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アーク溶接 ようせつ
溶接 ようせつ ロボットによるアーク溶接 ようせつ の様子 ようす
アーク溶接 ようせつ (アークようせつ、英語 えいご :arc welding)とは、空気 くうき (気体 きたい )中 ちゅう の放電 ほうでん 現象 げんしょう (アーク放電 ほうでん )を利用 りよう して、同 おな じ金属 きんぞく 同士 どうし をつなぎ合 あ わせる溶接 ようせつ 方法 ほうほう である[1] 。アーク溶接 ようせつ の用途 ようと は広 ひろ く、自動車 じどうしゃ 、鉄道 てつどう 車両 しゃりょう 、船舶 せんぱく 、航空機 こうくうき 、建築 けんちく 物 ぶつ 、建設 けんせつ 機械 きかい など、あらゆる金属 きんぞく 構造 こうぞう 物 ぶつ に一般 いっぱん 的 てき に使 つか われている。母 はは 材 ざい は鉄鋼 てっこう が多 おお いが、アルミニウム やチタン などほかの金属 きんぞく にも利用 りよう される。
特徴 とくちょう と種類 しゅるい [ 編集 へんしゅう ]
母 はは 材 ざい と呼 よ ばれる溶接 ようせつ 対象 たいしょう と電極 でんきょく (溶接 ようせつ 棒 ぼう 、溶接 ようせつ ワイヤ、TIGトーチ など)を接触 せっしょく させて通電 つうでん させた後 のち 、双方 そうほう を引 ひ き離 はな すと母 はは 材 ざい と電極 でんきょく の間 あいだ にアークが発生 はっせい する。発生 はっせい したアークの温度 おんど は5,000 ℃から20,000 ℃程度 ていど あり、これを熱源 ねつげん とした高熱 こうねつ で、母 はは 材 ざい と溶加材 ざい 、あるいは溶接 ようせつ 棒 ぼう を溶融 ようゆう させて一体化 いったいか する接合 せつごう 法 ほう である。従 したが って、基本 きほん 的 てき にアーク溶接 ようせつ の対象 たいしょう は電気 でんき 伝導 でんどう 体 たい のみである。電気 でんき 溶接 ようせつ と言 い われることもあるが、このように呼 よ ぶ場合 ばあい は抵抗 ていこう 溶接 ようせつ も含 ふく まれる。
消耗 しょうもう 電極 でんきょく 式 しき と非 ひ 消耗 しょうもう 電極 でんきょく 式 しき [ 編集 へんしゅう ]
ガスシールド・アーク溶接 ようせつ の模 も 式 しき 図 ず 1.溶接 ようせつ ワイヤ 2.シールドガス 3.ノズル 4.電極 でんきょく 5.アーク 6.溶融 ようゆう 池 ち 7.母 はは 材 ざい
半 はん 自動 じどう 溶接 ようせつ によるレ型 がた 開 ひらき 先 さき の多層 たそう 盛 もり 溶接 ようせつ
多 おお くの場合 ばあい 、アーク溶接 ようせつ は電極 でんきょく の溶融 ようゆう の可否 かひ によって2つに大別 たいべつ される。
電極 でんきょく が溶融 ようゆう し、溶滴となって母 はは 材 ざい に移行 いこう する消耗 しょうもう 電極 でんきょく 式 しき 溶接 ようせつ (溶極式 しき )[2] と、電極 でんきょく は溶融 ようゆう せず溶加材 ざい (溶接 ようせつ 棒 ぼう )を溶融 ようゆう 池 ち に送 おく り込 こ み母 はは 材 ざい へ溶 と かし込 こ む非 ひ 消耗 しょうもう 電極 でんきょく 式 しき 溶接 ようせつ (非 ひ 溶極式 しき )[3] である。また、この2 ふた つの方式 ほうしき それぞれを、主 おも にシールド方法 ほうほう で分類 ぶんるい すると以下 いか のようになる[4] 。
消耗 しょうもう 電極 でんきょく 式 しき (溶極式 しき )
非 ひ 消耗 しょうもう 電極 でんきょく 式 しき (非 ひ 溶極式 しき )
ガスシールドアーク溶接 ようせつ [ 編集 へんしゅう ]
ティグ溶接 ようせつ 、ミグ溶接 ようせつ 、マグ溶接 ようせつ 、炭酸 たんさん ガスアーク溶接 ようせつ では、溶接 ようせつ 部 ぶ をアルゴン やヘリウム 、二酸化炭素 にさんかたんそ のガスで覆 おお い、アークの安定 あんてい 化 か と溶融 ようゆう 金属 きんぞく を大気 たいき から保護 ほご していることから、ガスシールドアーク溶接 ようせつ と分類 ぶんるい する場合 ばあい がある。また、この目的 もくてき で使用 しよう されるガスをシールドガスと呼 よ ぶ。
ミグ溶接 ようせつ 、マグ溶接 ようせつ 、炭酸 たんさん ガスアーク溶接 ようせつ は消耗 しょうもう 電極 でんきょく 式 しき であるので、溶接 ようせつ 設備 せつび の性質 せいしつ 上 じょう 溶加材 ざい (溶接 ようせつ ワイヤ)の連続 れんぞく 供給 きょうきゅう が可能 かのう になっており、溶接 ようせつ の中 なか ではスポット溶接 ようせつ と並 なら び、最 もっと も自動 じどう 化 か が進 すす んでいる。ガスシールドアーク溶接 ようせつ では進行 しんこう 方向 ほうこう にノズルを向 む けて、右 みぎ 利 き きなら右 みぎ から左 ひだり へ、左利 ひだりき きなら左 ひだり から右 みぎ へ進 すす む方法 ほうほう を前進 ぜんしん 法 ほう 、逆 ぎゃく に進行 しんこう 方向 ほうこう と反対 はんたい にノズルを向 む けて進 すす む方法 ほうほう を後退 こうたい 法 ほう と呼 よ び、用途 ようと や母 はは 材 ざい 形状 けいじょう によって使 つか い分 わ けられている。なお、シールドガスにヘリウムやアルゴンなどの不 ふ 活性 かっせい ガスを用 もち いる方式 ほうしき をイナートガスアーク溶接 ようせつ という。
被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ は原理 げんり 的 てき に自動 じどう 化 か ができずすべて手作業 てさぎょう で行 おこな うので、手 て 溶接 ようせつ 、手 て 棒 ぼう 溶接 ようせつ と言 い うことがあり[5] 、このように呼 よ ぶ場合 ばあい は被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ のことを指 さ す。被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ で使用 しよう する溶接 ようせつ 棒 ぼう は、金属 きんぞく 芯線 しんせん を被覆 ひふく 材 ざい と呼 よ ばれる数 すう mm程度 ていど の厚 あつ さのある保護 ほご 材 ざい で覆 おお っている。溶接 ようせつ 時 じ に被覆 ひふく 材 ざい はアークの高温 こうおん によりガス化 か するので、溶接 ようせつ 部 ぶ はシールドされ大気 たいき 中 ちゅう の窒素 ちっそ や酸素 さんそ が溶接 ようせつ 部 ぶ に混入 こんにゅう するのを防止 ぼうし している。また、被覆 ひふく 材 ざい は溶接 ようせつ 金属 きんぞく に対 たい し脱 だつ 酸 さん 作用 さよう があり、スラグとなってビードを保護 ほご することでビード形状 けいじょう の形成 けいせい を整 ととの える働 はたら きもある[6] 。被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ での進行 しんこう 方向 ほうこう は、右 みぎ 利 き きなら左 ひだり から右 みぎ へ、左利 ひだりき きなら右 みぎ から左 ひだり へ、いずれの場合 ばあい も進行 しんこう 方向 ほうこう に対 たい して5度 ど から10度 ど 傾 かたむ けて傾 かたむ けた方向 ほうこう に進 すす む。
