図 ず 1: ブロモメタンと水酸化物 すいさんかぶつ イオンとの間 あいだ の2分子 ぶんし 的 てき 求 もとめ 核 かく 置換 ちかん (SN 2 )反応 はんのう の反応 はんのう 座標 ざひょう 図 ず
遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん (せんいじょうたいりろん、英 えい : Transition state theory 、略称 りゃくしょう : TST )は、素 す 化学 かがく 反応 はんのう の反応 はんのう 速度 そくど を説明 せつめい する。本 ほん 理論 りろん は反応 はんのう 物 ぶつ と活性 かっせい 化 か した遷移 せんい 状態 じょうたい 複 ふく 合体 がったい との間 あいだ の特別 とくべつ な種類 しゅるい の化学 かがく 平衡 へいこう (擬 なずらえ 平衡 へいこう 、準 じゅん 平衡 へいこう )を仮定 かてい する[1] 。
TSTは、どのように化学 かがく 反応 はんのう が起 お こるかを定性的 ていせいてき に理解 りかい するために主 おも に使 つか われる。TSTは絶対 ぜったい 反応 はんのう 速度 そくど 定数 ていすう を計算 けいさん するというその当初 とうしょ の目標 もくひょう についてはあまり成功 せいこう していない。これは、絶対 ぜったい 反応 はんのう 速度 そくど の計算 けいさん にはポテンシャルエネルギー面 めん の正確 せいかく な情報 じょうほう が必要 ひつよう なためである[2] 。しかし、速度 そくど 定数 ていすう が実験 じっけん 的 てき に決定 けってい されている特定 とくてい の反応 はんのう についての標準 ひょうじゅん 活性 かっせい 化 か エンタルピー (Δ でるた H ‡ 、Δ でるた ‡ H ɵ とも書 か かれる)、標準 ひょうじゅん 活性 かっせい 化 か エントロピー(英語 えいご 版 ばん ) (Δ でるた S ‡ またはΔ でるた ‡ S ɵ )、および標準 ひょうじゅん 活性 かっせい 化 か ギブズエネルギー (Δ でるた G ‡ またはΔ でるた ‡ G ɵ )の計算 けいさん には成功 せいこう している(‡ 表記 ひょうき は興味 きょうみ ある値 ね が「遷移 せんい 状態 じょうたい のもの」であることを指 さ す; Δ でるた H ‡ は遷移 せんい 状態 じょうたい のエンタルピーと反応 はんのう 物 ぶつ のエンタルピーの差 さ である)。
この理論 りろん は1935年 ねん に(当時 とうじ プリンストン大学 ぷりんすとんだいがく の)ヘンリー・アイリング と(マンチェスター大学 だいがく の)メレディス・グウィン・エヴァンス (英語 えいご 版 ばん ) とマイケル・ポランニー によって同時 どうじ に構築 こうちく された[3] [4] 。TSTは「活性 かっせい 錯合体 がったい 理論 りろん 」、「絶対 ぜったい 速度 そくど 理論 りろん 」、「絶対 ぜったい 反応 はんのう 速度 そくど 理論 りろん 」とも呼 よ ばれる[5] 。
TSTの構築 こうちく 前 まえ は、アレニウスの速度 そくど 則 そく が反応 はんのう 障壁 しょうへき についてのエネルギーを決定 けってい するために広 ひろ く使 つか われた。アレニウスの式 しき は経験 けいけん 的 てき 観察 かんさつ から導 みちび かれ、1つかそれ以上 いじょう の反応 はんのう 中 ちゅう 間 あいだ 体 たい が反応 はんのう 物 ぶつ (始原 しげん 系 けい )から生成 せいせい 物 ぶつ (生成 せいせい 系 けい )への変換 へんかん に関与 かんよ しているのかといった機構 きこう 的 てき 考察 こうさつ を無視 むし している[6] 。したがって、この法則 ほうそく と関連 かんれん した2つのパラメータ、前 ぜん 指数 しすう 因子 いんし (英語 えいご 版 ばん ) (A )と活性 かっせい 化 か エネルギー(E a )を理解 りかい するためにはさらなる理論 りろん の発展 はってん が必要 ひつよう であった。アイリングの式 しき をもたらしたTSTはこれら2つの問題 もんだい の解決 かいけつ に成功 せいこう した。しかしながら、アレニウスの速度 そくど 則 そく が発表 はっぴょう された1889年 ねん から、アイリングの式 しき がTSTから導 みちび かれた1935年 ねん まで、46年 ねん が経過 けいか していた。この間 あいだ 、多 おお くの科学 かがく 者 しゃ と研究 けんきゅう 者 しゃ がこの理論 りろん の発展 はってん に大 おお きく貢献 こうけん した。
遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん の背景 はいけい にある基本 きほん 的 てき な考 かんが え方 かた は以下 いか の通 とお りである。
反応 はんのう の速度 そくど は、ポテンシャルエネルギー面 めん の鞍点 あんてん 近 ちか くの活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい (活性 かっせい 錯合体 がったい )を調 しら べることによって研究 けんきゅう することができる。これらの複 ふく 合体 がったい がどのように形成 けいせい されるかの詳細 しょうさい は重要 じゅうよう ではない。鞍点 あんてん それ自身 じしん が遷移 せんい 状態 じょうたい と呼 よ ばれる。
活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい は反応 はんのう 物 ぶつ 分子 ぶんし と特別 とくべつ な平衡 へいこう (擬 なずらえ 平衡 へいこう )にある。
活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい は生成 せいせい 物 ぶつ へと変換 へんかん でき、この変換 へんかん の速度 そくど を計算 けいさん するために運動 うんどう 論 ろん を使用 しよう することができる。
TSTの発展 はってん において、以下 いか に要約 ようやく したように3つのアプローチが取 と られた。
1884年 ねん 、ヤコブス・ファント・ホッフ は、可逆 かぎゃく 反応 はんのう についての平衡 へいこう 定数 ていすう の温度 おんど 依存 いぞん 性 せい を記述 きじゅつ するファントホッフの式 しき を提唱 ていしょう した。
A
↽
−
−
⇀
B
{\displaystyle {\ce {{A}<=> {B}}}}
d
ln
K
d
T
