アーク溶接ようせつ

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アーク溶接ようせつ
溶接ようせつロボットによるアーク溶接ようせつ様子ようす

アーク溶接ようせつ(アークようせつ、英語えいご:arc welding)とは、空気くうき気体きたいちゅう放電ほうでん現象げんしょうアーク放電ほうでん)を利用りようして、おな金属きんぞく同士どうしをつなぎわせる溶接ようせつ方法ほうほうである[1]。アーク溶接ようせつ用途ようとひろく、自動車じどうしゃ鉄道てつどう車両しゃりょう船舶せんぱく航空機こうくうき建築けんちくぶつ建設けんせつ機械きかいなど、あらゆる金属きんぞく構造こうぞうぶつ一般いっぱんてき使つかわれている。ははざい鉄鋼てっこうおおいが、アルミニウムチタンなどほかの金属きんぞくにも利用りようされる。

特徴とくちょう種類しゅるい[編集へんしゅう]

ははざいばれる溶接ようせつ対象たいしょう電極でんきょく溶接ようせつぼう溶接ようせつワイヤ、TIGトーチなど)を接触せっしょくさせて通電つうでんさせたのち双方そうほうはなすとははざい電極でんきょくあいだにアークが発生はっせいする。発生はっせいしたアークの温度おんどは5,000 ℃から20,000 ℃程度ていどあり、これを熱源ねつげんとした高熱こうねつで、ははざいと溶加ざい、あるいは溶接ようせつぼう溶融ようゆうさせて一体化いったいかする接合せつごうほうである。したがって、基本きほんてきにアーク溶接ようせつ対象たいしょう電気でんき伝導でんどうたいのみである。電気でんき溶接ようせつわれることもあるが、このように場合ばあい抵抗ていこう溶接ようせつふくまれる。

消耗しょうもう電極でんきょくしき消耗しょうもう電極でんきょくしき[編集へんしゅう]

ガスシールド・アーク溶接ようせつしき
1.溶接ようせつワイヤ 2.シールドガス 3.ノズル 4.電極でんきょく 5.アーク 6.溶融ようゆう 7.ははざい
はん自動じどう溶接ようせつによるレがたひらきさき多層たそうもり溶接ようせつ

おおくの場合ばあい、アーク溶接ようせつ電極でんきょく溶融ようゆう可否かひによって2つに大別たいべつされる。 電極でんきょく溶融ようゆうし、溶滴となってははざい移行いこうする消耗しょうもう電極でんきょくしき溶接ようせつ(溶極しき[2]と、電極でんきょく溶融ようゆうせず溶加ざい溶接ようせつぼう)を溶融ようゆうおくははざいかし消耗しょうもう電極でんきょくしき溶接ようせつ溶極しき[3]である。また、このふたつの方式ほうしきそれぞれを、おもにシールド方法ほうほう分類ぶんるいすると以下いかのようになる[4]

ガスシールドアーク溶接ようせつ[編集へんしゅう]

ティグ溶接ようせつミグ溶接ようせつマグ溶接ようせつ炭酸たんさんガスアーク溶接ようせつでは、溶接ようせつアルゴンヘリウム二酸化炭素にさんかたんそのガスでおおい、アークの安定あんてい溶融ようゆう金属きんぞく大気たいきから保護ほごしていることから、ガスシールドアーク溶接ようせつ分類ぶんるいする場合ばあいがある。また、この目的もくてき使用しようされるガスをシールドガスとぶ。

ミグ溶接ようせつ、マグ溶接ようせつ炭酸たんさんガスアーク溶接ようせつ消耗しょうもう電極でんきょくしきであるので、溶接ようせつ設備せつび性質せいしつじょう溶加ざい溶接ようせつワイヤ)の連続れんぞく供給きょうきゅう可能かのうになっており、溶接ようせつなかではスポット溶接ようせつならび、もっと自動じどうすすんでいる。ガスシールドアーク溶接ようせつでは進行しんこう方向ほうこうにノズルをけて、みぎきならみぎからひだりへ、左利ひだりききならひだりからみぎすす方法ほうほう前進ぜんしんほうぎゃく進行しんこう方向ほうこう反対はんたいにノズルをけてすす方法ほうほう後退こうたいほうび、用途ようとははざい形状けいじょうによって使つかけられている。なお、シールドガスにヘリウムやアルゴンなどの活性かっせいガスをもちいる方式ほうしきイナートガスアーク溶接ようせつという。

溶接ようせつ[編集へんしゅう]

被覆ひふくアーク溶接ようせつ原理げんりてき自動じどうができずすべて手作業てさぎょうおこなうので、溶接ようせつぼう溶接ようせつうことがあり[5]、このように場合ばあい被覆ひふくアーク溶接ようせつのことをす。被覆ひふくアーク溶接ようせつ使用しようする溶接ようせつぼうは、金属きんぞく芯線しんせん被覆ひふくざいばれるすうmm程度ていどあつさのある保護ほございおおっている。溶接ようせつ被覆ひふくざいはアークの高温こうおんによりガスするので、溶接ようせつはシールドされ大気たいきちゅう窒素ちっそ酸素さんそ溶接ようせつ混入こんにゅうするのを防止ぼうししている。また、被覆ひふくざい溶接ようせつ金属きんぞくたいだつさん作用さようがあり、スラグとなってビードを保護ほごすることでビード形状けいじょう形成けいせいととのえるはたらきもある[6]被覆ひふくアーク溶接ようせつでの進行しんこう方向ほうこうは、みぎきならひだりからみぎへ、左利ひだりききならみぎからひだりへ、いずれの場合ばあい進行しんこう方向ほうこうたいして5から10かたむけてかたむけた方向ほうこうすすむ。

はん自動じどう溶接ようせつ[編集へんしゅう]

