中里なかさと介山かいざん

中里なかさと 介山かいざん （なかざと かいざん）
誕生たんじょう	1885年ねん4月がつ4日にち 日本にっぽん・神奈川かながわ県けん西多摩にしたま郡ぐん羽村はむら （現げん・東京とうきょう都と羽村はむら市し）
死没しぼつ	(1944-04-28) 1944年ねん4月がつ28日にち（59歳さい没ぼつ） 日本にっぽん・東京とうきょう都と西多摩にしたま郡ぐん西秋留にしあきる村むら （現げん・東京とうきょう都とあきる野の市し）
墓地ぼち	禅林寺ぜんりんじ（東京とうきょう都と羽村はむら市し）
職業しょくぎょう	小説しょうせつ家か
言語げんご	日本語にほんご
国籍こくせき	日本にっぽん
最終さいしゅう学歴がくれき	西多摩にしたま尋常じんじょう高等こうとう小学校しょうがっこう
ジャンル	小説しょうせつ
代表だいひょう作さく	『大菩薩峠だいぼさつとうげ』（1941年ねん）
デビュー作さく	『氷こおりの花はな』（1906年ねん）
配偶はいぐう者しゃ	終生しゅうせい独身どくしん
ウィキポータル 文学ぶんがく

中里なかさと 介山かいざん（なかざと かいざん、男性だんせい、1885年ねん（明治めいじ18年ねん）4月がつ4日にち - 1944年ねん（昭和しょうわ19年ねん）4月がつ28日にち）は、日本にっぽんの小説しょうせつ家か。本名ほんみょう：中里なかさと 弥之助やのすけ。

甥おいに、ロシア・ソビエト文学ぶんがく者しゃの中里なかさと迪すすむ弥わたる（なかざとみちや）。

略歴りゃくれき

中里なかさと介山かいざんの墓はか

東京とうきょう都と西多摩にしたま郡ぐん羽村はむら（現在げんざいの東京とうきょう都と羽村はむら市し）に精米せいまい業者ぎょうしゃの次男じなんとして生うまれる。玉川上水たまがわじょうすいの取水しゅすい堰せきにほど近ちかい多摩川たまがわ畔ほとりの水車みずぐるま小屋こやで生うまれたと伝つたえられる。生家せいかは自由じゆう民権みんけん運動うんどうで三さん多摩たま壮士そうしと呼よばれた人ひとびとの根拠地こんきょちで、民権みんけん運動うんどうの気風きふうが色濃いろこく残のこる土地とちであった。

長兄ちょうけいは早世そうせいしており、少年しょうねん時代じだいに農家のうかであったが、父ちちの代だいで離農りのうしたため土地とちを失うしない、不遇ふぐうの時代じだいを過すごした。1898年ねん（明治めいじ31年ねん）西多摩にしたま尋常じんじょう高等こうとう小学校しょうがっこうを卒業そつぎょう後ごに上京じょうきょうし、日本橋にほんばし浪花なにわ電話でんわ交換こうかん局きょくでの電話でんわ交換こうかん手しゅや母校ぼこうの代用だいよう教員きょういんの職しょくに就つき、一家いっかを支ささえた。この時期じきに松村まつむら介石かいせきに傾倒けいとうし、号ごうの「介山かいざん」も松村まつむらにあやかるものだという。

『平家ひらか物語ものがたり』などの日本にっぽん古典こてんに親したしむ一方いっぽうで、ユゴーらの外国がいこく小説しょうせつも好このんだという。また、キリスト教きりすときょうや社会しゃかい主義しゅぎに接近せっきんし、幸徳こうとく秋水しゅうすいや堺さかい利彦としひこ、内村うちむら鑑三かんぞう、山口やまぐち孤剣こけんらの社会しゃかい主義しゅぎ者しゃと親交しんこうを結むすび、「平民へいみん新聞しんぶん」へ寄稿きこうする。

一方いっぽう、週刊しゅうかん『平民へいみん新聞しんぶん』の懸賞けんしょう小説しょうせつに応募おうぼして佳作かさく入選にゅうせんとなった「何なんの罪ざい」が同紙どうしに掲載けいさいされ、以降いこう、詩しや小説しょうせつを同紙どうしに発表はっぴょうする。週刊しゅうかん『平民へいみん新聞しんぶん』の後継こうけい紙しである『直言ちょくげん』では編集へんしゅう同人どうじんとなった。また、山口やまぐち孤剣こけんや白柳しらやなぎ秀湖しゅうこらと火ひ鞭むち会かいを結成けっせいする。このころからトルストイの影響えいきょうを受うけ、また内村うちむら鑑三かんぞうの柏木かしわぎ教会きょうかいへも通かよい始はじめる。