=
Δ でるた
U
R
T
2
{\displaystyle {\frac {d\ln K}{dT}}={\frac {\Delta U}{RT^{2}}}}
上 うえ 式 しき において、Δ でるた U は内部 ないぶ エネルギーの変化 へんか 、k は反応 はんのう の平衡 へいこう 定数 ていすう 、R は気体 きたい 定数 ていすう 、T は熱 ねつ 力学 りきがく 的 てき 温度 おんど である。実験 じっけん 結果 けっか に基 もと づいて、1889年 ねん にスヴァンテ・アレニウス は反応 はんのう の速度 そくど 定数 ていすう について同様 どうよう の式 しき を提唱 ていしょう した。
d
ln
k
d
T
=
Δ でるた
E
R
T
2
{\displaystyle {\frac {d\ln k}{dT}}={\frac {\Delta E}{RT^{2}}}}
この式 しき を積分 せきぶん するとアレニウスの式 しき
k
=
A
e
−
E
a
/
R
T
{\displaystyle k=Ae^{-E_{a}/RT}}
が導 みちび かれる(k は速度 そくど 定数 ていすう )。A は頻度 ひんど 因子 いんし (現在 げんざい は前 ぜん 指数 しすう 因子 いんし と呼 よ ばれる)と呼 よ ばれ、E a は活性 かっせい 化 か エネルギーと見 み なされる。20世紀 せいき 初頭 しょとう までに、多 おお くの科学 かがく 者 しゃ はアレニウスの式 しき を受 う け入 い れていたが、A およびE a の物理 ぶつり 学 がく 的 てき 解釈 かいしゃく はいまだ漠然 ばくぜん としていた。そのため、化学 かがく 反応 はんのう 速度 そくど 論 ろん の多 おお くの研究 けんきゅう 者 しゃ が、A とE a を化学 かがく 反応 はんのう に必要 ひつよう な分子 ぶんし 運動 うんどう と直接的 ちょくせつてき に結 むす び付 つ ける試 こころ みのなかで、どのように化学 かがく 反応 はんのう が起 お こるかについての様々 さまざま な理論 りろん を提唱 ていしょう した[要 よう 出典 しゅってん ] 。
1910年 ねん 、フランスの化学 かがく 者 しゃ ルネ・マルセラン (英語 えいご 版 ばん ) が標準 ひょうじゅん 活性 かっせい 化 か ギブズエネルギーの概念 がいねん を導入 どうにゅう した。これは
k
∝
exp
(
−
Δ でるた
‡
G
⊖
R
T
)
{\displaystyle k\propto \exp \left({\frac {-\Delta ^{\ddagger }G^{\ominus }}{RT}}\right)}
と書 か くことができる。
マルスランが彼 かれ の理論 りろん の構築 こうちく について研究 けんきゅう していたのと同 おな じ頃 ごろ 、オランダの化学 かがく 者 しゃ Philip Abraham Kohnstamm、Frans Eppo Cornelis Scheffer、Wiedold Frans Brandsmaが標準 ひょうじゅん 活性 かっせい 化 か エントロピーと標準 ひょうじゅん 活性 かっせい 化 か エンタルピーを導入 どうにゅう した。彼 かれ らは以下 いか の反応 はんのう 速度 そくど 式 しき を提唱 ていしょう した。
k
∝
exp
(
Δ でるた
‡
S
⊖
R
)
exp
(
−
Δ でるた
‡
H
⊖
R
T
)
{\displaystyle k\propto \exp \left({\frac {\Delta ^{\ddagger }S^{\ominus }}{R}}\right)\exp \left({\frac {-\Delta ^{\ddagger }H^{\ominus }}{RT}}\right)}
しかしながら、この定数 ていすう の本質 ほんしつ は不明 ふめい なままであった。
1900年 ねん 初頭 しょとう 、マックス・トラウツ (英語 えいご 版 ばん ) とウィリアム・ルイス (英語 えいご 版 ばん ) は気体 きたい 分子 ぶんし 運動 うんどう 論 ろん に基 もと づく衝突 しょうとつ 理論 りろん (英語 えいご 版 ばん ) を使 つか って反応 はんのう 速度 そくど を研究 けんきゅう した。衝突 しょうとつ 理論 りろん は、反応 はんのう する分子 ぶんし を互 たが いに衝突 しょうとつ する剛体 ごうたい 球 だま として扱 あつか う。この理論 りろん は、分子 ぶんし 間 あいだ の衝突 しょうとつ が完全 かんぜん に弾性 だんせい 的 てき であると仮定 かてい するため、エントロピー変化 へんか を無視 むし する。
ルイスは彼 かれ の取 と り扱 あつか いを以下 いか の式 しき に適用 てきよう し、実験 じっけん 値 ち とのよい一致 いっち を得 え た。
2HI → H2 + I2
しかしながら、その後 ご に同 おな じ取 と り扱 あつか いが他 た の反応 はんのう に適用 てきよう されると、理論 りろん 的 てき な結果 けっか と実験 じっけん 結果 けっか との間 あいだ には大 おお きな相違 そうい があった。
統計 とうけい 力学 りきがく はTSTの構築 こうちく において大 おお きな役割 やくわり を果 は たした。しかしながら、19世紀 せいき 中頃 なかごろ にジェームズ・クラーク・マクスウェル 、ルートヴィッヒ・ボルツマン 、レオポルト・プファウントラー (英語 えいご 版 ばん ) が分子 ぶんし 運動 うんどう と分子 ぶんし 速度 そくど の統計 とうけい 学 がく 的 てき 分布 ぶんぷ の観点 かんてん から反応 はんのう 平衡 へいこう と速度 そくど について議論 ぎろん した複数 ふくすう の論文 ろんぶん を出版 しゅっぱん した事実 じじつ を鑑 かんが みると、統計 とうけい 力学 りきがく のTSTへの応用 おうよう は非常 ひじょう にゆっくりと進展 しんてん した。
フランスの化学 かがく 者 しゃ A. Berthoudがマクスウェル=ボルツマン分布 ぶんぷ を使 つか って反応 はんのう 速度 そくど に関 かん する式 しき
d
ln
k
d
T
=
a
−
b
T
R
T
2
{\displaystyle {\frac {d\ln k}{dT}}={\frac {a-bT}{RT^{2}}}}
(a およびb はエネルギー項 こう と関連 かんれん した定数 ていすう )を得 え たのは1912年 ねん のことだった。