溶接ようせつ機器ききによって、連続れんぞくてきに溶加ざい(ワイヤなど)とシールドガスを供給きょうきゅうし、さらにアークちょう一定いっていたもっておこなわれる溶接ようせつを、ぼう溶接ようせつたいはん自動じどう溶接ようせつ[7]前述ぜんじゅつ被覆ひふくアーク溶接ようせつ溶接ようせつぼう溶接ようせつざいとして使つかうが、この溶接ようせつぼう比較的ひかくてきみじかいため、しばしばみじかくなった溶接ようせつぼう交換こうかんする必要ひつようがあり、大量たいりょう溶接ようせつおこなうにはてきしていない。これにたいはん自動じどうアーク溶接ようせつでは溶接ようせつざいとして非常ひじょうながいワイヤーを使つかうことにより、連続れんぞくして大量たいりょう溶接ようせつすることを目的もくてきとしたものである。はん自動じどう溶接ようせつはガスシールドアーク溶接ようせつなのでふうよわく、屋外おくがいでは使用しようしにくいので、おもに工場こうじょうない使つかわれる。

アークの電気でんきてき特性とくせい[編集へんしゅう]

アーク溶接ようせつにおいて重要じゅうようなことは適切てきせつ電流でんりゅう維持いじしつつ溶接ようせつ連続れんぞくしておこなうことである。しかし、電極でんきょく消耗しょうもうや、手作業てさぎょう場合ばあい作業さぎょうしゃのブレなどで電極でんきょく位置いちわるとアークのながさが変化へんかしてしまい、アークにかかる電圧でんあつ(アーク電圧でんあつ)がおおきく変化へんかする。電圧でんあつ変化へんかすることで電流でんりゅう変化へんかし、安定あんていした溶接ようせつおこなうことが困難こんなんになる。また、炭酸たんさんガスアーク溶接ようせつのようなはん自動じどう溶接ようせつもちいられる溶接ようせつ電圧でんあつ電流でんりゅう任意にんい選択せんたくする必要ひつようがあり、作業さぎょうしゃ工学こうがくてき知見ちけんもとづいた適切てきせつ設定せっていしなければならない。

アーク

通常つうじょう電気でんき伝導でんどうたい場合ばあい抵抗ていこう電圧でんあつによらず一定いっていであるとなせるが、アークの場合ばあい電圧でんあつ上下じょうげすることによって抵抗ていこうおおきく増減ぞうげんする。電圧でんあつひく場合ばあいみぎ(1)のようにアークはみじかくなり抵抗ていこうる。ぎゃく電圧でんあつたか場合ばあいは、みぎ(3)のようにアークちょうながくなり抵抗ていこうがる。また、上記じょうきのような電圧でんあつ電流でんりゅう設定せっていできる溶接ようせつにおいて、おな電圧でんあつ電流でんりゅうげた場合ばあいみぎ(1)のようにアークちょうみじかくなる。ぎゃくおな電圧でんあつ電流でんりゅうらせば、みぎ(3)のようにアークちょうながくなる。

アークちゅうながれる電流でんりゅう電子でんしになっているので、電子でんし放出ほうしゅつ部分ぶぶんである陰極いんきょく特性とくせいはアーク溶接ようせつにとって支配しはいてき影響えいきょうおよぼす[8]

アークの電気でんきてき特性とくせい電流でんりゅう電圧でんあつ大小だいしょうおおきく左右さゆうされる。直流ちょくりゅう場合ばあい電流でんりゅうちいさい場合ばあいはアーク電圧でんあつ抵抗ていこう特性とくせいしめし、電流でんりゅう増加ぞうかともなって減少げんしょうする。電流でんりゅう被覆ひふくアーク溶接ようせつもちいるようななか程度ていど場合ばあいはアーク電圧でんあつはほとんど変化へんかせず、てい電圧でんあつ特性とくせいしめす。炭酸たんさんガスアーク溶接ようせつもちいるようなおおきな電流でんりゅう場合ばあい上昇じょうしょう特性とくせいになり、電流でんりゅう増加ぞうかともなってアーク電圧でんあつ増加ぞうかする[8]交流こうりゅう場合ばあい平均へいきんすると直流ちょくりゅうとほぼおなじような特性とくせいとなるが、交流こうりゅうであるがため瞬間しゅんかんにおける電圧でんあつしょう電流でんりゅうちゅう電流でんりゅうだい電流でんりゅうにおける特性とくせいをそれぞれしめす。電流でんりゅう正負せいふわるタイミングでアークは消滅しょうめつさいてんかえすので、交流こうりゅう電源でんげん装置そうち負荷ふか電圧でんあつさいてん必要ひつよう電圧でんあつ上回うわまわり、かつ負荷ふか電圧でんあつ電流でんりゅうよりもすすんだ位相いそうになるような特性とくせい電源でんげん装置そうち要求ようきゅうされる。

溶接ようせつ電源でんげん特性とくせい[編集へんしゅう]

アーク溶接ようせつもちいられる電源でんげん装置そうち溶接ようせつ電源でんげん英語えいごばん)には条件じょうけんにより様々さまざま形態けいたい存在そんざいし、それぞれ電流でんりゅう電圧でんあつのコントロールの仕方しかたことなる。作業さぎょうしゃは、これらの電源でんげん特性とくせい前述ぜんじゅつのアークの特性とくせいから総合そうごうてき判断はんだんして、適切てきせつ電源でんげん選択せんたく操作そうさおこな必要ひつようがある。

垂下すいか特性とくせい[編集へんしゅう]

垂下すいか特性とくせいとは、電流でんりゅうえると電圧でんあつ低下ていかする特性とくせい意味いみし、これは内部ないぶ抵抗ていこう電池でんち発電はつでんなど一般いっぱんてき電源でんげん性質せいしつである。溶接ようせつちゅうにアークちょう変化へんかしアーク電圧でんあつ変化へんかしても、負荷ふか電流でんりゅうがほぼ一定いってい[9]なので溶加ざいけるりょう変化へんかがほとんどみられない特徴とくちょうがある。垂下すいか特性とくせい電源でんげん構造こうぞう単純たんじゅん価格かかくやすく、溶接ようせつ電流でんりゅうがあまり変化へんかせず手作業てさぎょうでも安定あんていした溶接ようせつおこなえることから被覆ひふくアーク溶接ようせつやサブマージアーク溶接ようせつなどに採用さいようされる一方いっぽう実際じっさい溶接ようせつ電流でんりゅうすうすうじゅう程度ていど変化へんかするので、ははざい溶接ようせつ精密せいみつさや緻密ちみつさがもとめられる場合ばあいもちいることができない。また、交流こうりゅう垂下すいか特性とくせい電源でんげん構造こうぞうじょう直流ちょくりゅうより安定あんていせいおとり、感電かんでん危険きけんせい電源でんげんよりたかい。

