近藤こんどう兵太郎へいたろう

近藤こんどう 兵太郎へいたろう
Hyotaro Kondoh

1936年ねん、甲子園こうしえん球場きゅうじょうにて
基本きほん情報じょうほう
国籍こくせき	日本にっぽん
出身しゅっしん地ち	愛媛えひめ県けん松山まつやま市し
生年月日せいねんがっぴ	(1888-07-17) 1888年ねん7月がつ17日にち
没ぼつ年月日ねんがっぴ	(1966-05-19) 1966年ねん5月19日にち（77歳さい没ぼつ）
選手せんしゅ情報じょうほう
経歴けいれき（括弧かっこ内ないはプロチーム在籍ざいせき年度ねんど）
選手せんしゅ歴れき
松山まつやま商業しょうぎょう学校がっこう
監督かんとく・コーチ歴れき
松山まつやま商業しょうぎょう学校がっこう（1918年ねん-1925年ねん） 台たい南みなみ州しゅう立だて嘉よしみ義ぎ農林のうりん学校がっこう（現在げんざいの国立くにたち嘉よしみ義ぎ大学だいがく、台湾たいわん）（1931年ねん-1940年ねん） 新田高等学校にったこうとうがっこう（1950年ねん-1954年ねん） 愛媛大学えひめだいがく
台湾たいわん野球やきゅう殿堂でんどう 殿堂でんどう表彰ひょうしょう者しゃ
選出せんしゅつ年ねん	2024年ねん
この表ひょうについて この表ひょうはテンプレートを用もちいて表示ひょうじしています。編集へんしゅう方法ほうほうはTemplate:Infobox baseball playerを参照さんしょうしてください。 ■プロジェクト:野球やきゅう選手せんしゅ  ■テンプレート

近藤こんどう 兵太郎へいたろう（こんどう ひょうたろう/へいたろう、1888年ねん7月がつ17日にち - 1966年ねん5月19日にち）は、日本人にっぽんじんの野球やきゅう指導しどう者しゃ。愛媛えひめ・松山まつやま商業しょうぎょうや、台湾たいわん台たい南みなみ州しゅう立だて嘉よしみ義ぎ農林のうりん学校がっこう（現在げんざいの国立くにたち嘉よしみ義ぎ大学だいがく）野球やきゅう部ぶなどで監督かんとくを務つとめた。松山まつやま商業しょうぎょう野球やきゅう部ぶを初はつの全国ぜんこく出場しゅつじょうに導みちびくなど戦前せんぜんの黄金おうごん時代じだいの礎いしずえを築きずいた監督かんとくとして、また日本にっぽん統治とうち下かの台湾たいわんの嘉よしみ義ぎ農林のうりん学校がっこうを率ひきいて甲子園こうしえんに出場しゅつじょうし、準じゅん優勝ゆうしょうに導みちびいたことで台湾たいわん野球やきゅう史しにもその名なを残のこした。

略歴りゃくれき

1888年ねん（明治めいじ21年ねん）に愛媛えひめ県けん松山まつやま市し萱かや町まち（現在げんざいの平和へいわ通どおり6丁目ちょうめ）で生うまれ、古町ふるまち尋常じんじょう小学校しょうがっこうと高等こうとう小学校しょうがっこうを経へて1908年ねん（明治めいじ41年ねん）愛媛えひめ県立けんりつ松山まつやま商業しょうぎょう学校がっこう（現げん・愛媛えひめ県立けんりつ松山商業高等学校まつやましょうぎょうこうとうがっこう）を卒業そつぎょう。その後ご松山まつやま商船しょうせん組ぐみ（現げん・伊予いよ商運しょううん）に勤務きんむするかたわら1918年ねん（大正たいしょう8年ねん）に松山まつやま商業しょうぎょう初代しょだい野球やきゅう部ぶコーチ（現在げんざいの監督かんとくにあたる）となり、翌よく1919年ねんに松山まつやま商しょうを初はつの全国ぜんこく出場しゅつじょう（夏なつベスト8）へと導みちびく。

