鋼管こうかん

鋼管こうかん（こうかん、英語えいご：steel pipe）は、鉄鋼てっこう製品せいひんの分類ぶんるいの一ひとつで、鋼はがねを圧延あつえんして作つくられる管かん形かたちをした物ものを指さす。いったん鋼はがねを別べつの形状けいじょう（鋼はがね帯たい・ビレット・厚あつ板いたなど）に加工かこうした物ものを材料ざいりょうに用もちいるので、二に次じ製品せいひんとして扱あつかわれる。鋼はがねや銑鉄せんてつを鋳込いこんで製造せいぞうする鋳鉄ちゅうてつ管かんは、通常つうじょう別べつ製品せいひんとして扱あつかう。

製造せいぞう方法ほうほうによる分類ぶんるい

鍛きたえ接せっ鋼管こうかん

高温こうおんに加熱かねつした鋼はがね帯たいを引ひき出だしながら、幅はば方向ほうこうを円形えんけいに変形へんけいさせ、その両りょう端はしに酸素さんそを吹ふき付つけて瞬間しゅんかん的てきに温度おんどを高たかめながら強力きょうりょくに突つき合あわせること（鍛きたえ接せっ）で、両りょう端はしを接合はぎあわして管かんに加工かこうした物もの。鍛冶屋かじやが熱ねっした鉄片てっぺんを金槌かなづちで叩はたきながら接合はぎあわしたのと同おなじ原理げんり。JIS（日本工業規格にほんこうぎょうきかく）では製法せいほう記号きごうとして「B」が指定していされている。

主おもに小径しょうけい管かん（概おおむね呼称こしょうサイズ100A=外そと径みち114.3mm以下いか）の製造せいぞうに用もちいられる。基本きほん的てきに炭素たんそ鋼こうのみ。生産せいさん性せいが高たかく、大量たいりょう生産せいさんに向むいている。接合せつごう部ぶ（シーム）の強度きょうどはあまり高たかくなく、強度きょうどを求もとめられる用途ようとには不向ふむき。また、熱ねつ間あいだ加工かこうのため、管かんの内外ないがい面めんにスケール（酸化さんか鉄てつの皮膜ひまく）が付着ふちゃくしており、表面ひょうめん性状せいじょうはやや劣おとる。

電でん縫ぬい鋼管こうかん

通常つうじょうは常温じょうおんの鋼はがね帯たいを引ひき出だしながら、幅はば方向ほうこうを円形えんけいに変形へんけいさせ、接合せつごう直前ちょくぜんに局部きょくぶ的てきに大だい電流でんりゅうを流ながすことで瞬間しゅんかん的てきに接合せつごう部ぶを高温こうおん状態じょうたいにして、そのまま押おしつけることで両りょう端はしを溶接ようせつ（抵抗ていこう溶接ようせつ）させて管かんに加工かこうした物もの。自己じこ溶接ようせつのため、いわゆる溶接ようせつ材料ざいりょうは不要ふよう。電流でんりゅうの流ながし方かたなどに幾いくつかの形式けいしきがある。JISでは製法せいほう記号きごうとして「E」が指定していされている。

比較的ひかくてき小径しょうけいからある程度ていど大おおきな径みち（最大さいだい650A=660.4mm）までの鋼管こうかんの製造せいぞうが可能かのう。成形せいけいに多数たすうのロールを必要ひつようとするため、外そと径みちサイズの自由じゆう度どは低ひくい。炭素たんそ鋼こうが中心ちゅうしんだが、低てい合金ごうきん鋼こうの製造せいぞうも可能かのう。生産せいさん性せいは比較的ひかくてき高たかい。組織そしきが溶融ようゆうしてから接合はぎあわしているため、比較的ひかくてきシームの強度きょうどは高たかいが、シーム周辺しゅうへん部ぶは熱ねつによる変性へんせいがあり、加工かこう時じはシームの位置いちに注意ちゅういが必要ひつよう。また、接合せつごう時じにビード（溶接ようせつの盛もり上あがり）が発生はっせいするので、用途ようとによってはこれを削けずり取とっている。鋼はがね帯たい全体ぜんたいを加熱かねつすることがないため、表面ひょうめん性状せいじょうに優すぐれる。

継目つぎめ無な（シームレス）鋼管こうかん

文字もじどおり、管かんに継つぎ目めが無ない鋼管こうかん。断面だんめんを丸まる形がたに加工かこうしたビレットを高温こうおんに熱ねっしてそれを「錐揉きりもみ」状態じょうたいにしながら、その中心ちゅうしんにプラグという金具かなぐを押おしつけて穴あなを開あける方法ほうほう（マンネスマン法ほう）が一般いっぱん的てき。JISでは製法せいほう記号きごうとして「S」が指定していされている。

