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身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい
概要がいよう
診療しんりょう 精神せいしん医学いがく, 臨床りんしょう心理しんりがく, 心身しんしん医学いがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 F45
ICD-9-CM 300.8
DiseasesDB 1645
eMedicine med/3527
MeSH D013001

身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい(しんたいひょうげんせいしょうがい、えい: somatic symptom disorder; 旧称きゅうしょう: somatoform disorders)という分類ぶんるいについてべる。身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい分類ぶんるいには、身体しんたい疾患しっかん示唆しさする身体しんたい症状しょうじょうしめすが、それが一般いっぱん身体しんたい疾患しっかん物質ぶっしつ直接的ちょくせつてき作用さよう、または精神せいしん障害しょうがいによって完全かんぜんには説明せつめいされないことを共通きょうつうとした特徴とくちょうとする個々ここ障害しょうがいふくまれる[1][2]

概要がいよう

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現在げんざい医療いりょう制度せいどでは除外じょがい診断しんだん充分じゅうぶんでなく、実際じっさい精神せいしん障害しょうがいではない様々さまざま疾患しっかんとうが「気持きもちの問題もんだいである」と片付かたづけられ、身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがいという診断しんだんける。分類ぶんるいめいであるため診断しんだんめいとしてあつかうのは誤用ごようである[3][4]

現在げんざい、この疾患しっかん様々さまざま疾患しっかん誤診ごしんけ、そのことが問題もんだいになっている。

2013ねんのDSM-5(『精神せいしん障害しょうがい診断しんだん統計とうけいマニュアルだい5はん)では身体しんたい症状しょうじょうしょうおよび関連かんれんしょうぐんへと名称めいしょうわった。医学いがくてき説明せつめいできないという限界げんかいのある定義ていぎはずすことで、けるべき身体しんたいてき検査けんさから除外じょがいされるという懸念けねんらし、また身体しんたい疾患しっかん並存へいそんとしたためである[5]以前いぜんだい4はん(DSM-IV、1994ねん)では身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい大分おおいたるいが、『ICD-10 だい5しょう:精神せいしん行動こうどう障害しょうがい』にも同名どうめいなか分類ぶんるいがあった。以前いぜんのこの定義ていぎでは精神せいしん症状しょうじょう中心ちゅうしんとなっていた[6]

個々ここ診断しんだんめい一部いちぶげる。身体しんたい症状しょうじょう過度かどにとらわれ心配しんぱいしている身体しんたい障害しょうがいや、典型てんけいてきには先行せんこうするストレスが転換てんかんされて既存きそん解剖かいぼうがくてき知見ちけん沿わない発作ほっさ麻痺まひ歩行ほこう障害しょうがいなどをてい転換てんかんせい障害しょうがい変換へんかんしょう)、病気びょうきかんして過度かどにとらわれている病気びょうき不安ふあんしょうふくまれる。歴史れきしてきヒステリー神経しんけい衰弱すいじゃくばれたものを内包ないほうしている。これら診断しんだんめいは、身体しんたい疾患しっかんすごしや、汚名おめいせられる[7]といった不利益ふりえき注意ちゅういしてもちいられる。

DSM以外いがい定義ていぎでは。心身しんしんしょうは、身体しんたい疾患しっかん確定かくていしストレスによって症状しょうじょう増悪ぞうあくし、確立かくりつされている身体しんたい疾患しっかん対象たいしょうとする傾向けいこうがある[5]機能きのうせい身体しんたい症候群しょうこうぐん (または症状しょうじょう、Functional somatic syndromes, FSS) では、身体しんたい精神せいしんとが一体いったいとなって症状しょうじょうしょうじており、線維せんいすじつうしょう慢性まんせい疲労ひろう症候群しょうこうぐんなどがふくまれ、DSM-5による「身体しんたい症状しょうじょうしょう」の定義ていぎでは、心身しんしんしょう機能きのうせい身体しんたい症候群しょうこうぐんとの重複じゅうふくおおきくなる[6]心身しんしん反応はんのう機能きのうせい身体しんたい症候群しょうこうぐんでは原因げんいん心理しんりてき要因よういんが、身体しんたい病理びょうりがくてき所見しょけんがない[8]