1919年ねん秋あき、野球やきゅう部ぶコーチを辞任じにんすると台湾たいわんへ赴おもむき、1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）に嘉よしみ義ぎ商工しょうこう学校がっこうに簿記ぼき教諭きょうゆとして着任ちゃくにん。そして1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）頃ごろから同おなじ嘉よしみ義よしにある嘉よしみ義ぎ農林のうりん学校がっこう野球やきゅう部ぶの教練きょうれんとして放課後ほうかごになると出でかけて指導しどうし、1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）に監督かんとくに就任しゅうにんした。

1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）、嘉よしみ義ぎ農林のうりんを第だい17回かい全国ぜんこく中等ちゅうとう学校がっこう優勝ゆうしょう野球やきゅう大会たいかいにおいてチームを初はつ出場しゅつじょうながら決勝けっしょうまで導みちびいた（全国ぜんこく中等ちゅうとう学校がっこう優勝ゆうしょう野球やきゅう大会たいかいは、現在げんざいの全国ぜんこく高等こうとう学校がっこう野球やきゅう選手権せんしゅけん大会たいかいである）。決勝けっしょうでは、吉田よしだ正男まさおを擁ようしこの年としから史上しじょう唯一ゆいいつの3連覇れんぱを達成たっせいする事ことになる中京ちゅうきょう商しょうに0-4で敗やぶれ、準じゅん優勝ゆうしょうに終おわった。

結局けっきょく監督かんとくとして松山まつやま商業しょうぎょう時代じだいに夏なつ1回かい、嘉よしみ義ぎ農林のうりん時代じだいは春はる1回かい、夏なつ4回かい甲子園こうしえんに出場しゅつじょうした。

1946年ねんに日本にっぽんに引ひき揚あげ、晩年ばんねんは新田高等学校にったこうとうがっこうの初代しょだい野球やきゅう部ぶ監督かんとく（1950年ねん～1954年ねん夏なつまで）、愛媛大学えひめだいがく野球やきゅう部ぶ監督かんとくなどを務つとめた。主おもな教おしえ子ごに藤本ふじもと定義さだよし、森もり茂雄しげお（以上いじょう松山まつやま商しょう）、呉ご明あきら捷とし、呉ご昌あきら征せい、今こん久留ひさどめ主ぬし淳あつし、今こん久留くる主しゅ功こう、呉ご新しん亨とおる（以上いじょう嘉よしみ義ぎ農林のうりん）などがいる。

1966年ねん5月がつ19日にち死去しきょ。77歳さい没ぼつ。戒名かいみょうは「球道きゅうどう院いん兵へい明あかり自覚じかく居士こじ」。墓所はかしょは愛媛えひめ県けん松山まつやま市し御幸みゆき町まちの千秋せんしゅう寺てらにある。

2014年ねん10月6日にち、自身じしんの功績こうせきを称となえて坊ぼっちゃんスタジアム前まえの広場ひろばに顕彰けんしょう碑ひが建立こんりゅうされ、除幕じょまく式しきが行おこなわれた。