半 はん 自動 じどう 溶接 ようせつ [ 編集 へんしゅう ]
溶接 ようせつ 機器 きき によって、連続 れんぞく 的 てき に溶加材 ざい (ワイヤなど)とシールドガスを供給 きょうきゅう し、さらにアーク長 ちょう を一定 いってい に保 たも って行 おこな われる溶接 ようせつ を、手 て 棒 ぼう 溶接 ようせつ に対 たい し半 はん 自動 じどう 溶接 ようせつ と言 い う[7] 。前述 ぜんじゅつ の被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ は溶接 ようせつ 棒 ぼう を溶接 ようせつ 材 ざい として使 つか うが、この溶接 ようせつ 棒 ぼう は比較的 ひかくてき 短 みじか いため、しばしば短 みじか くなった溶接 ようせつ 棒 ぼう を交換 こうかん する必要 ひつよう があり、大量 たいりょう に溶接 ようせつ を行 おこな うには適 てき していない。これに対 たい し半 はん 自動 じどう アーク溶接 ようせつ では溶接 ようせつ 材 ざい として非常 ひじょう に長 なが いワイヤーを使 つか うことにより、連続 れんぞく して大量 たいりょう に溶接 ようせつ することを目的 もくてき としたものである。半 はん 自動 じどう 溶接 ようせつ はガスシールドアーク溶接 ようせつ なので風 ふう に弱 よわ く、屋外 おくがい では使用 しよう しにくいので、おもに工場 こうじょう 内 ない で使 つか われる。
アークの電気 でんき 的 てき 特性 とくせい [ 編集 へんしゅう ]
アーク溶接 ようせつ において重要 じゅうよう なことは適切 てきせつ な電流 でんりゅう 値 ち を維持 いじ しつつ溶接 ようせつ を連続 れんぞく して行 おこな うことである。しかし、電極 でんきょく の消耗 しょうもう や、手作業 てさぎょう の場合 ばあい は作業 さぎょう 者 しゃ の手 て のブレなどで電極 でんきょく の位置 いち が変 か わるとアークの長 なが さが変化 へんか してしまい、アークにかかる電圧 でんあつ (アーク電圧 でんあつ )が大 おお きく変化 へんか する。電圧 でんあつ が変化 へんか することで電流 でんりゅう 値 ち が変化 へんか し、安定 あんてい した溶接 ようせつ を行 おこな うことが困難 こんなん になる。また、炭酸 たんさん ガスアーク溶接 ようせつ のような半 はん 自動 じどう 溶接 ようせつ に用 もち いられる溶接 ようせつ 機 き は電圧 でんあつ 値 ち と電流 でんりゅう 値 ち を任意 にんい に選択 せんたく する必要 ひつよう があり、作業 さぎょう 者 しゃ は工学 こうがく 的 てき 知見 ちけん に基 もと づいた適切 てきせつ な値 ね を設定 せってい しなければならない。
アーク
通常 つうじょう の電気 でんき 伝導 でんどう 体 たい の場合 ばあい 、抵抗 ていこう 値 ち は電圧 でんあつ 値 ち によらず一定 いってい であると見 み なせるが、アークの場合 ばあい は電圧 でんあつ が上下 じょうげ することによって抵抗 ていこう 値 ち が大 おお きく増減 ぞうげん する。電圧 でんあつ が低 ひく い場合 ばあい 、右 みぎ 図 ず (1)のようにアークは短 みじか くなり抵抗 ていこう 値 ち が減 へ る。逆 ぎゃく に電圧 でんあつ が高 たか い場合 ばあい は、右 みぎ 図 ず (3)のようにアーク長 ちょう は長 なが くなり抵抗 ていこう 値 ち は上 あ がる。また、上記 じょうき のような電圧 でんあつ 値 ち と電流 でんりゅう 値 ち を設定 せってい できる溶接 ようせつ 機 き において、同 おな じ電圧 でんあつ で電流 でんりゅう 値 ち を上 あ げた場合 ばあい 、右 みぎ 図 ず (1)のようにアーク長 ちょう は短 みじか くなる。逆 ぎゃく に同 おな じ電圧 でんあつ で電流 でんりゅう 値 ち を減 へ らせば、右 みぎ 図 ず (3)のようにアーク長 ちょう は長 なが くなる。
アーク中 ちゅう に流 なが れる電流 でんりゅう は電子 でんし が担 にな っているので、電子 でんし の放出 ほうしゅつ 部分 ぶぶん である陰極 いんきょく 部 ぶ の特性 とくせい はアーク溶接 ようせつ にとって支配 しはい 的 てき な影響 えいきょう を及 およ ぼす[8] 。
アークの電気 でんき 的 てき 特性 とくせい は電流 でんりゅう 、電圧 でんあつ の大小 だいしょう に大 おお きく左右 さゆう される。直流 ちょくりゅう の場合 ばあい 、電流 でんりゅう 値 ち が小 ちい さい場合 ばあい はアーク電圧 でんあつ は負 ふ 抵抗 ていこう 特性 とくせい を示 しめ し、電流 でんりゅう の増加 ぞうか に伴 ともな って減少 げんしょう する。電流 でんりゅう が被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ に用 もち いるような中 なか 程度 ていど の値 ね の場合 ばあい はアーク電圧 でんあつ はほとんど変化 へんか せず、定 てい 電圧 でんあつ 特性 とくせい を示 しめ す。炭酸 たんさん ガスアーク溶接 ようせつ に用 もち いるような大 おお きな電流 でんりゅう 値 ち の場合 ばあい は上昇 じょうしょう 特性 とくせい になり、電流 でんりゅう の増加 ぞうか に伴 ともな ってアーク電圧 でんあつ は増加 ぞうか する[8] 。交流 こうりゅう の場合 ばあい も平均 へいきん 化 か すると直流 ちょくりゅう とほぼ同 おな じような特性 とくせい となるが、交流 こうりゅう であるがため瞬間 しゅんかん における電圧 でんあつ は小 しょう 電流 でんりゅう 、中 ちゅう 電流 でんりゅう 、大 だい 電流 でんりゅう における特性 とくせい をそれぞれ示 しめ す。電流 でんりゅう 値 ち の正負 せいふ が入 い れ替 か わるタイミングでアークは消滅 しょうめつ と再 さい 点 てん 弧 こ を繰 く り返 かえ すので、交流 こうりゅう 電源 でんげん 装置 そうち の無 む 負荷 ふか 電圧 でんあつ は再 さい 点 てん 弧 こ 時 じ に必要 ひつよう な電圧 でんあつ を上回 うわまわ り、かつ無 む 負荷 ふか 電圧 でんあつ が電流 でんりゅう よりも進 すす んだ位相 いそう になるような特性 とくせい が電源 でんげん 装置 そうち に要求 ようきゅう される。
溶接 ようせつ 電源 でんげん の特性 とくせい [ 編集 へんしゅう ]
アーク溶接 ようせつ に用 もち いられる電源 でんげん 装置 そうち (溶接 ようせつ 電源 でんげん (英語 えいご 版 ばん ) )には条件 じょうけん により様々 さまざま な形態 けいたい が存在 そんざい し、それぞれ電流 でんりゅう と電圧 でんあつ のコントロールの仕方 しかた が異 こと なる。作業 さぎょう 者 しゃ は、これらの電源 でんげん の特性 とくせい と前述 ぜんじゅつ のアークの特性 とくせい から総合 そうごう 的 てき に判断 はんだん して、適切 てきせつ な電源 でんげん の選択 せんたく と操作 そうさ を行 おこな う必要 ひつよう がある。