その2年 ねん 後 ご 、ルネ・マルセランは化学 かがく 反応 はんのう の進行 しんこう を位相 いそう 空間 くうかん における点 てん の運動 うんどう として取 と り扱 あつか うことによって本質 ほんしつ 的 てき な貢献 こうけん を行 おこな った。マルセランは次 つぎ に、ギブズの統計 とうけい 力学 りきがく 的 てき 手順 てじゅん を適用 てきよう し、以前 いぜん に熱 ねつ 力学 りきがく 的 てき 考察 こうさつ から自身 じしん が得 え ていたものと似 に た式 しき を得 え た。
1915年 ねん 、イギリスの物理 ぶつり 学者 がくしゃ James Riceが重要 じゅうよう な貢献 こうけん を行 おこな った。自身 じしん の統計 とうけい 解析 かいせき に基 もと づき、Riceは反応 はんのう 速度 そくど が「critical increment」(臨界 りんかい 増量 ぞうりょう )に比例 ひれい すると結論 けつろん 付 つ けた。彼 かれ の着想 ちゃくそう はリチャード・チェイス・トールマン によってさらに発展 はってん した。1919年 ねん 、オーストリアの物理 ぶつり 学者 がくしゃ カール・フェルディナント・ヘルツフェルト (英語 えいご 版 ばん ) は統計 とうけい 力学 りきがく を平衡 へいこう 定数 ていすう に、そして運動 うんどう 理論 りろん を二 に 原子 げんし 分子 ぶんし の可逆 かぎゃく 的 てき 解離 かいり についての逆 ぎゃく 反応 はんのう の速度 そくど 定数 ていすう k −1 に適用 てきよう した[7] 。
AB
⇌
k
−
1
k
1
A
+
B
{\displaystyle {\ce {AB <=>[k_1][k_{-1}] {A}+ {B}}}}
ヘルツフェルトは順 じゅん 反応 はんのう の速度 そくど 定数 ていすう に対 たい して以下 いか の式 しき を得 え た[8] 。
k
1
=
k
B
T
h
(
1
−
e
−
h
ν にゅー
k
B
T
)
exp
(
−
E
⊖
R
T
)
{\displaystyle k_{1}={\frac {k_{\mathrm {B} }T}{h}}\left(1-e^{-{\frac {h\nu }{k_{B}T}}}\right)\exp \left({\frac {-E^{\ominus }}{RT}}\right)}
上 うえ 式 しき において、
E
⊖
{\displaystyle \textstyle E^{\ominus }}
は絶対 ぜったい 零 れい 度 ど における解離 かいり エネルギー、k B はボルツマン定数 ていすう 、h はプランク定数 ていすう 、T は熱 ねつ 力学 りきがく 的 てき 温度 おんど 、
ν にゅー
{\displaystyle \nu }
は結合 けつごう の振動 しんどう 周波数 しゅうはすう である。この式 しき は、TSTの重要 じゅうよう な要素 ようそ である因子 いんし k B T /h が速度 そくど 方程式 ほうていしき に初 はじ めて登場 とうじょう したことから、非常 ひじょう に重要 じゅうよう である。
1920年 ねん 、アメリカの化学 かがく 者 しゃ リチャード・チェイス・トールマンがRiceのcritical incrementの着想 ちゃくそう をさらに発展 はってん させた。トールマンは、反応 はんのう のcritical increment(現在 げんざい は活性 かっせい 化 か エネルギーと呼 よ ばれる)が反応 はんのう を起 お こしている全 ぜん 分子 ぶんし の平均 へいきん エネルギーから全 すべ ての反応 はんのう 物 ぶつ 分子 ぶんし の平均 へいきん エネルギーを引 ひ いたものに等 ひと しいと結論 けつろん 付 つ けた。
ポテンシャルエネルギー面 めん の概念 がいねん はTSTの発展 はってん において非常 ひじょう に重要 じゅうよう であった。この概念 がいねん の基礎 きそ は1913年 ねん にルネ・マルセランによって築 きず かれた。マルセランは、化学 かがく 反応 はんのう の進行 しんこう が原子 げんし の運動 うんどう 量 りょう と距離 きょり の座標 ざひょう を持 も つポテンシャルエネルギー面 めん における点 てん として記述 きじゅつ できると理論 りろん 化 か した。
1931年 ねん 、ヘンリー・アイリング とマイケル・ポランニー は以下 いか の反応 はんのう に対 たい するポテンシャルエネルギー面 めん を構築 こうちく した。この面 めん は、量子力学 りょうしりきがく 的 てき 諸 しょ 原理 げんり ならびに振動 しんどう 周波数 しゅうはすう および解離 かいり エネルギーの実験 じっけん データに基 もと づく3次元 じげん 図 ず である。
H + H2 → H2 + H
アイリングとポランニーの構築 こうちく から1年 ねん 後 ご 、ハンス・ペルツァーとユージン・ウィグナー はポテンシャルエネルギー面 めん 上 じょう の反応 はんのう の進行 しんこう をたどることによって重要 じゅうよう な貢献 こうけん を行 おこな った。この成果 せいか の重要 じゅうよう 性 せい は、初 はじ めてポテンシャルエネルギー面 めん における鞍点 あんてん (鞍部 あんぶ (英語 えいご 版 ばん ) )の概念 がいねん が議論 ぎろん されたことであった。彼 かれ らは反応 はんのう の速度 そくど が鞍部 あんぶ を経 へ る系 けい の運動 うんどう によって決定 けってい される、と結論 けつろん 付 つ けた。
典型 てんけい 的 てき には、律 りつ 速 そく 点 てん (最低 さいてい 鞍点 あんてん )は初期 しょき の基底 きてい 状態 じょうたい と同 おな じエネルギー面 めん 上 じょう に位置 いち している、と仮定 かてい されてきた。しかしながら、最近 さいきん 、半導体 はんどうたい および絶縁 ぜつえん 体 たい 中 ちゅう で起 お こる過程 かてい についてはこれは誤 あやま っているかもしれないことが明 あき らかにされた。これらの材料 ざいりょう 中 ちゅう では、初期 しょき 励起 れいき 状態 じょうたい が、初期 しょき 基底 きてい 状態 じょうたい の面 めん 上 じょう の鞍点 あんてん よりも低 ひく い鞍点 あんてん を通過 つうか することができる[9] 。
