木戸きど幸一こういち（読よみ）キドコウイチ

…40年ねんの米内よない光政みつまさ内閣ないかくの成立せいりつにあたっては湯浅ゆあさ倉くら平ひら内大臣ないだいじんが枢密院すうみついん議長ぎちょうと首相しゅしょう前官礼遇ぜんかんれいぐう者しゃの意見いけんをきき，西園寺さいおんじの意見いけんも求もとめたうえで米べい内ないを推薦すいせんした。次つぎの第だい2次じ近衛このえ文麿ふみまろ内閣ないかくは木戸きど幸一こういち内大臣ないだいじんが枢密院すうみついん議長ぎちょう，元もと首相しゅしょうと協議きょうぎして推薦すいせんした。元もと首相しゅしょうとなると林はやし，阿部あべ信行のぶゆき両りょう陸軍りくぐん大将たいしょうも加くわわり，陸軍りくぐんの意見いけんも代表だいひょうされることになる。…

…5月のドイツ降伏ごうぶくを契機けいきに，最高さいこう戦争せんそう指導しどう会議かいぎ構成こうせい員いん会議かいぎでソ連それんを仲介ちゅうかいとする和平わへい工作こうさくが検討けんとうされ，東郷とうごう茂徳しげのり外相がいしょうの委嘱いしょくをうけた広田ひろた弘毅こうき元もと首相しゅしょうは，6月3日にちから駐ちゅう日にちソ連それん大使たいしマリクY.A.Malik(1906‐80)との会談かいだんを開始かいしした。交渉こうしょうが難航なんこうしたため，木戸きど幸一こういち内大臣ないだいじんは天皇てんのうの親書しんしょを携たずさえた特使とくしの派遣はけんを画策かくさく，7月がつ10日とおかの最高さいこう戦争せんそう指導しどう会議かいぎ構成こうせい員いん会議かいぎで近衛このえ文麿ふみまろ特使とくしのモスクワ派遣はけんが決定けっていされた。しかしソ連それんは，45年ねん2月がつのヤルタ会談かいだんで対たい日にち参戦さんせんを決意けついしており，日本にっぽんの提案ていあんは具体ぐたい性せいに欠かけ，近衛このえ特使とくしの使命しめいも不ふ明確めいかくであるとの理由りゆうから，この問題もんだいに対たいする確答かくとうを避さけた。…

…次ついで同年どうねん11月がつ27日にちのカイロ宣言せんげん(〈カイロ会談かいだん〉の項こうを参照さんしょう)では，満州まんしゅう･台湾たいわん･澎湖諸島しょとうの中国ちゅうごくへの返還へんかん，朝鮮ちょうせんの独立どくりつ，日本にっぽんの無条件むじょうけん降伏ごうぶくなどが定さだめられ，45年ねん2月がつ11日にちのヤルタ協定きょうてい(〈ヤルタ会談かいだん〉の項こうを参照さんしょう)では，南みなみ樺太からふとのソ連それんへの返還へんかんと千島ちしま列島れっとうのソ連それんへの引渡ひきわたしを条件じょうけんとするソ連それん対たい日にち参戦さんせんが決定けっていされ，さらに7月がつ26日にちのポツダム宣言せんげんは，日本にっぽんが非ひ軍事ぐんじ化かと民主みんしゅ化かを2本ほんの柱はしらとする対たい日にち処理しょり方針ほうしんを受諾じゅだくし，即時そくじ無条件むじょうけん降伏ごうぶくすることを求もとめていた。これに対たいし日本にっぽんでは，45年ねん2月がつ14日にちの近衛このえ文麿ふみまろ元もと首相しゅしょうの天皇てんのうへの上奏じょうそう文ぶん提出ていしゅつを契機けいきに，和平わへい工作こうさくが木戸きど幸一こういち内大臣ないだいじんらの宮中きゅうちゅうグループを中心ちゅうしんに進すすめられた。彼かれらの論理ろんりは，敗戦はいせんにともなう〈共産きょうさん革命かくめい〉を避さけるため，〈国体こくたい護持ごじ〉＝天皇てんのう制せい擁護ようごの立場たちばから早期そうき和平わへいを実現じつげんするというもので，日本にっぽん国民こくみんと日本にっぽんの侵略しんりゃく戦争せんそうの犠牲ぎせいになったアジア諸しょ民族みんぞくに対たいする責任せきにん感かんに欠かけ，〈国体こくたい護持ごじ〉のみを唯一ゆいいつ絶対ぜったいの基準きじゅんとする和平わへい論ろんであった。…

…そのため内大臣ないだいじんはつねに右翼うよくテロの目標もくひょうとされ，斎藤さいとうは二に･二に六ろく事件じけんで殺ころされた。40年ねんには若手わかての宮廷きゅうてい派はの木戸きど幸一こういちが内大臣ないだいじんとなり，重臣じゅうしん会議かいぎのとりまとめ役やくとなって，第だい2次じ近衛このえ文麿ふみまろ，東条とうじょう英機ひでき両りょう内閣ないかくを成立せいりつさせた。太平洋戦争たいへいようせんそうのなかで天皇てんのうの動うごきが注目ちゅうもくされるようになると，内大臣ないだいじんは天皇てんのうと政界せいかい上層じょうそう部ぶの間あいだの唯一ゆいいつのパイプとして，重大じゅうだいな機能きのうを果はたした。…