吉田よしだ正男まさお

吉田よしだ 正男まさお

1947年ねん
基本きほん情報じょうほう
国籍こくせき	日本にっぽん
出身しゅっしん地ち	愛知あいち県けん一宮いちのみや市し
生年月日せいねんがっぴ	(1914-04-14) 1914年ねん4月がつ14日にち
没ぼつ年月日ねんがっぴ	(1996-05-23) 1996年ねん5月23日にち（82歳さい没ぼつ）
選手せんしゅ情報じょうほう
ポジション	投手とうしゅ、外野がいや手しゅ
経歴けいれき（括弧かっこ内ないはプロチーム在籍ざいせき年度ねんど）
中京ちゅうきょう商業しょうぎょう学校がっこう(現げん・中京大ちゅうきょうだい中京ちゅうきょう高校こうこう) 明治大学めいじだいがく 藤倉ふじくら電線でんせん
野球やきゅう殿堂でんどう（日本にっぽん） 殿堂でんどう表彰ひょうしょう者しゃ
選出せんしゅつ年ねん	1992年ねん
選出せんしゅつ方法ほうほう	特別とくべつ表彰ひょうしょう
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吉田よしだ 正男まさお（よしだ まさお、1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）4月がつ14日にち - 1996年ねん（平成へいせい8年ねん）5月23日にち）は、1930年代ねんだい（昭和しょうわ初期しょき）に活躍かつやくした日本にっぽんの中等ちゅうとう学校がっこう野球やきゅう、大学だいがく野球やきゅう及および社会しゃかい人じん野球やきゅうの選手せんしゅ。1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）から1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）にかけて、夏なつの甲子園こうしえん大会たいかいで甲子園こうしえん史上しじょう唯一ゆいいつの3連覇れんぱの偉業いぎょうに大おおきく貢献こうけんした愛知あいち県けん名古屋なごや市しにある中京ちゅうきょう商業しょうぎょう学校がっこう（現げん・中京大ちゅうきょうだい中京ちゅうきょう高校こうこう）のエースピッチャー。甲子園こうしえん史上しじょう最多さいたの23勝しょう記録きろく保持ほじ者しゃ。

来歴らいれき

愛知あいち県けん一宮いちのみや市し出身しゅっしん。一宮いちのみや市立しりつ第だい四よん小学校しょうがっこう在学ざいがく時じに少年しょうねん野球やきゅうで全国ぜんこく優勝ゆうしょうを経験けいけんした。1929年ねん（昭和しょうわ4年ねん）、名古屋なごや市しの中京ちゅうきょう商業しょうぎょう学校がっこう（現げん・中京大ちゅうきょうだい中京ちゅうきょう高校こうこう）に入学にゅうがくし野球やきゅう部ぶに所属しょぞくした。当時とうじ、中京ちゅうきょう商業しょうぎょう野球やきゅう部ぶは技術ぎじゅつコーチとして明治大学めいじだいがく野球やきゅう部ぶ監督かんとく・岡田おかだ源三郎げんざぶろうを招聘しょうへいしていたが、この岡田おかだの指導しどうによって徹底的てっていてきに投球とうきゅうフォームを矯正きょうせいされた。

3年生ねんせい春はるの選抜せんばつ大会たいかいから5年生ねんせい夏なつの全国ぜんこく大会たいかいまで6季き連続れんぞくで甲子園こうしえんに出場しゅつじょうし、春はるは準じゅん優勝ゆうしょう1回かい、夏なつは甲子園こうしえん史上しじょう唯一ゆいいつの3連覇れんぱを達成たっせいした。この間あいだ、勝かち負まけはすべて吉田よしだにつき、甲子園こうしえん史上しじょう最多さいた勝利しょうり数すうの23勝しょう3敗はいという記録きろくを残のこしている。5年生ねんせい夏なつの全国ぜんこく大会たいかいでは主将しゅしょうとして出場しゅつじょう、選手せんしゅ宣誓せんせいして優勝ゆうしょうしている。

卒業そつぎょう後ご、明治大学めいじだいがくに進学しんがく。東京とうきょう六ろく大学だいがく野球やきゅうでは1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）春季しゅんきリーグ戦せんで8試合しあい登板とうばん7勝しょう1敗はいで優勝ゆうしょうに貢献こうけんするなど、在学ざいがく中ちゅう29試合しあいに登板とうばんし12勝しょう5敗はいという成績せいせきを残のこしたが、途中とちゅうで肩かたを痛いため、1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）に外野がいや手しゅに転向てんこうした。1937年ねん（昭和しょうわ12年ねん）春はるから1938年ねん秋あきにかけての史上しじょう初はつの4連覇れんぱの達成たっせいに貢献こうけんし、最終さいしゅう学年がくねんでは主将しゅしょうを務つとめた。