てい電流でんりゅう特性とくせい[編集へんしゅう]

上記じょうき垂下すいか特性とくせい電源でんげん存在そんざいする欠点けってん電流でんりゅう変化へんか許容きょようできない場合ばあいは、てい電流でんりゅう特性とくせい電源でんげんもちいられる。てい電流でんりゅう特性とくせい電源でんげんは、アークちょう変化へんかしても出力しゅつりょく電流でんりゅうがまったく変化へんかしない構造こうぞうをもつ電源でんげん装置そうちで、被覆ひふくアーク溶接ようせつ直流ちょくりゅう電源でんげんとして採用さいようされている。アークが安定あんていしやすく施工しこう範囲はんいひろくなるが、磁気じききといわれる不具合ふぐあい発生はっせいしやすく、構造こうぞう複雑ふくざつ価格かかくたかいというめん[10]一部いちぶのティグよう溶接ようせつ電源でんげんには、この機能きのう装備そうびされている場合ばあいがある[11]

てい電圧でんあつ特性とくせい[編集へんしゅう]

はん自動じどう溶接ようせつとくマグ溶接ようせつ)においてトーチの操作そうさ手作業てさぎょうである。トーチ操作そうさ多少たしょうのブレを許容きょようしつつアークちょう一定いっていたも機能きのうをもつ電源でんげんに、てい電圧でんあつ特性とくせいをもつ電源でんげんがある。この電源でんげんくわえ、溶加ざいであるワイヤの供給きょうきゅうじょうそくおくきゅう方式ほうしきにすることでアークのながさを一定いっていたもつことができる[12]てい電圧でんあつ特性とくせいとは、負荷ふか電流でんりゅう増減ぞうげんしても負荷ふか電圧でんあつ一定いっていとなる性質せいしつのことである。この特性とくせいをもつ電源でんげんはん自動じどう溶接ようせつおこなった場合ばあい、トーチのブレによってこされるアークちょう増減ぞうげんは、わずかな電圧でんあつ変化へんかとしてあらわれる。この電圧でんあつ変化へんかたい電流でんりゅうすうじゅうひゃくすうじゅうAのあいだおおきく変動へんどうするが、電流でんりゅうわったことにより溶接ようせつワイヤの溶融ようゆうりょうおおきく変化へんかする。一方いっぽうでワイヤの供給きょうきゅうじょうそくおこなわれているため、わずかしかけない(電流でんりゅうひくい)場合ばあいはワイヤが過剰かじょう供給きょうきゅうされるのでアークはすぐにちぢみ(電流でんりゅう増大ぞうだいし)、ぎゃく大量たいりょうける(電流でんりゅうたかい)場合ばあいはワイヤの供給きょうきゅう不足ふそくしていることからアークはすぐにながく(電流でんりゅう減少げんしょうすることに)なる。この修正しゅうせいにかかる時間じかん非常ひじょうみじかく、これをアークちょう自己じこ制御せいぎょ作用さよう[13]または電源でんげん自己じこ制御せいぎょ特性とくせい[14]という。なお、はん自動じどうアーク溶接ようせつでは、電流でんりゅう設定せっていはそのままワイヤのおくきゅう速度そくどになる。また、適正てきせいなアークちょうとなるように作業さぎょうしゃがアーク電圧でんあつ調節ちょうせつしなければならない。おな電流でんりゅうでもワイヤーみちほそくなると、ワイヤの溶融ようゆうりょうがり、局部きょくぶてきいれねつ増大ぞうだいする[15]したがって、ほそいワイヤーほどふかみやすい。

アーク溶接ようせつの溶滴移行いこう[編集へんしゅう]

溶接ようせつぼう溶接ようせつワイヤがけた溶融ようゆう金属きんぞくははざいじょう移動いどうすることを溶滴移行いこうという。この溶滴移行いこう様子ようす電圧でんあつ電流でんりゅう、シールドガス、溶接ようせつざい種類しゅるいなどによっていちじるしく変化へんかする。

てい電流でんりゅう状態じょうたいでは、アークねつにより溶融ようゆうした溶加ざい溶接ようせつぼうのこと)の先端せんたん溶融ようゆうしたははざい接触せっしょくし(短絡たんらく)、アークがえるとともに溶加ざいからははざいへとながれるように溶融ようゆう金属きんぞく移動いどうする。これを短絡たんらく移行いこうう。

炭酸たんさんガスアーク溶接ようせつにおけるこう電流でんりゅう状態じょうたいでは、溶融ようゆうした溶加ざいおおきなしずくになって移行いこうし、一部いちぶ溶融ようゆう金属きんぞくるなどの現象げんしょうしょうじる。これをグロビュール移行いこうという。った溶融ようゆう金属きんぞくスパッタといい、溶接ようせつビードのまわりにこびりき、溶接ようせつ外観がいかんわるくする原因げんいんとなる。しかし、うまくコントロールできればグロビュール移行いこう高速こうそく溶接ようせつができるという長所ちょうしょがある。

MAG溶接ようせつにおけるこう電流でんりゅう状態じょうたいでは、溶加ざいからははざいへの溶接ようせつ金属きんぞく移動いどう非常ひじょうちいさいしずく状態じょうたいおこなわれる。これをスプレー移行いこうう。スプレー移行いこうはスパッタがすくないため外観がいかんく、かつみもふかく、能率のうりつ溶接ようせつができる。

シールドガス[編集へんしゅう]

