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COGAG(COmbined Gas turbine And Gas turbine、コンバインド・ガスタービン・アンド・ガスタービン)とは、同種または異種のガスタービンエンジンを複数組み合わせた推進方式のこと。主に艦船で使用される。
COGAGの模式図。右側の二つのエンジン(青)がクラッチ(赤)を介して一つのプロペラ(黄)を回している。巡航時には片方のエンジンのみを運転し、高速/急加速が必要な時はもう片方のエンジンも運転される。すなわち高速航行時には両方のエンジンが同時に運転される。
この図ではエンジンは同型のものが使用されている。
一般にガスタービンは最大出力近辺で燃料効率が最大となるため、単一のエンジンで艦船を推進させた場合は、低速時や巡航時は出力が最大時より小さくなり、効率が極めて悪くなる。そのため複数のガスタービンエンジンを搭載し、低速時や巡航時はそのうち1基だけ駆動させる事によって、最大出力に近づける事で、燃料効率を改善しようというものである。
ガスタービンは、同機種2台の組み合わせと異機種を組み合わせるパターンがある。同機種を組み合わせる場合、操作、保守は容易となる。異機種を組み合わせるのは通常時は巡航用のガスタービンエンジンで走行(航行)し、急加速時や高速走行(航行)時に高速用のエンジンを併用する推進方式である。操作・保守が難しいという欠点はあるが、低速・高速それぞれに適したエンジンを使用する事で、効率は高くなる。通常は、出力軸1つあたり巡航用エンジンと高速用エンジンが1組ずつ搭載される。
しかしながら、ガスタービンは基本的に高速向きの機関である。そのため単に異なる種類のガスタービンを搭載するのでなく、低速航行用にはガスタービン以外の機関を用いる方式もある。またガスタービンの低速時の効率を電気推進で解決する方式(COGLAG)もある。ただしそれら方式はシステムが複雑化する問題がある。機械駆動のガスタービンのみを用いるCOGAGには、システムが単純化できるメリットがあり、採用例も多い。一方で低速時と高速時でガスタービンエンジンを切り替えるCOGOGとの比較では、システムは複雑になる。
海上自衛隊での採用例
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海上自衛隊での本方式の主な採用例は以下のとおりである。(基準排水量、満載排水量は1番艦の値)
クラス名
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就役初年
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基準排水量
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満載排水量
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機関
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最大速力
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はたかぜ型護衛艦 |
1986年 |
4,600トン |
5,900トン |
TM3B×2 SM1A×2 |
30ノット
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あさぎり型護衛艦 |
1988年 |
3,500トン |
4,900トン |
SM1A×4
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こんごう型護衛艦 |
1993年 |
7,250トン |
9,485トン |
LM2500×4 |
30ノット以上
|
むらさめ型護衛艦 |
1996年 |
4,550トン |
6,100トン |
LM2500×2 SM1C×2 |
30ノット
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たかなみ型護衛艦 |
2003年 |
4,650トン |
6,300トン
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あたご型護衛艦 |
2007年 |
7,700トン |
10,000トン(推定値) |
LM2500×4 |
30ノット以上
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ひゅうが型護衛艦 |
2009年 |
13,950トン |
19,000トン(推定値) |
30ノット
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あきづき型護衛艦(2代目) |
2012年 |
5,000トン |
6,800トン |
SM1C×4
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いずも型護衛艦 |
2015年 |
19,500トン |
26,000トン |
LM2500IEC×4
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