線維せんいすじつうしょう慢性まんせい疲労ひろう症候群しょうこうぐん感染かんせんしょう慢性まんせい疲労ひろうとう免疫めんえき関連かんれん疾患しっかんには病理びょうりがくてき所見しょけんがなく、この疾患しっかん診断しんだんけるが、けっして気持きもちの問題もんだいというわけではない。この疾患しっかん体内たいない異物いぶつたいする免疫めんえき反応はんのうとう様々さまざま免疫めんえき疾患しっかん誤診ごしんける。[9]

定義ていぎ

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精神せいしん医学いがくてき障害しょうがい一種いっしゅである。

分類ぶんるい

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診断しんだんめい新旧しんきゅう[5]
身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい(DSM-IV, 1994ねん) 身体しんたい症状しょうじょうしょうおよび関連かんれんしょうぐん (DSM-5, 2013ねん)
心気しんきしょう 病気びょうき不安ふあんしょう
身体しんたい障害しょうがい
疼痛とうつうせい障害しょうがい
心気しんきしょう[10]
鑑別かんべつ不能ふのうがた身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい[10]神経しんけい衰弱すいじゃく[11]
身体しんたい症状しょうじょうしょう
転換てんかんせい障害しょうがい 転換てんかんせい障害しょうがい/変換へんかんしょう機能きのうせい神経しんけい症状しょうじょうしょう
虚偽きょぎせい障害しょうがい作為さくいしょう以前いぜん分類ぶんるいべつ
身体しんたいみにくがた障害しょうがい

以前いぜんのDSM-IV-TR(1994ねん)では以下いかよう分類ぶんるいされている。

  • 病気びょうき不安ふあんしょう - 病気びょうきかんする不安ふあん正常せいじょう逸脱いつだつしている。あやまった解釈かいしゃくもとづいている[12]。ささいな身体しんたい症状しょうじょうから、がんになったとおもんでいるなど。
  • 身体しんたい障害しょうがい - 歴史れきしてきヒステリーばれ、いたみ、胃腸いちょうなどおお症状しょうじょうなんねん持続じぞくする[12]。しかし、これはBreast Implant Illness とう異物いぶつたいする免疫めんえき関連かんれん症状しょうじょう典型てんけいてき症状しょうじょうであるので、[13]実際じっさい異物いぶつ免疫めんえき反応はんのう慢性まんせい疲労ひろう症候群しょうこうぐんとうのなんらかの免疫めんえき疾患しっかんにかかっている患者かんじゃがこの症状しょうじょううったえこの疾患しっかん診断しんだんけているとかんがえられる。[14]
  • 鑑別かんべつ不能ふのうがた身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい - 過去かこ神経しんけい衰弱すいじゃくばれたものをここに分類ぶんるいし、上記じょうき診断しんだんの閾値以下いかで6かげつ以上いじょうつづ[11]
  • 疼痛とうつうせい障害しょうがい - じゅうあつし疼痛とうつう発症はっしょう悪化あっか持続じぞく心理しんりてき要因よういんによってきている[15]一般いっぱん身体しんたい疾患しっかんによって疼痛とうつうしょうじ、疼痛とうつう維持いじにも心理しんりてき要因よういんがほとんど関与かんよしない場合ばあい精神せいしん障害しょうがいとはみなされない[15]
  • 転換てんかんせい障害しょうがい - この転換てんかんかたりは、無意識むいしきてき心理しんりてき葛藤かっとう身体しんたい症状しょうじょうとなってあらわれているということであり、診断しんだん基準きじゅんBに先行せんこうする葛藤かっとうやストレスがありそれが関連かんれんしているということを必要ひつようとしている[16]身体しんたい疾患しっかんかくれた神経しんけい疾患しっかん投薬とうやくなどの影響えいきょう除外じょがいすることを、診断しんだん基準きじゅんDが要求ようきゅうする[16]。けいれん、ひきつけ、麻痺まひ嚥下えんか困難こんなん痛覚つうかく喪失そうしつしつごえ幻覚げんかくえない、こえないといった症状しょうじょうてい[16]診断しんだん技術ぎじゅつ改善かいぜんされるまえは、おおくて半分はんぶんまでが、のち一般いっぱん身体しんたい疾患しっかんあきらかとなり誤診ごしんであった[16]
  • 身体しんたいみにくがた障害しょうがい - 想像そうぞうじょう外見がいけん欠陥けっかん過度かどにとらわれている[12]
  • 特定とくてい不能ふのう身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい

