長野ながの道どう賢けん

長野ながの 道どう賢けん（ながの どうけん、生なま没年ぼつねん不ふ詳しょう）は、戦国せんごく時代じだい中期ちゅうきの上野うえの国こくの武将ぶしょう。上野うえの長野ながの氏しの一族いちぞく。道みち賢けんは法名ほうみょう（「三宮院殿聖安道賢居士」）であり、実名じつめいは不ふ詳しょう。厩橋うまやばし城じょう城主じょうしゅ。

厩橋うまやばし長野ながの氏しの系譜けいふについては諸説しょせつあって混乱こんらんしているが、天文てんもん22年ねん（1553年ねん）の段階だんかいで、死去しきょした先代せんだい当主とうしゅ・長野ながの道どう安やすの後継こうけい者しゃとして家督かとくを継ついでおり、道みち安やすの息子むすことみられている。ただし、父ちち・道みち安やすの位置いちづけについて、久保田くぼた順一じゅんいちは厩橋うまやばし城主じょうしゅとして知しられる長野ながの賢けん忠ただしと同どう一人物いちじんぶつ、黒田くろだ基樹もときは長野ながの賢けん忠ちゅうの息子むすこ（つまり、道みち賢けんは賢けん忠ちゅうの孫まごにあたる）としている。沼田ぬまた顕あらわ泰やすしの次男じなんで後継こうけい者しゃとされた弥わたる七郎しちろう則のり安やすの妻つまは「厩橋うまやばしの城主じょうしゅ永野ながの道みち玄げんの息女そくじょ」とする記録きろく（「永井ながい実平さねひら書状しょじょう」）があり、これは顕あらわ泰たいの三男さんなんである沼田ぬまた朝憲ちょうけんが道みち賢けんの娘むすめ婿むこであったことを示しめすと考かんがえられる。

その後ご、厩橋うまやばし長野ながの氏しは永えい禄ろく3年ねん（1560年ねん）に長尾ながお景虎かげとら（上杉うえすぎ謙信けんしん）に厩橋うまやばし城じょうを攻せめられて降伏ごうぶくし、その後ご城主じょうしゅの長野ながの彦太郎ひこたろうが謙信けんしんに従したがったものの、同年どうねん12月14日にちに上野うえの国こく伊勢崎いせざき（赤あか石城せきじょう）で暴あばれ馬ばの騒さわぎを謀叛ぼうほんと誤解ごかいされた景虎かげとらによって一族いちぞくとみられる大胡おおご左ひだり馬うま允まこととともに殺害さつがいされたとされる（「赤城あかぎ神社じんじゃ年代ねんだい記録きろく」）。また、同年どうねん末まつから翌よく永えい禄ろく4年ねん（1561年ねん）初はじめに景虎かげとら陣営じんえいで作成さくせいされた「関東かんとう幕まく注文ちゅうもん」に“厩橋うまやばし衆しゅ”として長野ながの藤ふじ九郎くろう・同どう彦七ひこしち郎ろう・大胡おおご（名めい不詳ふしょう）が登場とうじょうする。「関東かんとう幕まく注文ちゅうもん」の作成さくせいが12月14日にち以前いぜんか以降いこうかは不明ふめいでその解釈かいしゃくも2つに分わかれている。久保田くぼた順一じゅんいちは謙信けんしんに殺害さつがいされた彦太郎ひこたろうを道みち賢けんとして、その結果けっか息子むすこである藤ふじ九郎くろう・彦七ひこしち郎ろう兄弟きょうだいが出仕しゅっししたと解釈かいしゃくしており（「関東かんとう幕まく注文ちゅうもん」は彦太郎ひこたろう殺害さつがい後ごの永えい禄ろく4年ねん作成さくせいと解げする）、「藤ふじ九郎くろう」は正ただしくは「彦九郎ひこくろう」であろうと推測すいそくする。これに対たいして黒田くろだ基樹もときは藤ふじ九郎くろう・彦七ひこしち郎ろう兄弟きょうだいが道みち賢けんの息子むすこであること及および「藤ふじ九郎くろう」は「彦九郎ひこくろう」の誤あやまりとすることでは久保田くぼたと一緒いっしょであるが、長野ながの彦太郎ひこたろうの殺害さつがいによって厩橋うまやばし長野ながの氏しは滅亡めつぼうしたとされていることから、彦太郎ひこたろうは同氏どうし最後さいごの当主とうしゅとみられる彦九郎ひこくろうの誤伝ごでんとする（「関東かんとう幕まく注文ちゅうもん」は永えい禄ろく3年ねん12月14日にち以前いぜんの作成さくせいと解げする）。なお、彦九郎ひこくろうの妻つまは長野ながの信濃しなの守まもる（業ごう正ただし）の娘むすめであるとされている（「浜川はまがわ長野ながの系図けいず」）。

上杉うえすぎ謙信けんしんに殺害さつがいされた長野ながの彦太郎ひこたろうを、道みち賢けん・彦九郎ひこくろう（藤ふじ九郎くろう）父子ふしのいずれと解釈かいしゃくした場合ばあいでも、この事件じけんの直後ちょくごに厩橋うまやばし城じょうは謙信けんしんに接収せっしゅうされて厩橋うまやばし長野ながの氏しは滅亡めつぼうし、同どう城しろには北条ほうじょう高広たかひろが入はいる事ことになる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 久保田くぼた順一じゅんいち「長野ながの道どう賢けん」「長野ながの藤ふじ九郎くろう」（『戦国せんごく人名じんめい辞典じてん』（吉川弘文館よしかわこうぶんかん、2006年ねん） ISBN 978-4-642-01348-2）
• 黒田くろだ基樹もとき「戦国せんごく期き上野うえの長野ながの氏しの動向どうこう」『日本にっぽん史し攷究』35号ごう、2011年ねん/『戦国せんごく期き 山内やまうち上杉うえすぎ氏しの研究けんきゅう』岩田いわた書院しょいん、2013年ねん ISBN 978-4-87294-786-1