2024年ねん1月がつ12日にち、台湾たいわんの野球やきゅう殿堂でんどうにあたる台湾たいわん棒ぼう球だま名人めいじん堂どうに選出せんしゅつされた。

エピソード

昭和しょうわ6年ねん夏なつの甲子園こうしえんで準じゅん優勝ゆうしょうした嘉よしみ義ぎ農林のうりんチーム

近藤こんどう兵太郎へいたろう（左ひだり）と森もり茂雄しげお（右みぎ）：早大そうだい野球やきゅう部ぶの台湾たいわん遠征えんせい時じ（1931年ねん）に撮影さつえい

• 近藤こんどう自身じしんは1903年ねんに松山まつやま商業しょうぎょうに入学にゅうがくし、創部そうぶ間あいだもない弱小じゃくしょうの野球やきゅう部ぶに入はいって内野ないや・外野がいや手しゅとして活躍かつやくし、主将しゅしょうも務つとめた。卒業そつぎょう後ごは徴兵ちょうへい検査けんさを受うけて歩兵ほへい第だい22連隊れんたいに入営にゅうえいし、陸軍りくぐん伍長ごちょうとして満期まんき除隊じょたいし、家業かぎょうを継ついだ。1918年ねんに正式せいしきに野球やきゅう部ぶコーチ（監督かんとく）となった。
• 周囲しゅういからは「コンピョウさん」と呼よばれ、親したしまれた。
• 近藤こんどうが台湾たいわんで教おしえていた嘉よしみ義ぎ商工しょうこう学校がっこうには野球やきゅう部ぶがなく、そのため近藤こんどうは夏なつは四国しこく・松山まつやまに戻もどって松山まつやま商業しょうぎょうのコーチをしていた。
• 嘉よしみ義ぎ農林のうりん野球やきゅう部ぶの初代しょだい監督かんとくは野球やきゅうを知しらない安藤あんどう信哉のぶやがやらされていたが、初陣ういじんとなる試合しあいで大敗たいはいし、部員ぶいん全員ぜんいんでどうすれば強つよくなれるか真剣しんけんに話はなし合あったところ、噂うわさの近藤こんどうに指導しどうしてもらってはどうかということになり、校長こうちょうが近藤こんどう兵太郎へいたろうに依頼いらいし、体育たいいく教員きょういんの濱田はまだ次じ箕みの助言じょげんもありコーチに就任しゅうにんした。近藤こんどうが嘉よしみ義ぎ農林のうりん野球やきゅう部ぶ監督かんとくとして正式せいしきに登録とうろくされたのは1931年ねんになってからである。
• 当時とうじ日本人にっぽんじん以外いがいの人種じんしゅ、民族みんぞくがいるチームは見下みくだされ応援おうえんもされなかったが、近藤こんどうは嘉よしみ義ぎ農林のうりんの野球やきゅう部ぶが日本人にっぽんじんと台湾たいわん人じんや原住民げんじゅうみん族ぞくの混成こんせいチームであることに違和感いわかんを覚おぼえず、校内こうないで野球やきゅうに適てきした生徒せいとを見みつけて野球やきゅう部ぶに入部にゅうぶさせた。そこで台湾たいわん最強さいきょうチームを作つくるべく、松山まつやま商業しょうぎょう直伝じきでんのスパルタ式すぱるたしき訓練くんれんで選手せんしゅを鍛きたえ上あげ、チームを創部そうぶ3年ねんで全国ぜんこく準じゅん優勝ゆうしょうするまでの強豪きょうごうへと育そだて上あげた。
• 1930年ねんに台湾たいわんに遠征えんせいに来きた平安へいあん中学ちゅうがくの中なかに、3人にんの高砂たかさご族ぞく出身しゅっしん選手せんしゅがレギュラーとして参加さんかしているのを見みて、当時とうじまだコーチだった近藤こんどうは「あれを見みろ、野球やきゅうこそ万民ばんみんのスポーツだ。我々われわれには大おおきな可能かのう性せいがある」と語かたった。
• 準じゅん優勝ゆうしょうしたメンバーのうち、レギュラーメンバーは日本人にっぽんじんが3人にん、台湾たいわん本島ほんとう人じん2人ふたり、先住民せんじゅうみん族ぞく高砂たかさご族ぞく4人にんであった。非常ひじょうに快足かいそくのチームで、準々じゅんじゅん決勝けっしょうの札幌さっぽろ商しょう戦せんでは1試合しあいで8盗塁とうるいを記録きろくした。
• 「（近藤こんどう先生せんせいは）マムシに触さわっても近藤こんどう監督かんとくにさわるな、とみんなが囁ささやき合あうほど怖こわい人ひとであった。しかし、大変たいへんに熱心ねっしんで、怪我けがなどした者ものにはとことん気きを配くばってやさしかった。真剣しんけん、必死ひっしが好すきな方ほうで、いつも体からだ中ちゅうから熱気ねっきが溢あふれているようだった」（蘇そ正ただし生せい・準じゅん優勝ゆうしょう時じの中堅ちゅうけん手しゅ）
• 「近藤こんどう先生せんせいは、正ただしい野球やきゅう、強つよい野球やきゅうを教おしえてくれた。差別さべつ、ひとつもありませんでした」（蘇そ正ただし生せい）。
• 台湾たいわんにある嘉よしみ義ぎ球場きゅうじょう（1931年ねん建設けんせつ）のホームベースの位置いちは、近藤こんどうが「夕陽ゆうひが選手せんしゅの妨さまたげにならないように」と太陽たいようの沈しずむ位置いちを見みて決きめた。
• 嘉よしみ義ぎ農林のうりんを率ひきいて春はる夏なつ連続れんぞく出場しゅつじょうした1935年ねん夏なつの甲子園こうしえん・準々じゅんじゅん決勝けっしょうでは母校ぼこう・松山まつやま商業しょうぎょうと対戦たいせんし、延長えんちょう戦せんの末すえ4－5で惜敗せきはいした。松山まつやま商業しょうぎょうはその後ご、準決勝じゅんけっしょう・決勝けっしょうと勝かって初はつの全国ぜんこく制覇せいはを達成たっせい、応援おうえんに駆かけ付つけた近藤こんどうは松山まつやま商業しょうぎょうを率ひきいていたかつての教おしえ子ご・森もり茂雄しげお監督かんとくと涙なみだを流ながして喜よろこんだという。
• 「グラウンドではいつも厳きびしく、その反動はんどうか、私わたしは怒おこられたことがありませんでした」近藤こんどうの三さん女じょ・岩崎いわさきしげ子こ（2008/8/1 朝日新聞あさひしんぶん）
• 1998年ねん及および2008年ねん、台湾たいわんの嘉よしみ義ぎ農林のうりんOBらが松山まつやま市し千秋せんしゅう寺てらにある近藤こんどうの墓参はかまいりに訪おとずれた。（1998/8/5愛媛えひめ新聞しんぶん　2008/8/1 朝日新聞あさひしんぶん）
• 新田にった高校こうこう監督かんとく時代じだいに正せい捕手ほしゅが怪我けがによる故障こしょうで代かわりの選手せんしゅを正せい捕手ほしゅに起用きようしなければならなくなった。代かわりに正せい捕手ほしゅを務つとめた選手せんしゅは投手とうしゅの1日にち約やく300球きゅうに及およぶ球たまを毎日まいにち受うけ続つづけやがて左手ひだりて人差ひとさし指ゆびを怪我けがしそれを隠かくしてプレーしていた。その選手せんしゅが引退いんたいした際さいに「お前まえが怪我けがをしているのは知しっていた。お前まえが我慢がまんしているから何なにも言いわなかった。その強つよいハートがあるから正せい捕手ほしゅを任まかせられた。」との逸話いつわが残のこされている。(2005年ねん2月がつ17日にち付づけ毎日新聞まいにちしんぶん朝刊ちょうかん)