大学だいがく卒業そつぎょうの際さいには職業しょくぎょう野球やきゅう（プロ野球やきゅう）入いりを検討けんとうするも、当時とうじの時勢じせいでは職業しょくぎょう野球やきゅう選手せんしゅの社会しゃかい的てき地位ちいは低ひくいものとされていた。のちに妻つまとなる女性じょせいの父ちちから「職業しょくぎょう野球やきゅう選手せんしゅにならないこと」を条件じょうけんとして結婚けっこんを許ゆるされたため、職業しょくぎょう野球やきゅう入いりを断念だんねん、アマチュア野球やきゅうに徹てっする。

1939年ねん（昭和しょうわ14年ねん）、藤倉ふじくら電線でんせん（現げん・フジクラ）に入社にゅうしゃし、野球やきゅう部ぶでは投手とうしゅに復帰ふっきした。その年としの都市とし対抗たいこう野球やきゅう大会たいかいに東京とうきょう市し代表だいひょうで出場しゅつじょうし、全ぜん4試合しあいを連投れんとうして優勝ゆうしょうに導みちびいた。藤倉ふじくら電線でんせんはこの大会たいかいで2連覇れんぱを達成たっせいし、吉田よしだは最優秀さいゆうしゅう選手せんしゅ賞しょうである橋戸賞はしどしょうを受賞じゅしょうした。

その後ごは、藤倉ふじくら電線でんせん野球やきゅう部ぶを改組かいそした全ぜん藤倉ふじくら野球やきゅう部ぶのコーチなどを歴任れきにんし、1964年ねん（昭和しょうわ39年ねん）から中日新聞ちゅうにちしんぶん専属せんぞくのアマチュア野球やきゅう評論ひょうろん家かとなるなど、一貫いっかんしてアマチュア野球やきゅうに関かかわり続つづけた。

1992年ねん（平成へいせい4年ねん）に特別とくべつ表彰ひょうしょうで野球やきゅう殿堂でんどう入はいり。

1996年ねん（平成へいせい8年ねん）5月がつ23日にち、胃癌いがんのため没ぼっした。享年きょうねん82。

甲子園こうしえん成績せいせき23勝しょう3敗はい

• 第だい8回かい選抜せんばつ中等ちゅうとう学校がっこう野球やきゅう大会たいかい（1931年ねん春はる）……準じゅん優勝ゆうしょう

○11-0川越かわごえ中学ちゅうがく、○3-0第だい一いち神かみ港みなと商業しょうぎょう、○3-0和歌山わかやま中学ちゅうがく、●0-2広島ひろしま商業しょうぎょう

これが中京ちゅうきょう商業しょうぎょうにとっても春はる夏なつ通つうじて初はじめての甲子園こうしえんであった。吉田よしだは3試合しあい連続れんぞく完封かんぷうをやってのけてチームを決勝けっしょうへ導みちびいたが、2点てんに抑おさえるも打線だせんが広島ひろしま商業しょうぎょうエース灰はい山元やまもと治おさむを打うてず、広島ひろしま商業しょうぎょうの夏なつ春はる連覇れんぱを許ゆるした。

• 第だい17回かい全国ぜんこく中等ちゅうとう学校がっこう優勝ゆうしょう野球やきゅう大会たいかい（1931年ねん夏なつ）……優勝ゆうしょう

○4-3早稲田わせだ実業じつぎょう、○19-1秋田あきた中学ちゅうがく、○5-3広陵こうりょう中学ちゅうがく、○3-1松山まつやま商業しょうぎょう、○4-0嘉よしみ義ぎ農林のうりん

東海とうかい予選よせんでは全ぜん6試合しあい完封かんぷうで甲子園こうしえんに出場しゅつじょうした。1回戦かいせんの早稲田わせだ実業じつぎょう戦せんでは3点てん先行せんこうを許ゆるしたがサヨナラ勝がちで救すくわれ、そのまま4試合しあいを完投かんとうで決勝けっしょうへ進出しんしゅつした。嘉よしみ義ぎ農林のうりんも初はつ出場しゅつじょうでエース呉ご明あきら捷としを擁ようしていたが、吉田よしだはあっさりと完封かんぷうし、初はつ出場しゅつじょう初はつ優勝ゆうしょうを成なし遂とげた。