垂下 すいか 特性 とくせい とは、電流 でんりゅう が増 ふ えると電圧 でんあつ が低下 ていか する特性 とくせい を意味 いみ し、これは内部 ないぶ 抵抗 ていこう 値 ち を持 も つ電池 でんち や発電 はつでん 機 き など一般 いっぱん 的 てき な電源 でんげん の持 も つ性質 せいしつ である。溶接 ようせつ 中 ちゅう にアーク長 ちょう が変化 へんか しアーク電圧 でんあつ が変化 へんか しても、負荷 ふか 電流 でんりゅう 値 ち がほぼ一定 いってい [9] なので溶加材 ざい の溶 と ける量 りょう の変化 へんか がほとんどみられない特徴 とくちょう がある。垂下 すいか 特性 とくせい 電源 でんげん は構造 こうぞう が単純 たんじゅん で価格 かかく が安 やす く、溶接 ようせつ 電流 でんりゅう があまり変化 へんか せず手作業 てさぎょう でも安定 あんてい した溶接 ようせつ が行 おこな えることから被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ やサブマージアーク溶接 ようせつ などに採用 さいよう される一方 いっぽう 、実際 じっさい の溶接 ようせつ 電流 でんりゅう は数 すう ~数 すう 十 じゅう A程度 ていど 変化 へんか するので、母 はは 材 ざい の溶接 ようせつ 部 ぶ に精密 せいみつ さや緻密 ちみつ さが求 もと められる場合 ばあい は用 もち いることができない。また、交流 こうりゅう の垂下 すいか 特性 とくせい 電源 でんげん は構造 こうぞう 上 じょう 直流 ちょくりゅう より安定 あんてい 性 せい に劣 おと り、感電 かんでん の危険 きけん 性 せい が他 た の電源 でんげん より高 たか い。
定 てい 電流 でんりゅう 特性 とくせい [ 編集 へんしゅう ]
上記 じょうき の垂下 すいか 特性 とくせい 電源 でんげん に存在 そんざい する欠点 けってん や電流 でんりゅう 値 ち の変化 へんか が許容 きょよう できない場合 ばあい は、定 てい 電流 でんりゅう 特性 とくせい 電源 でんげん が用 もち いられる。定 てい 電流 でんりゅう 特性 とくせい 電源 でんげん は、アーク長 ちょう が変化 へんか しても出力 しゅつりょく 電流 でんりゅう がまったく変化 へんか しない構造 こうぞう をもつ電源 でんげん 装置 そうち で、被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ の直流 ちょくりゅう 電源 でんげん として採用 さいよう されている。アークが安定 あんてい しやすく施工 しこう 範囲 はんい も広 ひろ くなるが、磁気 じき 吹 ふ きといわれる不具合 ふぐあい が発生 はっせい しやすく、構造 こうぞう が複雑 ふくざつ で価格 かかく が高 たか いという面 めん を持 も つ[10] 。一部 いちぶ のティグ用 よう 溶接 ようせつ 電源 でんげん には、この機能 きのう が装備 そうび されている場合 ばあい がある[11] 。
定 てい 電圧 でんあつ 特性 とくせい [ 編集 へんしゅう ]
半 はん 自動 じどう 溶接 ようせつ (特 とく にマグ溶接 ようせつ )においてトーチの操作 そうさ は手作業 てさぎょう である。トーチ操作 そうさ の多少 たしょう のブレを許容 きょよう しつつアーク長 ちょう を一定 いってい に保 たも つ機能 きのう をもつ電源 でんげん に、定 てい 電圧 でんあつ 特性 とくせい をもつ電源 でんげん がある。この電源 でんげん に加 くわ え、溶加材 ざい であるワイヤの供給 きょうきゅう を定 じょう 速 そく 送 おく 給 きゅう 方式 ほうしき にすることでアークの長 なが さを一定 いってい に保 たも つことができる[12] 。
定 てい 電圧 でんあつ 特性 とくせい とは、負荷 ふか 電流 でんりゅう が増減 ぞうげん しても負荷 ふか 電圧 でんあつ が一定 いってい となる性質 せいしつ のことである。この特性 とくせい をもつ電源 でんげん で半 はん 自動 じどう 溶接 ようせつ を行 おこな った場合 ばあい 、トーチのブレによって引 ひ き起 お こされるアーク長 ちょう の増減 ぞうげん は、わずかな電圧 でんあつ 変化 へんか として現 あらわ れる。この電圧 でんあつ 変化 へんか に対 たい し電流 でんりゅう 値 ち は数 すう 十 じゅう ~百 ひゃく 数 すう 十 じゅう Aの間 あいだ で大 おお きく変動 へんどう するが、電流 でんりゅう 値 ち が変 か わったことにより溶接 ようせつ ワイヤの溶融 ようゆう 量 りょう も大 おお きく変化 へんか する。一方 いっぽう でワイヤの供給 きょうきゅう は定 じょう 速 そく で行 おこな われているため、わずかしか溶 と けない(電流 でんりゅう 値 ち が低 ひく い)場合 ばあい はワイヤが過剰 かじょう に供給 きょうきゅう されるのでアークはすぐに縮 ちぢ み(電流 でんりゅう が増大 ぞうだい し)、逆 ぎゃく に大量 たいりょう に溶 と ける(電流 でんりゅう 値 ち が高 たか い)場合 ばあい はワイヤの供給 きょうきゅう が不足 ふそく していることからアークはすぐに長 なが く(電流 でんりゅう が減少 げんしょう することに)なる。この修正 しゅうせい にかかる時間 じかん は非常 ひじょう に短 みじか く、これをアーク長 ちょう の自己 じこ 制御 せいぎょ 作用 さよう [13] または電源 でんげん の自己 じこ 制御 せいぎょ 特性 とくせい [14] という。なお、半 はん 自動 じどう アーク溶接 ようせつ では、電流 でんりゅう の設定 せってい 値 ち はそのままワイヤの送 おく 給 きゅう 速度 そくど になる。また、適正 てきせい なアーク長 ちょう となるように作業 さぎょう 者 しゃ がアーク電圧 でんあつ を調節 ちょうせつ しなければならない。同 おな じ電流 でんりゅう 値 ち でもワイヤー径 みち が細 ほそ くなると、ワイヤの溶融 ようゆう 量 りょう が上 あ がり、局部 きょくぶ 的 てき な入 いれ 熱 ねつ が増大 ぞうだい する[15] 。従 したが って、細 ほそ いワイヤーほど深 ふか く溶 と け込 こ みやすい。
アーク溶接 ようせつ の溶滴移行 いこう [ 編集 へんしゅう ]
溶接 ようせつ 棒 ぼう や溶接 ようせつ ワイヤが溶 と けた溶融 ようゆう 金属 きんぞく が母 はは 材 ざい 上 じょう に移動 いどう することを溶滴移行 いこう という。この溶滴移行 いこう の様子 ようす は電圧 でんあつ 、電流 でんりゅう 、シールドガス、溶接 ようせつ 材 ざい の種類 しゅるい などによって著 いちじる しく変化 へんか する。
低 てい 電流 でんりゅう の状態 じょうたい では、アーク熱 ねつ により溶融 ようゆう した溶加材 ざい (溶接 ようせつ 棒 ぼう のこと)の先端 せんたん 部 ぶ が溶融 ようゆう した母 はは 材 ざい に接触 せっしょく し(短絡 たんらく )、アークが消 き えるとともに溶加材 ざい から母 はは 材 ざい へと流 なが れるように溶融 ようゆう 金属 きんぞく が移動 いどう する。これを短絡 たんらく 移行 いこう と言 い う。
