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さとさつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

さとさつ(きょうさつ、あさ: 향찰ヒャンチャル)とは、漢字かんじによる朝鮮ちょうせん表記ひょうき方法ほうほうひとつである。おもしん時代じだい歌謡かようであるさと表記ひょうきもちいられた。古代こだい朝鮮ちょうせん資料しりょうひとつとして重要じゅうよう位置いちめる。

概要がいよう

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さとさつ漢字かんじおとくん利用りようして古代こだい朝鮮ちょうせん表記ひょうきする方式ほうしきで、額田王ぬかたのおおきみの「熟田じゅくでんに」のうた(『万葉集まんようしゅうだい8ばん)にられるような、訓読くんよみの漢字かんじ万葉仮名まんようがな併用へいようする方式ほうしき同様どうようのものである。漢文かんぶん解釈かいしゃくのための補助ほじょ文字もじである口訣くけつとはことなり、さとさつはそれだけで朝鮮ちょうせんぶん完全かんぜん表記ひょうきすることができる。ただし、さとさつのうち、万葉仮名まんようがな対応たいおうするもの(表音ひょうおん文字もじとして使つかわれた漢字かんじ)だけでは朝鮮ちょうせん表記ひょうきができなかった。これは朝鮮ちょうせん音節おんせつ構造こうぞう複雑ふくざつなことが一因いちいんである。

さとさつ資料しりょうきわめてかぎられており、さと25しゅしゅたる資料しりょうである。その内訳うちわけは、『さんこくのここと』(1281ねん)におさめられたしん時代じだいさと14しゅ、『ひとしつて』(1075ねん)におさめられた高麗こうらい時代じだいさと11しゅである。そのこううらら睿宗の「悼しょう」1しゅ、『さとやく救急きゅうきゅうかた』(1236ねん)にあらわれるくすり朝鮮ちょうせんめいなどもさとさつ資料しりょうとなる。

表記ひょうきもちいられる漢字かんじは、訓読くんどく音読おんどくとがある。がいして体言たいげん用言ようげん語幹ごかんといった単語たんご実質じっしつてき部分ぶぶん訓読くんどく助詞じょし語尾ごびなど単語たんご文法ぶんぽうてき意味いみにな部分ぶぶん音読おんどくである。たとえば、「われころも」(わたしの)は「われ」が訓読くんどく、「ころも」が音読おんどくである。訓読くんどくの「われ」はその漢字かんじおん)とは無関係むかんけいに「われ」のあらわし(おそらく「」のようにんだものと推測すいそくされる)、音読おんどくの「ころも」は「ころも」というとは無関係むかんけいに「」というおとあらわしている(この場合ばあいぞくかく語尾ごびとしてもちいている)。また、「よるおと」(よる)は「よる」が訓読くんどくであり、「おと」がよる朝鮮ちょうせん」の末子まっしおん」を表示ひょうじする音読おんどくである。このように単語たんご末子まっしおん音読おんどく表示ひょうじすることを「すえおん表記ひょうき」という。

解読かいどくじょう難点なんてん

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さとさつ訓読くんどくは、それを実際じっさいにどのように発音はつおんしたかをるのが困難こんなんである。かりに「はる」と表記ひょうきされていた場合ばあい、この訓読くんどくが「はる」のあらわすのは明確めいかくであるが、それが現代げんだい朝鮮ちょうせん中期ちゅうき朝鮮ちょうせんのように「」と発音はつおんされたことを積極せっきょくてき証明しょうめいすることができない。したがって、訓読くんどくにおいてはつねにこのような確定かくてい要素ようそがつきまとう。訓読くんどくみを明確めいかく確定かくていしうるのは、上述じょうじゅつよるおと」のようにすえおと表記ひょうきがあるなど、暗示あんじてきにでもなんらかのかたちおとしめされている場合ばあいかぎられる。

このようにさとさつ表記ひょうきほう確実かくじつ要素ようそおおいため、その語形ごけい推定すいていするには朝鮮ちょうせん漢字かんじおんたいするふか知識ちしき理解りかいもとづき、慎重しんちょうおこなう必要ひつようがある。

さとさつれい

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はじめぶん(1998)をもとにして、さとしょよう」の冒頭ぼうとうとその解釈かいしゃくいちれいげる。1.がさとさつ、2.が解釈かいしゃくれいマ字まじ福井ふくいれいしきこぼし)、3.が日本語にほんごやくである。

  1. 東京とうきょうあかりがつ良夜りょうやにゅう遊行ゆぎょう如可
  2. 東京とうきょう b@rgi d@ra bam dyri nornidaga
  3. 東京とうきょうあかるきつき夜更よふけまであそびて

このぶん解釈かいしゃくにおいては、「b@rgi(あかり)」における「-i」を連体れんたいがたるのは妥当だとうか(中期ちゅうき朝鮮ちょうせん:-n)、しょかくりょう」は「-a」とんでしかるべきか(中期ちゅうき朝鮮ちょうせんしょかく-애/-에)、「遊行ゆぎょう如可」は「nornidaga(놀니다가)」とてよいか(現代げんだい朝鮮ちょうせん노니다가)など、こまかいてんいま不明ふめいてんおおい。

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 小倉おぐら進平しんぺい(1929;1974) 「鄕歌およ吏讀りと研究けんきゅう」,『小倉おぐら進平しんぺい博士はかせ著作ちょさくしゅういち)』,京都きょうと大學だいがく國文こくぶん學會がっかい
  • きむかん鎭(1980) “鄕歌解讀かいどくほう研究けんきゅう” ,서울だい學校がっこう 出版しゅっぱん
  • みなみゆたか鉉(1981) “表記ひょうきほう 研究けんきゅう” ,だん國大こくだい學校がっこう 出版しゅっぱん
  • はじめぶん(1998) “しんていばん 國語こくご概説がいせつ”,태학사