株式会社かぶしきがいしゃ監査かんさとうかんする商法しょうほう特例とくれいかんする法律ほうりつ

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株式会社かぶしきがいしゃ監査かんさとうかんする商法しょうほう特例とくれいかんする法律ほうりつ
日本国政府国章(準)
日本にっぽん法令ほうれい
通称つうしょう略称りゃくしょう 商法しょうほう特例とくれいほうしょうとくほう
法令ほうれい番号ばんごう 昭和しょうわ49ねん4がつ2にち法律ほうりつ22ごう
種類しゅるい 商法しょうほう
効力こうりょく 廃止はいし
成立せいりつ 1974ねん3がつ14にち
公布こうふ 1974ねん4がつ2にち
施行しこう 1974ねん10がつ1にち
おも内容ないよう 重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかい監査かんさやくかい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃなど
関連かんれん法令ほうれい 商法しょうほう株式会社かぶしきがいしゃ監査かんさとうかんする商法しょうほう特例とくれいかんする法律ほうりつ施行しこうれい
条文じょうぶんリンク ほう廃止はいし時点じてん条文じょうぶん
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株式会社かぶしきがいしゃ監査かんさとうかんする商法しょうほう特例とくれいかんする法律ほうりつ(かぶしきがいしゃのかんさとうにかんするしょうほうのとくれいにかんするほうりつ、昭和しょうわ49ねん4がつ2にち法律ほうりつ22ごう)とは、商法しょうほう株式会社かぶしきがいしゃについての特別とくべつほうとして1974ねん昭和しょうわ49ねん)に制定せいていされ、2006ねん5月1にち廃止はいしされた法律ほうりつ通称つうしょう商法しょうほう特例とくれいほう(しょうほうとくれいほう)といわれていた。さらにりゃくされて特例とくれいほう記述きじゅつされてもいた。制定せいてい当時とうじ監査かんさ特例とくれいほう通称つうしょうされたが、その監査かんさ以外いがいについての規定きてい次々つぎつぎ追加ついかされていったため、商法しょうほう特例とくれいほうばれるようになった。

2005ねん商法しょうほう改正かいせいにおいては、商法しょうほうから会社かいしゃかんする条項じょうこう分離ぶんりさせてあらたに「会社かいしゃほう」を制定せいていし、商法しょうほう特例とくれいほう規定きていされてきた条項じょうこうは「会社かいしゃほう」にみ、商法しょうほう特例とくれいほう廃止はいしされた。(2005ねん7がつ26にち公布こうふ2006ねん5月1にち施行しこう。)

以下いか記述きじゅつは、廃止はいし時点じてん株式会社かぶしきがいしゃ監査かんさとうかんする商法しょうほう特例とくれいかんする法律ほうりつについてのものである。

概要がいよう立法りっぽう趣旨しゅし[編集へんしゅう]

商法しょうほう特例とくれいほう株式会社かぶしきがいしゃたいして、その会社かいしゃ規模きぼおうじた規制きせい手続てつづき制度せいどさだめた法律ほうりつであった。のち詳述しょうじゅつするが、重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかい監査かんさやくかい制度せいど監査かんさ法人ほうじんとう導入どうにゅう書面しょめんによって株主かぶぬし総会そうかいでの議決ぎけつけん行使こうしする制度せいど書面しょめん投票とうひょう制度せいど)、委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃ制度せいどなどが規定きていされている。