炭酸 たんさん ガスアーク溶接 ようせつ における高 こう 電流 でんりゅう の状態 じょうたい では、溶融 ようゆう した溶加材 ざい は大 おお きな滴 しずく になって移行 いこう し、一部 いちぶ の溶融 ようゆう 金属 きんぞく が飛 と び散 ち るなどの現象 げんしょう が生 しょう じる。これをグロビュール移行 いこう という。飛 と び散 ち った溶融 ようゆう 金属 きんぞく はスパッタ といい、溶接 ようせつ ビードの回 まわ りにこびり付 つ き、溶接 ようせつ の外観 がいかん を悪 わる くする原因 げんいん となる。しかし、うまくコントロールできればグロビュール移行 いこう は高速 こうそく な溶接 ようせつ ができるという長所 ちょうしょ がある。
MAG溶接 ようせつ における高 こう 電流 でんりゅう の状態 じょうたい では、溶加材 ざい から母 はは 材 ざい への溶接 ようせつ 金属 きんぞく の移動 いどう が非常 ひじょう に小 ちい さい滴 しずく の状態 じょうたい で行 おこ なわれる。これをスプレー移行 いこう と言 い う。スプレー移行 いこう はスパッタが少 すく ないため外観 がいかん が良 よ く、かつ溶 と け込 こ みも深 ふか く、能率 のうりつ も良 よ い溶接 ようせつ ができる。
アーク溶接 ようせつ 中 ちゅう において、溶融 ようゆう している金属 きんぞく と大気 たいき が接 せっ すると、大量 たいりょう の窒素 ちっそ が金属 きんぞく の中 なか に溶 と け込 こ む。溶融 ようゆう 金属 きんぞく が凝固 ぎょうこ するときに、この窒素 ちっそ が一気 いっき に析出 せきしゅつ し泡 あわ となってそのまま固 かた まってしまう。この状態 じょうたい をブローホール といい、この状態 じょうたい になると溶接 ようせつ 部分 ぶぶん の機械 きかい 的 てき 強度 きょうど が著 いちじる しく低下 ていか する。水 みず を急速 きゅうそく に凍 こお らせると、炭酸 たんさん ガス が析出 せきしゅつ して真 ま っ白 しろ な氷 こおり になるが、これと同 おな じ現象 げんしょう である。
このような溶接 ようせつ 欠陥 けっかん を防 ふせ ぐために、適切 てきせつ なガスを溶接 ようせつ 中 ちゅう に吹 ふ き付 つ けることで空気 くうき とアーク、あるいは空気 くうき と溶融 ようゆう 池 ち を遮断 しゃだん している。この時 とき 用 もち いるガスはシールドガスと呼 よ ばれ、高温 こうおん 下 か であっても化学 かがく 的 てき に活性 かっせい な金属 きんぞく と反応 はんのう しない、いわゆる不 ふ 活性 かっせい ガス であるヘリウム やアルゴン 、あるいは、活性 かっせい ではあるが様々 さまざま な要求 ようきゅう によって実用 じつよう 化 か された[16] 二酸化炭素 にさんかたんそ が用 もち いられており、時 とき には、水素 すいそ や酸素 さんそ などを添加 てんか したシールドガスが使 つか われる[17] 。
日本 にっぽん では二酸化炭素 にさんかたんそ を使 つか った炭酸 たんさん ガスアーク溶接 ようせつ が主流 しゅりゅう [18] である。
シールドガスはその名 な の通 とお り溶融 ようゆう 金属 きんぞく を大気 たいき から保護 ほご する目的 もくてき もあるが、アークそのものになるという重要 じゅうよう な機能 きのう がある。アークとはプラズマ の一種 いっしゅ とも言 い え、気体 きたい が高温 こうおん 下 か で電離 でんり したものである。シールドガスがアーク化 か することによって電子 でんし が空中 くうちゅう を移動 いどう することができるようになるので、アークは絶縁 ぜつえん 体 たい である空気 くうき とは異 こと なり電気 でんき を通 とお す伝導 でんどう 体 たい であると言 い える。補足 ほそく として、アークを「気化 きか した金属 きんぞく 」とする誤解 ごかい が存在 そんざい するが、前述 ぜんじゅつ の通 とお り、アーク溶接 ようせつ におけるアークはガスが電離 でんり したものであるので、これは誤 あやま りである。
最初 さいしょ のアークは、最初 さいしょ に溶加材 ざい (溶接 ようせつ 棒 ぼう や溶接 ようせつ ワイヤのこと)が母 はは 材 ざい とスパークした瞬間 しゅんかん に、その熱 ねつ でシールドガスがプラズマ化 か することによって生 しょう じる。アークは電気 でんき を通 とお すため、一度 いちど アークが生 しょう じるとアークを介 かい して電気 でんき が流 なが れるようになる。するとアーク自体 じたい が発熱 はつねつ し、周囲 しゅうい のシールドガスをイオン化 いおんか する。アークはある段階 だんかい まで成長 せいちょう すると一定 いってい の条件下 じょうけんか で安定 あんてい 状態 じょうたい に入 はい る。そのアークが溶加材 ざい や母 はは 材 ざい を溶融 ようゆう させていく。
シールドガスはアークを保護 ほご するとともに、アークそのもののベースである。従 したが って、シールドガスの成分 せいぶん はアークの状態 じょうたい を大 おお きく左右 さゆう し、さらに溶接 ようせつ の結果 けっか に大 おお きな影響 えいきょう を与 あた える。特 とく に二酸化炭素 にさんかたんそ はアークの特性 とくせい を大 おお きく変化 へんか させる物質 ぶっしつ である。
シールドガスの種類 しゅるい [ 編集 へんしゅう ]
シールドガスに使 つか われる物質 ぶっしつ は二酸化炭素 にさんかたんそ 、アルゴン 、次 つ いでヘリウム 、水素 すいそ 、酸素 さんそ などである。溶接 ようせつ 法 ほう や溶接 ようせつ 条件 じょうけん によって、これらを単体 たんたい もしくは混合 こんごう して用 もち いる[17] 。また、米国 べいこく ではヘリウムも比較的 ひかくてき 多 おお く使用 しよう されている。
アルゴンは空気 くうき 中 ちゅう に含 ふく まれているので、沸点 ふってん の違 ちが いを利用 りよう して液化 えきか した空気 くうき から生産 せいさん される。しかし、アルゴンと酸素 さんそ は沸点 ふってん が近 ちか い(それぞれ-186℃と-183℃)ので、分離 ぶんり が難 むずか しい。そのため、品質 ひんしつ の悪 わる いアルゴンガスを使用 しよう すると溶接 ようせつ のスラグが多 おお くなり、欠陥 けっかん が発生 はっせい しやすい。
加 くわ えて、アルゴンガスとヘリウムガスはその作用 さよう が少 すこ し異 こと なる[19] 。シールドガスのメーカーはこれらのガスを混 ま ぜる比率 ひりつ を研究 けんきゅう し、目的 もくてき 別 べつ に最適 さいてき なシールドガスを販売 はんばい している。例 たと えば、高速 こうそく 溶接 ようせつ のできるシールドガス、溶接 ようせつ 品質 ひんしつ を良 よ くできるシールドガス、深 ふか い溶 と け込 こ みの得 え られるシールドガスなどである。
アーク溶接 ようせつ における二酸化炭素 にさんかたんそ の働 はたら き [ 編集 へんしゅう ]
軟鋼 なんこう などの大量 たいりょう 生産 せいさん に用 もち いられる溶接 ようせつ に用 もち いるシールドガスとしては、アルゴン などの不 ふ 活性 かっせい ガスは比較的 ひかくてき 高価 こうか で、経済 けいざい 的 てき ではない。また、不 ふ 活性 かっせい シールドガスは清浄 せいじょう 作用 さよう がないので、欠陥 けっかん の原因 げんいん になることがある[16] 。これらを解決 かいけつ するひとつの方法 ほうほう として考案 こうあん されたものが炭酸 たんさん ガス(CO2 )によるシールドである。