DSM-5(2013ねん)では、身体しんたい症状しょうじょうしょうは、以前いぜん身体しんたい障害しょうがい診断しんだん基準きじゅん変更へんこうして疼痛とうつうせい障害しょうがい鑑別かんべつ不能ふのうがた身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい統合とうごうしたもので、また分類ぶんるい虚偽きょぎせい障害しょうがいふくめた。

  • 身体しんたい症状しょうじょうしょう - 身体しんたい症状しょうじょう健康けんこうかんする過剰かじょう心配しんぱいえてとらわれており、いちじるしい苦痛くつう機能きのう障害しょうがいていしている場合ばあい診断しんだんされ、除外じょがいすべき場合ばあいかくれた医学いがくてき疾患しっかんや、あるいはなんらかの医学いがくてき疾患しっかん場合ばあいであり、また身体しんたいてき疾患しっかんあやまって精神せいしん障害しょうがい診断しんだんくだせば、介護かいごしゃ家族かぞく不適切ふてきせつ認識にんしきされたり、医療いりょうサービスがられるなど不利益ふりえきこうむ可能かのうせいがある[10]。DSM-IVのアレン・フランセスはこの診断しんだんめい以前いぜんより基準きじゅんゆるくなり、そのような不利益ふりえきたいする注意ちゅうい不十分ふじゅうぶんなため無視むしすべきだと警告けいこくしている[17]
  • 転換てんかんせい障害しょうがい/変換へんかんしょう機能きのうせい神経しんけい症状しょうじょうしょう) - 既存きそん解剖かいぼうがくてき知見ちけん沿わない発作ほっさ麻痺まひ歩行ほこう障害しょうがいなどをていし、典型てんけいてきにはストレスのおお出来事できごとのちこり、除外じょがいすべきは、神経しんけい疾患しっかんいつわりびょうなどである[18]西洋せいよう文化ぶんかけんでは20世紀せいき初頭しょとうにはよくみられたが、きわめてまれとなった[18]
  • 虚偽きょぎせい障害しょうがい作為さくいしょう) - 世話せわけるために病者びょうしゃよそおっており、金銭きんせんばちをまぬがれるといったかりやすい動機どうきはなく、その症状しょうじょう意図いとてきつくされている[19]くすり使つかったり、みずからをきずつけたりすることで症状しょうじょうつくす。

診断しんだん

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正確せいかく診断しんだん良好りょうこう関係かんけいからなされるものであり、まず重要じゅうようなことはニーズを理解りかいつとめることで、これはすべてにまさることであり、良好りょうこう関係かんけい構築こうちくされれば大事だいじがなされたとえる[20]かぎられた情報じょうほうによってはやまって診断しんだんをくだしがちだが、共感きょうかんてき態度たいどで、情報じょうほう提供ていきょうしながら共同きょうどう作業さぎょうてきすすめる[20]特定とくてい不能ふのうとすることをじる必要ひつようはなく、情報じょうほう不足ふそく、はっきりしない症状しょうじょう、また身体しんたい疾患しっかん物質ぶっしつ薬物やくぶつ)が症状しょうじょうこしているのかがはっきりしない場合ばあいには診断しんだん確実かくじつとなり、さらにおおくの情報じょうほう必要ひつようせいがあることをしめしている[21]。はっきりしない状況じょうきょう診断しんだんするには、その診断しんだんがそのひとたすけるか、あるいはがいをなすかを考慮こうりょする必要ひつようがある[21]患者かんじゃ精神せいしん紹介しょうかいされたことで、症状しょうじょうのせいだとかん不快ふかいおもっている場合ばあいもあるが、じっくりうったえにうことで、身体しんたい疾患しっかんあきらかとなることもある[5]

身体しんたい症状しょうじょうしょうについて、おおげさだと非難ひなんしたり医学いがくてき疾患しっかんすごした場合ばあい汚名おめいせたり、不適切ふてきせつ薬物やくぶつ療法りょうほう心理しんり療法りょうほうにつながったり、病気びょうきになったりといった被害ひがいこうむりうるため、そうした危険きけんせい十分じゅうぶん注意ちゅうい必要ひつようとされる[17]失明しつめいのような中枢ちゅうすう神経しんけい症状しょうじょうしんいんせいとして仮定かていしがたいという生理学せいりがくしゃ意見いけんもある[22]