マンネスマン法ほうでは比較的ひかくてき小径しょうけいからやや大おおきい径みち（日本にっぽんでは通常つうじょう426.0mm）までの製造せいぞうが可能かのうだが、さらに大おおきな径みちまで製造せいぞうできる製法せいほうもある。外そと径みちサイズ数すうの制約せいやくは本来ほんらい厳きびしいが、各かくメーカーとも多数たすうのロールや金かね型がたを用意よういして、製造せいぞうサイズ数すうを増ふやしている。炭素たんそ鋼こうからステンレス鋼こうまで幅広はばひろい鋼はがね種しゅの管かんの製造せいぞうが可能かのう。比較的ひかくてき小しょうロット品ひんの製造せいぞうに適てきした製法せいほう。マンネスマン法ほう以外いがいでは生産せいさん性せいは低ひくい。厚あつ肉にく品ひんの製造せいぞうが比較的ひかくてき容易よういだが、製法せいほう上じょう寸法すんぽう精度せいどは余あまりよくないので、使用しよう時じは注意ちゅういが必要ひつよう。素材そざいを高温こうおんのまま過酷かこくな圧延あつえんを行おこなうので、表面ひょうめん性状せいじょうは劣おとる。

アーク溶接ようせつ鋼管こうかん

鋼はがね帯たいや厚あつ板いたをアーク溶接ようせつして管かんに加工かこうした物ものの総称そうしょう。どんな素材そざいをどのように加工かこうするかで、さらに幾いくつかの種類しゅるいに分類ぶんるいされる。JISでは製法せいほう記号きごうとして「A」が指定していされている。

UOE鋼管こうかん

厚あつ板いたを特殊とくしゅなプレス機きで「U」次ついで「O」字じ状じょうに整形せいけいして、接合せつごう部ぶをアーク溶接ようせつした後のち、内側うちがわからエキスパンダーで拡張かくちょう(E)して所定しょていの寸法すんぽうに仕上しあげた鋼管こうかん。直径ちょっけい1500mm前後ぜんこうまで製造せいぞう可能かのうで、大だい径みち管かんとしては寸法すんぽう精度せいどが良好りょうこう。比較的ひかくてき大量たいりょう生産せいさん向むき。

スパイラル鋼管こうかん

鋼はがね帯たいを引ひき出だしながら螺旋らせん状じょうに整形せいけいし、両りょう幅はばをアーク溶接ようせつした鋼管こうかん。螺旋らせんの巻まき方かたを緩ゆるやかにすることで、理論りろん上じょうはどんなサイズの管かんでも製造せいぞうできる。ビード長ちょうが長ながく、また螺旋らせん状じょうに発生はっせいするため、美観びかんを求もとめる用途ようとには適てきさない。大量たいりょう生産せいさんに向むいており、主おもに土木どぼく用ように用もちいられる。

板いた巻まき鋼管こうかん

厚あつ板いたを巨大きょだいなロールやプレス成型せいけいで円筒えんとう状じょうに整形せいけいして、両りょう幅はばをアーク溶接ようせつした鋼管こうかん。基本きほん的てきに小しょうロット生産せいさんで生産せいさん性せいは低ひくいが、製造せいぞう可能かのう範囲はんい内ないなら柔軟じゅうなんな寸法すんぽう設定せっていが可能かのう。大だい径みち厚あつ肉にく品ひんなど特殊とくしゅな管かんの製造せいぞうに用もちいられる。

用途ようとによる分類ぶんるい

配管はいかん用よう鋼管こうかん

管かんの内部ないぶに液体えきたい・気体きたいなどを通とおして、それを輸送ゆそうするために用もちいる鋼管こうかんで、鋼管こうかんの中なかでももっともポピュラーな物もの。JISでは「SGP（一般いっぱん配管はいかん用よう鋼管こうかん）＝ガス管かん」、「STPG（圧力あつりょく配管はいかん用よう鋼管こうかん）」など多数たすうの規格きかくがあり、中なかに通とおす物ものの性質せいしつ・温度おんど・圧力あつりょくなどによって、用もちいられるべき鋼管こうかんとその製法せいほうが規定きていされている。