CO2 は高熱 こうねつ で分解 ぶんかい し酸素 さんそ と一酸化 いっさんか 炭素 たんそ に分 わ かれる。これが電離 でんり してプラズマ となり、アークを形成 けいせい する。一酸化 いっさんか 炭素 たんそ は鋼 はがね に対 たい して還元 かんげん 性 せい を示 しめ す(保護 ほご する方向 ほうこう に働 はたら く)が、酸素 さんそ は酸化 さんか 性 せい 、つまり鋼 こう の性質 せいしつ を低下 ていか させる働 はたら きがある。このため、シールドガスに炭酸 たんさん ガスを用 もち いる場合 ばあい は、溶接 ようせつ ワイヤの中 なか に脱 だつ 酸化 さんか 性 せい の元素 げんそ (たとえば、MnやSiなど)を添加 てんか しておく必要 ひつよう がある[16] 。これによって溶融 ようゆう 池 ち 内 ない には酸化 さんか マンガンや酸化 さんか ケイ素 けいそ が発生 はっせい するが、これらはブローホールとはなり得 え ず溶融 ようゆう 池 ち 表面 ひょうめん に浮 う き上 あ がり、スラグを形成 けいせい する[20] 。ただし、溶接 ようせつ 条件 じょうけん によっては溶接 ようせつ 内部 ないぶ にスラグが入 はい り込 こ み、溶接 ようせつ 欠陥 けっかん を生 しょう じてしまうこともあので注意 ちゅうい が必要 ひつよう である。
また、CO2 が高温 こうおん 下 か で分解 ぶんかい する際 さい は、結果 けっか として急激 きゅうげき に体積 たいせき が膨張 ぼうちょう し、さらにアークから熱量 ねつりょう を奪 うば うことになる。このときアークは周囲 しゅうい から冷却 れいきゃく されて細 ほそ く鋭 するど くなり、狭 せま い範囲 はんい に熱 ねつ が集中 しゅうちゅう しやすくなる。これを熱 ねつ 的 てき ピンチ効果 こうか [21] という。その結果 けっか 、アークは溶滴を包 つつ まず、溶滴の下端 かたん より発生 はっせい する。するとローレンツ力 つとむ により溶滴が持 も ち上 あ げられ溶滴は大 おお きく成長 せいちょう した後 のち 、溶融 ようゆう 池 ち に移行 いこう する。この間 あいだ もアークは途切 とぎ れることなく発生 はっせい し続 つづ けているので入 いれ 熱 ねつ の関係 かんけい 上 じょう 母 はは 材 ざい に深 ふか い溶 と け込 こ みができやすく、かつ速 はや い溶接 ようせつ が可能 かのう になり、溶接 ようせつ 対象 たいしょう 物 ぶつ への熱 ねつ 影響 えいきょう が少 すく なくなる。これらの現象 げんしょう は溶接 ようせつ に対 たい して、スパッタの発生 はっせい が多 おお くなることや溶接 ようせつ 欠陥 けっかん 、外観 がいかん を悪 わる くするという悪 わる い要素 ようそ と、溶 と け込 こ みが深 ふか く、熱 ねつ 影響 えいきょう が少 すく なく、速 はや い溶接 ようせつ ができるという良 よ い要素 ようそ を与 あた える。
なお、イオン化 いおんか 傾向 けいこう の強 つよ いアルミニウム のような金属 きんぞく の溶接 ようせつ においてCO2 はシールドガスとして適 てき していない。発生 はっせい した酸素 さんそ に対 たい して添加 てんか 剤 ざい が機能 きのう できず、還元 かんげん できないためである。
上記 じょうき のようにCO2 は活性 かっせい であるが故 ゆえ に溶接 ようせつ 中 ちゅう はアルゴンガスなどに比 くら べて複雑 ふくざつ な状態 じょうたい となるので、使用 しよう に際 さい しては十分 じゅうぶん な知識 ちしき と技量 ぎりょう が必要 ひつよう になる。目的 もくてき によってアルゴンガスと使 つか い分 わ け、あるいは併用 へいよう することが推奨 すいしょう される。
二酸化炭素 にさんかたんそ でシールドする溶接 ようせつ を炭酸 たんさん ガスアーク溶接 ようせつ と呼 よ ぶ一方 いっぽう 、二酸化炭素 にさんかたんそ とアルゴンガス両方 りょうほう を利用 りよう する溶接 ようせつ 法 ほう があり、これを混合 こんごう ガス・マグ溶接 ようせつ という。CO2 が20%、アルゴンが80%の比率 ひりつ のシールドガスは混合 こんごう ガス・マグ溶接 ようせつ における標準 ひょうじゅん ガスとして使用 しよう されている[17] 。
アーク溶接 ようせつ と材料 ざいりょう [ 編集 へんしゅう ]
突合 つきあわ せ継 つ ぎ手 て をアーク溶接 ようせつ で接合 はぎあわ したときの熱 ねつ 影響 えいきょう の模 も 式 しき 図 ず 。最 もっと も濃 こ い部分 ぶぶん が溶接 ようせつ ビード。
金属 きんぞく を一部分 いちぶぶん だけ加熱 かねつ し冷却 れいきゃく すると歪 いが む。そのため溶接 ようせつ を行 おこな うと溶接 ようせつ された部材 ぶざい は歪 いが んでしまう。
金属 きんぞく を一部分 いちぶぶん だけ加熱 かねつ すると当然 とうぜん その部分 ぶぶん は膨張 ぼうちょう する。しかし周囲 しゅうい は冷 ひ えたままなのである。すると、膨張 ぼうちょう した部分 ぶぶん は周囲 しゅうい から圧縮 あっしゅく を受 う ける形 かたち になる。その結果 けっか 、加熱 かねつ された部分 ぶぶん は冷 ひ えたままのところより柔 やわ らかいので、加熱 かねつ された部分 ぶぶん は縮 ちぢ む方向 ほうこう に塑性 そせい 変形 へんけい することになる。さらに、この一部分 いちぶぶん だけ加熱 かねつ した金属 きんぞく を常温 じょうおん まで冷却 れいきゃく すると、加熱 かねつ を受 う けた部分 ぶぶん は元 もと の体積 たいせき より小 ちい さくなり、周囲 しゅうい を強烈 きょうれつ な力 ちから で引 ひ っ張 ぱ ることになる。この結果 けっか 、製品 せいひん 全体 ぜんたい が歪 いが む。また加熱 かねつ を受 う けた部分 ぶぶん の周囲 しゅうい には強 つよ い引張 ひっぱ 応力 おうりょく が残 のこ る。これを残留 ざんりゅう 応力 おうりょく といい、最終 さいしゅう 的 てき な製品 せいひん の強度 きょうど に影響 えいきょう する。
溶接 ようせつ の周囲 しゅうい では母 はは 材 ざい の組織 そしき の変化 へんか が発生 はっせい する。金属 きんぞく は規格 きかく ごとに結晶 けっしょう 構造 こうぞう や化学 かがく 組成 そせい が決 き められているが、溶接 ようせつ のように急激 きゅうげき な加熱 かねつ と冷却 れいきゃく をしてしまうと、これらの結晶 けっしょう 構造 こうぞう や化学 かがく 組成 そせい が変化 へんか する。
Fe-C状態 じょうたい 図 ず 炭素 たんそ 量 りょう と温度 おんど により、鉄 てつ はさまざまな組織 そしき となる。
アーク溶接 ようせつ の主 しゅ たる対象 たいしょう 材料 ざいりょう は鉄鋼 てっこう である。
