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ランセット

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Lancetから転送てんそう
The Lancet 

1823ねん出版しゅっぱんされた創刊そうかんごう表紙ひょうし
略称りゃくしょう (ISO) Lancet
学術がくじゅつ分野ぶんや 医学いがく
言語げんご 英語えいご
詳細しょうさい
出版しゅっぱんしゃ エルゼビア
出版しゅっぱんこく オランダ
出版しゅっぱんれき 1823ねん -
出版しゅっぱん間隔かんかく 週刊しゅうかん
インパクトファクター 202.731(2022ねん
分類ぶんるい
ISSN 0140-6736
外部がいぶリンク
プロジェクト:出版しゅっぱんPortal:書物しょもつ
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ランセット』(英語えいご: The Lancet)は、週刊しゅうかん刊行かんこうされる査読さどくせい医学いがく雑誌ざっしである。同誌どうし世界せかいもっともよくられ、もっと評価ひょうかたか世界せかいだい医学いがく雑誌ざっしひとつであり[1]編集へんしゅうしつロンドンニューヨークつ。

『ランセット』は世界中せかいじゅうにかなりのかず読者どくしゃち、もっとたかインパクトファクターゆうする。ことに同誌どうしのウェブサイトTheLancet.comにおいては、1996ねん以来いらい180まんにん以上いじょう登録とうろくユーザーをあつめている。『ランセット』は、原著げんちょ論文ろんぶん、レビュー("seminars" と "reviews")、論説ろんせつ書評しょひょう通信つうしんくわえ、特集とくしゅうニュースや症例しょうれい報告ほうこく刊行かんこうしている。

『ランセット』は、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』 (NEJM)、『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション』 (JAMA)、『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』 (BMJ)とならぶ、"主要しゅような"一般いっぱん医学いがく雑誌ざっしのひとつと做されている。2022ねんジャーナル・サイテーション・レポートでは、一般いっぱん医学いがく雑誌ざっしのなかで『ランセット』のインパクトファクターは202.731であり、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』(176.079)をおさえ1となり、世界せかいトップジャーナルに位置いちづけられた[2]

歴史れきし

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『ランセット』は、1823ねんイギリス外科医げかいトーマス・ウェイクリー英語えいごばん[注釈ちゅうしゃく 1]によって創刊そうかんされた。めいをつけたのはかれで、手術しゅじゅつようメス一種いっしゅであるランセット[注釈ちゅうしゃく 2]、および、ひかりれるを含意がんいするランセットまど英語えいごばんにちなんだものである。1991ねん以来いらい、『ランセット』はレレックス・グループ一部いちぶであるエルゼビア所有しょゆうされている。2008ねん時点じてん編集へんしゅうちょうはリチャード・ホートンである。

『ランセット』はいくつかの重要じゅうよう医学いがくてきおよび医学いがくてき事項じこうかんして、政治せいじてき立場たちばったことがある。近年きんねんれいでは、ホメオパシー効能こうのう治療ちりょう選択肢せんたくしになりうるという世界せかい保健ほけん機構きこう主張しゅちょう否定ひていし、このけん世界せかい保健ほけん機構きこう批判ひはんしたこと[3]、Reed Exhibitionsが軍需ぐんじゅ産業さんぎょうさい主催しゅさいした時点じてん支持しじ、そして2003ねんに、タバコ違法いほうにするびかけがある[4]

関連かんれん雑誌ざっし

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『ランセット』はこれまでに4しゅ専門せんもん雑誌ざっししている。いずれのめいにも母体ぼたいの『ランセット』の名称めいしょうふくまれている。原著げんちょ論文ろんぶんとレビューを掲載けいさいする『The Lancet Neurology』(神経しんけいがく)、『The Lancet Oncology』(腫瘍しゅようがく)の『ランセット・サイカイアトリー』(精神せいしん医学いがく)の3と、レビューを掲載けいさいする『The Lancet Infectious Diseases』(感染かんせんしょう)である。いずれの雑誌ざっしも、かく専門せんもん分野ぶんや重要じゅうよう雑誌ざっしであるとのかなりたか評価ひょうかている。『The Lancet Neurology』『The Lancet Oncology』『The Lancet Psychiatry』『The Lancet Infectious Disease』のインパクトファクターはそれぞれ、59.935、54.433、64.3、71.421である[2]