田川たがわ大吉郎だいきちろうの推挙すいきょで1906年ねん（明治めいじ39年ねん）に『都と新聞しんぶん』に入社にゅうしゃ、次々つぎつぎと小説しょうせつを発表はっぴょうし、1909年ねん（明治めいじ42年ねん）には都と新聞しんぶんにはじめての連載れんさい小説しょうせつ「氷こおりの花はな」を発表はっぴょう。後のちに社会しゃかい主義しゅぎからは離別りべつしているが、幸徳こうとくらが処刑しょけいされた「大逆だいぎゃく事件じけん（幸徳こうとく事件じけん）」は、介山かいざんの交友こうゆう関係かんけい者しゃのなかからも多数たすうの逮捕たいほ者しゃ・刑死けいし者しゃを出だし、介山かいざんの精神せいしんにも深ふかい影かげを落おとした。「大逆だいぎゃく事件じけん」の影響えいきょうは、『都と新聞しんぶん』の連載れんさい小説しょうせつ「高野たかのの義人ぎじん」と「島原しまばら城じょう」にみられ、さらに長編ちょうへん『大菩薩峠だいぼさつとうげ』に及およんでいると指摘してきされている。

1913年ねん（大正たいしょう2年ねん）9月12日にちに「都と新聞しんぶん」で小説しょうせつ『大菩薩峠だいぼさつとうげ』の執筆しっぴつを開始かいし、1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）10月がつまで連載れんさいする。『都と新聞しんぶん』での連載れんさい以後いごは書かき下おろしとして1918年ねん（大正たいしょう7年ねん）に自費じひ出版しゅっぱん、1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）に木村毅きむらきから春秋しゅんじゅう社しゃ社主しゃしゅ神田かんだ豊穂とよほを紹介しょうかいされ同社どうしゃから出版しゅっぱん、菊池きくち寛ひろしや国くに柱ばしら会かいの田中たなか智學ちがくの推薦すいせんで有名ゆうめいになる。

『大菩薩峠だいぼさつとうげ』の連載れんさいを終おえた後のちは私塾しじゅくや図書館としょかん経営けいえい、出版しゅっぱん業ぎょうなどをするものの、1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）11月1日にちに東京日日新聞とうきょうにちにちしんぶん社しゃと春秋しゅんじゅう社しゃので共催きょうさい、『大菩薩峠だいぼさつとうげ』続編ぞくへん掲載けいさい披露宴ひろうえんが東京とうきょう會かい舘だてで開ひらけれた。これ以降いこう、『大菩薩峠だいぼさつとうげ』の執筆しっぴつを再開さいかいし、『大阪毎日新聞おおさかまいにちしんぶん』、『東京日日新聞とうきょうにちにちしんぶん』、『隣人りんじん之の友とも』、『国民こくみん新聞しんぶん』、『讀賣新聞よみうりしんぶん』と連載れんさい誌し（紙かみ）を替かえつつ1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）まで書かき継つがれ、未完みかんに終おわったものの代表だいひょう作さくとなった。

一方いっぽう、雑誌ざっし『改造かいぞう』で連載れんさいしていた小説しょうせつ『夢殿ゆめどの』は、1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）9月がつ号ごうの内容ないようがタブーに触ふれたため、尊厳そんげん冒涜ぼうとくを理由りゆうに雑誌ざっし自体じたいが発売はつばい禁止きんし処分しょぶんを受うけ、当該とうがい箇所かしょの削除さくじょが行おこなわれた。

1929年ねん（昭和しょうわ4年ねん）、実業じつぎょう家か・藤田ふじた勇いさむの紹介しょうかいで上京じょうきょう間あいだもない合気道あいきどう創始そうし者しゃ・植芝うえしば盛もり平ひらたの道場どうじょう（東京とうきょう芝しば高輪たかなわ町まち）に入門にゅうもん、見慣みなれぬ武技ぶぎを熱心ねっしんに観察かんさつしたという。1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）には古文書こもんじょから武術ぶじゅつに関かんする逸話いつわなどを網羅もうらした『日本にっぽん武術ぶじゅつ神妙しんみょう記き』を著あらわす。1936年ねんの総そう選挙せんきょでは無所属むしょぞくで東京とうきょう7区く（当時とうじ）から出馬しゅつばするも、最下位さいかいで落選らくせんする[1]。

戦時せんじ中ちゅうに、文芸ぶんげい家か協会きょうかいが日本にっぽん文学ぶんがく報ほう国会こっかいに再編さいへんされたときに、入会にゅうかいを拒否きょひしたことでも知しられている。

1944年ねん（昭和しょうわ19年ねん）4月がつ22日にち、腸ちょうチフスのため阿伎留あきる病院びょういんに入院にゅういんし、28日にちに死去しきょ。5月18日にちに大だい菩薩ぼさつ記念きねん館かんにおいて葬儀そうぎが挙行きょこうされた。享年きょうねん59。法名ほうみょうは、修成しゅうせい院いん文ぶん宗そう介山かいざん居士こじ。墓はかは生うまれ故郷こきょうである羽村はむら市しの禅林寺ぜんりんじにある。