右 みぎ 図 ず はFe-C状態 じょうたい 図 ず と言 い い、縦 たて 軸 じく が温度 おんど 、横 よこ 軸 じく が炭素 たんそ 量 りょう となっている。鉄鋼 てっこう は温度 おんど と炭素 たんそ 量 りょう により相 あい 変化 へんか を起 お こし、物理 ぶつり 的 てき 特性 とくせい の違 ちが う組織 そしき に変化 へんか する。右 みぎ 図 ず は十分 じゅうぶん に冷却 れいきゃく 時間 じかん を取 と った場合 ばあい の鉄鋼 てっこう の相 あい 変化 へんか を表 あらわ している。溶接 ようせつ の場合 ばあい は急激 きゅうげき な温度 おんど 変化 へんか を伴 ともな うため、右 みぎ 図 ず に示 しめ される相 あい 変化 へんか を激 はげ しく遷移 せんい し、加熱 かねつ と冷却 れいきゃく の仕方 しかた によって様々 さまざま な組織 そしき に変化 へんか する。
そのため一 いち 口 くち に鉄鋼 てっこう と言 い っても様々 さまざま な種類 しゅるい があり、アーク溶接 ようせつ に適 てき さない種類 しゅるい の鉄鋼 てっこう もある。また、溶接 ようせつ 可能 かのう な鉄鋼 てっこう でも、溶接 ようせつ するにあたって特別 とくべつ な処理 しょり が必要 ひつよう となるものもある。このような溶接 ようせつ に対 たい する材料 ざいりょう の性質 せいしつ を溶接 ようせつ 性 せい と言 い う。一般 いっぱん 的 てき に硬 かた い材料 ざいりょう ほど溶接 ようせつ しにくい。
鉄 てつ をアーク溶接 ようせつ すると、溶融 ようゆう 部 ぶ は液 えき 相 しょう から急激 きゅうげき に固 かた 相 しょう に移行 いこう し急激 きゅうげき に冷却 れいきゃく されることになる。また溶接 ようせつ 周辺 しゅうへん 部 ぶ も急激 きゅうげき な加熱 かねつ のあと急激 きゅうげき な冷却 れいきゃく を受 う けることになる。鉄 てつ はこれらの熱 ねつ 影響 えいきょう によって成分 せいぶん や結晶 けっしょう 構造 こうぞう が変化 へんか し、鉄 てつ の種類 しゅるい によっては強度 きょうど が不足 ふそく したり、変形 へんけい したり、亀裂 きれつ が生 しょう じたりする。鋼材 こうざい をある程度 ていど まで熱 ねっ してから急激 きゅうげき に冷却 れいきゃく すると、いわゆる焼 や き の入 はい った状態 じょうたい になって硬化 こうか を起 お こす。鋼材 こうざい には炭素 たんそ が含 ふく まれているためで、この炭素 たんそ が鉄 てつ と化学 かがく 反応 はんのう を起 お こしたり、結晶 けっしょう 構造 こうぞう を変化 へんか させるなど結果 けっか として硬化 こうか が起 お きる。鉄鋼 てっこう が硬 かた くなると脆 もろ くなるため機械 きかい 的 てき 強度 きょうど が低下 ていか することがある。そのため、一般 いっぱん に炭素 たんそ が少 すく ない鋼材 こうざい のほうが溶接 ようせつ 性 せい が良 よ いとされる。
鉄 てつ を硬化 こうか させる物質 ぶっしつ は炭素 たんそ だけではなく、マンガンやシリコンなども硬化 こうか の原因 げんいん となる。これらの物質 ぶっしつ の影響 えいきょう を炭素 たんそ の影響 えいきょう に換算 かんさん したものを炭素 たんそ 当 とう 量 りょう と言 い う。
アークの陰極 いんきょく 側 がわ から電子 でんし が飛 と び出 だ すのは、溶 と けた溶接 ようせつ 母 はは 材 ざい 表面 ひょうめん のスラグと呼 よ ばれる酸化 さんか 物 ぶつ 層 そう に浮 う かぶ陰極 いんきょく 点 てん と呼 よ ばれる部分 ぶぶん からである。鉄 てつ はアルミやチタンと異 こと なり表面 ひょうめん を酸化 さんか 膜 まく が覆 おお うことはほとんど無 な いため、アークの電流 でんりゅう を安定 あんてい 的 てき に流 なが すためにはチタン酸化 さんか 物 ぶつ のルチール(TiO2 )を含 ふく むフラックス を使用 しよう する。
アルミ、シリコン、マンガンなどの酸化 さんか 物 ぶつ より、チタンの酸化 さんか 物 ぶつ は電気 でんき を良 よ く通 とお す良導体 りょうどうたい であるためである。溶接 ようせつ ワイヤにもチタンが加 くわ えられる。
鋼鉄 こうてつ の溶接 ようせつ 時 じ のシールドガスに炭酸 たんさん ガスを用 もち いたり、アルゴンガスに少量 しょうりょう の酸素 さんそ を加 くわ えるのは、酸化 さんか 物 ぶつ の形成 けいせい を促進 そくしん させるためである。
また、溶接 ようせつ ワイヤ表面 ひょうめん にチタン酸化 さんか 物 ぶつ を塗布 とふ することで「溶滴」を小 ちい さくしている。溶融 ようゆう 酸化 さんか 物 ぶつ が溶滴の表面 ひょうめん を薄 うす く覆 おお うことで表面張力 ひょうめんちょうりょく が下 さ がり、溶接 ようせつ ワイヤから小 ちい さな粒 つぶ の状態 じょうたい で溶接 ようせつ 母 はは 材 ざい 表面 ひょうめん へ飛 と んでゆくためである。自動車 じどうしゃ 鋼板 こうはん などでの薄板 うすいた の溶接 ようせつ ではチタン酸化 さんか 物 ぶつ を塗布 とふ せず、大 おお きな溶滴によってワイヤと母 はは 材 ざい を直接 ちょくせつ 接触 せっしょく させ短絡 たんらく させることでアークが薄 うす い鋼板 こうはん を突 つ き抜 ぬ けないようにしている。
チタン酸化 さんか 物 ぶつ (ルチール)が溶接 ようせつ 部位 ぶい に溶 と け込 こ むが、このチタン鋼 こう 部分 ぶぶん の結晶 けっしょう 構造 こうぞう はチタン酸化 さんか 物 ぶつ が核 かく となって生 しょう じる結晶 けっしょう 粒 つぶ が数 かず μ みゅー m以下 いか で微細 びさい となり、その靭 うつぼ 性 せい も良好 りょうこう となる。溶接 ようせつ 部位 ぶい に含 ふく まれる酸化 さんか 物 ぶつ は鋼鉄 こうてつ 母 はは 材 ざい の10倍 ばい 程度 ていど となるが、強度 きょうど 等 とう ではむしろ優 すぐ れたものとなる[22] 。
炭素 たんそ が0.25%以下 いか の焼 や き入 い れ硬化 こうか が無視 むし できる鋼材 こうざい を軟鋼 なんこう と言 い う。最 もっと も一般 いっぱん 的 てき な鋼材 こうざい で引 ひ っ張 ぱ り強度 きょうど は400N/mm2 程度 ていど である。低 てい 炭素 たんそ 鋼 こう 、普通 ふつう 鋼 こう などとも言 い う。
JIS 規格 きかく では、一般 いっぱん 構造 こうぞう 用 よう 圧延 あつえん 鋼材 こうざい のSS400 という鉄鋼 てっこう が軟鋼 なんこう に相当 そうとう するが、JIS規格 きかく ではリン と硫黄 いおう の成分 せいぶん のみが規定 きてい されており、炭素 たんそ や他 た の成分 せいぶん は規定 きてい されていない。従 したが ってメーカーやロットによっては同 おな じSS400でも溶接 ようせつ に適 てき さないものもある。
そのため溶接 ようせつ 用 よう に規定 きてい された軟鋼 なんこう としてはSM材 ざい とSN材 ざい が規定 きてい されている。SN材 ざい は特 とく に建築 けんちく 用 よう として規定 きてい された材料 ざいりょう で、大 だい 地震 じしん などで十分 じゅうぶん な強度 きょうど が得 え られるように成分 せいぶん 調整 ちょうせい と検査 けんさ が義務付 ぎむづ けられた鋼材 こうざい である。軟鋼 なんこう は特 とく に溶接 ようせつ 性 せい の悪 わる い材料 ざいりょう ではないが、比較的 ひかくてき 柔 やわ らかい鋼材 こうざい のため、溶接 ようせつ 量 りょう が多 おお いと大 おお きな歪 ゆが みが生 しょう じる。そのため形状 けいじょう によっては縮 ちぢ み代 だい や逆 ぎゃく 歪 ゆが み 、冷却 れいきゃく などの対策 たいさく が必要 ひつよう になる。
