登録とうろく有形ゆうけい文化財ぶんかざい（読よみ）とうろくゆうけいぶんかざい

国宝こくほうや重要じゅうよう文化財ぶんかざいなど、国くにや自治体じちたいが「指定してい」する文化財ぶんかざい保護ほごの制度せいどとは別べつに、所有しょゆう者しゃが自みずから申請しんせいすることで「登録とうろく」される文化財ぶんかざいの制度せいどにのっとって定さだめられた有形ゆうけいの文化財ぶんかざい。建造けんぞう物ぶつと美術びじゅつ工芸こうげい品ひんの分野ぶんやがある。

　1996年ねん（平成へいせい8）に文化財ぶんかざい保護ほご法ほうが改正かいせいされ、登録とうろく有形ゆうけい文化財ぶんかざいが制度せいど化かされて以来いらい、建造けんぞう物ぶつは毎年まいとし、3～4回かいずつ、1回かいに100～200件けんほどが登録とうろくされ、2006年ねん（平成へいせい18）からは美術びじゅつ工芸こうげい品ひんの分野ぶんやでも登録とうろくが始はじまった。2019年ねん（令れい和わ1）8月がつ時点じてんで、建造けんぞう物ぶつの登録とうろくは1万まん2121件けん、美術びじゅつ工芸こうげい品ひんの登録とうろくは16件けんにのぼっている。

　国くにや自治体じちたいが「指定してい」する文化財ぶんかざいになると「釘くぎ(くぎ)1本ほん自由じゆうに打うてない」など所有しょゆう者しゃにさまざまな制限せいげんがかかり、指定していされるのを敬遠けいえんするケースもあったことから、保護ほごだけでなく、ある程度ていど所有しょゆう者しゃが自由じゆうに改変かいへんし、活用かつようもできる新あらたな文化財ぶんかざいのあり方かたを目めざして創設そうせつされた制度せいどである。

　登録とうろく有形ゆうけい文化財ぶんかざい（建造けんぞう物ぶつ）の登録とうろく基準きじゅんは、「建設けんせつ後ご50年ねんを経過けいかしている」もので、かつ「国土こくどの歴史れきし的てき景観けいかんに寄与きよしている」「造形ぞうけいの規範きはんとなっている」「再現さいげんすることが容易よういでない」の三みっつの条件じょうけんのうち、いずれかに当あてはまるものとされている。登録とうろくを希望きぼうする場合ばあいは、所有しょゆう者しゃと地元じもと自治体じちたいの教育きょういく委員いいん会かいとの連絡れんらく・調整ちょうせいを経へて、専門せんもん家かによる調査ちょうさを行おこなったうえで、文化庁ぶんかちょうに申請しんせいする。

　登録とうろくされると、保存ほぞん・活用かつようのために必要ひつような修理しゅうりの設計せっけい監理かんり費ひの2分ぶんの1が国くにから補助ほじょされたり、家屋かおくの固定こてい資産しさん税ぜいが2分ぶんの1に減免げんめんされたりするなどの優遇ゆうぐう措置そちがある。なお、火災かさい、地震じしんによる倒壊とうかい、所有しょゆう者しゃによる取とり壊こわし、重要じゅうよう文化財ぶんかざいへの指定していなどで、登録とうろくを抹消まっしょう(まっしょう)されることもある。

　建造けんぞう物ぶつの種類しゅるい別べつの内訳うちわけは、住宅じゅうたく5495件けん、宗教しゅうきょう1702件けん、産業さんぎょう（3次じ）1524件けん、産業さんぎょう（2次じ）1219件けん、交通こうつう496件けん、学校がっこう374件けん、生活せいかつ関連かんれん336件けんなどとなっている。時代じだい別べつにみると、江戸えど以前いぜん2153件けん、明治めいじ3872件けん、大正たいしょう2494件けん、昭和しょうわ3602件けんである。件数けんすうは、建造けんぞう物ぶつ1棟むねずつを1件けんと数かぞえるため、たとえば、奈良なら県けんの吉野神宮よしのじんぐうでは「拝殿はいでん」「廻廊かいろう(かいろう)」など26件けんの建造けんぞう物ぶつが登録とうろくされている。

　登録とうろくされた建造けんぞう物ぶつは、全国ぜんこく的てきな知名度ちめいどをもつものから、その地域ちいきの伝統でんとう産業さんぎょうなどにかかわる施設しせつ、地元じもとでもほとんど知しられていない個人こじんの民家みんかまで幅広はばひろく、有名ゆうめいなものでは、東京とうきょうタワー（東京とうきょう都と、1958年ねん建造けんぞう、2013年ねん登録とうろく）、大阪城おおさかじょう天守閣てんしゅかく（大阪おおさか府ふ、1931年ねん建造けんぞう、1997年ねん登録とうろく）、富士屋ふじやホテル本館ほんかん（神奈川かながわ県けん箱根はこね町まち、1891年ねん建造けんぞう、1997年ねん登録とうろく）などがある。

　登録とうろく物件ぶっけんには、都道府県とどうふけんごとに通とおし番号ばんごうが振ふられており、登録とうろくされるとその番号ばんごうを記しるしたプレートが文化庁ぶんかちょうから授与じゅよされる。たとえば、東京とうきょうタワーの番号ばんごうは「13-0295」で、東京とうきょう都と（13）で295番目ばんめに登録とうろくされた物件ぶっけんであることがわかる。このプレートは、建物たてものの玄関げんかんや内部ないぶに掲出けいしゅつされていることが多おおく、登録とうろく文化財ぶんかざいであることのわかりやすい目印めじるしになっている。

　美術びじゅつ工芸こうげい品ひんの分野ぶんやの登録とうろく対象たいしょうは、製作せいさく後ご50年ねんを経過けいかしたものであって、歴史れきし的てき・系統的けいとうてきにまとまって伝つて存そんしたもの、系統けいとう的てき・網羅もうら的てきに収集しゅうしゅうされたもので、かつ、文化ぶんか史し的てき意義いぎ、学術がくじゅつ的てき価値かちおよび歴史れきし上じょうの意義いぎを有ゆうするものとされている。「有田ありた磁器じき（柴田しばた(しばた)夫妻ふさいコレクション）」や「建築けんちく教育きょういく資料しりょう（京都きょうと帝国ていこく大学だいがく工学部こうがくぶ建築けんちく学がく教室きょうしつ旧きゅう蔵ぞう）」などが登録とうろくされている。

［佐さ滝たき剛弘たけひろ　2019年ねん9月がつ17日にち］