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R5000

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

R5000MIPS IV命令めいれいセットアーキテクチャ (ISA) を実装じっそうしたマイクロプロセッサひとつで、Quantum Effect Devices (QED) が設計せっけいした。ミップス・テクノロジーズ (MTI) が開発かいはつ資金しきんし、権利けんりもMTIが保持ほじした。MTIからライセンス提供ていきょうけたのは、IDT日本電気にほんでんき (NEC)、日本鋼管にほんこうかん (NKK)、東芝とうしばである。QEDがそれまで設計せっけいしたR4600やR4700の上位じょうい位置いちするハイエンドのようマイクロプロセッサとして企画きかくされた。NECはVR5000、NKKはNR5000、東芝とうしばはTX5000として販売はんばいPMC-Sierra がQEDを買収ばいしゅうしたさい、R5000の権利けんり同社どうしゃ同時どうじ購入こうにゅうした。PMC-SierraはいまMIPSアーキテクチャのマイクロプロセッサをみシステムけに販売はんばいしている。

採用さいようれい

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R5000は、シリコングラフィックス (SGI)、NEC、Siemens-Nixdorf といった企業きぎょうがワークステーションやサーバに採用さいようした。SGIは O2 というローエンドのワークステーションに採用さいようしている。ルーターやプリンターなどのみシステムにも採用さいようされた。Cobalt QubeCobalt RaQ当初とうしょ、R5000の派生はせいひんであるRM5230とRM5231を採用さいようしていた。Qube 2700 ではRM5230マイクロプロセッサ、Qube 2 ではRM5231が採用さいようされている。RaQ はのちに AMD K6-2、さらには Intel Pentium III を採用さいようした。

歴史れきし

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もともとのロードマップでは1996ねん前半ぜんはんに200MHzばん、1996ねん後半こうはんに250MHzばん出荷しゅっかし、1997ねんには改良かいりょうほどこしたR5000Aを出荷しゅっかする予定よていだった。R5000は1996ねん1がつ発表はっぴょうされたが、200MHz動作どうさ達成たっせいできず、180MHzとされた。ローエンドのワークステーションけとしては、当時とうじほかにIBMとモトローラの PowerPC 604、HPのPA-7300LC、インテルの Pentium Pro競合きょうごうしていた。

詳細しょうさい

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2命令めいれい同時どうじ実行じっこうできるスーパースケーラ設計せっけいだが、アウト・オブ・オーダー実行じっこうはできない。整数せいすう演算えんざん命令めいれい1個いっこ浮動ふどう小数点しょうすうてん演算えんざん命令めいれい1個いっこ同時どうじ発行はっこうできる。整数せいすう演算えんざん命令めいれいよう単純たんじゅん命令めいれいパイプラインが1つと浮動ふどう小数点しょうすうてん演算えんざんようパイプラインが1つしかなく、トランジスタすう削減さくげんしてチップサイズとコストを低減ていげんしていた。動的どうてき分岐ぶんき予測よそく機能きのうもコスト低減ていげんのため実装じっそうしていない。わりにコンパイラ静的せいてき分岐ぶんききそうかどうかを判断はんだんし、 MIPS II ISA で導入どうにゅうされた branch likely 命令めいれい適宜てきぎ使用しようするものとした。

QEDの設計せっけいおおきないちキャッシュと単純たんじゅんなCPU設計せっけい特徴とくちょうとし、R5000にもおおきないちキャッシュ搭載とうさいしている。R5000のいちキャッシュは命令めいれいようとデータようそれぞれに32KBである。2ウェイセットアソシアティブ方式ほうしきで、ラインサイズは32バイト、仮想かそうインデックス・物理ぶつりタグ方式ほうしきである。命令めいれいいちキャッシュにロードされるさい一部いちぶデコードされ、命令めいれいごとに4ビットのデコード情報じょうほうがキャッシュに付随ふずいして格納かくのうされる。この4ビットは命令めいれい前後ぜんご命令めいれい同時どうじ発行はっこう可能かのうか、どの演算えんざんユニットを使用しようするかをあらわしている。スーパースケーラの命令めいれい発行はっこう機構きこうがこの情報じょうほう使用しようする。