アーク溶接ようせつちゅうにおいて、溶融ようゆうしている金属きんぞく大気たいきせっすると、大量たいりょう窒素ちっそ金属きんぞくなかむ。溶融ようゆう金属きんぞく凝固ぎょうこするときに、この窒素ちっそ一気いっき析出せきしゅつあわとなってそのままかたまってしまう。この状態じょうたいブローホールといい、この状態じょうたいになると溶接ようせつ部分ぶぶん機械きかいてき強度きょうどいちじるしく低下ていかする。みず急速きゅうそくこおらせると、炭酸たんさんガス析出せきしゅつしてしろこおりになるが、これとおな現象げんしょうである。

このような溶接ようせつ欠陥けっかんふせぐために、適切てきせつなガスを溶接ようせつちゅうけることで空気くうきとアーク、あるいは空気くうき溶融ようゆう遮断しゃだんしている。このときもちいるガスはシールドガスとばれ、高温こうおんであっても化学かがくてき活性かっせい金属きんぞく反応はんのうしない、いわゆる活性かっせいガスであるヘリウムアルゴン、あるいは、活性かっせいではあるが様々さまざま要求ようきゅうによって実用じつようされた[16]二酸化炭素にさんかたんそもちいられており、ときには、水素すいそ酸素さんそなどを添加てんかしたシールドガスが使つかわれる[17]日本にっぽんでは二酸化炭素にさんかたんそ使つかった炭酸たんさんガスアーク溶接ようせつ主流しゅりゅう[18]である。

アークとシールドガス[編集へんしゅう]

シールドガスはそのとお溶融ようゆう金属きんぞく大気たいきから保護ほごする目的もくてきもあるが、アークそのものになるという重要じゅうよう機能きのうがある。アークとはプラズマ一種いっしゅともえ、気体きたい高温こうおん電離でんりしたものである。シールドガスがアークすることによって電子でんし空中くうちゅう移動いどうすることができるようになるので、アークは絶縁ぜつえんたいである空気くうきとはことなり電気でんきとお伝導でんどうたいであるとえる。補足ほそくとして、アークを「気化きかした金属きんぞく」とする誤解ごかい存在そんざいするが、前述ぜんじゅつとおり、アーク溶接ようせつにおけるアークはガスが電離でんりしたものであるので、これはあやまりである。

最初さいしょのアークは、最初さいしょに溶加ざい溶接ようせつぼう溶接ようせつワイヤのこと)がははざいとスパークした瞬間しゅんかんに、そのねつでシールドガスがプラズマすることによってしょうじる。アークは電気でんきとおすため、一度いちどアークがしょうじるとアークをかいして電気でんきながれるようになる。するとアーク自体じたい発熱はつねつし、周囲しゅういのシールドガスをイオン化いおんかする。アークはある段階だんかいまで成長せいちょうすると一定いってい条件下じょうけんか安定あんてい状態じょうたいはいる。そのアークが溶加ざいははざい溶融ようゆうさせていく。

シールドガスはアークを保護ほごするとともに、アークそのもののベースである。したがって、シールドガスの成分せいぶんはアークの状態じょうたいおおきく左右さゆうし、さらに溶接ようせつ結果けっかおおきな影響えいきょうあたえる。とく二酸化炭素にさんかたんそはアークの特性とくせいおおきく変化へんかさせる物質ぶっしつである。

シールドガスの種類しゅるい[編集へんしゅう]

シールドガスに使つかわれる物質ぶっしつ二酸化炭素にさんかたんそアルゴンいでヘリウム水素すいそ酸素さんそなどである。溶接ようせつほう溶接ようせつ条件じょうけんによって、これらを単体たんたいもしくは混合こんごうしてもちいる[17]。また、米国べいこくではヘリウムも比較的ひかくてきおお使用しようされている。

アルゴンは空気くうきちゅうふくまれているので、沸点ふってんちがいを利用りようして液化えきかした空気くうきから生産せいさんされる。しかし、アルゴンと酸素さんそ沸点ふってんちかい(それぞれ-186℃と-183℃)ので、分離ぶんりむずかしい。そのため、品質ひんしつわるいアルゴンガスを使用しようすると溶接ようせつのスラグがおおくなり、欠陥けっかん発生はっせいしやすい。 くわえて、アルゴンガスとヘリウムガスはその作用さようすこことなる[19]。シールドガスのメーカーはこれらのガスをぜる比率ひりつ研究けんきゅうし、目的もくてきべつ最適さいてきなシールドガスを販売はんばいしている。たとえば、高速こうそく溶接ようせつのできるシールドガス、溶接ようせつ品質ひんしつくできるシールドガス、ふかみのられるシールドガスなどである。

アーク溶接ようせつにおける二酸化炭素にさんかたんそはたら[編集へんしゅう]

軟鋼なんこうなどの大量たいりょう生産せいさんもちいられる溶接ようせつもちいるシールドガスとしては、アルゴンなどの活性かっせいガスは比較的ひかくてき高価こうかで、経済けいざいてきではない。また、活性かっせいシールドガスは清浄せいじょう作用さようがないので、欠陥けっかん原因げんいんになることがある[16]。これらを解決かいけつするひとつの方法ほうほうとして考案こうあんされたものが炭酸たんさんガス(CO2)によるシールドである。

CO2高熱こうねつ分解ぶんかい酸素さんそ一酸化いっさんか炭素たんそかれる。これが電離でんりしてプラズマとなり、アークを形成けいせいする。一酸化いっさんか炭素たんそはがねたいして還元かんげんせいしめす(保護ほごする方向ほうこうはたらく)が、酸素さんそ酸化さんかせい、つまりこう性質せいしつ低下ていかさせるはたらきがある。このため、シールドガスに炭酸たんさんガスをもちいる場合ばあいは、溶接ようせつワイヤのなかだつ酸化さんかせい元素げんそ(たとえば、MnやSiなど)を添加てんかしておく必要ひつようがある[16]。これによって溶融ようゆうないには酸化さんかマンガンや酸化さんかケイ素けいそ発生はっせいするが、これらはブローホールとはなり溶融ようゆう表面ひょうめんがり、スラグを形成けいせいする[20]。ただし、溶接ようせつ条件じょうけんによっては溶接ようせつ内部ないぶにスラグがはいみ、溶接ようせつ欠陥けっかんしょうじてしまうこともあので注意ちゅうい必要ひつようである。 また、CO2高温こうおん分解ぶんかいするさいは、結果けっかとして急激きゅうげき体積たいせき膨張ぼうちょうし、さらにアークから熱量ねつりょううばうことになる。このときアークは周囲しゅういから冷却れいきゃくされてほそするどくなり、せま範囲はんいねつ集中しゅうちゅうしやすくなる。これをねつてきピンチ効果こうか[21]という。その結果けっか、アークは溶滴をつつまず、溶滴の下端かたんより発生はっせいする。するとローレンツつとむにより溶滴がげられ溶滴はおおきく成長せいちょうしたのち溶融ようゆう移行いこうする。このあいだもアークは途切とぎれることなく発生はっせいつづけているのでいれねつ関係かんけいじょうははざいふかみができやすく、かつはや溶接ようせつ可能かのうになり、溶接ようせつ対象たいしょうぶつへのねつ影響えいきょうすくなくなる。これらの現象げんしょう溶接ようせつたいして、スパッタの発生はっせいおおくなることや溶接ようせつ欠陥けっかん外観がいかんわるくするというわる要素ようそと、みがふかく、ねつ影響えいきょうすくなく、はや溶接ようせつができるという要素ようそあたえる。