余談 よだん だが、日本 にっぽん では鉄 てつ と鋼 はがね は一緒 いっしょ くたにされているが、日本 にっぽん 以外 いがい では全 まった く違 ちが う物質 ぶっしつ として認識 にんしき する地域 ちいき もある。日本 にっぽん のSS400だと規格 きかく 上 じょう 、国 くに によっては鋼 はがね として分類 ぶんるい されずにクズ鉄 てつ 同然 どうぜん の見方 みかた をされることがある。
高 こう 張力 ちょうりょく 鋼 こう [ 編集 へんしゅう ]
高 こう 張力 ちょうりょく 鋼 こう とはJISに規定 きてい された鉄鋼 てっこう で、490N/mm2 以上 いじょう の一般 いっぱん 構造 こうぞう 用 よう 鉄鋼 てっこう を言 い う。溶接 ようせつ 性 せい 、切 き り欠 か きじん性 せい などに配慮 はいりょ することもJISに規定 きてい されている。溶接 ようせつ 性 せい も規格 きかく に入 はい っているため溶接 ようせつ 性 せい は悪 わる くないが、硬 かた いため形状 けいじょう と溶接 ようせつ 量 りょう によっては亀裂 きれつ が生 しょう じる場合 ばあい もある。また軟鋼 なんこう に比 くら べると炭素 たんそ が多 おお いため、焼 や き入 い れ性 せい が強 つよ く、アーク溶接 ようせつ を行 おこな うと多 おお かれ少 すく なかれ焼 や き入 い れ硬化 こうか を起 お こす。強度 きょうど 的 てき な問題 もんだい が生 しょう じる場合 ばあい は、予熱 よねつ や後 こう 熱処理 ねつしょり などが必要 ひつよう となる。
炭素 たんそ や合金 ごうきん を少 すく なくし、溶接 ようせつ しやすい高 こう 張力 ちょうりょく 鋼 こう とするため、普通 ふつう の圧延 あつえん 鋼板 こうはん よりも低 ひく い温度 おんど で精密 せいみつ に温度 おんど 制御 せいぎょ しつつ圧延 あつえん した鋼材 こうざい である。組織 そしき が微細 びさい なため、炭素 たんそ 当 とう 量 りょう が少 すく なくても普通 ふつう の圧延 あつえん 鋼板 こうはん なみの強度 きょうど がある。炭素 たんそ 当 とう 量 りょう が少 すく ないので熱 ねつ 影響 えいきょう 部 ぶ の硬化 こうか 及 およ び切 き り欠 か きじん性 せい の低下 ていか が少 すく なく溶接 ようせつ 性 せい は良好 りょうこう である。
TMCP鋼 こう は溶接 ようせつ 用 よう に開発 かいはつ された素材 そざい だが、ほかにも様々 さまざま な鋼材 こうざい が溶接 ようせつ 用 よう に開発 かいはつ されている。特 とく に低温 ていおん に強 つよ いものや、高温 こうおん につよいもの、サビに強 つよ いものなど目的 もくてき に応 おう じたものがある。
溶接 ようせつ 継 つ ぎ手 て の形状 けいじょう
接合 せつごう する母 はは 材 ざい と母 はは 材 ざい の配置 はいち のしかたには多 おお くの種類 しゅるい がある。用途 ようと により使 つか い分 わ ける。その一部 いちぶ を右 みぎ 図 ず に示 しめ す。
突 つ き合 あ わせ継 つ ぎ手 て
開 ひらき 先 さき 継 つ ぎ手 て (両 りょう 開 ひらき 先 さき )
重 かさ ね継 つ ぎ手 て
隅 すみ 肉 にく 継 つ ぎ手 て
いずれの溶接 ようせつ も二 ふた つの材料 ざいりょう に均等 きんとう に熱 ねつ を加 くわ えることが基本 きほん であり断面 だんめん 方向 ほうこう の狙 ねら い角度 かくど が要 よう である。誤 あやま った溶接 ようせつ 法 ほう ・溶接 ようせつ 材料 ざいりょう を適用 てきよう したり、母 はは 材 ざい に与 あた える熱量 ねつりょう が過大 かだい または過小 かしょう であった場合 ばあい 、期待 きたい する強度 きょうど が得 え られず部材 ぶざい が破断 はだん する。
突 つ き合 あ わせ継 つ ぎ手 て は別名 べつめい 、バット溶接 ようせつ とかIバット(アイバット)などと言 い う。アーク溶接 ようせつ の場合 ばあい 、ピッタリくっついた突 つ き合 あ わせ継 つ ぎ手 て は施工 しこう しにくい。そのため、ウラガネ(裏金 うらがね または裏 うら 鉄 てつ )という薄 うす いプレートを裏側 うらがわ に付 つ け、突合 つきあわ せの間隔 かんかく を板 いた 厚 あつ 以上 いじょう に取 と るのがふつうである。
開 ひらき 先 さき 継 つ ぎ手 て は溶接 ようせつ しやすいのだが、開 ひらき 先 さき を作 つく るための加工 かこう コストが必要 ひつよう になる。また図 ず のような両 りょう 開 ひらき 先 さき 継 つ ぎ手 て の場合 ばあい 、母 はは 材 ざい の薄 うす い部分 ぶぶん が溶 と け落 お ちてしまうため、ウラガネを使 つか うのが普通 ふつう である。
重 かさ ね継 つ ぎ手 て 、隅 すみ 肉 にく 継 つ ぎ手 て は中 ちゅう 厚 あつ 板 ばん の溶接 ようせつ で最 もっと も一般 いっぱん 的 てき な溶接 ようせつ である。図 ず には無 な いが片側 かたがわ 開 ひらき 先 さき の隅 すみ 肉 にく 継 つ ぎ手 て も多 おお い。
アークエアガウジング とは、完全 かんぜん 溶込 とけこめ 溶接 ようせつ を行 おこな う場合 ばあい 、片面 かためん からの溶接 ようせつ 後 ご 、反対 はんたい 側 がわ より先 さき の溶着 ようちゃく 金属 きんぞく の初 はつ 層 そう を、アーク熱 ねつ で溶 と かしエアーで吹 ふ き飛 と ばす処理 しょり などを表 あらわ す。
溶接 ようせつ 技術 ぎじゅつ と技能 ぎのう 資格 しかく [ 編集 へんしゅう ]
真 ま っ直 す ぐ連続 れんぞく してビード(溶接 ようせつ 痕 こん の盛 も り上 あ がり)を置 お くことを(ビードは置 お くと表現 ひょうげん するのが正 ただ しい。英語 えいご ではビード・オン・プレート(bead on plate)と呼 よ ぶ)ストレート・ビードと呼 よ び比較的 ひかくてき 薄 うす い材料 ざいりょう に適 てき している。また進行 しんこう 方向 ほうこう に対 たい して振幅 しんぷく を与 あた えつつ進 すす んで置 お いたビードをウィービング・ビードと呼 よ び多層 たそう 盛 もり 溶接 ようせつ などの比較的 ひかくてき 厚 あつ い板 いた に適 てき している(時折 ときおり 誤記 ごき されているが、ウェービング(waving)ではなくウィービング (weaving )が正 ただ しい呼称 こしょう であり、“縫 ぬ い合 あ わせるように”という意味 いみ である。文字通 もじどお り二 ふた つの板 いた を縫 ぬ い合 あ わせるように進行 しんこう する)。
国際 こくさい 標準 ひょうじゅん 化 か 機構 きこう (ISO)では溶接 ようせつ 作業 さぎょう は「作業 さぎょう 後 ご の製品 せいひん の試験 しけん ・検査 けんさ では工程 こうてい の結果 けっか が十分 じゅうぶん に検証 けんしょう できず、事前 じぜん の作業 さぎょう の認証 にんしょう を必要 ひつよう とする特殊 とくしゅ 工程 こうてい 」に位置 いち づけられている[23] 。