まきごうのつけなお

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1990ねんより以前いぜんは、『ランセット』のまきごう毎年まいとしリセットされていた。いちがつからろくがつまでに刊行かんこうされたものはだい1かんのこりはだい2かんとされていた。1990ねんに、『ランセット』は年間ねんかん2かん発行はっこうとなる連続れんぞくまきごうすう方式ほうしき変更へんこうした。まきごうすうは1990ねん以前いぜんにもさかのぼってられ、1990ねん前半ぜんはんまきが335かん、1989ねん後半こうはんまきが334かんとされた。Science Directの目次もくじリストのひょうはこのあたらしいまきごうすう表記ひょうきもちいている[5]

議論ぎろんまととなった記事きじ

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『ランセット』は、1998ねん2がつ28にちに『Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children』の表題ひょうだいで、しん三種さんしゅ混合こんごうワクチン自閉症じへいしょうとの関係かんけいがある論文ろんぶん掲載けいさいしたとき[6]ワクチン研究けんきゅうしゃ医師いしから、はげしい批判ひはんさらされた。2004ねん3月6にちに『ランセット』は、論文ろんぶん一部いちぶ撤回てっかい発表はっぴょうした (Lancet 2004;363:750) [7]

編集へんしゅうちょうのリチャード・ホートンは、どう文書ぶんしょについて、著者ちょしゃ一人ひとりアンドリュー・ウェイクフィールドが、『ランセット』に開示かいじしていなかった重大じゅうだい利益りえき相反あいはんconflict of interest)があったために、「致命ちめいてき利益りえき相反あいはん」があったと正式せいしき言明げんめいした[8]。そして2010ねん2がつ2にちに「科学かがくにおける不正ふせい行為こうい」として、論文ろんぶん全体ぜんたい正式せいしき撤回てっかい抹消まっしょうした[9][10]

『ランセット』は2004ねんに、イラク戦争せんそうにおけるイラクじん死者ししゃすうをおよそ10まんにんとする見解けんかいして議論ぎろんこした。2006ねんには、おなじチームによる追跡ついせき研究けんきゅうによって、イラクの戦争せんそうでの死者ししゃすう先行せんこう調査ちょうさ矛盾むじゅんしないだけでなく、調査ちょうさ期間きかんちゅう顕著けんちょ増加ぞうかしたという示唆しさがなされた。2度目どめ調査ちょうさでは、戦争せんそう結果けっかとして65まん4,965にんのイラクじん死者ししゃたことが推定すいていされた。95%信頼しんらい区間くかんは39まん2,979にんから94まん2,636にんあいだであった。1,849世帯せたいの1まん2,801にん調査ちょうさ対象たいしょうになった[11]

2006ねん1がつには、2005ねん10がつに『ランセット』で刊行かんこうされたノルウェーのがん研究けんきゅうしゃヨン・スドベ英語えいごばんと13にん共著きょうちょしゃによる記事きじで、データが偽造ぎぞうされていたことがあかるみに[12][13][14]

学術がくじゅつ雑誌ざっしでも、『ランセット』での論文ろんぶん撤回てっかいならい、いくつかの論文ろんぶん撤回てっかいされた。『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンでは、1週間しゅうかんたないうちに、同誌どうし発行はっこうされたおな著者ちょしゃによる研究けんきゅう論文ろんぶんかんする編集へんしゅう見解けんかい記事きじ掲載けいさいし、2006ねん11月には、このノルウェーの研究けんきゅうしゃによる口腔こうくうがん記事きじ2ほん撤回てっかいした[15]

2009ねん論説ろんせつで、教皇きょうこうベネディクト16せいエイズ予防よぼうかんして、純潔じゅんけつについてのカトリック教会きょうかい教義きょうぎすすめるために、コンドームかんする学術がくじゅつてき根拠こんきょ公的こうてき歪曲わいきょくしていたことが告発こくはつされた[16][17]ローマ教皇きょうこうちょうでは、コンドームがエイズの危機きき解決かいけつするのに十分じゅうぶんたりえないかもしれないことを実証じっしょうした、2000ねんのランセットの記事きじしめすことで自己じこ弁護べんごした[18]