配管はいかん用よう鋼管こうかんは、設計せっけいや施工しこうに便利べんりなように特定とくていの寸法すんぽうが「標準ひょうじゅん寸法すんぽう」として定さだめられている。外そと径みちについてはA呼称こしょう、肉にく厚あつは呼称こしょうサイズ毎ごとに定さだめられた肉にく厚あつを示しめすスケジュール番号ばんごうと呼よばれる一連いちれんの寸法すんぽう体型たいけいが日本にっぽんでは一般いっぱん的てきで、これ以外いがいの外そと径みち・肉にく厚あつの管かんは一般いっぱんには存在そんざいしない。また、長ながさは4000mmまたは5500mmが標準ひょうじゅんであり、それ以外いがいの長ながさは通常つうじょう流通りゅうつうしていない。

構造こうぞう用よう鋼管こうかん

建築けんちく資材しざいや機械きかい部品ぶひんに用もちいる鋼管こうかん。特とくに後者こうしゃは機械きかい構造こうぞう用よう鋼管こうかんと呼よばれることもある。JISでは建築けんちく用ようとして「STK（構造こうぞう用よう炭素たんそ鋼こう鋼管こうかん）」「STKN（建築けんちく構造こうぞう用よう炭素たんそ鋼こう鋼管こうかん）」、機械きかい部品ぶひん用ようとして「STKM（機械きかい構造こうぞう用よう炭素たんそ鋼こう鋼管こうかん）」など多数たすうの規格きかくが規定きていされている。

建築けんちく用ようと機械きかい部品ぶひん用ようとでは、製品せいひんの種類しゅるいや流通りゅうつうが全まったく異ことなることに注意ちゅうい。一般いっぱん的てきに建築けんちく用よう鋼管こうかんでは、配管はいかん用よう鋼管こうかんと同おなじく事実じじつ上じょうの標準ひょうじゅん寸法すんぽうが存在そんざいする。機械きかい構造こうぞう用よう鋼管こうかんは、特とくに継目つぎめ無む鋼管こうかんの場合ばあい多数たすうのサイズが流通りゅうつうしており、発注はっちゅう時じに慎重しんちょうな選択せんたくが必要ひつよう。なお、機械きかい部品ぶひん向むけによく登場とうじょうする材料ざいりょう管かんは、熱処理ねつしょり加工かこうなどを前提ぜんていに、メーカーが寸法すんぽう精度せいどと成分せいぶん値ちのみ保証ほしょうした管かんのことで、強度きょうど保証ほしょうは行おこなわれない。

熱ねつ交換こうかん用よう鋼管こうかん

ボイラやコンデンサなどに用もちいられる、管かんの内外ないがい面めんで熱ねつの受うけ渡わたしをするために用もちいられる鋼管こうかん。JISでは「STB（ボイラ・熱ねつ交換こうかん器用きよう炭素たんそ鋼こう鋼管こうかん）」などが規定きていされている。用途ようと上じょう、厳きびしい検査けんさ基準きじゅんや寸法すんぽう精度せいどが設定せっていされている。

専門せんもん性せいが高たかい品種ひんしゅであり、一般いっぱんに流通りゅうつうすることは希まれ。設計せっけいや使用しようにあたってはJISの他ほかに各種かくしゅ法律ほうりつなどの規則きそくに則のっとる必要ひつようがあり、鋼管こうかんの選定せんてい作業さぎょうは基本きほん的てきに発注はっちゅう者しゃ責任せきにんとなる。特とくにハイグレード品ひんは世界せかい的てきな電力でんりょく需要じゅようの増大ぞうだいに伴ともない受給じゅきゅうが逼迫ひっぱくしており、各かくメーカーとも品質ひんしつ競争きょうそうにしのぎを削けずっている。

その他たの鋼管こうかん

油田ゆでんやガス田たの掘削くっさくに用もちいる油井ゆせい管かんや、掘ほり出だした原油げんゆや天然てんねんガスの輸送ゆそうに用もちいるラインパイプ、トンネル内壁ないへきのロックボルトの設置せっちなどに用もちいる試しすい用よう鋼管こうかんなどがある。また、土木どぼく工事こうじに用もちいる鋼管こうかんぐい（鋼管こうかん杭くい）や'鋼管こうかん矢板やいたなどもあるが、流通りゅうつう上じょうこれらは鋼管こうかんとして扱あつかわないことが多おおい。

仕上しあげによる分類ぶんるい

熱ねつ間あいだ仕上しあげ

材料ざいりょうの鋼はがねをある温度おんど（一般いっぱんにはキュリー点てん）以上いじょうに加熱かねつして製造せいぞうした物もの。基本きほん的てきに鋼管こうかんの全すべての部分ぶぶんが等ひとしく加熱かねつ・冷却れいきゃくされており、位置いちによる強度きょうど変化へんかは存在そんざいしない。表面ひょうめんにスケールが付着ふちゃくするほか、圧延あつえん時じの微細びさいなロール痕こんなどが残のこったままのため、表面ひょうめん性状せいじょうは劣おとる。また、寸法すんぽう精度せいどは高たかくない。鍛きたえ接せっ鋼管こうかんや製造せいぞうしたままの継目つぎめ無む鋼管こうかんが該当がいとう。JISでは仕上しあげ記号きごう「H」で区分くぶんすることがある。