溶接 ようせつ 作業 さぎょう の技能 ぎのう 資格 しかく も国際 こくさい 規格 きかく 化 か が進 すす んでおり、国際 こくさい 溶接 ようせつ エンジニア(IWE)、国際 こくさい 溶接 ようせつ テクノロジスト(IWT)、国際 こくさい 溶接 ようせつ スペシャリスト(IWS)、国際 こくさい 溶接 ようせつ プラクティショナー(IWP)といった国際 こくさい 溶接 ようせつ 技術 ぎじゅつ 者 しゃ の資格 しかく がある[24] 。
アーク溶接 ようせつ は強烈 きょうれつ な紫外線 しがいせん を発生 はっせい する。その強 つよ さは、アークから50cm離 はな れた皮膚 ひふ に数 すう 秒間 びょうかん アーク光 こう を曝 さら しただけで炎症 えんしょう を起 お こすほどであり、日光 にっこう の比 ひ ではない。長時間 ちょうじかん アーク光 こう に曝 さら した場合 ばあい 、火傷 かしょう 、水 みず ぶくれ、シミなどの症状 しょうじょう が発生 はっせい する。何 なん 度 ど も至近 しきん 距離 きょり で強烈 きょうれつ なアーク光 こう に皮膚 ひふ を曝 さら すと最悪 さいあく 皮膚 ひふ 癌 がん に至 いた る場合 ばあい もある。通常 つうじょう 、溶接 ようせつ の光 ひかり では日焼 ひや けと同 おな じような炎症 えんしょう を起 お こし皮 かわ が剥 む けるものの、小麦色 こむぎいろ の肌 はだ にはならない(しかしシミはできる)。裸眼 らがん でアーク光 こう を見 み た場合 ばあい 、電光 でんこう 性 せい 眼 め 炎 えん (電 でん 眼 め 炎 えん )という目 め の炎症 えんしょう を起 お こす。何 なん 度 ど も電光 でんこう 性 せい 眼 め 炎 えん になると視力 しりょく の低下 ていか や最悪 さいあく の場合 ばあい 失明 しつめい に至 いた る。この他 ほか 、アーク溶接 ようせつ によって発生 はっせい する紫外線 しがいせん は波長 はちょう が短 みじか く、空気 くうき 中 ちゅう に含 ふく まれる酸素 さんそ 分子 ぶんし をオゾン に変化 へんか させる[25] 。オゾンは酸化 さんか 力 りょく が強 つよ く、生体 せいたい にも打撃 だげき を与 あた える。
また金属 きんぞく ヒューム という酸化 さんか 鉄 てつ からなる煙 けむり を発生 はっせい し、大量 たいりょう に吸 す った場合 ばあい 、金属 きんぞく ヒューム熱 ねつ やじん肺 ぱい などの深刻 しんこく な病気 びょうき の原因 げんいん となる。ヒュームには一酸化 いっさんか 炭素 たんそ やオゾン も混 ま ざっており、換気 かんき には十分 じゅうぶん 注意 ちゅうい しなければならない。
令 れい 和 わ 3年度 ねんど (2021年 ねん 4月 がつ 1日 にち 施行 しこう )より、溶接 ようせつ ヒュームが特定 とくてい 化学 かがく 物質 ぶっしつ (第 だい 2類 るい 物質 ぶっしつ )に指定 してい された。溶接 ようせつ ヒューム中 ちゅう に含 ふく まれるマンガンが神経 しんけい 障害 しょうがい 等 とう の深刻 しんこく な健康 けんこう 障害 しょうがい を引 ひ き起 お こす恐 おそ れがあることが明 あき らかとなったため、労働 ろうどう 安全 あんぜん 衛生 えいせい 法 ほう 、特定 とくてい 化学 かがく 物質 ぶっしつ 障害 しょうがい 予防 よぼう 規則 きそく の改正 かいせい が行 おこな われた。業 ぎょう として作業 さぎょう を行 おこな う場合 ばあい には、作業 さぎょう 者 しゃ 近辺 きんぺん での空気 くうき 中 ちゅう マンガン濃度 のうど の測定 そくてい が義務付 ぎむづ けられており、マンガンおよびその化合 かごう 物 ぶつ として 0.05mg/m^3の抑制 よくせい 濃度 のうど が規定 きてい されている。抑制 よくせい 濃度 のうど を満足 まんぞく できない場合 ばあい には、局所 きょくしょ 換気 かんき 装置 そうち ・全体 ぜんたい 換気 かんき 装置 そうち を付 つ ける等 とう の対策 たいさく を行 おこな い、基準 きじゅん 値 ち 以下 いか の濃度 のうど とする必要 ひつよう がある。これまで以上 いじょう に、溶接 ようせつ ヒュームの対策 たいさく については注意 ちゅうい が必要 ひつよう である。
強力 きょうりょく な紫外線 しがいせん を避 さ けるため、アーク溶接 ようせつ 作業 さぎょう には長袖 ながそで 、長 ちょう ズボンの作業 さぎょう 服 ふく 、溶接 ようせつ 面 めん 、皮 かわ 手袋 てぶくろ が必須 ひっす である。さらに、ヒュームを避 さ けるために防塵 ぼうじん マスクが必須 ひっす である。また必要 ひつよう に応 おう じて安全 あんぜん 靴 くつ 、スパッツ (足 あし カバー)、厚手 あつで の耐 たい 熱 ねつ エプロン、ヘルメット 、ゴーグル などを着用 ちゃくよう しなければならない。さらに場合 ばあい によってはワセリン や熱 ねつ 焼 や け防止 ぼうし クリームなどの表皮 ひょうひ 保護 ほご 剤 ざい (ゲル状 じょう クリーム状 じょう の物 もの が望 のぞ ましい)を顔面 がんめん や頸胸部 ぶ 周囲 しゅうい などに事前 じぜん 塗布 とふ しておく事 こと が望 のぞ ましい。また、溶接 ようせつ 作業 さぎょう 者 しゃ の更衣 ころもがえ 室 しつ 、休憩 きゅうけい 室 しつ などには衣服 いふく に付 つ いた粉塵 ふんじん を吸 す い取 と る装置 そうち や、空気 くうき 清浄 せいじょう 器 き などを設置 せっち することが望 のぞ ましい。
従事 じゅうじ 者 しゃ 資格 しかく [ 編集 へんしゅう ]
日本 にっぽん では労働 ろうどう 安全 あんぜん 衛生 えいせい 法 ほう の規定 きてい により、事業 じぎょう 主 ぬし は従業 じゅうぎょう 員 いん をアーク溶接 ようせつ に従事 じゅうじ させるにはアーク溶接 ようせつ 作業 さぎょう 者 しゃ の特別 とくべつ 教育 きょういく を受 う けさせなければならない。
出典 しゅってん ・引用 いんよう [ 編集 へんしゅう ]
野原 のはら 英孝 ひでたか 『図解 ずかい 入門 にゅうもん 現場 げんば で役立 やくだ つ溶接 ようせつ の知識 ちしき と技術 ぎじゅつ 』株式会社 かぶしきがいしゃ 秀和 しゅうわ システム、2012年 ねん 。ISBN 978-4798032252 。
小椋 おぐら 陽 ひ ・岡田 おかだ 明 あきら ・島田 しまだ 弥 わたる ・鵜飼 うかい 順 じゅん 『現代 げんだい 溶接 ようせつ 技術 ぎじゅつ 大系 たいけい 第 だい 36巻 かん 』産 さん 報 ほう 出版 しゅっぱん 、1980年 ねん 。
松山 まつやま 邦雄 くにお 編 へん 『現代 げんだい 溶接 ようせつ 技術 ぎじゅつ 大系 たいけい 第 だい 31巻 かん 』産 さん 報 ほう 出版 しゅっぱん 、1980年 ねん 。
荒田 あらた 吉 よし 明 あきら ・西口 にしぐち 公 おおやけ 之 の 『現代 げんだい 溶接 ようせつ 技術 ぎじゅつ 大系 たいけい 第 だい 2巻 かん 』産 さん 報 ほう 出版 しゅっぱん 、1980年 ねん 。