なお、イオン化いおんか傾向けいこうつよアルミニウムのような金属きんぞく溶接ようせつにおいてCO2はシールドガスとしててきしていない。発生はっせいした酸素さんそたいして添加てんかざい機能きのうできず、還元かんげんできないためである。

上記じょうきのようにCO2活性かっせいであるがゆえ溶接ようせつちゅうはアルゴンガスなどにくらべて複雑ふくざつ状態じょうたいとなるので、使用しようさいしては十分じゅうぶん知識ちしき技量ぎりょう必要ひつようになる。目的もくてきによってアルゴンガスと使つかけ、あるいは併用へいようすることが推奨すいしょうされる。

二酸化炭素にさんかたんそでシールドする溶接ようせつ炭酸たんさんガスアーク溶接ようせつ一方いっぽう二酸化炭素にさんかたんそとアルゴンガス両方りょうほう利用りようする溶接ようせつほうがあり、これを混合こんごうガス・マグ溶接ようせつという。CO2が20%、アルゴンが80%の比率ひりつのシールドガスは混合こんごうガス・マグ溶接ようせつにおける標準ひょうじゅんガスとして使用しようされている[17]

アーク溶接ようせつ材料ざいりょう[編集へんしゅう]

ねつ影響えいきょう[編集へんしゅう]

突合つきあわをアーク溶接ようせつ接合はぎあわしたときのねつ影響えいきょうしきもっと部分ぶぶん溶接ようせつビード。

金属きんぞく一部分いちぶぶんだけ加熱かねつ冷却れいきゃくするといがむ。そのため溶接ようせつおこなうと溶接ようせつされた部材ぶざいいがんでしまう。

金属きんぞく一部分いちぶぶんだけ加熱かねつすると当然とうぜんその部分ぶぶん膨張ぼうちょうする。しかし周囲しゅういえたままなのである。すると、膨張ぼうちょうした部分ぶぶん周囲しゅういから圧縮あっしゅくけるかたちになる。その結果けっか加熱かねつされた部分ぶぶんえたままのところよりやわらかいので、加熱かねつされた部分ぶぶんちぢ方向ほうこう塑性そせい変形へんけいすることになる。さらに、この一部分いちぶぶんだけ加熱かねつした金属きんぞく常温じょうおんまで冷却れいきゃくすると、加熱かねつけた部分ぶぶんもと体積たいせきよりちいさくなり、周囲しゅうい強烈きょうれつちからることになる。この結果けっか製品せいひん全体ぜんたいいがむ。また加熱かねつけた部分ぶぶん周囲しゅういにはつよ引張ひっぱ応力おうりょくのこる。これを残留ざんりゅう応力おうりょくといい、最終さいしゅうてき製品せいひん強度きょうど影響えいきょうする。

溶接ようせつ周囲しゅういではははざい組織そしき変化へんか発生はっせいする。金属きんぞく規格きかくごとに結晶けっしょう構造こうぞう化学かがく組成そせいめられているが、溶接ようせつのように急激きゅうげき加熱かねつ冷却れいきゃくをしてしまうと、これらの結晶けっしょう構造こうぞう化学かがく組成そせい変化へんかする。

鉄鋼てっこう[編集へんしゅう]

Fe-C状態じょうたい
炭素たんそりょう温度おんどにより、てつはさまざまな組織そしきとなる。

アーク溶接ようせつしゅたる対象たいしょう材料ざいりょう鉄鋼てっこうである。

みぎはFe-C状態じょうたいい、たてじく温度おんどよこじく炭素たんそりょうとなっている。鉄鋼てっこう温度おんど炭素たんそりょうによりあい変化へんかこし、物理ぶつりてき特性とくせいちが組織そしき変化へんかする。みぎ十分じゅうぶん冷却れいきゃく時間じかんった場合ばあい鉄鋼てっこうあい変化へんかあらわしている。溶接ようせつ場合ばあい急激きゅうげき温度おんど変化へんかともなうため、みぎしめされるあい変化へんかはげしく遷移せんいし、加熱かねつ冷却れいきゃく仕方しかたによって様々さまざま組織そしき変化へんかする。

そのためいちくち鉄鋼てっこうっても様々さまざま種類しゅるいがあり、アーク溶接ようせつてきさない種類しゅるい鉄鋼てっこうもある。また、溶接ようせつ可能かのう鉄鋼てっこうでも、溶接ようせつするにあたって特別とくべつ処理しょり必要ひつようとなるものもある。このような溶接ようせつたいする材料ざいりょう性質せいしつ溶接ようせつせいう。一般いっぱんてきかた材料ざいりょうほど溶接ようせつしにくい。