• 第だい9回かい選抜せんばつ中等ちゅうとう学校がっこう野球やきゅう大会たいかい（1932年ねん春はる）……ベスト4

○3-1平安へいあん中学ちゅうがく、○3-2坂出さかいで商業しょうぎょう、○8-0長野ながの商業しょうぎょう、●2-3松山まつやま商業しょうぎょう

夏なつ春はる連覇れんぱを目指めざし順当じゅんとうに勝かち進すすんだが、準決勝じゅんけっしょうで松山まつやま商業しょうぎょうエース三森みもり秀夫ひでおに投なげ負まけ、夏なつの雪辱せつじょくを果はたされた。松山まつやま商業しょうぎょうはこの大会たいかいで優勝ゆうしょうした。

• 第だい18回かい全国ぜんこく中等ちゅうとう学校がっこう優勝ゆうしょう野球やきゅう大会たいかい（1932年ねん夏なつ）……優勝ゆうしょう

○5-0高崎たかさき商業しょうぎょう、○7-2長野ながの商業しょうぎょう、○4-0熊本くまもと工業こうぎょう、○4-3松山まつやま商業しょうぎょう（延長えんちょう11回かい）

高崎たかさき商業しょうぎょう戦せんは1安打あんだ完封かんぷう、熊本くまもと工業こうぎょう戦せんでは途中とちゅうで三塁手さんるいしゅにまわった｡決勝けっしょうは9回かい1死しまで3点てん差さの楽勝らくしょうペースだったが、失策しっさくと3連打れんだで同点どうてんとされた。しかし、延長えんちょう11回かいサヨナラ勝がちで2度目どめの優勝ゆうしょう投手とうしゅとなった。

• 第だい10回かい選抜せんばつ中等ちゅうとう学校がっこう野球やきゅう大会たいかい（1933年ねん春はる）……ベスト4

○3-0島田しまだ商業しょうぎょう、○1-0興國こうこく商業しょうぎょう（延長えんちょう13回かい22奪だつ三振さんしん）、○3-1享栄きょうえい商業しょうぎょう、●0-1明石あかし中学ちゅうがく

2試合しあい連続れんぞく完封かんぷうと22奪だつ三振さんしん、享栄きょうえい商業しょうぎょうとの愛知あいち県けん対決たいけつも制せいしたが、明石あかし中学ちゅうがくエースの楠本くすもと保たもつが立たちはだかった。中京ちゅうきょう商業しょうぎょうは3安打あんだしか打うてず完封かんぷう負まけ。明石あかし中学ちゅうがくの決勝けっしょう点てんは吉田よしだが与あたえた押おし出だしの死球しきゅうだった。

• 第だい19回かい全国ぜんこく中等ちゅうとう学校がっこう優勝ゆうしょう野球やきゅう大会たいかい（1933年ねん夏なつ）……優勝ゆうしょう

○11-0善隣ぜんりん商業しょうぎょう（ノーヒットノーラン）、○3-2浪なみ華はな商業しょうぎょう、○2-0大正たいしょう中学ちゅうがく、○1-0明石あかし中学ちゅうがく（延長えんちょう25回かい）、○2-1平安へいあん中学ちゅうがく

3連覇れんぱへの道みちは厳きびしく、楽らくに勝かてたのは1回戦かいせんのみであった。浪なみ華はな商業しょうぎょう戦せんでは3回かいに三塁さんるいのバックアップに入はいった際さい、外野がいやからの送球そうきゅうを顔面がんめんに受うけ、左ひだりマブタを3針はり縫ぬったが続投ぞくとうした。準々じゅんじゅん決勝けっしょうは藤村ふじむら富美男ふみおがエースだった大正たいしょう中学ちゅうがくを完封かんぷう。そして3日にち後ごの準決勝じゅんけっしょうは伝説でんせつの延長えんちょう25回かいの死闘しとう、明石あかし中学ちゅうがく中田なかた武雄たけおとの壮絶そうぜつな投なげあいを演えんじた（→詳細しょうさいは中京ちゅうきょう商しょう対たい明石あかし中ちゅう延長えんちょう25回かいを参照さんしょう）。この試合しあいで吉田よしだは336球きゅうを投なげることになったが、試合しあい後ごに「明日あしたの決勝けっしょうでは投なげるのですか？」と尋たずねる記者きしゃに、「明日あしたはまた明日あしたですよ。今夜こんやぐっすり寝ねてみたら何なにとかなりましょう。」と言いってのけた。しかし流石さすがに336球きゅうの影響えいきょうは隠かくしようがなく、翌日よくじつの決勝けっしょうでは10四死球ししきゅうを献上けんじょう、吉田よしだとしては「肩かたが言いうことをきかず、ボールの行方ゆくえはボールに聞きいてくれ」との心境しんきょうであった。それでも終おわってみれば被ひ安打あんだ2、失点しってん1に抑おさえ切きり、前日ぜんじつの言葉ことば通どおり本当ほんとうに「何なにとか」してしまったその右腕うわんには、不思議ふしぎな神通力じんずうりきが秘ひめられていると評ひょうされた。