身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがいという分類ぶんるい自体じたい診断しんだんめいかのようにあつかうのは不適切ふてきせつであり、個々ここ診断しんだん基準きじゅん適応てきおうしていない不適切ふてきせつ臨床りんしょうにつながるため、この用語ようご自体じたい臨床りんしょう役立やくだつとはえない[4]

解剖かいぼうがくてき非合理ひごうりてき症状しょうじょうていし、かつこころいんせいとしてこりやすい症状しょうじょうであれば、身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがいしんいんせい診断しんだんおこないがちだが、たいしたしんいんがない場合ばあいおおく、ほとんどが自己じこ免疫めんえきせい脳症のうしょう推定すいていされ免疫めんえき療法りょうほう反応はんのうしたという報告ほうこくがある[23]検査けんさ技術ぎじゅつ向上こうじょうによって器質きしつせい疾患しっかん身体しんたいてき所見しょけんがある)の鑑別かんべつすすんできたが、検査けんさでとらえにくくのこってきたものが自己じこ免疫めんえきせい脳症のうしょうだともかんがえられる[24]。21世紀せいきはいり、自己じこ抗体こうたい知見ちけん検査けんさ技術ぎじゅつ進展しんてん自己じこ免疫めんえきせい脳炎のうえん脳症のうしょう症例しょうれい蓄積ちくせきされたきたが、これまでしんいんせいとされてきたような、身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがいでみられるにせ神経症しんけいしょうじょうのような症状しょうじょうこしやすく、とりわけ症状しょうじょうが1つ2つというわけではない場合ばあいうたがえる[25]

心身しんしんしょうでは、身体しんたい疾患しっかん確定かくていしストレスなどによってこれが悪化あっかする場合ばあい病態びょうたいである[5]身体しんたい医学いがくにて確立かくりつされた疾患しっかん対象たいしょうとなる傾向けいこうおおきい[6]

機能きのうせい身体しんたい症候群しょうこうぐん

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以下いか精神せいしん障害しょうがい診断しんだんめいではない。

いわゆる心身しんしん反応はんのう、または機能きのうせい身体しんたい症状しょうじょう(あるいは症候群しょうこうぐん)では、原因げんいん心理しんりてき要因よういん皆無かいむ組織そしきなどに病理びょうりがないが、身体しんたい症状しょうじょう増悪ぞうあくまた慢性まんせい心理しんり社会しゃかいてき要因よういん関与かんよする[8]身体しんたい病理びょうり学的がくてきには異常いじょうがないが、神経しんけい内分泌ないぶんぴつ免疫めんえきといった恒常こうじょうせい維持いじたんしている可能かのうせいがあり、慢性まんせいてきなストレスとかかわりがあるとみなされている[26]

機能きのうせい身体しんたい症候群しょうこうぐんは、症状しょうじょううったえや、障害しょうがい程度ていどが、確認かくにんできる組織そしき障害しょうがい程度ていどたいしておおきい[6]以前いぜんのDSM-IVの身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい定義ていぎでは精神せいしん中心ちゅうしんとなっているので違和感いわかんがあるが、それをはずしたDSM-5による「身体しんたい症状しょうじょうしょう」の定義ていぎでは、身体しんたい精神せいしん一体いったいとなっているという心身しんしんしょう機能きのうせい身体しんたい症候群しょうこうぐんとの重複じゅうふくおおきくなる[6]

繊維せんいすじつうしょうでは、精神せいしん障害しょうがいとするならば疼痛とうつうせい障害しょうがいとなるが、治療ちりょうのための証拠しょうこがある繊維せんいすじつうしょう診断しんだんしたほうがいいという議論ぎろんがある[3]

