SMC-777

SMC-777（エスエムシースリーセヴン）とは、ソニーが1983年ねん11月1日にちに発売はつばいしたパーソナルコンピュータである^[1]。

概要がいよう

パソコンの中なかでも、特とくに趣味しゅみでの利用りように重点じゅうてんを置おいたホビーパソコンに分類ぶんるいされる。当時とうじ同おなじくソニーが発売はつばいしていたMSX規格きかくパソコンと同様どうようにHiTBiT（ヒットビット）のブランド名めいが用もちいられた。型番かたばんの3文字もじは「Sony Micro Computer」に由来ゆらい。また777はソニーのオーディオ製品せいひんなどヒット商品しょうひんにつけられていた番号ばんごうで、並々なみなみならぬ意気込いきごみで市場いちばに投入とうにゅうされた。

当時とうじとしては革新かくしん的てきな表現ひょうげん能力のうりょくを搭載とうさい、翌よく1984年ねんにはカラーパレット機能きのうを標準ひょうじゅん搭載とうさいしたSMC-777Cを発売はつばいした。しかし、8ビット御三家ごさんけが覇権はけんを争あらそう市場いちばを切きり崩くずせずに姿すがたを消けしていった。

特徴とくちょう

最大さいだいの特徴とくちょうはディスクドライブ内蔵ないぞうで本体ほんたい価格かかく148,000円えんという高こうコストパフォーマンスである。ディスクドライブ単体たんたいでも10万まん円えん前後ぜんごしていた当時とうじ、ディスクドライブ標準ひょうじゅん搭載とうさいで15万まん円えん以下いかのパーソナルコンピューターは本ほんモデルが初はつで、ディスクベース低てい価格かかくモデルの先駆さきがけとなった。新しん日本電気にほんでんきがディスクドライブ標準ひょうじゅん搭載とうさいのパーソナルコンピューター「PC-6601」を143,000円えんで発売はつばいしたことでこれに追従ついしょうした。

また、1980年代ねんだい前半ぜんはんの8ビットパソコン普及ふきゅう期きにおいて、画像がぞう表示ひょうじはデジタルRGB8色しょくが主流しゅりゅうで、それ以外いがいではせいぜい、アナログ512色しょくパレット中ちゅう8色しょく表示ひょうじのものが一部いちぶにあった程度ていどだった。それに対たいして当機とうきは、カラーパレットボードを搭載とうさいすれば4096色しょく中ちゅう16色しょく（高こう解像度かいぞうどでは4色しょく）という表現ひょうげん能力のうりょくを備そなえており、当時とうじとしてはビジュアル指向しこうを強つよく意識いしきしたものであった。

筐体きょうたいは本体ほんたい・キーボード一体いったい型がた。ビジネス向むけではないためテンキーは搭載とうさいされておらず（オプションで接続せつぞくは可か）、他た機種きしゅであればテンキーがあるべき箇所かしょには3.5インチFDDが鎮座ちんざしている。その手前てまえに配置はいちされたカーソルキーは、4方向ほうこうのキーを1枚まいの方形ほうけいパッドとし、四方しほうを押おし込こむ形式けいしきにしたジョイパッド型かたで、やはり如何いかにも「ホビー向むけ」を意識いしきされるデザインとなっている。なおキー配列はいれつはいわゆるUS配列はいれつで、JIS配列はいれつが主流しゅりゅうであった当時とうじでは珍めずらしい存在そんざいだった。

本体ほんたい添付てんぷのアプリケーション及およびマニュアルが破格はかくに豊富ほうふであり、詳細しょうさいなハードウェアの回路かいろ図ずまで付属ふぞくしていた点てんも特徴とくちょうである。プログラミング環境かんきょうとしては当時とうじ一般いっぱん的てきであったBASIC言語げんご (777-BASIC) に加くわえ、コンピュータ入門にゅうもん教育きょういく用ようとして期待きたいされていた高級こうきゅう言語げんご・LOGO (DR LOGO) が同どう梱こりされていた。他ほかにも、777-ASSEMBLER、777-DEBUGGER、簡易かんいな表おもて計算けいさんソフト (MEMO) が標準ひょうじゅん添付てんぷされていた^[2]。

