納受のうじゅりょうけん」により、貨幣かへい無制限むせいげん受領じゅりょうすべきであるとされている[25]

損傷そんしょう鋳潰いつぶしにたいする刑罰けいばつ

なお、貨幣かへいをみだりに損傷そんしょう鋳潰いつぶしすると、1ねん以下いか懲役ちょうえきまたは20まんえん以下いか罰金ばっきんしょせられる(貨幣かへい損傷そんしょうとう取締とりしまりほう ここで貨幣かへい銀行ぎんこうけんふくまない)。

金銭きんせん

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貨幣かへい関係かんけいして、日本にっぽんほう制度せいどにおける金銭きんせんについて記述きじゅつおこなう。

社会しゃかいがくにおける貨幣かへい

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社会しゃかいがくでは、貨幣かへいによる市場いちばにおける交換こうかんは、貨幣かへい尺度しゃくど反対はんたい給付きゅうふ確定かくていしている経済けいざいてき交換こうかんとしてとらえられ、たとえば長期ちょうきてき利害りがい共有きょうゆうするコミュニティ内部ないぶにおけるような、相互そうご善意ぜんい前提ぜんていした反対はんたい給付きゅうふ確定かくていしない社会しゃかいてき交換こうかんとは対比たいひされる。

特殊とくしゅ貨幣かへい

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離島りとう炭鉱たんこうなどの場所ばしょや、世界せかい各地かくちハンセン病はんせんびょう療養りょうようしょやコロニーなどの施設しせつにおいて、それぞれの用途ようとわせて貨幣かへい発行はっこうされていた。

あたらしい貨幣かへい

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電子でんしてき暗号あんごうおよび電気でんき通信つうしんもしくは無線むせん通信つうしん技術ぎじゅつ一部いちぶまたは全部ぜんぶ向上こうじょうは、電子でんしてき支払しはらい手段しゅだんとしての「電子でんしマネー」(公共こうきょう交通こうつう機関きかん利用りようするさい運賃うんちんなどとして利用りようする「乗車じょうしゃカード」をふくむ)や、特定とくてい国家こっかによる価値かち保証ほしょうたない貨幣かへいとしての「暗号あんごう通貨つうか」の出現しゅつげんをもたらした。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 広辞苑こうじえん だいはん p.546
  2. ^ a b デジタル大辞泉だいじせん
  3. ^ 岩田いわた国際こくさい金融きんゆう入門にゅうもん』 p8
  4. ^ 中野なかの剛志たけし富国ふこく強兵きょうへい東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、pp.54-55
  5. ^ 内藤ないとうあつしうちせいてき貨幣かへい供給きょうきゅうろんさい構築こうちく日本にっぽん経済けいざい評論ひょうろんしゃ、pp.25-26
  6. ^ a b ポランニー『人間にんげん経済けいざい1』 だい9しょう
  7. ^ 黒田くろだ貨幣かへいシステムの世界せかい』 p11
  8. ^ 『3あいだでわかる経済けいざいがく入門にゅうもん』 p24
  9. ^ 『3あいだでわかる経済けいざいがく入門にゅうもん 』 p25
  10. ^ ヒューム「貨幣かへいについて」
  11. ^ スミス『しょ国民こくみんとみ
  12. ^ リカード『経済けいざいがくおよび課税かぜい原理げんり
  13. ^ 日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃへん経済けいざいがく巨人きょじん 危機ききたたかう』 p33
  14. ^ 中野なかの剛志たけし富国ふこく強兵きょうへい東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、p.58
  15. ^ 金谷かなや貨幣かへい経済けいざいがく
  16. ^ 公共こうきょう貨幣かへい. 東洋とうよう経済けいざい出版しゅっぱんしゃ. (2015) 
  17. ^ Michael Mcleay, Amar Radia and Ryland Thomas 「Money in the Modern Economy: An Introduction」『Quarterly Bulletin』Bank of England, 2014a, Q1,pp.4-13
  18. ^ 中野なかの剛志たけし富国ふこく強兵きょうへい東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、pp.54-57
  19. ^ 藤井ふじいさとし『MMTによるれいしん経済けいざいろん晶文社しょうぶんしゃ2019ねん、pp.151-180
  20. ^ 藤井ふじいさとし『MMTによるれいしん経済けいざいろん晶文社しょうぶんしゃ2019ねん、pp.139-144
  21. ^ en:L. Randall Wray『MMT 現代げんだい貨幣かへい理論りろん入門にゅうもん島倉しまくらげん完訳かんやく鈴木すずき正徳まさのりやく東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、2019ねん、pp.110-114
  22. ^ en:L. Randall Wray『MMT 現代げんだい貨幣かへい理論りろん入門にゅうもん島倉しまくらげん完訳かんやく鈴木すずき正徳まさのりやく東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、2019ねん、pp.119-124
  23. ^ en:L. Randall Wray『MMT 現代げんだい貨幣かへい理論りろん入門にゅうもん島倉しまくらげん完訳かんやく鈴木すずき正徳まさのりやく東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、2019ねん、pp.173-179
  24. ^ L・ランダル・レイ『現代げんだい貨幣かへい理論りろん入門にゅうもん東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ2019ねん、p.117
  25. ^ 補助ほじょ貨ヲ制限せいげんこう納受のうじゅりょうけん - 財務省ざいむしょう