メディアへの登場とうじょう

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1974ねんメル・ブルックスのコメディ『ヤング・フランケンシュタイン』では、ジーン・ワイルダーえんずるフレデリック・フランケンシュタイン博士はかせ列車れっしゃって『ランセット』をんでいるシーンがある。シャーロック・ホームズもののいち白面しらふ兵士へいし』でも、19世紀せいきまつ代表だいひょうする医学いがく雑誌ざっしとしてホームズが言及げんきゅうする。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ Thomas Wakley は翻訳ほんやくによってトーマス・ウェイクリーと表記ひょうきされることもあれば、トーマス・ワクリーと表記ひょうきされることもある。
  2. ^ このメスを Scalpel あるいは Lancetとぶ。

出典しゅってん

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  1. ^ Pope 'distorting condom science'”. BBC (2009 3 27). 2009ねん10がつ12にち閲覧えつらん。 “One of the world's most prestigious medical journals, the Lancet, has accused Pope Benedict XVI of distorting science in his remarks on condom use.”
  2. ^ a b 2022 Journal Citation Report Science Edition, Thompson Reuters, 2022
  3. ^ Homoeopathy's benefit questioned”. BBC (20058 26). 2009ねん10がつ12にち閲覧えつらん
  4. ^ Ferriman, Annabel. Lancet calls for tobacco to be made illegal. BMJ 2003;327:1364 (13 December), doi:10.1136/bmj.327.7428.1364-b.
  5. ^ The Lancet. Science Direct.
  6. ^ Dr AJ Wakefield, FRCS. SH Murch, MB. A Anthony, MB. J Linnell, PhD. DM Casson, MRCP. M Malik, MRCP. M Berelowitz, FRCPsych. AP Dhillon, MRCPath. MA Thomson, FRCP. P Harvey, FRCP. A Valentine, FRCR. SE Davies, MRCPath. JA Walker-Smith, FRCP (1998ねん2がつ28にち). “RETRACTED: Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children”. THE LANCET. 2021ねん11月22にち閲覧えつらん
  7. ^ Lyall J (February 2004). “Editor in the eye of a storm”. BMJ (Clinical research ed.) 328 (7438): 528. doi:10.1136/bmj.328.7438.528. PMC 351866. PMID 15164721. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC351866/. 
  8. ^ MMR researchers issue retraction. BBC News, online edition, 4 March 2004.
  9. ^ えい医学いがく自閉症じへいしょうしん三種さんしゅ混合こんごうワクチンの関係かんけいしめした論文ろんぶん撤回てっかい (日本語にほんご). AFPBB News (フランス通信つうしんしゃ). (2010ねん2がつ3にち). https://www.afpbb.com/articles/-/2690341?pid=5270873 2017ねん1がつ18にち閲覧えつらん 
  10. ^ 大西おおにし 淳子じゅんこ (2010ねん2がつ5にち). “LancetがMMRと自閉症じへいしょう関係かんけい示唆しさした論文ろんぶん抹消まっしょう. 日経にっけいメディカル (日経にっけいBP). https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201002/514064.html 2021ねん11月22にち閲覧えつらん 
  11. ^ Coghlan, Ben. Gut reaction aside, those on the ground know Iraq reality. Eureka Street, 30 October 2006.
  12. ^ Sudbø J, Lee JJ, Lippman SM, et al. (2005). “Non-steroidal anti-inflammatory drugs and the risk of oral cancer: a nested case-control study”. Lancet 366 (9494): 1359–66. doi:10.1016/S0140-6736(05)67488-0. PMID 16226613. 
  13. ^ Cancer study patients 'made up'. BBC News, online edition, 16 January 2006.
  14. ^ Hafstad, Anne. Største svindel verden har sett. Aftenposten, 17 January 2006.(ノルウェー記事きじ
  15. ^ Cortez, Michelle Fay (2006ねん11月1にち). “Medical journal retracts oral cancer studies linked to fraud” (英語えいご). Bloomberg. 2012ねん7がつ20日はつか時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2023ねん3がつ7にち閲覧えつらん
  16. ^ Pope 'publicly distorted' condom science: Lancet
  17. ^ 法王ほうおうの「コンドーム発言はつげん」に「人命じんめい軽視けいし批判ひはん Archived 2009ねん3がつ22にち, at the Wayback Machine.
  18. ^ Radio Vatican article

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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