アイリング 、ポランニー 、およびエヴァンス によって導入 どうにゅう された最 もっと も重要 じゅうよう な要素 ようそ の1つが、活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい が反応 はんのう 物 ぶつ と擬 なずらえ 平衡 へいこう 状態 じょうたい にある、という考 かんが え方 かた であった。その結果 けっか 、反応 はんのう 速度 そくど は、これらの複 ふく 合体 がったい の濃度 のうど に複 ふく 合体 がったい が生成 せいせい 物 ぶつ へと変換 へんかん される周波数 しゅうはすう (k B T /h )を乗 じょう じたものに正 せい 比例 ひれい する。下部 かぶ に、アイリングの式 しき の関数 かんすう 形式 けいしき について厳密 げんみつ でない妥当 だとう 性 せい の主張 しゅちょう (plausibility argument)が示 しめ される。しかしながら、鍵 かぎ となる統計 とうけい 力学 りきがく 的 てき 因子 いんし k B T /h は正当 せいとう 化 か されず、下 した に示 しめ されている論拠 ろんきょ はアイリングの式 しき の真 しん の「導出 どうしゅつ 」を構成 こうせい しない[10] 。
擬 なずらえ 平衡 へいこう は古典 こてん 的 てき な化学 かがく 平衡 へいこう とは異 こと なるが、類似 るいじ した熱 ねつ 力学 りきがく 的 てき 取扱 とりあつか いを使 つか って記述 きじゅつ することができる[5] [11] 。以下 いか の反応 はんのう について考 かんが える。
A
+
B
↽
−
−
⇀
[
AB
]
‡
⟶
P
{\displaystyle {\ce {{A}+{B}<=>{[AB]^{\ddagger }}->{P}}}}
図 ず 2: ポテンシャルエネルギー図 ず
ここでは、活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい [AB]‡ を含 ふく む系 けい 中 ちゅう の全 すべ ての化学 かがく 種 しゅ 間 あいだ で完全 かんぜん な平衡 へいこう が達成 たっせい される。統計 とうけい 力学 りきがく を使 つか って、[AB]‡ の濃度 のうど はAとBの濃度 のうど の観点 かんてん から計算 けいさん することができる。
TSTは、反応 はんのう 物 ぶつ と生成 せいせい 物 ぶつ が互 たが いに平衡 へいこう 状態 じょうたい にない時 とき でさえも、活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい が反応 はんのう 物 ぶつ と擬 なずらえ 平衡 へいこう 状態 じょうたい にあると仮定 かてい する。図 ず 2で示 しめ されているように、いかなる瞬間 しゅんかん においても、少数 しょうすう の活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい が存在 そんざい し、一部 いちぶ は直近 ちょっきん の過去 かこ には反応 はんのう 物 ぶつ であり、これは [ABl ]‡ と呼 よ ばれる(左 ひだり から右 みぎ へ移動 いどう するため)。残 のこ りは直近 ちょっきん の過去 かこ には生成 せいせい 物 ぶつ 分子 ぶんし であった([ABr ]‡ )。
TSTでは、活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい 2方向 ほうこう の流 なが れは互 たが い独立 どくりつ していると仮定 かてい される。すなわち、全 すべ ての生成 せいせい 物 ぶつ 分子 ぶんし が反応 はんのう 系 けい から突然 とつぜん 取 と り除 のぞ かれたとすると、[ABr ]‡ の流 なが れは止 と まるが、左 ひだり から右 みぎ への流 なが れはまだ存在 そんざい する。したがって、技術 ぎじゅつ 的 てき に正 ただ しく言 い えば、反応 はんのう 物 ぶつ は [ABl ]‡ (直近 ちょっきん の過去 かこ に反応 はんのう 物 ぶつ だった活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい )のみと平衡 へいこう 状態 じょうたい にある。
活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい はエネルギーのボルツマン分布 ぶんぷ に従 したが わないが、「平衡 へいこう 定数 ていすう 」は活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい が従 したが う分布 ぶんぷ から導出 どうしゅつ することができる。この擬 なずらえ 平衡 へいこう ついての平衡 へいこう 定数 ていすう K ‡ は
K
‡
=
[
AB
]
‡
[
A
]
[
B
]
{\displaystyle K^{\ddagger }={\frac {\ce {[AB]^{\ddagger }}}{\ce {[A][B]}}}}
と書 か くことができる。
そのため、遷移 せんい 状態 じょうたい AB‡ の濃度 のうど は
[
AB
]
‡
=
K
‡
[
A
]
[
B
]
{\displaystyle [{\ce {AB}}]^{\ddagger }=K^{\ddagger }[{\ce {A}}][{\ce {B}}]}
である。
したがって、生成 せいせい 物 ぶつ が生成 せいせい する速度 そくど 式 しき は
d
[
P
]
d
t
=
k
‡
[
AB
]
‡
=
k
‡
K
‡
[
A
]
[
B
]
=
k
[
A
]
[
B
]
{\displaystyle {\frac {d[{\ce {P}}]}{dt}}=k^{\ddagger }[{\ce {AB}}]^{\ddagger }=k^{\ddagger }K^{\ddagger }[{\ce {A}}][{\ce {B}}]=k[{\ce {A}}][{\ce {B}}]}
となる。上 うえ 式 しき において、速度 そくど 定数 ていすう k は
k
=
k
‡
K
‡
{\displaystyle k=k^{\ddagger }K^{\ddagger }}
で与 あた えられる。
ここで、k ‡ は活性 かっせい 複 ふく 合体 がったい を生成 せいせい 物 ぶつ へと変化 へんか させるのに必要 ひつよう な振動 しんどう モードの周波数 しゅうはすう に正 せい 比例 ひれい する; この振動 しんどう モードの周波数 しゅうはすう は
ν にゅー
{\displaystyle \nu }
である。全 すべ ての振動 しんどう が必 かなら ずしも生成 せいせい 物 ぶつ の形成 けいせい をもたらさず、透過 とうか 係数 けいすう と呼 よ ばれる比例 ひれい 定数 ていすう
κ かっぱ
{\displaystyle \kappa }