投球とうきゅうスタイル

右みぎ投なげのオーバースロー。球たま種しゅはストレート以外いがいにはカーブしかなく、その配分はいぶんも“ストレート9:1カーブ”であったという（シュートも修得しゅうとくしたが封印ふういん・後述こうじゅつ）。前述ぜんじゅつの岡田おかだ源三郎げんざぶろうに指導しどうを受うけてコントロールを徹底的てっていてきに鍛きたえられ、4年生ねんせいで投球とうきゅうスタイルが完成かんせい。最大さいだいの武器ぶきは「外角がいかく低ひくめに決きまる快かい速球そっきゅう」。吉田よしだと対戦たいせんした明石あかし中あたる・深瀬ふかせは「監督かんとく（高田たかだ勝まさる生せい）から『お前まえらは吉田よしだ君くんの球たまを絶対ぜったいに連打れんだできないのだからデッドボールででも良よいから出塁しゅつるいする事ことを考かんがえろ』と言いわれてました。とにかく外角がいかく低ひくめにビシビシと決きまる直球ちょっきゅうに全然ぜんぜん手てが出でなかった。」と言いう。事実じじつ1933年ねんのセンバツの準決勝じゅんけっしょうで中京ちゅうきょう商しょうと対戦たいせんした際さい、決勝けっしょう点てんは1死し満塁まんるいから福島ふくしまが「打うっても当あたらないから」とユニホームをわざとだぶつかせて死球しきゅうを狙ねらい、死球しきゅう・押おし出だしで決勝けっしょう点てんとなる1点てんを取とって勝利しょうりした。投なげる球たま種しゅは90%がストレートだが「ブレーキ鋭するどいカーブ」「ドロップ」なども持もっていた。5年ねんの初はじめに落おちるシュートを修得しゅうとくしたが、それで肩かたを壊こわしかけたため、シュートは封印ふういんした。

甲子園こうしえんで活躍かつやくぶりから剛つよし速球そっきゅうタイプを想起そうきさせるが、元々もともと中京ちゅうきょうは伝統でんとう的てきに剛つよし速球そっきゅうタイプよりも好こう投手とうしゅタイプが多おおく、吉田よしだも後者こうしゃだったという。自みずからも甲子園こうしえんで指揮しきを執とった深谷ふかや弘次ひろじは、人ひとづての話はなしながら「吉田よしださんはスピードこそなかったが、コントロールとカーブと守備しゅびが良よかったと聞きいている」と証言しょうげんしている。

予言よげん

吉田よしだ率ひきいる中京ちゅうきょう商業しょうぎょう（現げん・中京ちゅうきょう大だい中京ちゅうきょう）以降いこう3連覇れんぱを達成たっせいした学校がっこうはない。この3連覇れんぱについて吉田よしだは生前せいぜん、「自慢じまんするわけではないが」と前置まえおきして「もう3連覇れんぱなんか出来できっこない。」と言いっていた。その理由りゆうとして、「昔むかしとは野球やきゅうの質しつが違ちがう。」として金属きんぞくバットや打撃だげき技術ぎじゅつの向上こうじょうを挙あげ、「もし3連覇れんぱ出来できるとするならば、打者だしゃのバットが届とどかないところにストライクを投なげられる投手とうしゅがいること。」と述のべた。

2006年ねん（平成へいせい18年ねん）の夏なつの甲子園こうしえん決勝けっしょうでは、駒澤大学こまざわだいがく附属ふぞく苫小牧高等学校とまこまいこうとうがっこうが73年ねんぶりの3連覇れんぱに挑いどんだが、惜おしくも達成たっせいはならなかった。駒大こまだい苫小牧とまこまいのエース・田中たなか将すすむ大だいは打者だしゃの手元てもとで変化へんかする球たま、すなわちスライダーを得意とくいとしていた。（田中たなかのスライダーは右みぎ打者だしゃの外角がいかく低ひくめのボールゾーンに大おおきく変化へんかして落おちていくが、打者だしゃからはストライクと見みえて空振からぶりをするケースが非常ひじょうに多おおかった）

映画えいが化か

台湾たいわん公立こうりつ嘉よしみ義ぎ農林のうりん学校がっこう（現げん・国立くにたち嘉よしみ義ぎ大学だいがく）野球やきゅう部ぶの活躍かつやくを描えがいた台湾たいわん映画えいが「KANO 1931海うみの向むこうの甲子園こうしえん」が2014年ねんに公開こうかいされた。張ちょう鎧よろい嚴げん（中国ちゅうごく語ご）が吉田よしだを演えんじた。ただし、映画えいがでは当時とうじ3年生ねんせい（5年ねん制せい）だった吉田よしだを「キャプテン」としている。