その一方いっぽうで同どう梱こりされていたアセンブラおよびデバッガでは、ソニー独自どくじのZ80用ようニーモニックであるANN表記ひょうきを使用しよう。BASIC等とうの高級こうきゅう言語げんご風ふうの表記ひょうきだったが、ザイログニーモニックに慣なれていた既存きそんのZ80プログラマたちの間あいだでは、「紛まぎらわしい」「扱あつかいづらい」等とうの評ひょうがあり、アプリケーション開発かいはつ者しゃの参入さんにゅうを遠とおざけた要因よういんの一ひとつとも言いわれている。

OSとして供給きょうきゅうされていたSONY FILERはCP/MのVer1.4互換ごかんのシステムコールを持もち^[1]、ホビーパソコンにCP/Mの概念がいねんを持もち込こんだ点てんでも特徴とくちょう的てきである。CP/MVer2.2はスクリーンエディタと同どう梱こりの安価あんかなパッケージで供給きょうきゅうされ、容易よういにCP/Mを使用しようすることができた（CP/Mのみの販売はんばいもあったが、高価こうかであった）。これに関連かんれんして、CP/Mの開発かいはつ者しゃでありデジタルリサーチの社長しゃちょうでもあったゲイリー・キルドールをして「最高さいこうのCP/Mマシン」と言いわしめたという逸話いつわも残のこっている。ただし、製品せいひんに同どう梱こりされたSONY FILER及およびDR LOGO、アセンブラ、デバッガ等とうは、デジタルリサーチ自みずからによる開発かいはつであるため、この賞賛しょうさんもやや手前味噌てまえみそな感かんは否いなめない。

なお、SONY FILERのシステムコールはCP/Mと一部いちぶ異ことなっており、ソフト互換ごかん性せいは高たかくなく、前述ぜんじゅつの開発かいはつ言語げんごを使用しようするにはCP/Mを別途べっと購入こうにゅうする必要ひつようが有あった。

市販しはんアプリケーションとしては、海外かいがいで絶大ぜつだいな人気にんきを誇ほこったブローダーバンドのロードランナーやチョップリフター、A.E.等とうのApple II市場いちばのゲームを移植いしょくするなど、国内こくないのユーザーにその高性能こうせいのうとともに異い文化ぶんかの香かおりを見みせつける形かたちで発売はつばいされた。

CP/M環境かんきょう下かのソフトウェアとしてFORTRAN、COBOL、C、Pascal、APL、Forth、Prolog、LISPがソニー扱あつかいで発売はつばいされ、幅広はばひろいプログラミング言語げんご学習がくしゅう用ようのパソコンとしての活用かつようも検討けんとうされていたものと思おもわれる。

またこの時期じきに国内外こくないがいで隆盛りゅうせいしていたテクノミュージックブームを意識いしきして、原始げんし的てきではあるものの内蔵ないぞうPSG音源おんげんを使用しようしたDTMソフトウェア（カミヤスタジオのラッサピアター）をいち早はやく同どう梱こりしていた。

発売はつばい元もとが家電かでん・AV機器ききメーカーでもあるため、一般いっぱん家庭かてい向むけ製品せいひんと同種どうしゅの販売はんばい戦略せんりゃくを展開てんかい、当時とうじ人気にんき絶頂ぜっちょうにあったアイドルの松田まつだ聖子せいこをイメージキャラクターに採用さいようして、「人々ひとびとのHitBit」というCMキャッチとともにパソコンに関心かんしんの無ない層そうへのアピールを盛さかんに行いっていた。