まず、会社かいしゃ規模きぼおうじた規制きせいもうけられた理由りゆうから説明せつめいする。株式会社かぶしきがいしゃ本来ほんらい社会しゃかい散在さんざいする遊休ゆうきゅう資本しほん結集けっしゅうしてだい規模きぼ事業じぎょういとなむことを目的もくてきとする企業きぎょう形態けいたいである。商法しょうほう規定きていはこうした目的もくてき前提ぜんていにしており、市場いちばつうじて資金しきん調達ちょうたつ比較的ひかくてきだい規模きぼ経営けいえいおこな企業きぎょう想定そうていした会社かいしゃ制度せいどもうけている。しかし日本にっぽんにおける株式会社かぶしきがいしゃ小規模しょうきぼ個人こじん企業きぎょう法人ほうじんしたものがおおい。平成へいせい15ねん時点じてん日本にっぽんには114まんしゃ株式会社かぶしきがいしゃがあるが、そのうち証券しょうけん取引とりひきしょ株式かぶしき公開こうかいしている会社かいしゃは2700しゃほどで、店頭てんとう市場いちば株式かぶしき公開こうかいしている会社かいしゃも940ほどしかなく、そのすべ株式かぶしき公開こうかいする必要ひつようがないような中小ちゅうしょう企業きぎょう、つまり商法しょうほう株式会社かぶしきがいしゃとして予定よていしていないほどに小規模しょうきぼ企業きぎょうである。

ちゅう:「店頭てんとう市場いちば」は、ジャスダック証券しょうけん取引とりひきしょになった2004ねんをもって消滅しょうめつした。

こうした小規模しょうきぼ会社かいしゃだい企業きぎょう想定そうていした商法しょうほう規定きていをそのまま適用てきようしても規制きせい無視むしされることもしばしばであるため無駄むだであり、会社かいしゃにとっても過大かだい負担ふたんである場合ばあいおおい。たとえば株式会社かぶしきがいしゃである零細れいさい企業きぎょうのうち株主かぶぬし総会そうかい手続てつづき遵守じゅんしゅしている場合ばあいすくない。このようなしょう企業きぎょうのためにはすで有限ゆうげん会社かいしゃという企業きぎょう形態けいたい用意よういされていたが、株式会社かぶしきがいしゃというネームバリューのためか、あえて株式会社かぶしきがいしゃ形態けいたい小規模しょうきぼ企業きぎょうたなかった。そこでそのような小規模しょうきぼ株式会社かぶしきがいしゃにも本来ほんらい商法しょうほう規定きていより簡易かんい規制きせいをすることが適切てきせつであるとかんがえられるようになった。

他方たほう経済けいざい発展はってんともな非常ひじょうだい規模きぼ事業じぎょうおこな多数たすうもの利害りがい関係かんけいだい企業きぎょう発生はっせいした。このような企業きぎょうにはその社会しゃかいてき影響えいきょうてんから通常つうじょう会社かいしゃより厳格げんかく規制きせいをする必要ひつようがある。

以上いじょうのような社会しゃかい実情じつじょう配慮はいりょして制定せいていされた商法しょうほう特例とくれいほうは、株式会社かぶしきがいしゃをその規模きぼおうじてだい会社かいしゃしょう会社かいしゃ(と、そのいずれにもぞくさない通称つうしょうちゅう会社かいしゃ)に分類ぶんるいし、それぞれにてきしたほう規制きせいおこなうことを意図いとしたものであった。ほう制定せいてい当初とうしょは、監査かんさやくかい制度せいど創設そうせつといったように会社かいしゃ監査かんさとく会計かいけい監査かんさ制度せいど整備せいびがその目的もくてきであった。しかしのちに、重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかい委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃなどの規定きていまれ、会社かいしゃ経営けいえい適正てきせいとともに経営けいえい合理ごうりかんする特例とくれいをも規定きていすることとなった。

だい会社かいしゃしょう会社かいしゃ[編集へんしゅう]

商法しょうほう特例とくれいほう資本しほんがく、または負債ふさい総額そうがくによって株式会社かぶしきがいしゃ大会たいかいしゃ(だいがいしゃ)としょう会社かいしゃ(しょうがいしゃ)にけ、その実体じったいおうじてことなる規制きせいもうけていた。だい会社かいしゃしょう会社かいしゃのどちらの要件ようけんにもてはまらない会社かいしゃちゅう会社かいしゃという(規定きていじょうちゅう会社かいしゃという言葉ことばはない)。以下いかだい会社かいしゃ、みなしだい会社かいしゃおよびしょう会社かいしゃ要件ようけんしめす。