整数せいすう演算えんざんユニットはだい部分ぶぶん命令めいれいを1サイクルのレイテンシとスループットで実行じっこうできるが、乗算じょうざん除算じょざんだけは例外れいがいである。32ビットの乗算じょうざんはレイテンシが5サイクルでスループットが4サイクルとなっている。64ビットの乗算じょうざんはレイテンシがさらに4サイクルかかり(合計ごうけい9サイクル)、スループットも半分はんぶん(8サイクル)となる。除算じょざんは32ビット整数せいすうでは36サイクルのレイテンシとスループットで、64ビット整数せいすうではそれらが68サイクルとなる。

FPUは32ビット単精度たんせいど高速こうそくした設計せっけいである。これはコストをおさえつつ、3次元じげんグラフィックスで多用たようされる単精度たんせいど浮動ふどう小数点しょうすうてん演算えんざん性能せいのうたかくしてほしいというSGIの要望ようぼうこたえたものだった。完全かんぜんにパイプラインされており、R4700よりはるかに高性能こうせいのうになっている。MIPS IV ISA のせき演算えんざん命令めいれい実装じっそうしている。単精度たんせいど加算かさん乗算じょうざんせき演算えんざんはレイテンシが4サイクルでスループットは1サイクルとなっている。単精度たんせいど除算じょざんはレイテンシが21サイクルでスループットが19サイクル、平方根へいほうこんはレイテンシが26サイクルでスループットが38サイクルである。除算じょざん平方根へいほうこんはパイプラインされていない。倍精度ばいせいど演算えんざん命令めいれいはレイテンシが極端きょくたんおおきく、加算かさん以外いがいのスループットもちいさい(加算かさんだけは単精度たんせいどおなじレイテンシとスループットである)。倍精度ばいせいど乗算じょうざんせき演算えんざんはレイテンシが5サイクルでスループットが2サイクルである。除算じょざんはレイテンシが36サイクルでスループットが34サイクル、平方根へいほうこんはレイテンシが68サイクルでスループットが66サイクルとなっている。

R5000はキャッシュの制御せいぎょ内蔵ないぞうしており、512KB、1KB、2MB のキャッシュを制御せいぎょ可能かのうキャッシュには専用せんよう同期どうきSRAM (SSRAM) を使用しようする。システムバスはR4000などと同様どうようのSysADバス採用さいようしている。アドレスバスとデータバスを多重たじゅうしたバスで、動作どうさ周波数しゅうはすう最大さいだい100MHzである。当初とうしょR5000はマルチプロセッシングをサポートしていなかったが、将来しょうらいのサポートにそなえてパッケージではそのためのピンが予約よやくされていた。

QEDはファブレス企業きぎょうなので、自前じまえでは製造せいぞうしなかった。R5000を製造せいぞうしたのは、IDT、NEC、NKK である。3しゃはいずれも0.35μみゅーmのCMOSプロセスで製造せいぞうしたが、それぞれのプロセスには差異さいがある。IDTは2そうのポリシリコンと3そうのアルミニウム配線はいせん採用さいよう。2そうポリシリコンを使つかうことで、4トランジスタのSRAMセルを実装じっそうでき、トランジスタすうを360まん、チップサイズを8.7mm×9.7mm (84.39 mm2) とした。NECとNKKは1そうのポリシリコンと3そうのアルミニウム配線はいせん採用さいよう。ポリシリコンが1そうであるため、SRAMセルに6のトランジスタを必要ひつようとし、トランジスタすうは500まん、チップサイズもやく 87 mm2おおきくなった。チップサイズを80から90mm2にすることはMTIからの要請ようせいだった。キャッシュをのぞいたトランジスタすうはどちらも80まんほどで、のこりはすべてキャッシュようである。パッケージは272ピンのBGA (ball grid array) と272ピンのPGA (pin grid array) がある。従来じゅうらいのMIPSアーキテクチャのマイクロプロセッサぐんとはピン互換ごかんせいはない。

