驚おどろきのアーティストが続々ぞくぞく登場とうじょう、ネットを騒さわがせた“音おとの振動しんどうで紙かみ相撲すもう”コーナーはどうやって作つくられたのか

取材しゅざい・文ぶん / 橋本はしもと尚しょう平たいら

「音おと相撲すもう」から「サウンドランナー」まで、増ふえていく新しん種目しゅもく

レギュラー放送ほうそう開始かいしからの14年間ねんかんで、100人にんではきかないほどのディレクターが制作せいさくに関かかわってきたという「シャキーン！」において、スタート時じからずっとディレクターを務つとめている唯一ゆいいつの人物じんぶつが和賀わが氏しだ。

もともと日本にっぽんで映像えいぞう制作せいさくをやっていた和賀わが氏しは、イギリスの文化ぶんかが好すきで「海外かいがいで勝負しょうぶしてみたい」と思おもい渡わたり英すぐるするも、就労しゅうろうビザが取とれずに帰国きこく。その後ごはミュージックビデオやテレビ番組ばんぐみの仕事しごとに関かかわるが、どれも面白おもしろいと思おもえず長続ながつづきしなかったという。仕事しごとに辟易へきえきしていた氏しは、「シャキーン！」の制作せいさく会社かいしゃ・ディレクションズから「新あたらしい番組ばんぐみを作つくるので参加さんかしてみないか？」と声こえをかけられて番組ばんぐみのパイロット版ばんを視聴しちょう。それまでに観みたどの番組ばんぐみとも違ちがう異質いしつな面白おもしろさを感かんじて、レギュラー放送ほうそう開始かいしと同時どうじに番組ばんぐみ作づくりに参加さんかすることにした。

名物めいぶつ企画きかくの1つとなった「サウンドファイターズ」を手てがけていたのも和賀わが氏しだった。

「番組ばんぐみ開始かいし2年ねん目めくらいから『音おと相撲すもう』という、スピーカーの上うえに紙かみ相撲すもうを置おいて動うごかすコーナーをやっていたんです。このときは対戦たいせんではなく、1人ひとりのアーティストが横よこで音おとを出だすシュールな企画きかくでした。子供こどもたちに『音おとは振動しんどうによって発生はっせいする』という仕組しくみをわかってもらうのに、紙かみ相撲すもうに落おとし込こんだら視覚しかく的てきにわかりやすくて面白おもしろいんじゃないかってアイデアで」

その後ご、「音おとを出だす喜よろこび、楽器がっきを弾ひく楽たのしさを子供こどもたちに感かんじてもらいたい」というコンセプトを打うち立たて、対戦たいせん形式けいしきにしてゲーム性せいを高たかくしたコーナー「音おと棒ぼう倒だおし」がスタートした。「音おと棒ぼう倒だおし」はスピーカーの上うえに棒ぼうを立たてた砂山すなやまを置おき、2人ふたりのベーシストが交互こうごに演奏えんそうして先さきに棒ぼうを倒たおしたほうが勝かち、というもの。このコーナーで使つかった砂すなについて、和賀わが氏しは「徐々じょじょに崩くずれるように何なん度ども試行しこう錯誤さくごして、川砂せんさと乾燥かんそう砂すなを2：8のオリジナルブレンドにするなどこだわりました」と振ふり返かえる。

さらにここから派生はせいして、向むかい合あった2人ふたりのミュージシャンが楽器がっきの音おとの振動しんどうで紙かみ相撲すもうをするコーナー「サウンドファイターズ」や、スピーカーに糸いとを付つけて紙かみ人形にんぎょうをぶら下さげ、音おとの振動しんどうでゴールまで進すすめてタイムを競きそうコーナー「サウンドランナー」といったコーナーも始動しどう。「サウンドファイターズ」で使用しようしたスピーカーを仕込しこんだリングは、機材きざいのチューンナップなどを得意とくいとするベーシストの砂山すなやま淳一じゅんいちに設計せっけいを依頼いらいした。

「砂山すなやまさんとスタジオで『プラ板ばんの厚あつみは何なにmmだと音おとの振動しんどうが伝つたわりやすいだろう』『それなりの大おおきさがないと迫力はくりょくがなくなるけど、大おおきすぎると持もち運はこびが大変たいへんだな』みたいなことを言いいながら延々えんえんとテストをしてました。そうは言いっても潤沢じゅんたくに予算よさんが使つかえるわけではないので、スピーカーは1玉たま3000円えんくらいの安やすいものを使つかっているんですが」

「サウンドファイターズ」では、鈴木すずき研一けんいち（人間にんげん椅子いす）と向井むかい秀徳ひでのり（NUMBER GIRL、ZAZEN BOYS、KIMONOS）の対決たいけつなど、朝あさの子供こども向むけ番組ばんぐみらしからぬ尖とがったブッキングに、オンエアのたびにSNSなどで驚おどろきの声こえが殺到さっとうした。これらのコーナーのキャスティングをすべて担当たんとうしてきた和賀わが氏しは語かたる。

「ネットで話題わだいになりたい、という考かんがえはまったくありませんでしたね。『物事ものごとを違ちがう角度かくどから見みる』という番組ばんぐみコンセプトの通とおり、『子供こどもたちに多種たしゅ多様たような音楽おんがくや人間にんげんを感かんじてほしい』ということを意識いしきしていました。こういう音楽おんがくもあるよ、こういう面白おもしろい表現ひょうげんをする人ひともいるよ、というのを子供こどもたちに提案ていあんするっていう。ネットでよく『中なかの人ひとの趣味しゅみが出でてる』と書かかれているんですけど、全然ぜんぜんそういうことではなくて。人間にんげん椅子いすの鈴木すずきさんと向井むかい秀徳ひでのりさんが並ならぶ絵え面めんになったのは、あくまで結果けっかなんですよ。それが薬くすりになるか毒どくになるかはそれぞれの子供こどもたち次第しだいだと思おもいます」