精神せいしん治療ちりょうにおける処方しょほうガイドブック』では、ほん分類ぶんるいこう以下いか紹介しょうかいしている。

  • 線維せんいすじつうしょう[27] - 広範囲こうはんいいたみがあり、診断しんだん基準きじゅんでは全身ぜんしんの18かしょしたときに11かしょ以上いじょういたい。中高年ちゅうこうねん女性じょせい発症はっしょうしやすい。関節かんせつリウマチ、がんなど鑑別かんべつ困難こんなんなものがあり、診断しんだん慎重しんちょうくだされる。
  • 慢性まんせい疲労ひろう症候群しょうこうぐん[27] - はげしい疲労ひろうかんのため社会しゃかい生活せいかつおくれず、原因げんいん不明ふめいである。
  • 機能きのうせい胃腸いちょうしょう過敏かびんせいちょう症候群しょうこうぐん[27] - 消化しょうかけい症状しょうじょうがあるが検査けんさによる身体しんたい疾患しっかんとして判明はんめいせず、過敏かびんせいちょう症候群しょうこうぐんでは下痢げりがた便秘べんぴがた混合こんごうがたなどで、ストレスや心理しんりてきなものも一因いちいんにあるとされるもの。
  • 更年期こうねんき障害しょうがい[27] - 機能きのうせい身体しんたい症候群しょうこうぐん一覧いちらんにはない[6]更年期こうねんき中高年ちゅうこうねん)の女性じょせいにおいて、女性じょせいホルモンの分泌ぶんぴつ変動へんどう性格せいかくなどによってふくあいてきに、ほてり、発汗はっかん、めまい、頭痛ずつう関節かんせつつうえ、疲労ひろうかんといった身体しんたい症状しょうじょうしめし、精神せいしんでは不安ふあんそもそもうつなどであり、ホルモン補充ほじゅう療法りょうほう反応はんのうしやすいがこの治療ちりょうほうには副作用ふくさようもあり21世紀せいき初期しょき使用しよう減少げんしょうした。

誤診ごしんれい

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こしいたみと歩行ほこう困難こんなんとなり、3にん医師いしたずねたが、それぞれ更年期こうねんき障害しょうがい自律じりつ神経しんけい失調しっちょうしょう原因げんいん不明ふめいとされ、まだいたむので整形せいけい外科げか入院にゅういんしたが、「気持きもちの問題もんだい」「いたいとおもうからいたい」などとわれ、べつ病院びょういんったら、血液けつえき検査けんさ疑問ぎもんてんがあり化膿かのうせい脊髄せきずいえん診断しんだんされた[28]さき入院にゅういんでは医師いし言動げんどうによってしんいんせい症状しょうじょう悪化あっかしたといってよい[28]

には、頭痛ずつう、めまい、歩行ほこうによろめくといった症状しょうじょうていし、大学だいがく付属ふぞく病院びょういん内科ないか異常いじょうがなかったため、精神せいしんしんいんせいうたがわれたのちに、脳波のうは異常いじょうみぎみみかたよった難聴なんちょう検査けんさ確認かくにんされ、外泊がいはくふく入院にゅういん5かげつまでに心理しんり面接めんせつ定期ていきてきおこなわれ、最終さいしゅうてきに、本人ほんにんくちらなかった鎮静ちんせいざい慢性まんせい中毒ちゅうどくだと判明はんめいした[28]

過度かど疲労ひろう身体中からたじゅういたみ、睡眠すいみん障害しょうがい消化しょうか不調ふちょうとう症状しょうじょうがあり、通常つうじょう検査けんさ結果けっかにはなに異常いじょうられないことから「精神せいしんてき問題もんだいである」とわれていた患者かんじゃが、いん転院てんいん遺伝子いでんし検査けんさけた結果けっか古典こてんがたエーラスダンロス症候群しょうこうぐん判明はんめいしたケースもある。エーラスダンロス症候群しょうこうぐん身体しんたい症状しょうじょうしょう慢性まんせい疲労ひろう症候群しょうこうぐん誤診ごしんけがちな症状しょうじょうていすることがある。このような身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがいている症状しょうじょうおもあらわれる患者かんじゃ場合ばあい、エーラスダンロスの典型てんけい症状しょうじょうである皮膚ひふ進展しんてん症状しょうじょう重症じゅうしょうではない場合ばあいもある。エーラスダンロス症候群しょうこうぐんゆうびょうりつは5000にん1人ひとりわれているがこれはあやまりであり、おおくの患者かんじゃ身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがいとうべつ疾患しっかん診断しんだんつづけるため、ただしい診断しんだんめいにたどりけないことでゆうびょうりつ実際じっさい患者かんじゃすうよりもひくいのである。