スペック

CPU: Z-80A（4.028MHz）(サブCPUとしてM5L8041を搭載とうさい^[1])
RAM: 64KB
VRAM: グラフィック32KB、テキスト2KB、アトリビュート2KB、PCG 2KB; VRAMはI/O空間くうかんにマッピングされていた（Z80はI/O空間くうかんを8ビットレジスタ1つで指定していし、I/Oアドレスはアドレスバスの下位かい8ビットに出力しゅつりょくされるが、BCレジスタを使つかってI/O空間くうかんにアクセスする場合ばあいは、レジスタペア（16ビット）の値ねがアドレスバスに出力しゅつりょくされていたため、最大さいだい64KBのI/O空間くうかんを指定していできた）。同様どうようの実装じっそうを行おこなっている機種きしゅとして、シャープのX1、BUBCOM80などがある。また、本ほん機きでは、I/Oアドレスの上位じょうい8bitを下位かいに、下位かい8bitを上位じょういにアドレスデコードし、多おおくのI/Oアドレスの割わり付つけが必要ひつようなところでは双方そうほうをデコードし、他たのI/Oアドレスでは元もとの下位かいアドレスのみをデコードしてデバイスに割わり付つけることにより、命令めいれいの自由じゆう度どをあげる工夫くふうがなされていた。
表示ひょうじ能力のうりょく: 画面がめん解像度かいぞうど 320×200ドット時じに16色しょく、640×200ドット時じ4色しょく表示ひょうじ。; カラーパレットボードを搭載とうさいすることにより、RGB各かく16諧調かいちょう・4096色しょく中ちゅうから選択せんたく可能かのう（SMC-777Cでは標準ひょうじゅん搭載とうさい）。
ディスクドライブ: 3.5インチ1DD（80トラック 280KB）フロッピーディスクドライブ×1（2台だいに増設ぞうせつ可能かのう）; 出荷しゅっかされたOSのバージョンによりトラック数すうが異ことなる。70トラック 280KBとする資料しりょうもある^[2]。
音声おんせい出力しゅつりょく: サウンド出力しゅつりょく1音おと PSG3音おと+1ノイズ（TI SN76489AN）（内蔵ないぞうスピーカー×1）
その他た端子たんし: セントロニクス（25pin）・アナログRGB（独自どくじ仕様しよう25ピン）・ジョイスティック端子たんし×2（9ピン）
ボディカラー: SMC-777は黒くろ、SMC-777Cはパールホワイト。
重おもさ: 約やく4.5Kg^[1]
大おおきさ: 幅はば490mm、高たかさ95mm、奥行おくゆき189mm^[1]
価格かかく: 148,000円えん(SMC-777), 168,000円えん(SMC-777C)

他たのシリーズ機き

SMC-777発売はつばいの前年ぜんねんに、SMC-70という前身ぜんしんモデルが発売はつばいされている。フロッピーディスクドライブはオプション設定せっていであるが拡張かくちょう性せいを重視じゅうししたモデルであり、定価ていか228,000円えんで発売はつばいされたが、基本きほん性能せいのう面めんで欲張よくばりすぎて高価こうかになったこともあって、商業しょうぎょう的てきには失敗しっぱいしている。

またSMCシリーズはSONYの放送ほうそう関連かんれん事業じぎょうへの強つよみを活いかし、テロッパー（文字もじや画像がぞうを映像えいぞうに重かさねる装置そうち）などとして放送ほうそう局きょくや製作せいさく会社かいしゃなどに納入のうにゅうされ、1990年ねん頃ごろまで使用しようされていた。この際さいに必要ひつようとなるBNC出力しゅつりょくや、GENLOCK（ゲンロック＝generator lock、映像えいぞう信号しんごうとの同期どうき装置そうち）などに対応たいおうした周辺しゅうへん機器ききが存在そんざいしている点てんでもユニークである。 GENLOCKERと3.5インチFDDドライブユニットを標準ひょうじゅん装備そうびしたSMC-70Gが放送ほうそう局きょく用ようモデルとして出荷しゅっかされていた。 SMCシリーズのクロックは、4.028MHzと一見いっけん半端はんぱな値ねであるが、映像えいぞう信号しんごうと共通きょうつうのクロックから得えている。