音おとで戦たたかうこれらのゲームは、人形にんぎょうの形状けいじょうだけでなく、楽器がっきの種類しゅるいや奏法そうほうによっても勝敗しょうはいが左右さゆうされる。

「人形にんぎょうの顔かおは選手せんしゅご自身じしんに作つくってもらうんですが、『サウンドファイターズ』では重おもみがあるほうがやや有利ゆうりなので、帽子ぼうしをかぶっているH ZETT Mさんは強つよかったですね。ただそのぶん自滅じめつも多おおかったですが……。歴代れきだい最強さいきょうの選手せんしゅはたぶんUK（MOROHA）さんだと思おもいます。このコーナーはアフロ（MOROHA）さんがナレーションを担当たんとうしていたので、UKさんにも選手せんしゅとして出でていただいたんですが、エレアコのボディをパーカッションのように叩たたいて弾ひくので音圧おんあつがすごく強つよいんですよ。強つよすぎて実じつは少すこしセーブしてもらってました」

UKと田渕たぶちひさ子こ（NUMBER GIRL、toddle、bloodthirsty butchers）の一いち戦せんでは、ちょうど収録しゅうろく前日ぜんじつに他た局きょくで放送ほうそうされたテレビ番組ばんぐみで「尊敬そんけいする人ひとは田渕たぶちひさ子こさん」とUKが発言はつげんしていたため、当日とうじつは2人ふたりの話はなしが盛もり上あがっていたという。

和嶋わじま慎まき治おさむ（人間にんげん椅子いす）対たいKANAMI（BAND-MAID）の対決たいけつは、双方そうほうともメタルシーンにおいて世界せかい的てきに注目ちゅうもくされているギタリストということもあり、海外かいがいでも話題わだいに。また出場しゅつじょう者しゃのラインナップは国内こくないアーティストだけにとどまらず、来日らいにち中ちゅうのサンダーキャットが休日きゅうじつ課長かちょう（ゲスの極きわみ乙女おとめ。、DADARAY）、中村なかむら佳穂かほ、吉田よしだ一郎いちろう不可ふか触さわ世界せかいとバトルを繰くり広ひろげたこともあった。

「番組ばんぐみに興味きょうみを持もってくれたサンダーキャットサイドから、NHKの代表だいひょう番号ばんごうに電話でんわが来きたんです。それで『なんかサンダーキャットっていう人ひとから連絡れんらくが来きたよ』って言いわれて。プロデューサーはプロレスラーだと思おもったらしいです。僕ぼくはもともと大好だいすきだったから、冗談じょうだんを言いわれてるんだと思おもってました（笑）。佳穂かほちゃんやゲスの極きわみ乙女おとめ。のメンバーたちがサンダーキャットのファンなのは知しっていたし、吉田よしださんも相性あいしょうはいいだろうと思おもってこのメンツにしました」

音圧おんあつレベルは楽器がっきによってまったく違ちがうので、異ことなる楽器がっきのプレイヤーが対戦たいせんする場合ばあいは、試合しあいが成立せいりつするようにバランスを取とるのが非常ひじょうに難むずかしいのだとか。

「音おとを鳴ならしたときに人形にんぎょうがなるべく同おなじくらい動うごくようにイコライズするんですけど、どうしても楽器がっきによって有利ゆうりなものと不利ふりなものの差さが出でてくるんです。やっぱり異種いしゅ楽器がっき戦せんだとベースが強つよいですね。試合しあいでドラムを使つかったのはtricotのメンバーが全員ぜんいん出場しゅつじょうした回かいだけなんですが、遠とおめのところにマイクを立たてたり、マイキングを工夫くふうしたりして調節ちょうせつしました」

この一連いちれんのコーナーに関かんして、思おもい出でに残のこっていることは何なにかを和賀わが氏しに聞きいた。

「印象いんしょう的てきなのは、参加さんかしてくれたミュージシャン全員ぜんいんが楽たのしんで演奏えんそうしてくれた姿すがたです。誰だれ一人ひとりとしてつまらないっていう人ひとはいなくて。真剣しんけんに楽たのしんでやってました。サンダーキャットはもう少すこしデカい音おんを出だしたかったって言いってましたが。感動かんどうしたのは2018年ねんに京都きょうとの法輪寺ほうりんじで『ベース縁日えんにち』というイベントでやった『サウンドファイターズ』の公開こうかい収録しゅうろくです。一般いっぱんの子供こどもたちにも参加さんかしてもらいました。ベースを弾ひけなくて叩たたいてるだけの子こが多おおいのに、自分じぶんで出だした音おとでレスラーが動うごいてる、それを喜よろこんでくれて行列ぎょうれつができたんですよ。まさに音おとを楽たのしんでいる、音楽おんがくそのものでした。それを見みて『僕ぼくはこの光景こうけいが見みたかったんだな』って気付きづいたんです。ほかにも出張しゅっちょう版ばんとして、奈良ならの小学生しょうがくせいのブラスバンドが一斉いっせいに演奏えんそうして、たなしん（グッドモーニングアメリカ）と対決たいけつするという企画きかくもやりましたね。残念ざんねんながらコロナ禍かになってしまったので継続けいぞくできませんでしたが、可能かのうならイベントを開催かいさいしたり、一般いっぱんの子供こどもが参加さんかするコンテンツにできればよかったなと思おもっています。またチャンスがあればチャレンジしたいです」