ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸さん

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸さん
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう	53-57-6 (NADPH), 53-59-8 (NADP+)
PubChem	5884 (NADPH)5885 (NADP+)
KEGG	C00005 (NADPH) C00006 (NADP+)
MeSH	NADP
特性とくせい
化学かがく式しき	C21H29N7O17P3
モル質量しつりょう	744.413
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・常つね圧あつ (100 kPa) におけるものである。

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸さん（ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリンさん、nicotinamide adenine dinucleotide phosphate）とは、光合成こうごうせい経路けいろあるいは解かい糖とう系けいのエントナー-ドウドロフ経路けいろなどで用もちいられている電子でんし伝達でんたつ体たいである。化学かがく式しき：C₂₁H₂₁N₇O₁₇P₃、分子ぶんし量りょう：744.4。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドと構造こうぞう上じょうよく似にており、脱だつ水素すいそ酵素こうその補ほ酵素こうそとして一般いっぱん的てきに機能きのうしている。略号りゃくごうであるNADP⁺（あるいはNADP）として一般いっぱん的てきにはよく知しられている。酸化さんか型がた (NADP⁺) および還元かんげん型がた (NADPH) の2つの状態じょうたいを有ゆうし、二に電子でんし還元かんげんを受うけるが中間ちゅうかん型がた（一いち電子でんし還元かんげん型がた）は存在そんざいしない。

かつては、トリホスホピリジンヌクレオチド(TPN)、補ほ酵素こうそII、コエンザイムII、コデヒドロゲナーゼIIなどと呼称こしょうされていたが、現在げんざいはNADP⁺に統一とういつされている。別名べつめい、ニコチン酸さんアミドジヌクレオチドリン酸さんなど。

NADP⁺の構造こうぞうや諸しょ特性とくせい

NADP⁺の構造こうぞうは基本きほん的てきにはNAD⁺とほとんど同おなじであり、ニコチンアミドヌクレオチドおよびアデノシンからなるが、アデノシンのヌクレオチドの2'位くらいにはヒドロキシル基もとではなくリン酸さん基もとが付属ふぞくしている。また還元かんげん様式ようしきもNAD⁺の場合ばあいと全まったく同おなじである。

ヌクレオチドを含ふくむために、波長はちょう260nmの紫外線しがいせんに吸収きゅうしゅう極大きょくだいを示しめし、NADPHのみ340nmの紫外線しがいせんもよく吸収きゅうしゅうする。酵素こうそ活性かっせい測定そくてい法ほうはNAD⁺の場合ばあいと全まったく同おなじで、基質きしつとして扱あつかうNADP⁺のみが異ことなる。なお、NADP⁺依存いぞん性せい脱水だっすい素もと酵素こうそはNAD⁺には全まったく活性かっせいを示しめさず、この場合ばあいは別べつのEC番号ばんごうが与あたえられている。

• 
  NADP⁺
• 
  NADPH

NADP⁺およびNADPHの生理学せいりがく的てき意義いぎ

NADP⁺およびNADPHはNADP⁺と同様どうよう、生体せいたい内ないの電子でんし伝達でんたつに寄与きよしているが、中なかでも有名ゆうめいなのが光合成こうごうせいの電子でんし伝達でんたつ物質ぶっしつとしての役割やくわりである。また、解かい糖とう系けいのエントナー-ドウドロフ経路けいろや脂肪酸しぼうさんやステロイドの生なま合成ごうせい系けいにも機能きのうしている。還元かんげん物質ぶっしつNADPHを生産せいさんする系けいは以下いかの通とおりである。