がこの効果 こうか を説明 せつめい するために導入 どうにゅう される。k ‡ は
k
‡
=
κ かっぱ
ν にゅー
{\displaystyle k^{\ddagger }=\kappa \nu }
と書 か くことができる。
平衡 へいこう 定数 ていすう K ‡ について、統計 とうけい 力学 りきがく は以下 いか の温度 おんど 依存 いぞん 式 しき をもたらす。
K
‡
=
k
B
T
h
ν にゅー
K
‡
′
{\displaystyle K^{\ddagger }={\frac {k_{B}T}{h\nu }}K^{\ddagger '}}
(
K
‡
′
=:
e
−
Δ でるた
G
‡
R
T
{\displaystyle K^{\ddagger '}=:e^{\frac {-\Delta G^{\ddagger }}{RT}}}
)
k ‡ とK ‡ についての新 あたら しい式 しき を組 く み合 あ わせると、新 あたら しい速度 そくど 定数 ていすう 式 しき を
k
=
k
‡
K
‡
=
κ かっぱ
k
B
T
h
e
−
Δ でるた
G
‡
R
T
=
κ かっぱ
k
B
T
h
K
‡
′
{\displaystyle k=k^{\ddagger }K^{\ddagger }=\kappa {\frac {k_{B}T}{h}}e^{\frac {-\Delta G^{\ddagger }}{RT}}=\kappa {\frac {k_{B}T}{h}}K^{\ddagger '}}
と書 か くことができる。
定義 ていぎ により、Δ でるた G ‡ = Δ でるた H ‡ –T Δ でるた S ‡ であるため、この速度 そくど 定数 ていすう 式 しき は以下 いか のように展開 てんかい でき、アイリングの式 しき の別 べつ 形式 けいしき が与 あた えられる。
k
=
κ かっぱ
k
B
T
h
e
Δ でるた
S
‡
R
e
−
Δ でるた
H
‡
R
T
{\displaystyle k=\kappa {\frac {k_{B}T}{h}}e^{\frac {\Delta S^{\ddagger }}{R}}e^{\frac {-\Delta H^{\ddagger }}{RT}}}
.
正 ただ しい次元 じげん 性 せい のため、この式 しき は単 たん 分子 ぶんし 的 てき ではない反応 はんのう のための追加 ついか 因子 いんし (c ⊖ )1–m を持 も つ必要 ひつよう がある。
k
=
κ かっぱ
k
B
T
h
e
Δ でるた
S
‡
R
e
−
Δ でるた
H
‡
R
T
(
c
⊖
)
1
−
m
{\displaystyle k=\kappa {\frac {k_{B}T}{h}}e^{\frac {\Delta S^{\ddagger }}{R}}e^{\frac {-\Delta H^{\ddagger }}{RT}}(c^{\ominus })^{1-m}}
上 うえ 式 しき において、c ⊖ は標準 ひょうじゅん 濃度 のうど 1 mol L–1 、m は分子 ぶんし 度 ど である[12] 。
遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん からの推論 すいろん とアレニウスの理論 りろん との関係 かんけい [ 編集 へんしゅう ]
遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん から得 え られた速度 そくど 定数 ていすう 式 しき は、実験 じっけん 的 てき な反応 はんのう 速度 そくど データを使 つか ってΔ でるた G ‡ 、Δ でるた H ‡ 、Δ でるた S ‡ 、そしてΔ でるた V ‡ (活性 かっせい 化 か の体積 たいせき )さえも計算 けいさん するために使 つか うことができる。これらのいわゆる「活性 かっせい 化 か パラメータ」は、エネルギー容量 ようりょう と秩序 ちつじょ 度 ど など出発 しゅっぱつ 物質 ぶっしつ と比較 ひかく した遷移 せんい 状態 じょうたい の特性 とくせい について洞察 どうさつ を与 あた え、物理 ぶつり 有機 ゆうき 化学 かがく において反応 はんのう 機構 きこう を解明 かいめい するための標準 ひょうじゅん 的 てき ツールとなった。活性 かっせい 化 か 自由 じゆう エネルギーΔ でるた G ‡ は遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん において
Δ でるた
G
‡
=
−
R
T
ln
K
‡
′
{\displaystyle \Delta G^{\ddagger }=-RT\ln K^{\ddagger '}}
を満 み たすようなエネルギーとして「定義 ていぎ 」される。パラメータΔ でるた H ‡ およびΔ でるた S ‡ は次 つぎ に異 こと なる温度 おんど でΔ でるた G ‡ = Δ でるた H ‡ – T Δ でるた S ‡ を決定 けってい することによって推定 すいてい される。
アイリングの式 しき とアレニウスの式 しき の関数 かんすう 形式 けいしき は似 に ているため、活性 かっせい 化 か パラメータをアレニウスの表現 ひょうげん 方法 ほうほう の活性 かっせい 化 か エネルギーおよび前 ぜん 指数 しすう 因子 いんし とつい関連付 かんれんづ けたくなる。しかしながら、アレニウスの式 しき は実験 じっけん データから導 みちび かれたものであり、反応 はんのう 機構 きこう における遷移 せんい 状態 じょうたい の数 かず に関係 かんけい なく、2つのパラメータのみを使 つか って巨視的 きょしてき 速度 そくど をモデル化 か する。対照 たいしょう 的 てき に、活性 かっせい 化 か パラメータは、少 すく なくとも原理 げんり 的 てき には、多 た 段階 だんかい 機構 きこう の全 すべ ての遷移 せんい 状態 じょうたい について見出 みいだ すことができる。したがって、活性 かっせい 化 か エンタルピーΔ でるた H ‡ はしばしばアレニウスの活性 かっせい 化 か エネルギーE a と同一 どういつ 視 し されるものの、これらは等価 とうか ではない。凝縮 ぎょうしゅく 相 しょう (例 たと えば溶液 ようえき 相 しょう )または単 たん 分子 ぶんし 的 てき 気 き 相反 あいはん 応 おう 段階 だんかい について、E a = Δ でるた H ‡ + RT である。他 た の気 き 相反 あいはん 応 おう では、E a = Δ でるた H ‡ + (1 − Δ でるた n ‡ )RT である。(Δ でるた n ‡ は遷移 せんい 状態 じょうたい を形成 けいせい する際 さい の分子 ぶんし 数 すう の変化 へんか )[13] 。したがって、二 に 分子 ぶんし 気 き 相 しょう 過程 かてい では、E a = Δ でるた H ‡ + 2RT となる。
