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Virtual Local Area Network

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
VLANから転送てんそう

Virtual Local Area Network (バーチャル・ローカル・エリア・ネットワーク、仮想かそうLAN、バーチャルLAN)・VLAN (ブイラン)は、物理ぶつりてき接続せつぞく形態けいたいとはべつに、仮想かそうてき分割ぶんかつされたLAN接続せつぞくのこと。レイヤ2スイッチ機能きのうの1つで、通信つうしん帯域たいいき有効ゆうこう利用りよう情報じょうほうセキュリティ向上こうじょうなどを目的もくてきとする。

様々さまざま方式ほうしきがあるが、IEEE 802.1Q標準ひょうじゅんされたタグVLANがひろ使つかわれている。

概要がいよう

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LANでは一般いっぱんに、ケーブルまたは無線むせん電波でんぱなどでスイッチ接続せつぞくされている範囲はんいないは、すべてレイヤ2レベル(データリンクそう)での通信つうしん可能かのうである。これを「ブロードキャストドメイン」とぶ。

VLANでは、このような物理ぶつりてき接続せつぞくはなさなくても、スイッチ内部ないぶ処理しょりによってトラフィックを分割ぶんかつすることができる。これによりブロードキャストドメインを制限せいげんすることができ、相互そうご通信つうしんできる端末たんまつちいさい範囲はんいないにサブグループできる[1]

VLANを構成こうせいする目的もくてきおも以下いかのものがある。

  • ネットワークのだい規模きぼたいしてブロードキャストドメインを分割ぶんかつすることで通信つうしん帯域たいいき確保かくほする
  • VLANあいだのアクセスを制限せいげんすることでネットワークセキュリティ確保かくほする
  • LAN構成こうせい必要ひつようなネットワーク機器きき台数だいすうらす

通常つうじょうのLAN同様どうよう、VLANあいだレイヤ3スイッチなどをもちいてルーティングすることでトラフィックを疎通そつうさせることができる。

VLANの方式ほうしき

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VLAN機能きのうスイッチでは様々さまざま設定せってい方法ほうほうでLANセグメントの分離ぶんり実現じつげんされた。方法ほうほうおおきくけて2つあり、接続せつぞくポートによるものと受信じゅしんデータによるものとがある。

ポートベースVLANの構成こうせいれい。ポート2・3・5とポート4・6・7がグループされ、グループがいとの通信つうしんはできない。

接続せつぞくポートによるLAN分離ぶんり

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  • ポートベースVLAN
    接続せつぞくポートによりLANセグメントを分離ぶんりする方式ほうしき[2]。ポート1・2あいだとポート3・4あいだ相互そうご通信つうしんできるが、それぞれのくみ以外いがいのポートとははなされている、などの構成こうせい可能かのうとなる。
  • マルチプルVLAN
    ポートベースVLANの機能きのうの1つで、「マルチプルポート」とばれるポートを設定せっていできるもの[3]。マルチプルポートではポートベースVLANで設定せっていしたすべてのVLANグループと通信つうしん可能かのうである。ポート1-4は相互そうご通信つうしんできないが、マルチプルポートにあたるポート5とだけはそれぞれ通信つうしんできるなどの構成こうせい可能かのうとなり、アップリンクとの接続せつぞく使つかわれる。タグVLANにているが、アップリンクの接続せつぞくさきがVLAN対応たいおう端末たんまつでも使用しようできる。
  • プライベートVLAN
    ポートベースVLANの機能きのうの1つで、VLANない通信つうしんをさらに細分さいぶんするもの[4]。ポート1を単独たんどくポート、ポート2-4を相互そうご通信つうしん可能かのうなポートとしてグループけし、ポート1もポート2-4もグループがいとは通信つうしんできないがアップリンク相当そうとうするポート5とは通信つうしんできる、などの構成こうせい可能かのうとなる。このれいでは、ポート1-5をプライマリVLAN、このグループけをセカンダリVLANとび、ポート1はIポート(isolated)、ポート2-4はCポート(community)、ポート5はPポート(promiscuous)と[5][6]

なお、これらの方式ほうしきはタグVLANの一部いちぶとして実装じっそうされることがあり、おな名称めいしょう製品せいひんやメーカによってことなる機能きのう場合ばあいがある。

受信じゅしんデータによるLAN分離ぶんり

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  • タグVLAN
    イーサネットフレーム挿入そうにゅうされる識別しきべつようのタグ(VLANタグ)によりLANを分離ぶんりする方式ほうしき詳細しょうさい#タグVLANふし参照さんしょう
  • MACベースVLAN
    接続せつぞくされる機器ききMACアドレスにより所属しょぞくするLANセグメントを分離ぶんりする方式ほうしき受信じゅしんフレームの送信そうしんもとMACアドレスを転送てんそうさきポートを決定けっていする。
  • サブネットベースVLAN
    接続せつぞくされる機器ききIPアドレスのサブネットによりLANセグメントを分離ぶんりする方式ほうしき受信じゅしんパケットのIPアドレスおよびサブネットマスク転送てんそうさきポートを決定けっていする。
  • プロトコルベースVLAN
    ネットワークプロトコルによりLANセグメントを分離ぶんりする方式ほうしき受信じゅしんフレームのEtherTypeIPIPXAppleTalkなどを判別はんべつし、転送てんそうさきポートを決定けっていする。
  • 認証にんしょうVLAN (ユーザベースVLAN)
    端末たんまつのログイン情報じょうほう取得しゅとくしてLANセグメントを分離ぶんりする方式ほうしき登録とうろくされたユーザであることが確認かくにんできたときのみアップリンクに転送てんそうする、などの構成こうせい可能かのうとなる。IEEE 802.1X標準ひょうじゅんされ[7]EAPRADIUSサーバとあわせて使つかわれる。