光合成こうごうせい、光化学こうかがく系けい複ふく合体がったいI

• ${\ce {Fd^{red}\ + NADP^+ -> Fd_{ox}\ + NADPH}}$

光化学こうかがく系けい複ふく合体がったいIによって生しょうじる還元かんげん型がたフェレドキシンから、フェレドキシン-NADP⁺レダクターゼ (FNR) によってNADP⁺への電子でんし伝達でんたつが行おこなわれ、還元かんげん物質ぶっしつNADPHが生しょうじる。この反応はんのうは電子でんし非ひ循環じゅんかん的てき光合成こうごうせいのみで発生はっせいし、電子でんし循環じゅんかん的てき光合成こうごうせいの場合ばあいは、フェレドキシンからプラストキノンへ電子でんし伝達でんたつが行おこなわれる。酸素さんそ非ひ発生はっせい型がたすなわち光合成こうごうせい細菌さいきん型かたの光合成こうごうせいではNADP⁺は使用しようされず、NAD⁺が用もちいられている。

エントナー-ドウドロフ経路けいろ

• グルコース-6-リン酸さん + NADP⁺ → 6-ホスホグルコン酸さん + NADPH

エントナー-ドウドロフ経路けいろとエムデン-マイヤーホフ経路けいろの共通きょうつう経路けいろにおいてはNAD⁺が使用しようされる。また古こ細菌さいきん特有とくゆうの非ひリン酸化さんかエムデン-マイヤーホフ経路けいろにおいては、NADP⁺が使用しようされることもあるが、NAD⁺の場合ばあいもあり、どちらともいえない。ただし、以下いかの反応はんのうにはNADP⁺が使用しようされる。

• グリセルアルデヒド + NADP⁺ → グリセリン酸さん + NADPH

またメタン菌きんの酸化さんか型がた不完全ふかんぜんクエン酸くえんさん回路かいろにおいてもNADP⁺が使用しようされる。

• イソクエン酸くえんさん + NADP⁺ → 2-オキソグルタル酸さん + NADPH + CO₂

NADPHの酸化さんか経路けいろには、光合成こうごうせいの暗くら反応はんのうすなわちカルビン-ベンソン回路かいろがある。

• 1,3-ビスホスホグリセリン酸さん + NADPH → グリセルアルデヒド3リン酸さん + NADP⁺ + Pi

以上いじょうの反応はんのうはグリセルアルデヒド3リン酸さん脱水だっすい素もと酵素こうそによって触媒しょくばいされる。他ほかにも脂肪酸しぼうさん生なま合成ごうせい系けいで酸化さんかを受うける。

• アセトアセチルACP + NADPH → βべーたヒドロキシブチリルACP + NADP⁺
• クロトニルACP + NADPH → ブチリルACP + NADP⁺

そのほか、C₄型かた光合成こうごうせいやCAM型がた光合成こうごうせいでも別べつの経路けいろで使用しようされている。おもに植物しょくぶつで使用しようされていると考かんがえられており、動物どうぶつにおける生理学せいりがく的てき役割やくわりはNAD⁺とは異ことなっていると考かんがえられている。

グルタチオンによる酸化さんか還元かんげん

詳細しょうさいはグルタチオンを参照さんしょう。

• 酸化さんか型がたグルタチオン(GSSG) + 還元かんげん型がた(NADPH) → 還元かんげん型がたグルタチオン(GSG) + 酸化さんか型がた(NADP⁺)

NADP⁺の合成ごうせい

NADP⁺の基本きほん骨格こっかくはNAD⁺と同おなじであるために、NAD⁺の項こうを参照さんしょう。そしてNAD⁺のヌクレオチドの2'へのリン酸さん基もとの付加ふかは以下いかの反応はんのうにて行おこなわれる。

• NAD⁺ + ATP → NADP⁺ + ADP

NADPHの合成ごうせい

• ペントースリン酸さん回路かいろ
• リンゴ酸さんデヒドロゲナーゼ (オキサロ酢酸さくさん脱だつ炭酸たんさん) (NADP+)による反応はんのう
• NADP⁺依存いぞん型がたイソクエン酸くえんさんデヒドロゲナーゼによる反応はんのう

関連かんれん項目こうもく

• 酸化さんか還元かんげん酵素こうそ
• 補ほ酵素こうそ
• 電子でんし伝達でんたつ体たい
• 光合成こうごうせい
• ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NAD)
• グルコース-6-リン酸さんデヒドロゲナーゼ

外部がいぶリンク

• Pentose Phosphate Pathway (英語えいご)