活性 かっせい 化 か エントロピーΔ でるた S ‡ は、(反応 はんのう に関与 かんよ するあるいは反応 はんのう によって摂動 せつどう を受 う ける溶媒 ようばい 分子 ぶんし を含 ふく む)遷移 せんい 状態 じょうたい が出発 しゅっぱつ 物質 ぶっしつ を比較 ひかく してより無秩序 むちつじょ である程度 ていど を与 あた える。これは、アレニウスの式 しき の前 ぜん 指数 しすう 因子 いんし A の具体 ぐたい 的 てき な解釈 かいしゃく を与 あた える; 単 たん 分子 ぶんし 的 てき 、一 いち 段階 だんかい 過程 かてい では、大 おお まかな等価 とうか 性 せい A = (k B T /h ) exp(1 + Δ でるた S ‡ /R ) が成 な り立 た つ(二 に 分子 ぶんし 的 てき 気 き 相反 あいはん 応 おう では A = (k B T /h ) exp(2 + Δ でるた S ‡ /R ))。単 たん 分子 ぶんし 過程 かてい では、負 まけ の値 ね は基底 きてい 状態 じょうたい よりも秩序 ちつじょ だった、硬 かた い遷移 せんい 状態 じょうたい を示 しめ すのに対 たい して、正 せい の値 ね は遷移 せんい 状態 じょうたい がより緩 ゆる い結合 けつごう とより大 おお きな配 はい 座 ざ 的 てき 自由 じゆう 度 ど の両方 りょうほう またはいずれか一方 いっぽう を持 も っていることを反映 はんえい している。次元 じげん 性 せい の理由 りゆう のため、二 に 分子 ぶんし 的 てき またはそれ以上 いじょう の反応 はんのう は選択 せんたく した標準 ひょうじゅん 状態 じょうたい (具体 ぐたい 的 てき に言 い うと、標準 ひょうじゅん 濃度 のうど )に依存 いぞん したΔ でるた S ‡ 値 ね を持 も つことに注意 ちゅうい することが重要 じゅうよう である。近年 きんねん のほとんどの文献 ぶんけん において、1 mol L–1 (1モーラー)が選 えら ばれる。この選択 せんたく はモル量 りょう と体積 たいせき についての単位 たんい の我々 われわれ の定義 ていぎ に基 もと づく人間 にんげん による産物 さんぶつ であるため、単一 たんいつ の反応 はんのう についてのΔ でるた S ‡ の大 おお きさと符号 ふごう はそれ自体 じたい では無意味 むいみ である。同 おな じ標準 ひょうじゅん 状態 じょうたい で決定 けってい された「既知 きち の」(または想定 そうてい される)機構 きこう の参照 さんしょう 反応 はんのう の値 ね との比較 ひかく のみが妥当 だとう である[14] 。
活性 かっせい 化 か 体積 たいせき は、(温度 おんど 一定 いってい での)圧力 あつりょく に関 かん するΔ でるた G ‡ の偏 へん 微分 びぶん を議論 ぎろん することによって見出 みいだ される。
Δ でるた
V
‡
:=
(
∂
Δ でるた
G
‡
/
∂
P
)
T
{\displaystyle \Delta V^{\ddagger }:=(\partial \Delta G^{\ddagger }/\partial P)_{T}}
これは、遷移 せんい 状態 じょうたい の大 おお きさ、したがって結合 けつごう の度合 どあ いに関 かん する情報 じょうほう を与 あた える。結合 けつごう 的 てき 機構 きこう は負 まけ の活性 かっせい 化 か 体積 たいせき をおそらく持 も つのに対 たい して、解離 かいり 的 てき 機構 きこう は正 せい の値 ね をおそらく持 も つ。
平衡 へいこう 定数 ていすう と順 じゅん および逆 ぎゃく 速度 そくど 定数 ていすう との間 あいだ の関係 かんけい
K
=
k
1
/
k
−
1
{\displaystyle K=k_{1}/k_{-1}}
を考 かんが えると、アイリングの式 しき は
Δ でるた
G
∘
=
Δ でるた
G
1
‡
−
Δ でるた
G
−
1
‡
{\displaystyle \Delta G^{\circ }=\Delta G_{1}^{\ddagger }-\Delta G_{-1}^{\ddagger }}
ということになる。
TSTのもう1つの暗示 あんじ はカーティン–ハメットの原理 げんり (英語 えいご 版 ばん ) である: Rから2つの生成 せいせい 物 ぶつ AおよびBが得 え られる速度 そくど 論 ろん 的 てき に支配 しはい (制御 せいぎょ )された反応 はんのう (英語 えいご 版 ばん ) の生成 せいせい 物 ぶつ 比 ひ は生成 せいせい 物 ぶつ をもたらす各 かく 遷移 せんい 状態 じょうたい のエネルギー差 さ を反映 はんえい する(それぞれの生成 せいせい 物 ぶつ に単一 たんいつ の遷移 せんい 状態 じょうたい を仮定 かてい する)。
[
A
]
[
B
]
=
e
−
Δ でるた
Δ でるた
G
‡
/
R
T
{\displaystyle {\frac {[\mathrm {A} ]}{[\mathrm {B} ]}}=e^{-\Delta \Delta G^{\ddagger }/RT}}
(
Δ でるた
Δ でるた
G
‡
=
Δ でるた
G
A
‡
−
Δ でるた
G
B
‡
{\displaystyle \Delta \Delta G^{\ddagger }=\Delta G_{\mathrm {A} }^{\ddagger }-\Delta G_{\mathrm {B} }^{\ddagger }}
)
(上記 じょうき のΔ でるた Δ でるた G ‡ についての式 しき では、もしAおよびBが平衡 へいこう 状態 じょうたい にある2つの異 こと なる化学 かがく 種 しゅ SA およびSB から形成 けいせい されるならば追加 ついか の
Δ でるた
G
∘
=
G
S
A
∘
−
G
S
B
∘
{\displaystyle \Delta G^{\circ }=G_{\mathrm {S} _{\mathrm {A} }}^{\circ }-G_{\mathrm {S} _{\mathrm {B} }}^{\circ }}
項 こう が存在 そんざい する。)
1.36ルール