体内たいない異物いぶつたいする免疫めんえき反応はんのうこしている患者かんじゃがこの疾患しっかん診断しんだんける。この症状しょうじょうはBreast Implant Illnessとばれ、英語えいごけんではさまざまな文献ぶんけん存在そんざいしている。体内たいない異物いぶつ人工じんこう関節かんせつ美容びよう整形せいけいとう液体えきたい注入ちゅうにゅうけい異物いぶつゆたかむねだけではなくはなあごとう異物いぶつふくむ。体内たいない異物いぶつたいする免疫めんえき反応はんのうやアレルギーの場合ばあい通常つうじょう検査けんさ検査けんさ所見しょけん異常いじょう見当みあたらないが、異物いぶつ除去じょきょすることで症状しょうじょう改善かいぜんする。この疾患しっかん海外かいがいでは身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい誤診ごしんけやすい疾患しっかんとしてBreast implant illnessとばれおおくの文献ぶんけんげられている。[29][30]

しんいんせいえても、身体しんたい検査けんさおこたらず、資料しりょうあつめて、その範囲はんいえる不確ふたしかな判断はんだん注意ちゅういし、身体しんたい精神せいしん両面りょうめんからの可能かのうせいわすれないことが教訓きょうくんとされる[28]

歴史れきし

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精神せいしん医学いがくにおける症状しょうじょうによる分類ぶんるいは、のう病理びょうりがくてき解明かいめいすすむまでの手段しゅだんであり、ドイツ精神せいしん学会がっかい創設そうせつしたヴィルヘルム・グリージンガー英語えいごばん継承けいしょうし、診断しんだん分類ぶんるい体系たいけいしたエミール・クレペリン時代じだいには、アルツハイマー疾患しっかん単位たんい発見はっけんされている[5]。クレペリンの偉業いぎょうは、『精神せいしん障害しょうがい診断しんだん統計とうけいマニュアル』にもがれた[5]医学いがく進展しんてんは、以前いぜん理解りかいされていなかった症状しょうじょう原因げんいん発見はっけんするものであり、精神せいしん医学いがく領域りょういき縮小しゅくしょうしていき、病原菌びょうげんきんとしてのスピロヘータ発見はっけんは、精神病せいしんびょうによる麻痺まひ神経しんけいがくのものとしてえた[17]

1980ねんのDSM-IIIに「身体しんたい表現ひょうげんせい障害しょうがい」の分類ぶんるい登場とうじょうした[5]精神せいしん障害しょうがい診断しんだんめいとしての身体しんたい表現ひょうげんせい身体しんたいといった言葉ことばは、精神せいしん中心ちゅうしんとなっているという含意がんいがあり、精神せいしん身体しんたい二分にぶんされており、精神せいしん身体しんたい一体いったいとなっている機能きのうせい身体しんたい症候群しょうこうぐんからればれにくいものであった[6]。2013ねんのDSM-5では「身体しんたい症状しょうじょうしょうおよび関連かんれんしょうぐん」へと分類ぶんるいめい変更へんこうされ、「医学いがくてき説明せつめいができない」という信頼しんらいせい限界げんかいのある定義ていぎがあり、精神せいしんするとしてけるべき身体しんたいてき検査けんさから除外じょがいされるという懸念けねんらし、また身体しんたい疾患しっかん並存へいそんとした[5]

日本にっぽんではクレペリンにまなんだ秀三しゅうぞう(くれしゅうぞう)が19世紀せいきまつ診断しんだん分類ぶんるい輸入ゆにゅうし、ギリシャ子宮しきゅう hustéra に由来ゆらいする、ヒステリーを臓躁きょうやくし、また神経しんけい衰弱すいじゃくきょうといった診断しんだん日本にっぽんもちいられるようになった[5]日本にっぽんでは10世紀せいきより以前いぜんから、中国ちゅうごくより輸入ゆにゅうした養生ようじょうによって健康けんこう増進ぞうしんはかり、またくるしみに社会しゃかいてきまた倫理りんりてき価値かち見出みいだしてきており、そこに精神せいしん医学いがくがドイツから輸入ゆにゅうされ、神経しんけい衰弱すいじゃく共感きょうかんて、日常にちじょうレベルの苦痛くつうはじめて治療ちりょう対象たいしょうとするものとして大衆たいしゅうれられた[31]神経しんけい衰弱すいじゃく診断しんだんは、だい世界せかい大戦たいせんにはすたれていった[31]

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • アレン・フランセス精神せいしん疾患しっかん診断しんだんのエッセンス―DSM-5の上手じょうず使つかかた金剛こんごう出版しゅっぱん、2014ねん3がつISBN 978-4772413527 Essentials of Psychiatric Diagnosis, Revised Edition:Responding to the Challenge of DSM-5®, The Guilford Press, 2013.

関連かんれん項目こうもく

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