てつをアーク溶接ようせつすると、溶融ようゆうえきしょうから急激きゅうげきかたしょう移行いこう急激きゅうげき冷却れいきゃくされることになる。また溶接ようせつ周辺しゅうへん急激きゅうげき加熱かねつのあと急激きゅうげき冷却れいきゃくけることになる。てつはこれらのねつ影響えいきょうによって成分せいぶん結晶けっしょう構造こうぞう変化へんかし、てつ種類しゅるいによっては強度きょうど不足ふそくしたり、変形へんけいしたり、亀裂きれつしょうじたりする。鋼材こうざいをある程度ていどまでねっしてから急激きゅうげき冷却れいきゃくすると、いわゆるはいった状態じょうたいになって硬化こうかこす。鋼材こうざいには炭素たんそふくまれているためで、この炭素たんそてつ化学かがく反応はんのうこしたり、結晶けっしょう構造こうぞう変化へんかさせるなど結果けっかとして硬化こうかきる。鉄鋼てっこうかたくなるともろくなるため機械きかいてき強度きょうど低下ていかすることがある。そのため、一般いっぱん炭素たんそすくない鋼材こうざいのほうが溶接ようせつせいいとされる。

てつ硬化こうかさせる物質ぶっしつ炭素たんそだけではなく、マンガンやシリコンなども硬化こうか原因げんいんとなる。これらの物質ぶっしつ影響えいきょう炭素たんそ影響えいきょう換算かんさんしたものを炭素たんそとうりょうう。

アークの陰極いんきょくがわから電子でんしすのは、けた溶接ようせつははざい表面ひょうめんのスラグとばれる酸化さんかぶつそうかぶ陰極いんきょくてんばれる部分ぶぶんからである。てつはアルミやチタンとことなり表面ひょうめん酸化さんかまくおおうことはほとんどいため、アークの電流でんりゅう安定あんていてきながすためにはチタン酸化さんかぶつのルチール(TiO2)をふくフラックス使用しようする。 アルミ、シリコン、マンガンなどの酸化さんかぶつより、チタンの酸化さんかぶつ電気でんきとお良導体りょうどうたいであるためである。溶接ようせつワイヤにもチタンがくわえられる。 鋼鉄こうてつ溶接ようせつのシールドガスに炭酸たんさんガスをもちいたり、アルゴンガスに少量しょうりょう酸素さんそくわえるのは、酸化さんかぶつ形成けいせい促進そくしんさせるためである。 また、溶接ようせつワイヤ表面ひょうめんにチタン酸化さんかぶつ塗布とふすることで「溶滴」をちいさくしている。溶融ようゆう酸化さんかぶつが溶滴の表面ひょうめんうすおおうことで表面張力ひょうめんちょうりょくがり、溶接ようせつワイヤからちいさなつぶ状態じょうたい溶接ようせつははざい表面ひょうめんんでゆくためである。自動車じどうしゃ鋼板こうはんなどでの薄板うすいた溶接ようせつではチタン酸化さんかぶつ塗布とふせず、おおきな溶滴によってワイヤとははざい直接ちょくせつ接触せっしょくさせ短絡たんらくさせることでアークがうす鋼板こうはんけないようにしている。

チタン酸化さんかぶつ(ルチール)が溶接ようせつ部位ぶいむが、このチタンこう部分ぶぶん結晶けっしょう構造こうぞうはチタン酸化さんかぶつかくとなってしょうじる結晶けっしょうつぶかずμみゅーm以下いか微細びさいとなり、そのうつぼせい良好りょうこうとなる。溶接ようせつ部位ぶいふくまれる酸化さんかぶつ鋼鉄こうてつははざいの10ばい程度ていどとなるが、強度きょうどとうではむしろすぐれたものとなる[22]

軟鋼なんこう[編集へんしゅう]

炭素たんそが0.25%以下いか硬化こうか無視むしできる鋼材こうざい軟鋼なんこうう。もっと一般いっぱんてき鋼材こうざい強度きょうどは400N/mm2程度ていどである。てい炭素たんそこう普通ふつうこうなどともう。

JIS規格きかくでは、一般いっぱん構造こうぞうよう圧延あつえん鋼材こうざいSS400という鉄鋼てっこう軟鋼なんこう相当そうとうするが、JIS規格きかくではリン硫黄いおう成分せいぶんのみが規定きていされており、炭素たんそ成分せいぶん規定きていされていない。したがってメーカーやロットによってはおなじSS400でも溶接ようせつてきさないものもある。

そのため溶接ようせつよう規定きていされた軟鋼なんこうとしてはSMざいとSNざい規定きていされている。SNざいとく建築けんちくようとして規定きていされた材料ざいりょうで、だい地震じしんなどで十分じゅうぶん強度きょうどられるように成分せいぶん調整ちょうせい検査けんさ義務付ぎむづけられた鋼材こうざいである。軟鋼なんこうとく溶接ようせつせいわる材料ざいりょうではないが、比較的ひかくてきやわらかい鋼材こうざいのため、溶接ようせつりょうおおいとおおきなゆがみがしょうじる。そのため形状けいじょうによってはちぢだいぎゃくゆが冷却れいきゃくなどの対策たいさく必要ひつようになる。

余談よだんだが、日本にっぽんではてつはがね一緒いっしょくたにされているが、日本にっぽん以外いがいではまったちが物質ぶっしつとして認識にんしきする地域ちいきもある。日本にっぽんのSS400だと規格きかくじょうくにによってははがねとして分類ぶんるいされずにクズてつ同然どうぜん見方みかたをされることがある。

こう張力ちょうりょくこう[編集へんしゅう]

こう張力ちょうりょくこうとはJISに規定きていされた鉄鋼てっこうで、490N/mm2以上いじょう一般いっぱん構造こうぞうよう鉄鋼てっこうう。溶接ようせつせいきじんせいなどに配慮はいりょすることもJISに規定きていされている。溶接ようせつせい規格きかくはいっているため溶接ようせつせいわるくないが、かたいため形状けいじょう溶接ようせつりょうによっては亀裂きれつしょうじる場合ばあいもある。また軟鋼なんこうくらべると炭素たんそおおいため、せいつよく、アーク溶接ようせつおこなうとおおかれすくなかれ硬化こうかこす。強度きょうどてき問題もんだいしょうじる場合ばあいは、予熱よねつこう熱処理ねつしょりなどが必要ひつようとなる。

TMCPこう[編集へんしゅう]