熱 ねつ 力学 りきがく 的 てき に支配 しはい された反応 はんのう では、生成 せいせい 物 ぶつ AとBの自由 じゆう エネルギーにおいてRT ln 10 ≈ (1.987 × 10–3 kcal/mol K)(298 K)(2.303) ≈ 1.36 kcal/mol の差 さ 毎 ごと に室温 しつおん (298 K )での選択 せんたく 性 せい が10倍 ばい になる。
[
A
]
[
B
]
=
10
−
Δ でるた
G
∘
/
(
1.36
k
c
a
l
/
m
o
l
)
{\displaystyle {\frac {[\mathrm {A} ]}{[\mathrm {B} ]}}=10^{-\Delta G^{\circ }/(1.36\ \mathrm {kcal/mol} )}}
(
Δ でるた
G
∘
=
G
A
∘
−
G
B
∘
{\displaystyle \Delta G^{\circ }=G_{\mathrm {A} }^{\circ }-G_{\mathrm {B} }^{\circ }}
)
類似 るいじ 的 てき に、活性 かっせい 化 か 自由 じゆう エントロピーの差 さ 1.36 kcal/mol毎 ごと に室温 しつおん での速度 そくど 論 ろん 支配 しはい 過程 かてい についての選択 せんたく 性 せい (英語 えいご 版 ばん ) は10倍 ばい になる[15] 。
[
A
]
[
B
]
=
10
−
Δ でるた
Δ でるた
G
‡
/
(
1.36
k
c
a
l
/
m
o
l
)
{\displaystyle {\frac {[\mathrm {A} ]}{[\mathrm {B} ]}}=10^{-\Delta \Delta G^{\ddagger }/(1.36\ \mathrm {kcal/mol} )}}
(
Δ でるた
Δ でるた
G
‡
=
Δ でるた
G
A
‡
−
Δ でるた
G
B
‡
{\displaystyle \Delta \Delta G^{\ddagger }=\Delta G_{\mathrm {A} }^{\ddagger }-\Delta G_{\mathrm {B} }^{\ddagger }}
).
概算 がいさん
アイリングの式 しき を使 つか うと、特定 とくてい の温度 おんど でのΔ でるた G ‡ 、一 いち 次 じ 速度 そくど 定数 ていすう 、および反応 はんのう 半減 はんげん 期 き の間 あいだ に直接的 ちょくせつてき な関係 かんけい が存在 そんざい する。298 K では、Δ でるた G ‡ = 23 kcal/mol の反応 はんのう はk ≈ 8.4 × 10–5 s–1 の速度 そくど 定数 ていすう とt 1/2 ≈ 2.3時 じ 間 あいだ の半減 はんげん 期 き を持 も つ。これらの数字 すうじ はしばしばk ~ 10–4 s–1 とt 1/2 ~ 2 h に丸 まる められる。したがって、この大 おお きさの活性 かっせい 化 か 自由 じゆう エネルギーは室温 しつおん 、一 いち 晩 ばん で終了 しゅうりょう まで進行 しんこう する典型 てんけい 的 てき な反応 はんのう に対応 たいおう する。比較 ひかく のため、シクロヘキサン のいす反転 はんてん (英語 えいご 版 ばん ) はおよそ11 kcal/molのΔ でるた G ‡ とk ~ 105 s–1 の速度 そくど 定数 ていすう を有 ゆう する。したがって、これは室温 しつおん で(NMR時間 じかん スケールよりも速 はや く)迅速 じんそく に起 お こる動的 どうてき 過程 かてい となる。反対 はんたい 側 がわ では、2-ブテンのシス/トランス異性 いせい 化 か はおよそ60 kcal/molのΔ でるた G ‡ を持 も ち、298 Kでk ~ 10–31 s–1 に相当 そうとう する。これは無視 むし できる速度 そくど である。半減 はんげん 期 き は12桁 けた で、宇宙 うちゅう の年齢 ねんれい よりも長 なが い[16] 。
一般 いっぱん に、TSTは研究 けんきゅう 者 しゃ らに化学 かがく 反応 はんのう がどのように起 お こるかを理解 りかい するための概念的 がいねんてき 基盤 きばん を与 あた えてきた。たとえ本 ほん 理論 りろん が広 ひろ く適用 てきよう できるとしても、限界 げんかい がある。例 たと えば、多 た 段階 だんかい 反応 はんのう の個々 ここ の素 す 過程 かてい に適用 てきよう する時 とき 、本 ほん 理論 りろん は個々 ここ の中 なか 間 あいだ 体 たい が次 つぎ の段階 だんかい に進 すす む前 まえ にエネルギーのボルツマン分布 ぶんぷ に達 たっ するのに十分 じゅうぶん 長寿 ちょうじゅ 命 いのち であること仮定 かてい する。中間 なかま 体 たい が非常 ひじょう に短 たん 寿命 じゅみょう である時 とき 、TSTは破綻 はたん する。こういった場合 ばあい 、反応 はんのう 物 ぶつ から中間 なかま 体 たい への反応 はんのう 軌跡 きせき の運動 うんどう 量 りょう が生成 せいせい 物 ぶつ の選択 せんたく 性 せい に影響 えいきょう を及 およ ぼす可能 かのう 性 せい がある(こういった反応 はんのう の一 いち 例 れい が、Anslynとドウアティ (英語 えいご 版 ばん ) の教科書 きょうかしょ で示 しめ されているジアゾビシクロペンタン類 るい の熱 ねつ 分解 ぶんかい である)。
遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん は、原子核 げんしかく が古典 こてん 力学 りきがく に従 したが って振 ふ る舞 ま うという仮定 かてい にも基 もと づく[17] 。原子 げんし あるいは分子 ぶんし が遷移 せんい 構造 こうぞう を形成 けいせい するために十分 じゅうぶん なエネルギーを持 も って衝突 しょうとつ しない限 かぎ り、反応 はんのう は起 お こらない、と仮定 かてい される。しかしながら、量子力学 りょうしりきがく によれば、有限 ゆうげん の量 りょう のエネルギーを持 も ついかなる障壁 しょうへき についても、粒子 りゅうし が障壁 しょうへき の向 む こう側 がわ へトンネリングできる可能 かのう 性 せい が存在 そんざい する(トンネル効果 こうか )。化学 かがく 反応 はんのう に関 かん してこれは、分子 ぶんし がエネルギー障壁 しょうへき を越 こ えるのに十分 じゅうぶん なエネルギーを持 も って衝突 しょうとつ しないとしても反応 はんのう する可能 かのう 性 せい が存在 そんざい することを意味 いみ する[18] 。この効果 こうか は大 おお きな活性 かっせい 化 か エネルギーを持 も つ反応 はんのう については無視 むし できるが、トンネリング確 かく 率 りつ は障壁 しょうへき の高 たか さが低 ひく くなるほど大 おお きくなるため、比較的 ひかくてき 低 てい エネルギー障壁 しょうへき を持 も つ反応 はんのう については重要 じゅうよう な現象 げんしょう となる。
遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん は高温 こうおん での一部 いちぶ の反応 はんのう について破綻 はたん する。本 ほん 理論 りろん は、反応 はんのう 系 けい がポテンシャルエネルギー面 めん の最低 さいてい エネルギー鞍点 あんてん を通過 つうか することを仮定 かてい する。この描写 びょうしゃ は比較的 ひかくてき 低温 ていおん で起 お こる反応 はんのう についてはつじつまが合 あ っているが、高温 こうおん では分子 ぶんし はより高 たか いエネルギー振動 しんどう モードを占有 せんゆう する。それらの運動 うんどう はより複雑 ふくざつ となり、衝突 しょうとつ の結果 けっか として最低 さいてい エネルギー鞍点 あんてん から遠 とお く離 はな れた遷移 せんい 状態 じょうたい がもたらされるかもしれない。遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん からのこのずれは二 に 原子 げんし 水素 すいそ と水素 すいそ ラジカルとの間 あいだ の単純 たんじゅん な交換 こうかん 反応 はんのう においてさえも観測 かんそく される[19] 。
これらの限界 げんかい を考慮 こうりょ して、複数 ふくすう の遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん の代替 だいたい 理論 りろん が提唱 ていしょう されてきた。これらの理論 りろん についての簡潔 かんけつ な解説 かいせつ を以下 いか に示 しめ す。
小正 おばさ 準 じゅん (ミクロカノニカル)変 へん 分 ぶん 型 がた TST、正 せい 準 じゅん (カノニカル)変 へん 分 ぶん 型 がた TST(英語 えいご 版 ばん ) 、および改良 かいりょう 正 ただし 準 じゅん 変 へん 分 ぶん 型 がた TSTといった遷移 せんい 状態 じょうたい が必 かなら ずしも鞍点 あんてん に位置 いち していないTSTは、一般 いっぱん 化 か 遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん と呼 よ ばれる。
遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん の根本 こんぽん 的 てき な欠陥 けっかん は、反応 はんのう 物 ぶつ から生成 せいせい 物 ぶつ またはその逆 ぎゃく の反 はん 応 おう として遷移 せんい 状態 じょうたい の全 すべ ての交差 こうさ を数 かぞ えることである。現実 げんじつ には、分子 ぶんし はこの「分割 ぶんかつ 面 めん 」を越 こ えて引 ひ き換 か えすかもしれず、あるいは複 ふく 数 すう 回 かい 越 こ えて、本当 ほんとう に一 いち 度 ど しか反応 はんのう しないかもしれない。そのため、未 み 補正 ほせい のTSTは速度 そくど 係数 けいすう の上 うえ 界 かい しか与 あた えない、と言 い われる。これを補正 ほせい するため、変 へん 分 ぶん 型 がた 遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん はそれぞれの固定 こてい エネルギーについて反応 はんのう 速度 そくど を最小 さいしょう 化 か するためにうまくいく反応 はんのう を定義 ていぎ する分割 ぶんかつ 面 めん の位置 いち を変動 へんどう させる[20] 。この小正 おばさ 準 じゅん 的 てき 取 と り扱 あつか いで得 え られた速度 そくど 式 しき はエネルギーにわたって積分 せきぶん することができる。これは、正 せい 準 じゅん (熱 ねつ 的 てき )速度 そくど を与 あた えるために、エネルギー状態 じょうたい にわたる統計 とうけい 学 がく 的 てき 分布 ぶんぷ を考慮 こうりょ に入 い れている。
特定 とくてい の温度 おんど における速度 そくど 定数 ていすう を最小 さいしょう 化 か するために分割 ぶんかつ 面 めん の位置 いち を変動 へんどう させる遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん の発展 はってん 。
改良 かいりょう 正 ただし 準 じゅん 変 へん 分 ぶん 型 がた TST[ 編集 へんしゅう ]
正 せい 準 じゅん 変 へん 分 ぶん 型 がた 遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん の修正 しゅうせい 。閾値エネルギーより下 した のエネルギーにつしては、分割 ぶんかつ 面 めん の位置 いち は小正 おばさ 準 じゅん 閾値エネルギーのものとされる。これにより、閾値エネルギー未満 みまん ならば、速度 そくど 定数 ていすう への寄与 きよ はゼロになる。次 つぎ に、より高 たか いエネルギーを持 も つ反応 はんのう 物 ぶつ によって成 な される速度 そくど 定数 ていすう への寄与 きよ を最小 さいしょう 化 か するように妥協 だきょう 分割 ぶんかつ 面 めん が選択 せんたく される。
2つのスピン状態 じょうたい が同時 どうじ に関与 かんよ する反応 はんのう へのTSTの拡張 かくちょう は非 ひ 断熱 だんねつ 遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん (英語 えいご 版 ばん ) (NA-TST)と呼 よ ばれる。
振動 しんどう 摂動 せつどう 理論 りろん を使 つか って、トンネリングや変 へん 分 ぶん 効果 こうか といった効果 こうか を半 はん 古典 こてん 的 てき 遷移 せんい 状態 じょうたい 理論 りろん (英語 えいご 版 ばん ) (SCTST)形式 けいしき 内 ない で説明 せつめい することができる。
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