くろがね

日本語にほんご

（雅語がご）（比喩ひゆ的てきな用法ようほうを含ふくめ）鉄てつ。
- いや、皮膚ひふの色いろ、姿すがたまでが、そっくりだった。ぬっと突つき立たてって、婆ばばのつめ寄よる足あしもとを、児戯じぎのように見みている武蔵むさしの肩かたや胸むねは、さながらそれを嘲あざけ（わら）う鉄てつ（くろがね）の龍車りゅうしゃといっていい。（吉川よしかわ英治えいじ『宮本みやもと武蔵むさし火ひの巻まき』）
- しかし、その男女だんじょ間あいだの別べつはかなり厳きびしいもので、食客しょっきゃく連れんの放言ほうげん高談こうだんには寛大かんだいである老女ろうじょも、それと女中じょちゅう部屋へやとの交渉こうしょうは鉄てつ（くろがね）の関せきを置おいて、何人なんにん（なんぴと）をも一いち歩ほもこの境さかいを犯おかすことのないようにしてあることでもわかります。（中里なかさと介山かいざん『大菩薩峠だいぼさつとうげ道みち庵あんと鰡ぼら八はちの巻まき』）

鉄てつ。
- もしや助たすかり給きゅうふと、筧かけいの水みずをまかせたれば、石いしや、くろがねなどの焼やけたる様ように、水みずほどばしつて、寄よりつかず。（『平家ひらか物語ものがたり』）
  もしかしたら、お助たすかりになるかと、筧かけいの水みずを（清盛きよもりの体からだに）撒まいたところ、（清盛きよもりの体からだが）石いしや鉄てつなどの焼やけたものの様ようであって、水みずは勢いきおいよく飛とび跳はねるばかりで、（体からだに）寄よりもしない。