だい会社かいしゃ
資本しほんがくが5おくえん以上いじょうまたは最終さいしゅう貸借たいしゃく対照たいしょうひょうじょう負債ふさい計上けいじょうした金額きんがくが200おくえん以上いじょうである株式会社かぶしきがいしゃしょうとくほう1じょうの2だい1こう)。
みなしだい会社かいしゃ
だい会社かいしゃ要件ようけんたさないが、資本しほんがくが1おくえんえており、かつだい会社かいしゃとしての規制きせいけるむね定款ていかんさだめた株式会社かぶしきがいしゃしょうとくほう2じょう2こう)。そのとお大会たいかいしゃとみなされるので、商法しょうほう特例とくれいほうじょうだい会社かいしゃおな規制きせいけることになる。ただしすべおなじというわけではなく、連結れんけつ計算けいさん書類しょるいかんする規定きてい書面しょめん投票とうひょう制度せいどについての規制きせい適用てきようけない。
しょう会社かいしゃ
資本しほんがくが1おくえん以下いか株式会社かぶしきがいしゃ負債ふさいが200おくえん未満みまんである株式会社かぶしきがいしゃ

だい会社かいしゃ監査かんさかんして商法しょうほう規制きせいとはことなる規制きせいけることとなる(おおくの場合ばあい規制きせい強化きょうかされている)。また、重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかいもうけたり委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃとなるには大会たいかいしゃでなくてはならない。一方いっぽうしょう会社かいしゃおも監査かんさめんにおいて規制きせい簡素かんそされている。なお、日本にっぽん株式会社かぶしきがいしゃ本来ほんらい予定よていされている規模きぼよりもはるかにちいさい中小ちゅうしょう企業きぎょうおおく、ほとんどの会社かいしゃが「しょう会社かいしゃ」となる。

だい会社かいしゃかんする特例とくれい[編集へんしゅう]

前述ぜんじゅつのように、だい会社かいしゃにおいては経営けいえい適正てきせいのために監査かんさ制度せいど中心ちゅうしんとして規制きせい強化きょうかされている。また、経営けいえい合理ごうりのための制度せいど利用りようすることができる。

取締役とりしまりやくかいかんする特例とくれい重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかい[編集へんしゅう]

だい会社かいしゃまたはみなしだい会社かいしゃのうちで取締役とりしまりやくが10めい以上いじょうおり、そのうち1めい以上いじょう社外しゃがい取締役とりしまりやくがいる場合ばあいには重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかいもうけることができる(1の3だい1こう1ごう、2ごう)。日本にっぽんだい企業きぎょうでは取締役とりしまりやくかい肥大ひだいする傾向けいこうにあり、意思いし決定けってい速度そくどおそくなりがちであった。そのため経営けいえい委員いいんかい常務じょうむかいといった比較的ひかくてき少数しょうすう取締役とりしまりやくあつめた会議かいぎたいもうけて経営けいえい迅速じんそくはかれいおおくなった。その一方いっぽう取締役とりしまりやくかいはそこでまったことについて承認しょうにんあたえるのが通常つうじょうとなり、実質じっしつてきにその権限けんげん委任いにんされたかたちになった。しかしこれら少数しょうすう取締役とりしまりやくらによる会議かいぎたい商法しょうほうじょう根拠こんきょがないため、法的ほうてき責任せきにん所在しょざい権限けんげん曖昧あいまいである。そこでこれらについて法的ほうてき枠組わくぐみをあたえたのが重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかいである。

重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかいは、商法しょうほう260じょう2こう1ごう、2ごう規定きていされた重要じゅうよう財産ざいさん処分しょぶん譲受ゆずりうけ、多額たがく借財しゃくざいのうち、取締役とりしまりやくかい決議けつぎによって委任いにんされた事項じこう決定けっていすることができる機関きかんであった。これにより迅速じんそく経営けいえい判断はんだん可能かのうとするのがねらいである。その一方いっぽう取締役とりしまりやくかい監督かんとく機能きのう担保たんぽするなどして適正てきせい経営けいえい確保かくほするための規制きせいもうけられた。すなわち、重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかいまったことは取締役とりしまりやくかい報告ほうこくしなければならず、監査かんさやく出席しゅっせき義務ぎむ意見いけん陳述ちんじゅつけんなど取締役とりしまりやくかいかんする規定きてい準用じゅんようされている。