タグVLANは、VLANの代表だいひょうてき実装じっそうの1つで、おもイーサネットフレームうちにどのLANに所属しょぞくする通信つうしんかをあらわすタグを付加ふかして、LANあいだ通信つうしん混在こんざい識別しきべつさせる方式ほうしき。1998ねんIEEE 802.1Q規定きていされており、その実装じっそう方式ほうしき明示めいじするためにしばしば「Dot-1Q VLAN」とばれる。

タグVLANでは一般いっぱんに、複数ふくすうのスイッチにわたってVLANを構成こうせいしており、送信そうしんするがわがフレームないにタグを挿入そうにゅうし、受信じゅしんするがわがそのタグを所属しょぞくするLANを識別しきべつする。これにより、ひとつの通信つうしんポートで複数ふくすうことなるVLANを混在こんざいさせて通信つうしんすることができる。タグVLAN対応たいおうのスイッチでは、VLANの混在こんざい有無うむ以下いかのように接続せつぞくポートをける。

  • アクセスポート : 1つのLANにぞくするポート。端末たんまつなどを接続せつぞくする。
  • トランクポート : 複数ふくすうのLANを混在こんざいさせるポート。タグを処理しょりできるスイッチルータサーバなどを接続せつぞくする。

うん用例ようれい

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下図したずのように、社内しゃないネットワークがかいをまたいでおり、両方りょうほうかい開発かいはつ部署ぶしょ企画きかく部署ぶしょ作業さぎょう部屋へやがそれぞれあるような場合ばあいかんがえる。上下じょうげかいをつなぐ物理ぶつり接続せつぞく単一たんいつであっても、部署ぶしょごとの論理ろんりネットワークに分離ぶんりし、一方いっぽう部署ぶしょのトラフィックがもう一方いっぽう部署ぶしょからは観測かんそくできないようにすることができる。

タグVLANの構成こうせいれい

このれいでは、各階かくかいのエッジスイッチにVLAN設定せっていれ、スイッチあいだ接続せつぞくポートを「トランクポート」、かく部署ぶしょない接続せつぞくポートを「アクセスポート」としてあつかう。部署ぶしょごとに一意いちいのVLAN番号ばんごう(VLAN IDまたはVID)をあてて、トランクポートには各部かくぶしょからのぜんフレームに適切てきせつなVLANタグを挿入そうにゅうするよう設定せっていする。タグつきのフレームがトランクポートから送信そうしんされると、受信じゅしんした宛先あてさきかいのエッジスイッチはそのタグを転送てんそうさきめ、部署ぶしょない転送てんそうするさいにVLANタグを除去じょきょする。このような方法ほうほうで、いずれの部署ぶしょ上下じょうげかい自分じぶん部署ぶしょのみをおなじLANとしてあつかうことができる。

フレーム書式しょしき

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VLANタグは、送信そうしんもとMACアドレスイーサタイプのフィールドのあいだに、以下いかのような書式しょしきの4バイト(32ビット)を挿入そうにゅうする[8]

イーサネットフレームにVLANタグを挿入そうにゅう(下段げだん水色みずいろ)
VLANタグ(4バイト)の書式しょしき
TPID TCI (Tag Control Information)
16 ビット 3 ビット 1 ビット 12 ビット
TPID
0x8100
PCP
0-7
DEI
0-1
VID
0-4094
TPID (Tag Protocol Identifier)
16ビット0x8100で、VLANタグきフレームであることをしめす。フレーム全体ぜんたいがタグによりカプセルされ、形式けいしきじょうはこのEtherType以降いこうのデータがペイロードとなる。
PCP (Priority Code Point)
優先ゆうせん(CoS; Class of Service)を指定していする。3ビット07のいずれかをしめし、7さい優先ゆうせんとなる。各種かくしゅトラフィック(音声おんせい動画どうが・データなど)の優先ゆうせん順位じゅんいけに使つかう。
DEI (Drop Eligible Indicator)
01指定していし、輻輳ふくそう発生はっせい破棄はきしてもよい場合ばあい1しめす。PCPとわせて判定はんてい使つかうこともできる。
VID (VLAN Identifier)
12ビットで、そのフレームがぞくするVLANを指定していする[9]
1~4094 (0x001~0xFFE)はVLANの識別子しきべつしとして使つかうことができ、最大さいだい4094のVLANをあつかえる。
VID=0は、どのVLANにもぞくしていないことを意味いみし、PCP・DEIを通知つうちするための優先ゆうせんタグとして使つかわれる。
VID=1 は、タグフレーム受信じゅしんにスイッチ内部ないぶ処理しょりされるVIDであり、これをPVID (ポートVLAN ID)とぶ。PVIDのデフォルト設定せっていとして1規定きていされているが、変更へんこう可能かのう
VID=2 は、SRP (Stream Reservation Protocol)用途ようとのPVIDで、こちらもデフォルトであり変更へんこう可能かのう
VID=4095 (0xFFF)はシステム内部ないぶのエントリ検索けんさくなどにもちいる予約よやくで、フレーム送信そうしん使つかうことはできない。