派生はせいひん

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QED RM5230

1990年代ねんだい後半こうはん、QEDはMTIからMIPSアーキテクチャのマイクロプロセッサを製造せいぞう販売はんばいするライセンスを取得しゅとくし、社名しゃめいを Quantum Effect Design から Quantum Effect Devices に変更へんこうした。最初さいしょ製品せいひんは RM52xx ファミリーで、当初とうしょRM5230とRM5260の2モデルを発売はつばいした。発表はっぴょうは1997ねん3がつ24にちのことである。RM5230は当初とうしょ100MHzと133MHzばん、RM5260は133MHzと150MHzばんがあった。1997ねん9がつ29にち、150MHzと175MHzのRM5230、175MHzと200MHzのRM5260が追加ついかされた。

RM5230とRM5260はどちらもR5000をもとにしており、いちキャッシュのおおきさ(32KBから16KBに削減さくげん)とシステムインタフェースのはば(RM5230は32ビット67MHz、RM5260は64ビット75MHz)がことなり、デジタル信号しんごう処理しょりけのせき演算えんざん命令めいれいと3オペランド乗算じょうざん命令めいれい追加ついかされている。製造せいぞうったのはTSMCで、0.35μみゅーmプロセスで製造せいぞうした。パッケージングは Amkor Technology担当たんとう。RM5230は128ピン、RM5260は208ピンである。

RM52xxファミリーには、1997ねん9がつ29にちEmbedded Systems Conference でRM5270の追加ついか発表はっぴょうされた。ハイエンドの用途ようとをターゲットとし、150MHzばんと200MHzばんがある。最大さいだい2MBのキャッシュをサポートできるキャッシュ制御せいぎょがチップに内蔵ないぞうされている。SysADバスも64ビットはばで100MHzで駆動くどう可能かのうである。304ピンのSuper-BGAでパッケージされ、RM7000とピン互換ごかんせいがあり、RM7000からの移行いこう意図いとしている。

1998ねん7がつ20日はつか、RM52x1ファミリーが発表はっぴょうされた。RM5231、RM5261、RM5271 がある。これらはRM52x0ファミリーからの派生はせいであり、0.25μみゅーmプロセスを使つかっている。RM5231は当初とうしょ150MHz、200MHz、250MHzばんがあり、RM5261とRM5271には250MHzばんと266MHzばんがあった。1999ねん7がつ6にち、300MHzばんRM5271が追加ついかされた(1まん単位たんいで140ドル)。RM52x1ファミリーはいちキャッシュが32KBとなり、SysADバスも最高さいこう125MHzで駆動くどう可能かのうとなっている。

PMC-Sierra がQEDを買収ばいしゅうしたのちも、RM52xxファミリーは同社どうしゃ製品せいひんとして販売はんばいされつづけた。PMCはさらにRM5231AとRM5261Aを2001ねん4がつ4にち発表はっぴょうした。これらはTSMCで0.18μみゅーmプロセスで製造せいぞうされ、さらに動作どうさ周波数しゅうはすうたかくなり、消費しょうひ電力でんりょくひくくなっている。RM5231Aは250MHzから350MHz、RM5261Aは250MHzから400MHzで動作どうさする。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Computergram (8 January 1996). "MIPS Ready With R5000 Successor To The 4600/4700". Computer Business Review.
  • Gwennap, Linley (22 January 1996). "R5000 Improves FP for MIPS Midrange". Microprocessor Report, 10 (1).
  • Halfhill, Tom R. (April 1996). "R5000 Cuts 3-D Cost". Byte.
  • Halfhill, Tom R. (May 1996). "Mips R5000: Fast, Affordable 3-D". Byte, 161–162.
  • MIPS Technologies, Inc. MIPS R5000 Microprocessor Technical Backgrounder.
  • PMC-Sierra, Inc. (4 April 2001). "PMC-Sierra Ships Third Generation R5200A MIPS Microprocessors". Press release.
  • Quantum Effect Devices (24 March 1997). "QED Introduces RM52xx Microprocessor Family". Press release.
  • Quantum Effect Devices (29 September 1997). "QED Introduces RM5270 Superscalar 64-bit Microprocessor". Press release.
  • Quantum Effect Devices (20 July 1998). "QED Introduces The RM52x1 Microprocessor Family". Press release.
  • Quantum Effect Devices (6 July 1999). "QED's RM5271 Available Immediately at 300MHz". Press release.