なお、21じょうの36だい4こう重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかいかんする規定きてい適用てきようされないむね規定きていされているため、重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかい制度せいど委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃ制度せいど後述こうじゅつ)は両立りょうりつない制度せいどであった。

監査かんさかんする特例とくれい[編集へんしゅう]

大会たいかいしゃおよびみなし大会たいかいしゃでは監査かんさかんして特別とくべつ規制きせいける。おおまかにって、会計かいけい監査かんさ法人ほうじん選任せんにん監査かんさやくかい構成こうせい要求ようきゅうされている。

まず、通常つうじょう監査かんさやくほか公認こうにん会計士かいけいしまたは会計かいけい監査かんさ法人ほうじん会計かいけい監査かんさじんとして選任せんにんしなければならない(2じょう)。一方いっぽう通常つうじょう監査かんさやくを3めい以上いじょうおかなければならず、これらによって監査かんさやくかい構成こうせいさせることとした(18じょう1こう)。さらに、そのうちの一人ひとりから常勤じょうきん監査かんさやく互選ごせん選出せんしゅつさせて監査かんさ実質じっしつはかり、監査かんさやくかい構成こうせいする監査かんさやく半数はんすう以上いじょう社外しゃがい監査かんさやくでなければならないとして公正こうせい維持いじ目指めざした。ここでいう社外しゃがい監査かんさやくというのは、過去かこいちもその会社かいしゃやその会社かいしゃ子会社こがいしゃ取締役とりしまりやく従業じゅうぎょういんなどになったことがないものでなくてはならない。

議決ぎけつけん行使こうしかんする特例とくれい[編集へんしゅう]

だい会社かいしゃであって、株主かぶぬし総会そうかいでの議決ぎけつけん株主かぶぬしが1000にん以上いじょういる場合ばあいには株主かぶぬし総会そうかいでの議決ぎけつけん行使こうしかんして、ふたつの特別とくべつ規定きていがある。ひとつは、株主かぶぬし総会そうかい招集しょうしゅう通知つうちおくさいにはその総会そうかい議決ぎけつけん行使こうしするさい参考さんこうとなる書類しょるいおくらなくてはならないという規制きせいである(21じょうの2)。もうひとつは、書面しょめんによる議決ぎけつけん行使こうし書面しょめん投票とうひょう制度せいど)である。この規定きてい適用てきようける大会たいかいしゃでなくても書面しょめん投票とうひょう制度せいど導入どうにゅう不可能ふかのうではない。しかし一般いっぱん株式会社かぶしきがいしゃでは取締役とりしまりやくかい書面しょめん投票とうひょうができるというむね決議けつぎをしていなければならない(商法しょうほう239じょうの2を参照さんしょう)。これにたいして、この特例とくれい適用てきようされる大会たいかいしゃでは取締役とりしまりやくかいにおける決議けつぎ有無うむにかかわらず、書面しょめん投票とうひょうによって議決ぎけつけん行使こうしすることが可能かのうである。

なお、この規定きていはみなしだい会社かいしゃには適用てきようされない。

委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃ[編集へんしゅう]

だい会社かいしゃ委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃという経営けいえい形態けいたいることができた。くわしくは委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃのページを参照さんしょう。なお、21じょうの36だい4こう重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかいかんする規定きてい適用てきようされないむね規定きていされているため、委員いいんかいとう設置せっち会社かいしゃ重要じゅうよう財産ざいさん委員いいんかいもうけることはできない。

しょう会社かいしゃかんする特例とくれい[編集へんしゅう]

しょう会社かいしゃにおいては前述ぜんじゅつのような考慮こうりょから、規制きせい大幅おおはば緩和かんわされていた。まず監査かんさやく権限けんげん会計かいけい監査かんさのみに限定げんていされ、それにともなっていくつもの商法しょうほう規定きてい適用てきようされないこととされた(22じょう、25じょう)。そのほかにも25じょうによっておおくの規定きてい適用てきよう除外じょがい対象たいしょうとされ、規制きせい簡素かんそされていた。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]