熱ねつ間あいだ・冷ひや間あいだ以外いがいの仕上しあげ

基本きほん的てきには製造せいぞうしたままの電でん縫ぬい鋼管こうかんのこと。シーム部ぶだけが局部きょくぶ的てきに加熱かねつされた状態じょうたいになっており、周辺しゅうへん部ぶと強度きょうどに差さがあることに注意ちゅうい。表面ひょうめん性状せいじょうは母はは材ざいである鋼はがね帯たいのそれが活いかされており、良好りょうこう。また、寸法すんぽう精度せいども比較的ひかくてき良よい。JISでは仕上しあげ記号きごう「G」で区分くぶんすることがある。

冷ひや間あいだ仕上しあげ

いちど製造せいぞうした鋼管こうかんを、常温じょうおんのまま（または多少たしょう加熱かねつしてから）ダイスと呼よばれる金かね型がたを通とおして所定しょていの寸法すんぽうに仕上しあげた物もの。金かね型がたを通とおすことで寸法すんぽう精度せいど・表面ひょうめん性状せいじょう共どもに優すぐれた製品せいひんができる。金かね型がたを次第しだいに小ちいさくして連続れんぞくして通とおすことで、細ほそい管かんの製造せいぞうも可能かのう。素材そざいに過酷かこくな加工かこうが加くわわるので、強度きょうどは大幅おおはばに上昇じょうしょうするが、粘ねばり強づよさが損そこなわれるため、必要ひつように応おうじて熱処理ねつしょりを行おこなう。多大ただいな工程こうていが必要ひつようなため、かなり高価こうかになる。JISでは仕上しあげ記号きごう「C」で区分くぶんすることがある。

注文ちゅうもん・流通りゅうつうなどについて

他たの鉄鋼てっこう製品せいひんに比くらべて規格きかくとサイズ数すうが格段かくだんに多おおいため、いわゆる流通りゅうつう業者ぎょうしゃの機能きのうが発達はったつしている。一ひとつの流通りゅうつう業者ぎょうしゃが全すべての鋼管こうかんを在庫ざいこするのは不可能ふかのうに近ちかく、実際じっさいには各かく用途ようと別べつに専せん門もんの業者ぎょうしゃが存在そんざいしている。熱ねつ交換こうかん用よう鋼管こうかんや用途ようとに限かぎらず合金ごうきん鋼こう鋼管こうかんは市中しちゅう在庫ざいこが乏とぼしいため、流通りゅうつう業者ぎょうしゃを通つうじてメーカー発注はっちゅうとなるケースが多おおく、納期のうきは数ヶ月すうかげつに及およぶこともある。 鋼管こうかんのサイズ指定していは「外そと径みち×肉にく厚あつし×長ながさ」で行おこない、冷ひや間あいだ仕上しあげ品ひんを除のぞいては内径ないけい指定していを受うけ付つけないのが通常つうじょう。複数ふくすうの製法せいほうで製造せいぞう可能かのうの場合ばあいは、製法せいほう指定していや仕上しあげの指定していも必要ひつよう。表面ひょうめんの防ぼう錆さび油ゆ塗布とふの有無うむや管かん端はし形状けいじょうについても、必要ひつように応おうじて指定してい可能かのう(だが、特注とくちゅう品ひんになることもある)。機械きかい構造こうぞう用よう鋼管こうかんの場合ばあい、ユーザーからの注文ちゅうもん長ながさは数すうmmから6000mm程度ていどまでと千差万別せんさばんべつであり、流通りゅうつう業者ぎょうしゃは在庫ざいこ品ひんを注文ちゅうもん長ながさに合あわせて切断せつだんしてから発送はっそうしている。加工かこう費用ひようと共ともに製品せいひん歩留ぶどまりが価格かかくに反映はんえいされる。 なお、アーク溶接ようせつ管かんについては、一部いちぶのUOE鋼管こうかんを除のぞいて市中しちゅう在庫ざいこは存在そんざいせず、物件ぶっけん毎ごとにメーカー発注はっちゅうすることになる。板いた巻まき管かんの一品いっぴんものに関かんしては、市中しちゅうの加工かこう業者ぎょうしゃ（製せい缶かん業者ぎょうしゃ）に発注はっちゅうすることが大半たいはん。