語録ごろく

• 「球たまは霊れい（たま）なり、霊れい（たま）正ただしからば球たままた正せいし……」
• 「暗くらくてもバットは振ふれる。心眼しんがんで打うつ球たまを見定みさだめてバットを振ふれ」
• 「日本人にっぽんじん、台湾たいわん人じん、先住民せんじゅうみん族ぞくが混まざりあっている学校がっこう、そしてチーム、これこそが最もっとも良よい台湾たいわんの姿すがただ。それが負まけるとしたら努力どりょくが足たりないからだ」
• 「上手じょうずなチームが勝かてるとは限かぎらない。とにかく、まず勝かてばいいんだ。」

映画えいが化か

近藤こんどうが指導しどうした台たい南みなみ州しゅう立だて嘉よしみ義ぎ農林のうりん学校がっこう（現げん・国立くにたち嘉よしみ義ぎ大学だいがく）野球やきゅう部ぶの活躍かつやくを描えがいた台湾たいわん映画えいが「KANO 1931海うみの向むこうの甲子園こうしえん」が2014年ねん2月がつ27日にちから台湾たいわんで公開こうかいされた（その後ご2015年ねんには日本にっぽんでも公開こうかいされた）。永瀬ながせ正敏まさとしが近藤こんどうを演えんじた。2014年ねん8月がつには、撮影さつえいに使つかわれた近藤こんどう監督かんとくの家いえの内部ないぶを再現さいげんした「KANO故事こじ館かん」が台湾たいわんの文化ぶんか施設しせつ「檜ひのき意い森もり活かつ村むら」内ないにオープンした。

参考さんこう文献ぶんけん

• 愛媛新聞社えひめしんぶんしゃ 『愛媛えひめの野球やきゅう100年ねん史し』 1994年ねん　ISBN 4900248215
• 古川ふるかわ勝三かつぞう 『台湾たいわんを愛あいした日本人にっぽんじんⅡ 「KANO」野球やきゅう部ぶ名めい監督かんとく・近藤こんどう兵太郎へいたろうの生涯しょうがい』 アトラス出版しゅっぱん、2015年ねん　ISBN 9784906885244