中里なかさと介山かいざんの資料しりょうは出生しゅっしょう地ちである羽村はむら市し郷土きょうど博物館はくぶつかんと大菩薩峠だいぼさつとうげ近ちかくの甲州こうしゅう市しの地元じもとのNPO運営うんえいの資料しりょう館かんの二ふたつが展示てんじされている。

生活せいかつ信条しんじょう

青年せいねん時代じだいから独身どくしんを貫つらぬく決心けっしんをしていた。27歳さいの時とき勤務きんむ先さきの都と新聞しんぶん社しゃで独身どくしん会かいを結成けっせいし機関きかん誌し「独身どくしん」を発行はっこうしている。好男子こうだんしであったので女性じょせいには大変たいへんもてたというが終生しゅうせい妻つまは娶めとらなかった。評論ひょうろん家か北嶋きたじま広ひろ敏さとしによれば幼少ようしょうのころ味あじわった家庭かていの暗くらさがトラウマになっているからという。介山かいざんの言げん「女おんな遊あそびは構かまわない、それは魂たましいを傷きずつけぬから。恋こいはいけない、魂たましいを傷きずつけるから」。

晩年ばんねんまで簡素かんそでストイックな生活せいかつを貫つらぬいた。『大菩薩峠だいぼさつとうげ』がベストセラーになって得えた印税いんぜいは事業じぎょうにつぎ込こみ、本人ほんにんは菜食さいしょくを中心ちゅうしんとする粗食そしょくで、住すまいは六ろく畳じょう間あいだ一いち間あいだしかなかった。

著作ちょさく

• 『中里なかさと介山かいざん全集ぜんしゅう』、中里なかさと介山かいざん全集ぜんしゅう刊行かんこう会かい。
• 『中里なかさと介山かいざん全集ぜんしゅう』全ぜん20巻かん、筑摩書房ちくましょぼう、1970年ねん－1972年ねん。
• 『大菩薩峠だいぼさつとうげ』1913年ねん－1941年ねん

映像えいぞう化か作品さくひん

• 『大菩薩峠だいぼさつとうげ』 (1960年ねん、大映だいえい)
• 『大菩薩峠だいぼさつとうげ 竜神りゅうじんの巻まき』(1960年ねん、大映だいえい)
• 『大菩薩峠だいぼさつとうげ 完結かんけつ篇へん』 (1961年ねん、大映だいえい)

参考さんこう文献ぶんけん

• 尾崎おざき秀樹ひでき「社会しゃかい主義しゅぎ詩人しじん介山かいざん」、『文学ぶんがく』第だい38巻かん第だい5号ごう、1970年ねん5月がつ。
• 尾崎おざき秀樹ひでき『修羅しゅら 明治めいじの秋あき』、新潮社しんちょうしゃ、1973年ねん8月がつ。
• 尾崎おざき秀樹ひでき『峠とうげの人ひと 中里なかさと介山かいざん』、新潮社しんちょうしゃ、1980年ねん8月がつ。
• 桜沢さくらざわ一昭かずあき『中里なかさと介山かいざんの原郷はらごう』、不ふ二に出版しゅっぱん、1987年ねん7月がつ。
• 中村なかむら文雄ふみお『中里なかさと介山かいざんと大逆だいぎゃく事件じけん－その人ひとと思想しそう』、三さん一いち書房しょぼう、1983年ねん5月がつ。
• 松本まつもと健一けんいち『中里なかさと介山かいざん』（『朝日あさひ評伝ひょうでん選せん』18）、朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、1978年ねん1月がつ。
• 松本まつもと健一けんいち『中里なかさと介山かいざん－辺境へんきょうを旅たびするひと』、風ふう人じん社しゃ、1993年ねん6月がつ。ISBN 4-938643-08-1
• 柳やなぎ富子とみこ「中里なかさと介山かいざんの二ふたつのトルストイ論ろん」、早稲田大学わせだだいがく『比較ひかく文学ぶんがく年ねん誌し』第だい29号ごう、1993年ねん3月がつ。
• 高橋たかはし敏夫としお『理由りゆうなき殺人さつじんの物語ものがたり－「大菩薩峠だいぼさつとうげ」をめぐって』、廣済堂こうさいどうライブラリー、2001年ねん4月がつ
• 山梨やまなし県立けんりつ文学ぶんがく館かん編へん『中里なかさと介山かいざん「大菩薩峠だいぼさつとうげ」の世界せかい』、山梨やまなし県立けんりつ文学ぶんがく館かん、2003年ねん4月がつ。

外部がいぶリンク

• 中里なかさと 介山かいざん：作家さっか別べつ作品さくひんリスト - 青空あおぞら文庫ぶんこ
• 羽村はむら市し郷土きょうど博物館はくぶつかん | 羽村はむら市し公式こうしきサイト
• 中里なかさと介山かいざん文学ぶんがく碑ひ | 信州しんしゅう（長野ながの県けん松本まつもと市し）白骨はっこつ温泉おんせん公式こうしきホームページ
• 中里なかさと介山かいざん年譜ねんぷ 玉川たまがわ神社じんじゃ