黒川くろかわ良りょう安やす（読よみ）くろかわりょうあん

幕末ばくまつ維新いしん期きの蘭医らんい(らんい)。越中えっちゅう(えっちゅう)国こく中新川なかにいかわ(なかにいかわ)郡山こおりやま加か積せき(やまかづみ)村黒むらぐろ川がわ（富山とやま県けん中新川なかにいかわ郡上こおりかみ市し(かみいち)町まち）の医師いし黒川くろかわ玄げん竜りゅうの子こ。名なを弼、字じ(あざな)は良りょう安やす。静海しずみ・自然しぜんと号ごうす。1828年ねん（文政ぶんせい11）父ちちに従したがい、長崎ながさきに行いき、吉雄よしお権けん之の助すけ(よしおごんのすけ)（1785―1831）にオランダ語ごを、シーボルトに医学いがくを学まなび、高島たかしま秋帆しゅうはん(しゅうはん)（1798―1866）とも交流こうりゅうをもった。1840年ねん（天保てんぽう11）帰郷ききょう、さらに江戸えどに出でて坪井つぼい信道のぶみち(しんどう)に入門にゅうもん、塾じゅく監かんとなった。1844年ねん堀内ほりうち忠ただし亮あきら（素堂そどう、1801―1854）・青木あおき研けん蔵ぞう（1815―1870）とリセランA. B. Richerand（1779―1840）の『人身じんしん窮理きゅうり書しょ』を共とも訳やく（『医い理学りがく源げん』、未刊みかん）し、致知格かく物ぶつは物ものに即そくして理りを窮きわめるものであることを学まなびとった。のち信州しんしゅう松代まつだい(まつしろ)の佐久間さくま象山ぞうさんの家いえに寄より、象山ぞうざんに漢学かんがくを学まなび、象山ぞうざんにオランダ学がくを教おしえた。同年どうねん加賀かが藩はんに仕つかえ、1846年ねん（弘ひろし化か3）侍医じい。1854年ねん（安政あんせい1）蘭学らんがく・洋式ようしき兵法ひょうほうを教おしえる壮たけし猶なお(そうゆう)館かんの創立そうりつにあたり翻訳ほんやく方かたを兼務けんむした。1857年ねん江戸えど在勤ざいきん、蕃しげる書しょ調ちょう所しょ(ばんしょしらべしょ)教授きょうじゅ手伝てつだえとなり、杉田すぎた成しげる卿きょう(せいけい)、箕作みつくり阮甫げんぽ(みつくりげんぽ)、川本かわもと幸みゆき民みん(こうみん)らとともに勤務きんむした。1863年ねん（文久ぶんきゅう3）藩はん軍艦ぐんかん御用ごよう兼務けんむ。1865年ねん藩はんの種痘しゅとう所しょ頭取とうどりとなり、1867年ねん金沢かなざわに病院びょういん養生ようじょう所しょを建たて医学いがく教授きょうじゅ、1870年ねん（明治めいじ3）藩はん医学いがく館かん創設そうせつに参画さんかく、教授きょうじゅとなった。『脈みゃく論ろん』の訳述やくじゅつ者しゃ津田つだ淳三じゅんぞう（1824―1879）の義兄ぎけいである。明治めいじ23年ねん9月がつ没ぼつ。

［末まつ中ちゅう哲夫てつお］

『日本学士院にほんがくしいん日本にっぽん科学かがく史し刊行かんこう会かい編へん『明治めいじ前ぜん日本にっぽん医学いがく史し5』（1957・日本にっぽん学術がくじゅつ振興しんこう会かい／複製ふくせい増ぞう訂てい版ばん・1978・日本にっぽん古こ医学いがく資料しりょうセンター）』