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 岩田いわた規久男きくお 『国際こくさい金融きんゆう入門にゅうもん岩波書店いわなみしょてん新版しんぱん岩波いわなみ新書しんしょ〉、2009ねん
  • 金谷かなや貞男さだお 『貨幣かへい経済けいざいがく』 しんしゃ、1992ねん
  • 黒田くろだ明伸あきのぶ 『貨幣かへいシステムの世界せかい』(増補ぞうほ新版しんぱん) 岩波書店いわなみしょてん、2014ねん
  • アダム・スミス 『国富こくふろん くにゆたかさの本質ほんしつ原因げんいんについての研究けんきゅう』 山岡やまおか洋一よういちやく日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ、2007ねん
  • デイヴィッド・ヒューム 「貨幣かへいについて」(『政治せいじ論集ろんしゅう』) 田中たなか秀夫ひでおわけ京都きょうと大学だいがく学術がくじゅつ出版しゅっぱんかい、2010ねん
  • マーク・ボイル 『ぼくはおかね使つかわずにきることにした』 紀伊國屋きのくにや書店しょてん、2011ねんISBN 4314010878
  • カール・ポランニー 『人間にんげん経済けいざい 1』 玉野井たまのい芳郎よしお栗本くりもと慎一郎しんいちろうやく、『人間にんげん経済けいざい 2』 玉野井たまのい芳郎よしお中野なかのただしやく岩波書店いわなみしょてん岩波いわなみモダンクラシックス〉、2005ねん
  • やすとみ 『貨幣かへい複雑ふくざつせい生成せいせい崩壊ほうかい理論りろん』 そうぶんしゃ、2000ねん
  • デイヴィッド・リカード 『経済けいざいがくおよび課税かぜい原理げんり』 羽鳥はとり卓也たくや吉沢よしざわ芳樹よしきやく岩波書店いわなみしょてん岩波いわなみ文庫ぶんこ〉、1987ねん
  • 早稲田わせだ公務員こうむいんセミナー・りゅうさき泰之やすゆき 『3あいだでわかる経済けいざいがく入門にゅうもん』 早稲田わせだ経営けいえい出版しゅっぱん、2000ねん
  • Roger R. Mcfadden, John Grost, Dennis F. Marr: The numismatic aspects of leprosy, Money, Medals and Miscellanea, D. C. McDonald Associates, Inc. 1993.
  • 柿沼かきぬま陽平ようへい中国ちゅうごく古代こだい貨幣かへい: おかねをめぐるひとびととらし』吉川弘文館よしかわこうぶんかん、2015ねん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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