VLANタグ挿入そうにゅうにより最大さいだいフレームサイズが4バイト増加ぞうかするため、トランクポートから発行はっこうするさいはフレーム全体ぜんたいFCSさい計算けいさんする必要ひつようがある。 また、1998ねんIEEE 802.3acではフレームちょう最大さいだい従来じゅうらいの1518バイトからタグのぶん増加ぞうかした1522バイトに変更へんこうされており、タグきフレームを中継ちゅうけいするだけの機器ききでもこのフレームちょう対応たいおうしていなければならない。

ふる実装じっそう

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DEIの領域りょういきは、初期しょきにはCFI (Canonical Format Indicator)の名称めいしょう規定きていされ、トークンリングなどイーサネットのフレーム書式しょしきではないことをしめすものだった[10]。イーサネットポートでCFIを受信じゅしんした場合ばあい、そのフレームはタグのポートへは転送てんそうされない。改版かいはんでイーサネットでの動作どうさ前提ぜんていとなったためDEIに変更へんこうされた。

IEEE 802.2のSNAPフレームによるカプセルにも対応たいおうしていた。このフレームでSNAPヘッダはOUIとプロトコルIDのからる。OUI=00-00-00場合ばあいはイーサネットでないフレームであり、このときプロトコルIDの0x8100設定せっていされ、SNAPヘッダのうしろにVLANタグの4バイトが配置はいちされた。

じゅうタグ

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じゅうタグは、イーサネットフレームないに2つのタグを挿入そうにゅうしたもの。2つのタグをそれぞれサービスタグ「S-TAG」とカスタマータグ「C-TAG」と[11]。2005ねんIEEE 802.1ad規定きていされ、2011ねんIEEE 802.1Qまれた[12]。「Q-in-Q VLAN」「VLANトンネリング」ともぶ。

インターネットサービスプロバイダでの用途ようと意図いとしたもので、すでにVLANタグのいた加入かにゅうしゃのトラフィックを混合こんごうさせつつ、プロバイダが内部ないぶ独自どくじにVLANタグを使用しようすることができる。S-TAG(プロバイダのVLANタグ)を外側そとがわにあたるさきき、C-TAG(加入かにゅうしゃのVLANタグ)を内側うちがわにあたるのちく。このときS-TAGのTPIDは0x88a8, 0x88a7規定きていされている[13]が、0x9100, 0x9200, 0x9300などの使つかうこともある。

イーサネットフレームにQ-in-Qタグを挿入そうにゅう(3だん水色みずいろ)

出典しゅってん

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  1. ^ Stallings, William (2016). Foundations of modern networking : SDN, NFV, QoE, IoT, and Cloud. Florence Agboma, Sofiene Jelassi. Indianapolis, Indiana. ISBN 978-0-13-417547-8. OCLC 927715441. https://www.worldcat.org/oclc/927715441 
  2. ^ 日経にっけい xTECH: ポートVLANとタグVLANのちがいとは?” (2018ねん2がつ20日はつか). 2023ねん11月14にち閲覧えつらん
  3. ^ IT用語ようご辞典じてん: マルチプルVLAN 【multiple VLAN】” (2021ねん12月17にち). 2023ねん11月14にち閲覧えつらん
  4. ^ IT用語ようご辞典じてん: プライベートVLAN 【PVLAN】” (2021ねん12月17にち). 2023ねん11月14にち閲覧えつらん
  5. ^ Private VLANs | Junos OS | Juniper Networks”. www.juniper.net. 2023ねん11月8にち閲覧えつらん
  6. ^ Catalyst 4500 Series Switch Cisco IOS Software Configuration Guide, 12.2(25)EW - Configuring Private VLANs [Cisco Catalyst 4500 Series Switches]” (英語えいご). Cisco. 2023ねん11月8にち閲覧えつらん
  7. ^ 802.1X Task Group”. 2023ねん11月14にち閲覧えつらん
  8. ^ IEEE 802.1Q-2022, Clause 9.4 TPID formats
  9. ^ IEEE 802.1Q-2022, Table 9-2
  10. ^ IEEE 802.1Q-2022, Clause 9.6, NOTE 2
  11. ^ IEEE 802.1Q-2022, Clause 9.5, Tag Protocol identification
  12. ^ IEEE 802.1Q-2011” (2011ねん8がつ31にち). 2023ねん11月14にち閲覧えつらん
  13. ^ IEEE 802.1Q-2022, Table 9-1

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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