炭素たんそ合金ごうきんすくなくし、溶接ようせつしやすいこう張力ちょうりょくこうとするため、普通ふつう圧延あつえん鋼板こうはんよりもひく温度おんど精密せいみつ温度おんど制御せいぎょしつつ圧延あつえんした鋼材こうざいである。組織そしき微細びさいなため、炭素たんそとうりょうすくなくても普通ふつう圧延あつえん鋼板こうはんなみの強度きょうどがある。炭素たんそとうりょうすくないのでねつ影響えいきょう硬化こうかおよきじんせい低下ていかすくなく溶接ようせつせい良好りょうこうである。

TMCPこう溶接ようせつよう開発かいはつされた素材そざいだが、ほかにも様々さまざま鋼材こうざい溶接ようせつよう開発かいはつされている。とく低温ていおんつよいものや、高温こうおんにつよいもの、サビにつよいものなど目的もくてきおうじたものがある。

継手つぎて形状けいじょう[編集へんしゅう]

溶接ようせつ形状けいじょう

接合せつごうするははざいははざい配置はいちのしかたにはおおくの種類しゅるいがある。用途ようとにより使つかける。その一部いちぶみぎしめす。

  1. わせ
  2. ひらきさきりょうひらきさき
  3. かさ
  4. すみにく

いずれの溶接ようせつふたつの材料ざいりょう均等きんとうねつくわえることが基本きほんであり断面だんめん方向ほうこうねら角度かくどようである。あやまった溶接ようせつほう溶接ようせつ材料ざいりょう適用てきようしたり、ははざいあたえる熱量ねつりょう過大かだいまたは過小かしょうであった場合ばあい期待きたいする強度きょうどられず部材ぶざい破断はだんする。

わせ別名べつめい、バット溶接ようせつとかIバット(アイバット)などとう。アーク溶接ようせつ場合ばあい、ピッタリくっついたわせ施工しこうしにくい。そのため、ウラガネ(裏金うらがねまたはうらてつ)といううすいプレートを裏側うらがわけ、突合つきあわせの間隔かんかくいたあつ以上いじょうるのがふつうである。

ひらきさき溶接ようせつしやすいのだが、ひらきさきつくるための加工かこうコストが必要ひつようになる。またのようなりょうひらきさき場合ばあいははざいうす部分ぶぶんちてしまうため、ウラガネを使つかうのが普通ふつうである。

かさすみにくちゅうあつばん溶接ようせつもっと一般いっぱんてき溶接ようせつである。にはいが片側かたがわひらきさきすみにくおおい。

アークエアガウジング[編集へんしゅう]

アークエアガウジングとは、完全かんぜん溶込とけこめ溶接ようせつおこな場合ばあい片面かためんからの溶接ようせつ反対はんたいがわよりさき溶着ようちゃく金属きんぞくはつそうを、アークねつかしエアーでばす処理しょりなどをあらわす。

溶接ようせつ技術ぎじゅつ技能ぎのう資格しかく[編集へんしゅう]

連続れんぞくしてビード(溶接ようせつこんがり)をくことを(ビードはくと表現ひょうげんするのがただしい。英語えいごではビード・オン・プレート(bead on plate)とぶ)ストレート・ビードと比較的ひかくてきうす材料ざいりょうてきしている。また進行しんこう方向ほうこうたいして振幅しんぷくあたえつつすすんでいたビードをウィービング・ビードと多層たそうもり溶接ようせつなどの比較的ひかくてきあついたてきしている(時折ときおり誤記ごきされているが、ウェービング(waving)ではなくウィービングweaving)がただしい呼称こしょうであり、“わせるように”という意味いみである。文字通もじどおふたつのいたわせるように進行しんこうする)。

国際こくさい標準ひょうじゅん機構きこう(ISO)では溶接ようせつ作業さぎょうは「作業さぎょう製品せいひん試験しけん検査けんさでは工程こうてい結果けっか十分じゅうぶん検証けんしょうできず、事前じぜん作業さぎょう認証にんしょう必要ひつようとする特殊とくしゅ工程こうてい」に位置いちづけられている[23]

溶接ようせつ作業さぎょう技能ぎのう資格しかく国際こくさい規格きかくすすんでおり、国際こくさい溶接ようせつエンジニア(IWE)、国際こくさい溶接ようせつテクノロジスト(IWT)、国際こくさい溶接ようせつスペシャリスト(IWS)、国際こくさい溶接ようせつプラクティショナー(IWP)といった国際こくさい溶接ようせつ技術ぎじゅつしゃ資格しかくがある[24]

労働ろうどう安全あんぜん[編集へんしゅう]

アーク溶接ようせつ強烈きょうれつ紫外線しがいせん発生はっせいする。そのつよさは、アークから50cmはなれた皮膚ひふすう秒間びょうかんアークこうさらしただけで炎症えんしょうこすほどであり、日光にっこうではない。長時間ちょうじかんアークこうさらした場合ばあい火傷かしょうみずぶくれ、シミなどの症状しょうじょう発生はっせいする。なん至近しきん距離きょり強烈きょうれつなアークこう皮膚ひふさらすと最悪さいあく皮膚ひふがんいた場合ばあいもある。通常つうじょう溶接ようせつひかりでは日焼ひやけとおなじような炎症えんしょうこしかわけるものの、小麦色こむぎいろはだにはならない(しかしシミはできる)。裸眼らがんでアークこう場合ばあい電光でんこうせいえんでんえん)という炎症えんしょうこす。なん電光でんこうせいえんになると視力しりょく低下ていか最悪さいあく場合ばあい失明しつめいいたる。このほか、アーク溶接ようせつによって発生はっせいする紫外線しがいせん波長はちょうみじかく、空気くうきちゅうふくまれる酸素さんそ分子ぶんしオゾン変化へんかさせる[25]。オゾンは酸化さんかりょくつよく、生体せいたいにも打撃だげきあたえる。

また金属きんぞくヒュームという酸化さんかてつからなるけむり発生はっせいし、大量たいりょうった場合ばあい金属きんぞくヒュームねつじんぱいなどの深刻しんこく病気びょうき原因げんいんとなる。ヒュームには一酸化いっさんか炭素たんそオゾンざっており、換気かんきには十分じゅうぶん注意ちゅういしなければならない。

れい年度ねんど(2021ねん4がつにち施行しこう)より、溶接ようせつヒュームが特定とくてい化学かがく物質ぶっしつだい2るい物質ぶっしつ)に指定していされた。溶接ようせつヒュームちゅうふくまれるマンガンが神経しんけい障害しょうがいとう深刻しんこく健康けんこう障害しょうがいこすおそれがあることがあきらかとなったため、労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせいほう特定とくてい化学かがく物質ぶっしつ障害しょうがい予防よぼう規則きそく改正かいせいおこなわれた。ぎょうとして作業さぎょうおこな場合ばあいには、作業さぎょうしゃ近辺きんぺんでの空気くうきちゅうマンガン濃度のうど測定そくてい義務付ぎむづけられており、マンガンおよびその化合かごうぶつとして 0.05mg/m^3の抑制よくせい濃度のうど規定きていされている。抑制よくせい濃度のうど満足まんぞくできない場合ばあいには、局所きょくしょ換気かんき装置そうち全体ぜんたい換気かんき装置そうちけるとう対策たいさくおこない、基準きじゅん以下いか濃度のうどとする必要ひつようがある。これまで以上いじょうに、溶接ようせつヒュームの対策たいさくについては注意ちゅうい必要ひつようである。

防護ぼうご装備そうび[編集へんしゅう]

強力きょうりょく紫外線しがいせんけるため、アーク溶接ようせつ作業さぎょうには長袖ながそでちょうズボンの作業さぎょうふく溶接ようせつめんかわ手袋てぶくろ必須ひっすである。さらに、ヒュームをけるために防塵ぼうじんマスクが必須ひっすである。また必要ひつようおうじて安全あんぜんくつスパッツ(あしカバー)、厚手あつでたいねつエプロン、ヘルメットゴーグルなどを着用ちゃくようしなければならない。さらに場合ばあいによってはワセリンねつ防止ぼうしクリームなどの表皮ひょうひ保護ほござい(ゲルじょうクリームじょうもののぞましい)を顔面がんめんや頸胸周囲しゅういなどに事前じぜん塗布とふしておくことのぞましい。また、溶接ようせつ作業さぎょうしゃ更衣ころもがえしつ休憩きゅうけいしつなどには衣服いふくいた粉塵ふんじん装置そうちや、空気くうき清浄せいじょうなどを設置せっちすることがのぞましい。

従事じゅうじしゃ資格しかく[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせいほう規定きていにより、事業じぎょうぬし従業じゅうぎょういんをアーク溶接ようせつ従事じゅうじさせるにはアーク溶接ようせつ作業さぎょうしゃ特別とくべつ教育きょういくけさせなければならない。

出典しゅってん引用いんよう[編集へんしゅう]

  1. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.22
  2. ^ 安田やすだ克彦かつひことき「溶接ようせつ基礎きそのきそ』日刊工業新聞社にっかんこうぎょうしんぶんしゃ、2006ねん、19ぺーじ
  3. ^ 安田やすだ克彦かつひことき「溶接ようせつ基礎きそのきそ』日刊工業新聞社にっかんこうぎょうしんぶんしゃ、2006ねん、21ぺーじ
  4. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.17
  5. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.71
  6. ^ 現代げんだい溶接ようせつ技術ぎじゅつ大系たいけい だい31かん p.42,p.43
  7. ^ 現代げんだい溶接ようせつ技術ぎじゅつ大系たいけい だい36かん p.9
  8. ^ a b 現代げんだい溶接ようせつ技術ぎじゅつ大系たいけい だい2かん p.26
  9. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.72
  10. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.73
  11. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.74
  12. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.81
  13. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.82
  14. ^ 現代げんだい溶接ようせつ技術ぎじゅつ大系たいけい だい2かん p.27
  15. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.169
  16. ^ a b c 平井ひらい 三友さんゆう和田わだ にんひろし塚本つかもと 晃久あきひさ、『機械きかい工作こうさくほう』、コロナしゃ、2000、ISBN 4-339-04453-9、58ぺーじ
  17. ^ a b c 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.129
  18. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.77
  19. ^ 現代げんだい溶接ようせつ技術ぎじゅつ大系たいけい だい2かん p.38
  20. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.79
  21. ^ 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ p.84
  22. ^ しん日本にっぽん製鉄せいてつ編著へんちょ 『てつ鉄鋼てっこうがわかるほん』 日本にっぽん実業じつぎょう出版しゅっぱんしゃ 2004ねん11がつ10日とおか初版しょはん発行はっこう ISBN 4534038356
  23. ^ 安田やすだ克彦かつひことき「溶接ようせつ基礎きそのきそ』日刊工業新聞社にっかんこうぎょうしんぶんしゃ、2006ねん、38ぺーじ
  24. ^ 安田やすだ克彦かつひことき「溶接ようせつ基礎きそのきそ』日刊工業新聞社にっかんこうぎょうしんぶんしゃ、2006ねん、39ぺーじ
  25. ^ 軽金属けいきんぞく接合せつごう

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 野原のはら 英孝ひでたか図解ずかい入門にゅうもん 現場げんば役立やくだ溶接ようせつ知識ちしき技術ぎじゅつ株式会社かぶしきがいしゃ 秀和しゅうわシステム、2012ねんISBN 978-4798032252 
  • 小椋おぐら 岡田おかだ あきら島田しまだ わたる鵜飼うかい じゅん現代げんだい溶接ようせつ技術ぎじゅつ大系たいけい だい36かんさんほう出版しゅっぱん、1980ねん 
  • 松山まつやま 邦雄くにお へん現代げんだい溶接ようせつ技術ぎじゅつ大系たいけい だい31かんさんほう出版しゅっぱん、1980ねん 
  • 荒田あらた よしあきら西口にしぐち おおやけ現代げんだい溶接ようせつ技術ぎじゅつ大系たいけい だい2かんさんほう出版しゅっぱん、1980ねん 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

関連かんれん企業きぎょう[編集へんしゅう]